【白猫】亡國のツバサ Story2
2018/05/31
目次
story6 メンドウな予感
…………
…………
デカいわね……確かにおっきな鳥ちゃんだわ。
……間違いなく、魔幻獣だと思う。
! い、いま、ちょっと動かなかった……?
え!?ってことは……これ、もう起動してるの!?
だと思う……!
そ、その割には、静かね……
(……どういうこと?)
さあ見ろ!これが<フレスベルグ>だ!
近くで見ると、大きいわねえ……!
アンタたち、この魔幻獣について、何か知ってるの?
魔幻獣?なにいってんだ?つ一か、俺たちの船になんか用か?
か……か……
???
かわいい~~~~~!
よくいわれるわ♪
だ、抱っこしてもいい……!?
しょうがないわねえ。
ふぁ~~~~~!
まさかお前らも、ここから逃がしてくれ、なんていうんじゃないだろうな。
……ねえ、主人公。
アタシ、なんだかメンドウなことになりそうな予感がしてきたわ。
あの、あなた方は……?
か……か……
(かわいい……)
コイツの持ち主だが……
持ち主……?
story7 美女と魔幻獣
<一同は、互いの事情を教えあった。>
アレス王国が滅亡したのは、新聞で読んで知ってたけど……
生き残りがいたんですね……
俺はアレス騎士団の団長。ヴィシャスは王直属の密偵。
アンド暗殺者。
ノエルも、将来有望な秘蔵っ子だ。
…………
そういうわけでコイツは、俺たちの目的を果たすために必要なんだよ。
『はるか古代に開発された、高度な技術を有する殲滅兵器』
そう言い伝えられてきたんでしたね?
アレス王国の最終兵器さ。フレスベルグって名前は、後になってつけたみたいだけど。
(そうだったのか……)
でも、実際は兵器じゃなかった。恐らく、人員や物資をまとめて輸送する、大型の飛行艇のようなものなんだと思う。
中に居住空間があるんだ。これはどう見ても、長距離の航行を想定して作ったものだ。
住めるの!?まるで飛行島みたいね。
…………
でも、私はやっぱり魔幻獣だと思います。
魔幻獣……って、あの魔幻獣??
あらアンタも知ってるの? というか、このひとはなんなの?
ミステリアスビューティー。
なにいってんの?
……で、魔幻獣ってのは?
いいわ。私が詳しく教えてあげる。
魔幻獣とは。はるか昔にあったとされる、黒の王国によって作られた大量破壊兵器よ。
く、黒の王国だって……!?
眉唾だと思う? 妄言綺語だと思う? けど、事実よ。
……?
つまり、<闇>の力が宿ってるというわけか?
とても危険な力よ。なにせ、闇の王が深く関わってるとされてるからねえ。
そ、そんな……
……どうした?
あ、ううん……なんでもない。
魔幻獣は全部で四体存在する。全て起動されてしまったら……この世は破滅を迎える。
そのうちの二体は破壊したわよ。
本当に、魔幻獣に詳しいですね……
あんた、やっぱりただ者じゃないな。
なぜお前も、フレスベルグを魔幻獣だと?
ロイド・イングラムって考古学者の論文を読んだことがあってね。
魔幻獣について、とても詳しく考察していたのよ。
学会では見向きもされてないらしいけど、私はロマンがあって好きよ。
……ロマン、ね。
ディランどうする?
……お願いします。私たちを、信じてくれませんか?
お前たちが悪党じゃないのはわかった。
だが、フレスベルグが<闇>の兵器ってのは、正直まだ信じられねえ。
ノエルもいっていたが、コイツは武装していない。それのどこが兵器なんだ?
そ、それは……
……それに、フレスベルグは、僕たちの家だ。
僕たちに残された、唯一のアレスの形見なんだ。壊すなんて、絶対にイヤだ!
そういうことだ。破壊はできない。
……
引かないつもりか?
……お前、いい目をしてるな。
自分の信念は、何があっても曲げねえって目だ。
国が滅んだ日を思い出すよ。そういう目をしたやつらに限って、俺を守って真っ先に死んでいった。
何も守れなかった俺を守って。
……わかった。こうしよう。
お前たちもついてこい。
……え?
い、いいんですか?
コイツが兵器だって証拠を見つけることができたら、さっきの話、すべて信用してやる。
……そ、そんなもの、見つからないと思うよ。
猶予は、俺たちの仕事が片付くまでだ。
……わかりました。
……ムダだと思うけどな……
(俺の家に美女が二人も……!)
マグリン。取引の件だが。
する気になってくれた?
大人しくマフィアに引き渡されるような女じゃなさそうだしな。
どこからどう見ても怪しいが、その怪しさを信用することにした。
うふふ……好きよ、そういう考え方。
安心なさい。全てうまくいったら、情報は必ず教えるわ。
さあマグリン。俺がエスコートしてやる。
ワクワクするわね。ああ、興奮しちゃう……♪
…………
ねえ、アンタ。
なあに?
前にどこかで会った?
いいえ、今日が初対面よ?
そうよね……
キャトラ……?
……そんな気がしたんだど……
?
story8 頭の中に潜むもの
<――フレスベルグ内・操縦室――>
……で? どこまで乗せりゃいいんだ?
できるだけ人が多い島がいいわね。
アンタ、操縦がうまいのねえ。
まあね。
このハシゴはなあに?
外につながってるんだ。
外……って、背中?
うん。たまに魔獣が来たりするのが面倒だけど。
アタシはぜったい出たくないわ!風で飛ばされそうだし!
慣れるとけっこう気持ちいいよ。
……でも確かに、こうしてると魔幻獣って感じはしないわね。
<……だが……
何か、底知れない力を感じる――>
……気のせいだよ。
……中を調べさせてもらって、いいでしょうか?
…………
……
ここまでが居住区だ。
ホントに広いわね。小さな村ぐらいはあるんじゃない?
この扉の向こう側には何があるんですか?
そ、そこからは、立ち入り禁止だよ。
そういわれると、ますます入りたくなるわね。
ダ、ダメだよ!……危険なんだ。
危険?
複雑なカラクリと精緻な魔術がうんぬん。教えてもらったが、俺にはさっぱりだ。
それってつまり?
…………
……フレスベルグの、頭だよ。恐らく、全身を制御してるんだ。
下手にいじったら、危ないだろ。だ、だから、入らないようにって。
ディランさんも、入ったことがないんですね?
ノエルにきつく言われてるからな。
<…………>
ちょ、ちょっと!入っちゃダメだっていってるだろっ!
……ごめん、ノエル君。
まってっ!
<主人公は扉を開け、フレスベルグの<頭>へと入っていく。>
ダメぇ――!
うっ……!
<闇>のソウルが――!
ふうん……なるほどね。
何だ、これは……!
みんな、出るのよ。ここは<闇>の領域……
居続けたら、取り込まれるわ。
ノエル……お前……
…………
story9 隠しごと
<一同は、操縦室に戻った……>
ねえ、どういうことなの?
……わからないわ。
あの<闇>のソウル……たっぷりと溜め込まれていたわねえ。
――まるで、来るべき時に備えているかのように。
来るべき時に、備える……
(……ロイド博士の論文によれば、魔幻獣の起動には、『鍵』が必要となる。
この魔幻獣も、すでに起動しているはず。なのに、他の魔幻獣とは様子が違う……
……どういうこと?)
とにかく……証拠は出たわけだな。
…………
……知ってたんだな。コイツが<闇>の兵器だと。
国を出てしばらくした時に、気づいた。
どうしてずっと隠していたんだ。
……言ったら、破壊されると思った。
当たり前だ。闇がどれほど危険な存在か、お前もよく知ってるだろ……!
何もしなければ、大丈夫だと思ったんだ。何もせず放っておけば――
いつまでも、僕たちの家のままだって、思ったんだ……
俺たちは、コイツをよく知らないまま動かしてる。
いつ何が起こっても、おかしくなかったんだぞ……!
……ごめん、なさい。
…………
……コイツを、破壊しよう。どうしてこんなに大人しいのかはわからないが……
ぶっ壊すなら、今がチャンスだ。
……ディランは、いつだって正しいよね。
そうやって、いつも正しい選択をするから、みんなから信頼される。
……なあ。確かにコイツは、アレスの形見だ。たとえ<闇>の兵器であっても。
お前の気持ちは、痛いほどわかる。
……ねえ、ノエル君。
<闇>の力は、あなたが思ってる以上に危険なのよ。
…………
確かにいまは大丈夫かもしれない。でも、これからのことなんて、誰にもわからないでしょ?
……世界中の島や国が、アンタのいた国のようになってしまう可能性だってあるの。
……うん、そうだね。その通りだと思う。
……でもね。僕にとっては、何よりもアレスが大事なんだ。
フレスベルグを使って、国を滅ぼしたクソ野郎を見つけて、仇を討つのが大事なんだ……
本当は間違ってるって、わかってる。でも……理屈じゃないんだ。
ノエル君……
アレスが大事なのは、もちろん俺も同じだ。……でもな、ノエル。
一番大事なのは、俺たちが生き続けていくことなんじゃねえか?
…………
兄ちゃんな。お前たちには、幸せになってほしいって思ってんだ。
……ディランは本当にすごいよね。かっこいいし、強いし、みんなから愛される。
……父さんもきっと、ディランを後継者にしようと思ってたんだろうね。
ヴィシャス兄だって、アレスには必要な存在だ。
……ノエル?
優秀な息子が、すでに二人もいる。……僕は、いてもいなくても、同じだったのかもしれない。
僕は、愛されていなかったのかな?愛されて、いないのかな?
何を言い出すんだ……
ディランだって、ずっと隠してることがあるよね?
お前、何を――
僕とディランは……血がつながってないんでしょ?
!!
どうしてずっと、黙ったままでいたの?
…………
僕は……ずっと、待ってたんだ。ディランが話してくれるのを。
でも、いつまで経っても、話してくれない。……ねえ、どうして?
どうしてなんだよっ……!
ノエル。ディランは――
言ってくれれば、僕はそれで良かったんだ……
それだけで、良かったのにっ……!
……っ!
ノエルッ!
…………
……私、空いた部屋で休ませてもらおうかしら。
ヤツを見張る。……ディラン。
ちゃんと謝って、仲直りしろ。
……知って、いたのか……
story10 兄貴失格
ディラン……
俺は、捨て子なんだ。
ヴィシャスが生まれる数年前に、親父……アレス王は、俺を養子として引き取った。
子どもが出来なくて、悩んだ結果だったらしい。
だがめでたいことに、ヴィシャスとノエルが生まれた。
…………
自分の境遇を嘆いたことはない。優しい親父と手のかかる弟に恵まれて、俺は幸せだった。
……ヴィシャスも、知っていたみたいね?
幼いころにな。あいつも、自分で知ったみたいだ。
……どうしてずっと、ノエル君に話さなかったんですか?
必要はないと思っていた。それが、俺の信念だったからだ。
だが、それは間違っていた。……ヴィシャスのいう通りだった。
俺は、兄貴失格だ。
…………
こんな時に、すまないが……少し、時間をくれないか。
弟と……きちんと、話がしたい。
……うん。わかった。
……行ってくる!
<――居住区――>
…………
…………
ねえ、聞いてもいいかしら?
駄目だ。俺は今、機嫌が悪い。
<マグランは、ヴィシャスの隣に座った。>
あなたあなたとお話がした~いの。
俺から何を聞き出すつもりだ。
この女狐が!
鼻血出てるわよ。
これはイチゴジャムだ。
この魔幻獣って、呪文で起動したのよね。
よく知ってるな。……それも論文に書いてあったか?
その呪文、教えてくれない?
断る。アレス一族だけが知る事を許される秘密の言葉だ。
いいじゃない。これ以上秘密にする必要もないでしょ?
……あ。やっぱりあるかも。
<マグリンは、ヴィシャスの腕を取る。>
(む、胸が……!)
ここでのことを……私たち、二人だけの秘密にするのよ。
<そして、耳元で囁いた……>
知ってる? 秘密を共有した男女は、深い仲になることがあるって――
はあっふぅ!
…………
……
<ヴィシャスは、ゆっくりと目を覚ました。>
……んん?
<意識が次第にはっきりとしてくる。>
ささやかれて、はあっふぅってなって、秘密を共有して、それから――
何かを吹きつけられた。
<マグリンの姿はない――>
…………
やってしもた。
***
……ここにいたか。
…………
<ディランは、頭を深く下げた。>
すまなかった。俺が悪かった。この通りだ。
許してくれとは、いわない。言い訳も、するつもりはない。
…………
けど、俺……これからも、お前の側に居たいんだ。
兄だと思ってくれなくてもいい。……一緒にいてくれないか?
…………
……だ、だめかな……
……わがままだね。
す、すまん……
…………
<ノエルが口を開きかけた、その時――>
何だ!?
『フオォォォォォォォン!』
フ……フレスベルグが!
<ほんの少し前――
魔幻獣の頭部……闇の領域に、女は踏み入った。>
<*※●■#▲&十…………>(クラーヴィス テネブラリウス アーラポテンスシュスターレ)
さあ、あなたの力を――<闇>を、解き放つのよ。