【白猫】亡國のツバサ Story0
2018/05/31
story1 王国の危機
――アレス王国――
自然と資源が豊かな、辺境の小国。
大きな動乱や災害もなく、長きにわたり平和が保たれてきた国は、いま――
だ……団長……
おい、死ぬな……! 死ぬなっ!
ど、どうか、生き……て……
突如として出現した、魔獣の侵攻を受けていた。
……くそぉっ!
第三波、来るぞ!
団長! 近衛から報告……! 王宮に魔獣が侵入しました!
なんだと……!?
ここは我らにお任せください! 団長は、陛下を……!
……死ぬなよ?
鷹のように強く、気高くあれ。我らアレス騎士団に負けはない――
そうでしょう?
……ああ!
とはいえ、こりゃあ、きついな……
***
王宮・正門前――
ヴィシャス!
……ディラン。
中の魔獣どもは!?
……数は少ない。近衛が何とかしている。
……問題はこっちだ。
おらぁっ!
……おかしいと思わないか?
ああ。数が異常な上に、やけに統率が取れている。
……恐らく、操っている親玉がいるな。
俺も同じ考えだ。この襲撃には、はっきりとした人の意志を感じる……
……お前の眼で探し出せるか?
さっきから試みているが、見つからない。
!!
……ちくしょおおおおっ!
<アレ>を使うしかないのか……?
…………
ヴィシャス兄!
ノエル、なぜここに……?
……親父の側についていろ、と言ったはずだが。
ディランも、聞いて!
――父さんが、<フレスベルグ>を使うしかない、って……!
ガアアアアアッ!
邪魔っ!
僕も賛成だ。さあ、遺跡へ行こう。
……アレを起こしても、大丈夫なのだろうか?
この状況を変えられるのは、フレスベルグだけだよ……!
ぐわあぁぁぁっ!
…………
わかった。
story2 古代兵器
<アレス王国・立ち入り禁止区域――>
<国土の半分近くを占めるその場所には、巨大な古代遺跡がある。>
……あったぞ。
<それは、うずくまるように眠っていた。>
空飛ぶ古代兵器<フレスベルグ>……
まさか、本当に使うことになるとはね。
こんなデカブツが、本当に飛ぶのか?
……やっぱり、俺は不安だ。
……騎士団は、壊滅状態なんでしょ?
……ああ。
魔獣を止められる戦力は、もう、コイツしかないよ。
父さん……陛下も、同じ考えだ。
……そうか。そうだな。
――やるしか、ないか。
……時間がないぞ
呪文の詠唱は僕がやる。その方が確実だ。
<*※●■#▲&+…………>
<長い眠りから目覚めるように――それは、ゆっくりと身を起こした。
見て、胴体の一部が開いた。あそこから乗り込むみたいだ。……行こう。
***
ひ、広い……!中に居住空間があるなんて!
操縦席はどこだ…… ?
たぶん、上の方だと思う。ついてきて!
…………
うむ、さっぱりわからん。どれをどうしたら飛ぶのだ?
ノエル、わかるか!?
こんな古代文字、見たこともないよ……!
よし、わかった。こういう時は――
とりあえず全部触っとけー!
よし、いいぞ……!
ふむ、操舵輪はこれか。
なにやってんだ! ぶっ壊す気か!?
失敬。
ちょ、ちょっと貸して僕がやってみる!
フォーーーーーーン……
起きあがった!さすがノエル!
遺跡が崩壊するぞ……! 脱出しろ!
そんなこと言われても!
いいから行け!とりあえず……上だっ!
うわあぁぁぁぁ――!
殻を破るように、崩壊する遺跡から<最終兵器>が飛び出す――!
story3 戦の終わり
「……おまえ、寂しいと思ったことはあるか?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、な……」
「オレには、オヤジも弟たちもいる。さびしくなんかないよ。」
「弟は、好きか?」
「うん。ちょっと世話が焼けるけどね。
だから、オレが守ってやんなきゃダメなんだ。」
「頼もしいな……」
「長男だからね――」
***
……う……うぅ……
ディラン! 気がついたか。
…………
な、なんだ……俺は……どうしたんだ?
コイツを起動して、乗り込んで、それから……どうなったんだ?
落ち着け。頭を打って混乱しているんだ。
お、教えてくれ。あのあと、どうなったんだよ……?
…………
おい……なんで黙り込むんだ。
…………
な、何だよ……
落ち着いて、よく聞いてくれ。
そ、そうだ! アレスは無事なのか!?
外がやけに静かだ。……そうか、コイツで魔獣どもを一掃できたんだな!
<ディランはよろよろと立ち上がり、外へ通じる扉を開けた。>
持て――
やったぞ! 俺たちは、この国を守ったんだ――
…………
……間にあわなかった。
武器が、使えなかったんだ。それっぽいものが、どこにもなくて。
島が、魔獣で埋め尽くされていくのが見えた。僕は、どうしていいかわからなくて……
そしたら王宮が火の海に包まれた。僕は、悲しくて、つらくて、操縦できなくて、そしたら――
やめろノエル。もういい。お前は、よくやった。
魔獣どもは……?
引きあげていった。用は済んだということだろう。
……生き残った者は。
俺たちだけだ。
……死んだよ、ディラン。父さんも、死んじゃった……
これからどうする。……アニキ。
わからねえ。
<焼け野原と化した地を、ディランは呆然と眺めた。>
守れなかった……!
story4 空飛ぶ三兄弟
……ふうん。そんなことがあったの。
生き残りはいなかったって、新聞には書いてあったけどね?
別に信じてもらわなくてもいいさ。
……で、どうしてバウンティハンターに?
そこまでは話せないな。
<ウラ>の賞金首ってのは、ヤバいヤツばっかりだよ。その分、賞金は高いけどね。
俺たち、腕は立つぞ。特にコイツはな。
…………
無口ね。
実はそうでもないんだ。ほら、自己紹介。
元アサシンです。なんでも殺ります。
な?
ふーん……
…………(麗しい)
***
この島も、ダメか。
…………
俺たちの国をやったヤツは、相当に用心深いな。
……裏の世界で動いてりゃ、少しは手がかりが得られると思ったんだが。
あるいは、オモテの方なのかもな。
わかっちゃいたが、一筋縄では行かねえよなあ。
だが……絶対に、見つけ出してみせる。
そして、いつか必ず――俺たちの国を、再興するんだ!
……ああ。
ノエル、出発だ!
オッケー。
<>
…………
あーあ、まただ。
締まらないな、ディラン。
があーーー! 動けポンコツーーー!
蹴らないでよ! よけい壊れるだろ!
『蹴れば大体直せる』これ親父の遺言な!
ウソいうなよ!
『蹴れば大体殺せる』これ俺の遺言な。
まだ死んでないだろ!
そうだった。
ええと、まずは飛行ルーチンをリセットして――
あ、昼寝の時間だ。
だまっててよバカ兄!
久しぶりに、兄ちゃんと一緒に寝るか?
寝ない!