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【白猫】帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story

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2017/00/00


目次


帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story


Story01 ブリーフィング

 ミッション開始

Story02 キャリーポップ

Story03 おみ足、そして銃声

狙撃手を追跡せよ

Story04 めぐりあう力

 穴ぐらへ

Story05 ヒントをやろう

Story06 暗号と捨て台詞

 バイトバイパーの拠点へ

Story07 掃き溜め

 古城の秘密

Story08 記憶の澱

Story09 夢見る子どもたち

 兵器の正体

Story10 聖なる傀儡

Story11 沈みゆく希望


主な登場人物




story1



――カテリーナの屋敷


kさて、まずは情報を整理しましょう。

極秘の特務機関である、あたし達<V.0.X>(ヴォックス)の存在が、何者かによってリーグされたわ。

s面白えことをやってくれるよな。

k連邦議会はカンカンよ。だから、認めさせる必要がある。

Eそれが今回の任務なんだよね。

A非人道的兵器の発見、及び首謀者の拘束。

s<革新派>……あんたの弟が裏にいると思うか?

kその可能性は高いわ。

sにしても、姉不孝モンだよなあ。

kちっちゃい時は可愛かったんだけどねえ。

s末の弟もか?

kあの子はずっと可愛くなかったわ。……亡くなるその瞬間までね。

s<嵐の国>の妾が看取ったそうだな?

kあら、どうして知ってるの?

s見ていたからさ。

kはいはい、いつものジョークね。

s…………


k話を進めましょう。アッシュ、兵器について改めて教えてちょうだい。

A製造されているのはここ、<ヴェルガ王国>内のどこかだ。それ以外はー切不明。

k情報源は?

A連邦のとある諜報員、とだけ言っておこう。

sお前の情報網が羨ましいぜ、<掃除屋>。

A接触する手筈は整えてある。

kいいわ。まずはその諜報員と会い、兵器についての詳細な情報を聞き出しなさい。

Eイエスマム!


sつーかバアさんよ。エリスを現場に出すなんて、俺は反対だぜ。

k仕方ないでしょ、人手不足なんだから。

Eサイファーは心配性だね。

kそれにね、この子はあたしの『秘蔵っ子』なの。あんたが思ってる程ヤワじゃないわ。

E初めての任務! ワクワクするなあ~。

sで? バアさんはどうするんだ?

k決まってるわ。<お客さま>をもてなすのよ。さっきから玄関のベルが鳴りまくってるでしょ。

s執事がまた痩せちまうな。

kアッシュ。指揮と同時で悪いけど、護衛の方もよろしくね。剌されたらイヤだもの。

Aイエスマム。俺が守ってやる。

sヒュー。

A諜報員とのランデプーポイントは<ミザリーズ・カフエ>。

手前から三番目、窓際のテーブル席だ。

s<注文>(あいことば)は?

Aコーヒー二つ。砂糖多めでミルクを一滴。


k……エリス。さっきはああ言ったけど、くれぐれも気をつけてね。

Eうん、おば様。あたし、頑張るからね。

kこれ、お守りのアメちゃんよ。道中でなめなさい。

サイファー。……この子を、頼んだわよ。

sしかたねえ。守ってやるよ、お茶くみ。


kさあ、任務開始よ。気張りなさい、あんたたち!

ケツはあたしが持ってあげるから。

s下品なバアさんだ。



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story2



――街の大通り

サイファーとエリスは、諜報員との合流地点であるカフェヘと向かう。


「おいエリス。コソコソ動くな。ガキのごっご遊びじゃねえんだ。」

「どうしようサイファー。諜報活動してるって思ったら、うまく歩けないよ!」

「ったくよ。潜入も戦闘も苦手なお前を現場に出すバアさんが、未だに理解できねえぜ。」

「どんな風に歩けばいい!?」

「普通にしてろ、普通に。」

「……普通って?」

「俺とデートしてる時。」

「したことないよ?」

「今してるだろ。……男女で動く場合に有利なのは、カップルを装えるって事だな。」

「そうなんだ。うんわかった、やってみよう!

えへへ。」

「ナイス笑顔。」

「キャンディなめてもいい?」

「お前、ほんとキャンディ好きだな。」

「三食キャンディでもいけるよ。」

「じゃあ、愛しのスウィートハートに贈りモンだ。」

「任務の途中だよ? おかし屋さんに寄ったりしていいの?」

「まだ時間じゃない。にしても、ヴェルガってのは菓子中毒者の為の国だよなあ。

……おっ、あった。ねーちゃん、これを二つくれ。」


「ほらよ。もう一個は任務が終わったらくれてやる。」

「ありがとうサイファー。面白い形だね。キャンディに棒がついてる。」

「…………」

「どうしたの?」

「いや、ちょっとな。にしてもお前、<キャリーポップ>を知らねーとはな。

イキりたがりのティーンエイジャーには欠かせねぇファッションアイテムだぜ?」

「へえー。キャンディはずっとおば様がくれてたから、わかんなかったよ。……いただきまーす。」

「そろそろ行くぜ。着くまでにそれ食っとけよ。」

「うーん、おいしーなー。手に持ちながらっていうのが新鮮……」

ふと、エリスは思い出したように立ち止まった。

「……?」


「あれ?」

「エリス?」

「あれれ? なんで? どうして?」

「うれしいのはわかるが、泣くほどか?」

「サイファー、違うの。涙が勝手にあふれてくるの。

どうしよう……止まらないや。」

(何だ……?)


「あたしは……悲しんでいる?」



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story3



<ミザリーズ・カフェ>前――


「落ち着いたか?」

「うん……もう大丈夫。」


サイファーは<伝声のルーン>を取り出した。

「カフェ前に到着。これより<名刺交換>を行う。」

”ラージャー。デートは楽しかったか?

「女を泣かせちまった。」

”クソ野郎だな。


その時、二人の横を男が通り過ぎた。そのまま、カフェに入店してゆく。

サイファーが、店内を素早く一望した。


「対象が席についた。……待て。見ろ、エリス。壁際のテーブル席、男女の二人組だ。

「え?? どのふたり??」

「唇の動き、視線、さりげない所作、ネーチャンのキレイなおみ足。ありゃただの客じゃねーぜ。」

「……おみ足は関係ないと思うけど……」

「なになに……? 『追われる身になりたくはないけどね』――だとよ。」

「読唇術だ! サイファーすごい!」


「キャーーーッ!」


”何が起きた。

「報告は後だ!」

「サイファー! あの人!」


 手前から三番目、窓際のテーブル席……

 男が、崩れ落ちた。


「エリス! あの男を頼む!」

「サイファーは!?」

「撃ったヤツを追う!」


「た……助けなきゃ!」

「おい……しっかりしろ!」

いち早く駆け寄った女性が、応急処置を始めた。

「私も手伝います!」

「では、あとを頼めるかね? 私は医者を呼んで――」

――ふと、二人の視線が交わる。

「…………?」

「…………」(この人……普通じゃない)

女性の瞳に、エリスは吸い寄せられる。

(……見える。瞳の奥に宿る、これは……力?とても激しくて、冷たくて、そして……悲しい。

この悲しみを……あたしは知っている気がする)


「……あぁ……」

「しっかり……」

「……ゼラニウムの、花……!」

 それだけを言い残すと、男はそのまま動かなくなった。


「…………」

「ゼラニウムの花、だと?」

「……あの。ちょっといいですか。」

「私も君に質問がある。

――君は何者だ?」


 ***


「さて、面倒な事になった。」

「…………」

(やはり、壁際の席にいた男か)


「男を撃ったヤツを追いたいんだけどな?」

「…………」

「どうやらお前も、目的は同じらしい。」

「貴様、匂うな。」

「マジかよ。傷つくじゃねえか。」

(……能力者ってヤツだな。ますます面倒だぜ)

「ハナが利くんだな。……どっから来た、ワンワン。」

「当ててみろ。」

「味方じゃなさそうだ。」

「グルウゥゥゥゥ……」

「鎖が邪魔だって顔してるぜ。」

「お前を討つのに不都合はない。悪いが、お前を拘束させてもらう。」

「やれるものならやってみろ。」

「ボール遊びがしたいってか? ほらワンワン、とってこい!」

「ガアァァァァッ!」



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story4 めぐりあう力



「……あなたこそ、誰?」

「私はただの客だよ。」

「ウソよ。あなたは普通じゃない。」

「なぜそう思う?」

エリスは女性の手を握った。

「わからない。でも、感じるの。とても深いところで。

――あなたの<力>を。」

「……やめろ。」

 「衛兵さん、こっちです!」

「――私は、拒絶する――」

「あっ……」

意識を失ったエリスを、女性はそっとソファに寝かせた。

「また、会う事になりそうだ。

――私が死んでなければね。」


 ***


「ガァルルゥ……!!」

「……おっと! おあずけだ、ワンワン!」

「ガァッ!」

「クッソ。強えな、お前!」

「――噛みちぎってやる――!」

「骨でも持ってくりゃよかったか?」

「黙れ!」


 (……とはいえ、そろそろお開きだな)


「表が騒がしくなってきやがった。お互い、ここは退いといた方がいいぜ。」

「…………」

「いい子だ、ワンワン。」

「ガアァァァッ!」

「じゃあな。」


 ***



――街外れの路地裏


「平気か、エリス。」

「……大丈夫。ちょっと気を失っていただけ。」

「<04>。諜報員が殺された。」

”何だと?

「それから、敵と交戦した。男女二人組。所属は不明。」

”聞いてるか、00。

”ええ。……とにかく、無事でよかった。

”敵の特徴は?

「頭脳明晰、よく利くハナに超人的な戦闘能力。そこいらの番犬ってワケじゃなさそうだ。」


「……女の人も、普通じゃなかった。特殊な力を持っていたよ。」

”精鋭か。暗殺者と二人組の関係は?

「無いな。ヤツらの目的も俺達と同じだったようだ。」

”マム、どう考える?

”その前に、殺された諜報員について教えてもらえるかしら。

”ヤツはただの末端だ。問題なのはその上。ポリス・シュベルツ。

”ボリス……ブラックレターね。国外協力者、偽装亡命に内乱幇助。……それに、ワスカルート。非合法組織の存在……

……気になるわ。

「???

”何の情報かはともかく、口封じで殺された事だけは確かね。

「革新派の仕業だと思うか?」

”何とも言えないわね。二人組の方が弟の駒って可能性もある。

「もしくは、<帝国>のエージェントとかな。」

”馬鹿な。動き出すには早すぎる。

”他に何か手掛かりは?

「……ゼラニウムの花。男の人が、死ぬ間際にそういったの。」

「兵器の名前か? 04、心当たりは?」

”……いや、無いな。

”あたしもないわね……


「うーん、どうしよっか?」

”04、次の手を考えなさい。

”情報を得られる可能性があるとすれば、殺された諜報員の穴ぐらだろう。

「じゃあ、まずはその穴ぐら探しからだな。

”場所は特定済だ。

「「「さすがだねえ。」」」

”あたしは<お客さま>の応対に戻るから。ああもう、やんなっちゃうわ。

ところで04、さっきから姿が見えないけど、あんた今どこにいるの?

”……マスクのメンテナンスをしている。

”あらそう。じゃ、頼んだわよ。 00アウト。

”経路は追って指示する。――ムーヴ!




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story5



――街の裏通り


「……ねえ、サイファー。二人組のこと、どう思う?」

「俺のカンだが、ありゃ連邦の人間じゃねえな。」

「……あたしが会った女の人。うまく言葉に出来ないんだけど……

……どこか、似てたの。とても深いところに、同じ、何かがあった。」

「共通するもんがあんじゃねえか? 食いモンの好みとか。」

「あの人も、キャンディが好きだったりしてね。」


「目標と思しき建物を発見した。」

”スタンバイ。

「どこからどう見ても、ただの倉庫だね。」

「ソファを置く場所には困らなそうだ。」

”正面からでは目立ち過ぎる。裏口を使え。


「うわあ、真っ暗。」

「人の気配はない。……明かりをつけるぞ。

……あ?」

”すまんな。”


”ヒントをやろう。<笛吹き男>だ。”


 ***


「…………あの野郎、ギッチギチに縛りやがったな。ご丁寧に魔術までかけてやがる。

マム、聞こえるか。」


「聞こえてるよ。マムじゃないけど。」

「今度はどこのお客さんだ?」

「マスクの男とは無関係だよ。」

「見てたのかよ。俺のツレはどこだ?」

「君の縄を切る道具を探しに行った。

……少し、話がしたい。」

「ウイスキーでも振る舞いたいところだな。」

「左腕の中のモノ(・・)は、いつ使うんだい?」

「何のことだ?」

「血の証明だよ。」

「よく知ってるな。」

「壁に耳あり障子に目ありってね。」

「使い道なんてねえよ。使ったって無意味なだけだ。」

「今はね。(・・・)」

「つーかお前、誰だ?」

「貧民街のヒーローの味方。」

「どうして俺に接触した。」

「世の中を面白くしてくれると思ったからさ。

その縄の魔術は、解いておいてあげるよ。」

「やれやれ……」


 ***


「サイファー! 気がついたんだね、よかった……!

まってて! その縄切ってあげるから。」

「俺が気絶した後の事を教えてくれ。」

「アッシュ、ここの書類とか資料とか、まとめて持ってっちゃった。

動いたら殺すっていわれて、何もできなくて……ごめんなさい。」

「気にすんな。……マム、応答してくれ。」

”はいはい、こちら00よ。ああもう、あっちにこっちにと忙しいわね。

「04が裏切った。」

”……何ですって?



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story6 暗号と捨て台詞



――カテリーナの屋敷


サイファーとエリスは、穴ぐらに残っていた数枚の文書を、VOXのアジト――カテリーナ大公の屋敷へと持ち帰った。


k……お疲れさま。

sひでえ目にあったぜ。

kアッシュの件だけど。……何かの間違いよね?

s間違いなら俺をブン殴ったりはしねーよ。

k……あたしは信じないわよ。

s飲まなきゃやってられねーな。

そう言って、懐からウイスキー入りのスキットルを取り出す。

Eサイファー、ダメだよ……

k……いえ、構わないわ。あんた達、少し休みなさい。

sバアさんもな。……働きすぎだぜ。

k……そうね。ありがとう。


 ***


今にも死にそうな少年の顔に、サイファーはマスクをつける。

「これでもう大丈夫だ!」

「……俺、まだ生きてるのか。」

 「みんなー! アッシュ、助かったよー!」

「こんなもの、どこで手に入れたんだよ。」

「ヤミ市場で買った。」

「金持ちからいただいたカネでか?」

「ああ。みんなとおまえが、俺の左腕を買ってくれたときと、おなじだ。」

「じゃあ、おあいこだな。」

 「こまった時はおたがいさまだよ、アッシュ!」

「もちろんだ、――。」


 ***



Eサイファー……

s……あー、また寝ちまった。

E泣いてるよ……?

sお、そうだな。泣いてるな、俺。

E悪い夢でも見ちゃった……?

s……いいや。


 ***


kあんた達が持ち帰ってくれた文書なんだけどね。

暗号化されていた文字列を解析したら、一つの文章になったの。……驚いたわ。

Eなんて書いてあったの?

k『ゼラニウムの花は予定通り、聖マルクト病院へ移送』

Eゼラニウムの花……!

s……聖マルクト病院。あんたの弟が理事長をしていたな。

k病院は一年前に閉鎖されているわ。これがどういう事かわかる?

E病院は秘密の研究所で、兵器はそこに移送された、とか?

k……決まりね。病院に向かってちょうだい。

s持てよ、マム。一つ、言ってねえことがある。

k……?

sアッシュが捨て台詞を残していってな。<笛吹き男>――ヒントだそうだ。

調べてみたらびっくりだぜ。俺達が知らねえ犯罪組織があった。――<パイドパイパー>。危険薬物のシンジケートだ。

k……ミスリードさせるのが狙いかもしれないわ。

sかもしれねえな。ま、答えは決まってるんだが。

行くぜ、エリス。組織の場所はわかってる。


kちょっと待ちなさい。ワナって可能性もあるのよ。確証はあるの?

sねえ。俺のカンだ。ヤツは、そこにいる。

Eおば様。……あたしもサイファーに賛成。

ワナだとしても、アッシュがそこにいるのなら、あたしは行って、説得したい。

kダメよ。危険すぎる。

Eアッシュは大事な仲間なの。絶対に連れ戻すよ。だから、信じて。

kダメったらダメよ。あたしは、あなたまで失いたくないの!

Eいいえ、行きます。誰が何といおうと、行きます。

エリス、どうしたの……? 様子が変よ?

sお茶くみもいいツラ構えになってきたじゃねえか。こいつは連れてくぜ、バアさん。

k待ちなさい。これは命令よ。

sじゃあこれは立派な命令違反だな。帰るまでにギロチンでも何でも用意しとけ。

k…………


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story7 掃き溜め



――街外れ


「ねえ。アッシュのことなんだけど……やっぱり、信じられないよ。」

「ヤツにはヤツの信念ってモンがあるんだろ。」

「……二人は、幼なじみなんだよね?」

「俺もアッシュも、<嵐の国>の貧民街で育った孤児だってのは、前に教えたよな?」

「うん……」

「昔話だ。

ゴミと悪臭しかねえ掃き溜めでな。街も人間も、ドプみてえに淀んでいた。

俺達みたいなガキは、いくらでもいたよ。毎日地べた這いつくばって食いモン探して、必死に生きてた。。

だが、怖いのは飢えて死ぬ事じゃねえ。わけのわかんねえ病気になっちまう事でもねえ。

怖いのは、一人で生きる事だった。」

「…………」

「だから俺達は結束した。一緒なら、飢えも病気も平気だった。」

「みんなで一緒に、支えあったんだね?」

「何もかも分け合った。ダチの為なら盗みだってやった。みんなそうだった。

この左腕の一部は、今でもヤツらの贈り物で出来ている。」

「……そっか。」

「アッシュとはその時からの相棒だったんだ。……それから、もう一人。」

「もう一人?」

「特別、妹みたいに可愛がってたヤツがいてな。名前は……

――名前は、何だ?」

「ええっ。忘れちゃったの?」

「忘れるはずはねえ。忘れちゃいねえんだ。……んだよ、おかしいな……」

「思い出したら、教えてね。」

「……ともかくよ。俺はヤツらと一緒なら、掃き溜めだって構わなかった。

だが、それさえも、ブチ壊された。」

「え……?」

「人さらいだ。アシがつかねえ孤児ってのは、利用価値が高くてな。

みんなさらわれちまった。残ったのは、俺とアッシュだけだ。」

「…………」

「俺達は探し続けている。ダチと、人さらいを。」

「……アッシュは何をするつもりなの?」

「方針を変えた事だけは確かだ。」


 ***


<>拠点――


「廃城を隠れ家にするたあ、粋な連中だな。」

「どうやって潜入する?」

「城ってのは秘密がいっぱいでな?」


 ***


「地下道かあ。さすがサイファーだね。」

「エリス。ここからは別行動だ。」

「いいけど……どうして?」

「ちょっと確かめたいことがある。」

「……? わかった。」

「頃合いを見て連絡する。いいか、絶対に見つかるなよ。」

「大丈夫。かくれんぼじゃ負けなしだから!」


「盗み見とはいい趣味してるじゃねーか。」

「やはり気づくか。」

「お前の気配はすぐにわかるぜ。」

「夢を見て泣くとはな。弱ってるのか?」

「……いたのかよ。かなわねえなあ。」

「マムの分析能力を利用(・・)させてもらった。」

「必要な書類だけを残したわけか。」


「サイファー。俺とともに来い。」

「…………」

「俺達なら兵器を歯獲(ろかく)できる。」

「お前、何考えてんだ。」

「考えなど変わらない。

――俺達は、自由に生きる。」

「アッシュよう。ゴミってのは、マジで難儀だよな。」

「セーフティ解除。」

「ここでやる気か? クズどもが来たらどうすんだ。」

「キルエムオール(皆殺しだ)。」

「言うと思った!」


 ***


「ここ、いかにも怪しい! ようし、さっそく手がかりを――

……だれかいるの?」



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story8 記憶の澱



(子どもの声……どうしてこんな所に?)


「……出ておいで。あたしは味方だよ。」

監房の奥の暗がりから、数人の子どもが姿を現した。

「大丈夫、あたしが今すぐ助けてあげる――」

「エリス?

エリスだよね……!? そうだ、エリスだ!! みんな、エリスが来てくれた!!」

奥から、さらに数人の子どもが鉄格子へと駆け寄ってくる。


「あたしを知ってるの?」

「なにいってんだよ!」

「大きくなっちゃってさ!」

「エリス、とってもキレイ! いいなあ、わたしもはやく大人になりたい!」

「なれるさ! エリスが来てくれたんだもの!」

「あなたたちこそ……なにをいってるの……?」


「どうしたの? エリス。具合でもわるいの?」

「ねえ、サイファーとアッシュは?」

「……え?」

「いっしょなんじゃないの?」

「また、みんなで暮らせるんでしょ?」

「……知らない。あたしは、何も、知らない……!」

胸の奥が、ズキズキと痛み出す。よろよろと。エリスは後ずさった。

「……やめて。」

――記憶の澱が、揺れる。

「あたしを見ないで……!」


「本当の自分を知りたいか?」

声は、背後の監房から響いた。


「再会できて何よりだ。」

「あ、あなたは、カフェにいた……」

「アイシャだ。君はエリスというのだろう?」

「アイシャ、さん……」

「話をしよう。私は<帝国>の人間でね。裏切者を探しにこの国へ来た。」

「……帝国の、ひと……」

「そこでだ、エリス。私に協力してくれないか?」

「協力……?」

「君の<力>を、私に貸して欲しい。」

「あなたは、やっぱり、敵じゃないのね……?」

「今のところはね。」

「わかった。ここから出してあげる……」

「いや、それでは時間がかかりすぎる。

連中の知識欲が満たされれば、私はすぐにでも殺されるだろう。だから――

私を、信用してくれ。」

「あなたを、しんじる……?」

「信頼だよ、エリス。君の力は、そこから始まる。」

「うっ……!」

頭の中に、光が走る。


「……酷だとは思っている。許してくれ。」

「さっきの言葉……ほんとうのあたしって、どういうこと?」

「君は普通ではない。君が私にそう言ったように。」

「……あたしは、ただの、お茶くみだよ……」

「時々、自分が自分でなくなるような感覚に陥る事はないか?

本当の自分はとこか別の場所にいて、目覚めの時を待っているんだ。」

 「エリス、そのお姉さん、とってもいい人なんだ。」

 「お姉さんも、わたしたちと一緒に暮らそうよ。」

「子どもたちも同じだ。彼らは、夢を見ている。」

「う、うぅ……なにが、いいたいの……?」

徐々に鋭くなる。

「私の手を握ってくれ。」

鉄格子越しに、二人の手のひらが、重なりあう。


「思い出せ、エリス。」

「あたしは……この子たちを、知っている?」

 「当たり前だろー。友だちなんだから。」

「あぅぅぅ……頭が……」

「さあ。君の悲しみを、私にも分けてくれ。」

「頭が、いたい――!」


記憶の澱が、花びらのように舞った。



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story9 夢見る子どもたち



「悪い事いわねえから戻って来い。今なら便所掃除で許してやるよ。」

「最高のジョークだ。」

「兵器はここにあるんだな?」

「そのようだ。」

「ようだ?」

「来たのは今日が初めてだからな。」

「さて、どうすっか。」


 「頭が、いたい――!」


「エリス……!?」

「地下か。」

「……イヤな予感がするぜ。」


 ***


「エリス! 無事か!?」

「…………」

エリスは――無人の監房の前で、呆然と立ち尽くしていた。


「…………?」

「おい、何だってんだ――」


「サイファー! アッシュ!」

「…………ウソだ。そんなハズはない。」


「やっぱり、来てくれたんだね!」

「ずっと、会いたかった……!」

「お前ら、どうして……」

「アッシュも、久しぶり!」

「サイファー、大きくなったねえ!」

「でも、アッシュはそこまでじゃないね。」

「「「アハハハハ!」」」


「何だこれは。笑えねえ冗談だ。

ざけんじゃねぇ。あれから何年経ったと思ってやがる……」

「安心して。わたしたちも、すぐに大人になるから!」

「そしたら、みんなでまた暮らせるんだ!」

「何であの時のままでいやがる!」


「……この子たちは、人為的に成長を止められているの。

そして、心はずっと、縛ったまま。飽きることのない夢を見るために。」

「どういう事だよ、エリス。」

「サイファー。アッシュ。……ごめんね。」

「……なに謝ってんだよ……!」

「あたし、ぜんぶ思い出したの。

ぜんぶ、あたしのせいなの。」

エリスの頬を、涙が伝う。……それと、同時だった。

サイファーとアッシュの、偽りの記憶が、剥がれた――


 ***


「くそ……くそおおっ!」

 「――いかなきゃ――」

 「――みんなで――」

「エリス! こいつらになにをした!」

「さあ、いきましょ? もう、苦しまなくてすむのよ。」

 「――ユメが、かなう――」

 「――わたしたちの、ユメが――」

 「――ぬけだすんだ、ここから――」

「ちがう、ちがうっ! おまえらは、操られてんだ!

目を覚ませっ……!」

 「――サイファーとアッシュはこないの?――」

 「――いこうよ、いっしょに――」

「ふたりは、いかないって――」

「やめろ、エリス……ウソだといってくれ……」

「サイファー! このままじゃ、あいつらが……」

 「――こないんだ――」

 「――サイファー、こないんだ――」

 「――ずっといっしょだって、いったのに――」

「やめろ……いくな!」

「「「「――さようなら――」」」」

「いくなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「……ごめんね。」


 ***


「みんなをさらったのは、あたし。」

「……違う。」

「二人はあたしを、妹のようにかわいがってくれた。」

「……そうだ、エリス。お前だ。俺達の妹は、お前なんだよ。

だが、人さらいは、違う!」

「二人は、連れていけなかった。あたしの、たった一回のわがまま。たった一つの、秘密。」

「…………」

「あたしは……化け物なの。」

「違う――!」

「見て、サイファー。あたしたちこそが、<兵器>よ。」



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story10 聖なる傀儡



A……そうか。お前が兵器か。

袖に仕込まれていたナイフが煌めいた。

s……何やってんだ、お前。

A歯獲する。

sこいつは兵器じゃねえ。

Eサイファー。あたしは破壊されるべき存在なの。

s……やめろ。

Aボスの名前を言え、エリス。

Eアッシュ。今すぐあたしを殺して……!

sバカいうんじゃねえ!

Eお願い! そうすればまだ――

Aボスは誰だ、エリスッ!

E殺してぇ――!


「おやめなさい。

子どもたちが怯えているではありませんか。


s研究員にかまってるヒマなんかねえんだよ。

m実に良い素材ですね。そこの子どもたちは。

s……ああ?

m彼らはまさに<虎の子>です。王国を守る剣として、申し分ない。完璧です。

礼を言いましょう。あなたが率いたからこそ、彼らは強くなったのです。

強さ心に強さ肉体。そして何より、決して分かたれる事のない絆。

sダチとエリスに何をした。

m私よりも殿下(・・)に聞いた方が早いでしょう。


「……ああ、もう。やんなっちゃうわね。

予想外のことばかり起きるんだもの。


s……おいバアさん。何であんたがここにいる。

kエリス、こっちへいらっしゃい。

Eアッシュ、お願い……殺して……

A…………!

k言うこと聞かなくなっちゃったから、変だと思ってたのよ。

ダメじゃない。あげたアメちゃんは、ちゃんとなめないと。

s……やめろ、バアさん。それ以上、言うな。

kあんたもあんたよ。おかけでエリスが苦しむハメになったでしょ。

でも、保険を用意しておいて良かったわ。

E……!

<カテリーナがハンドベルを鳴らすと同時に、エリスの目の色が変わった。>


kさあ、エリス。

Eうん。

かはっ


s……全部、あんただったのかよ。

m殿下。少し説明して差し上げたらいかがです?

kこの子どもたちはあたしの兵隊よ。<概念兵>っていうの。今までにない、新しい戦闘マシーンよ。

そしてエリスは、兵隊の司令官。<支配>の概念使いとして作られた。

s概念使い……

kエリスはあたしのお人形。だから心に鍵をかけて、大事に大事に育ててきたの。

<聖王国>の建国には、必要不可欠な存在だからねえ。

s聖王国だと……?

kVOXは、そのための駒。エリスが司令官ならあんた達は指揮官ってとこかしら。

s今回の任務は……全てあんたの筋書きか……!

kあたしの計画を、弟が知っちゃったみたいなのね。だから、正当な理由で死んでもらう必要が出てきたのよ。

s革新派の仕業に見せかけ、俺達に抹殺させる……

kでも、上手くはいかないものね。まさか本当に刺客を放ってくるなんて。

A…………

kエリスを行かせた理由、今ならわかるでしょ?

s俺とアッシュが勘づくのを、恐れた。エリスは枷だったわけだ……

kでもまさか、あんた達がエリスと<虎の子>をまとめあげていたなんて知らなかったわ。これも手痛い誤算ね。

……さて、エリス。二人を<支配>しなさい。

<エリスは、サイファーとアッシュに向かって、その手をゆっくりと伸ばした。>

E……ダメ。きかない。友だちなのに、きかないよ。

m洗脳が解けた時に防壁を張った可能性がありますね。

k仕方ないわねえ。……<拒絶>の概念使いの調整は?

m済んでいますよ。……さあ、こちらへ来なさい。

「…………

アイシャ。あたしとー緒に行こう?

「ああ。

私が守るべきは――エリス。


kさっそくだけど任務よ。連邦議会の議事堂に議員が集まってるの。行って制圧してもらえるかしら?

Eお願い、アイシャ。

「了解。


k大人しいわね、サイファー。観念したのかしら?

sダチとエリスをどうやって助けるか、考えてんだよ。

k相棒のアッシュが裏切った今、あんた一人でどうやって助けるのよ。

sおいねぼすけ、そろそろ起きろ。

A妹のビンタは効くな。


k…………?

Aマム。俺が革命派だと、一言でもいったか?

sこいつは裏切っちゃいねえよ。

k……どういうこと?

Aこの任務が始まる前のことだ。俺は兵器の存在の他に、二つの情報を得ていた。

兵器がバイトバイパーによって製造されている事。そして、聖王家の主流派が関わっているという事だ。

俺は念入りに主流派を内偵した。勿論、マム、あんたも含めてな。

k…………

Aだが、中々尻尾を出さない。だから俺は、仕掛けた。

k……情報をリークしたのは、あんたね?

A任務中に考えられるイレギュラー要素を予想した上で、ワナを仕込むポイントを選択した。――諜報員の穴ぐらだ。

k……ああ、あの文書。あんたが用意したの。

A俺が適当に綴っただけの文字列を、よくもそれらしく解読したものだ。

s天井裏には気をつけた方がいいらしいぜ。

A<ゼラニウムの花>。意味など何も無いのだろう?

k無かったから、持たせてあげようとしたの。

A尻尾は見えた。あとは俺達二人がこの城で、アドリプを利かせ続ければいいという寸法だ。


k00を差し置いて、大した信頼関係じゃないの。

A昔も今も変わらない。俺のリーダーはサイファーだけだ。

s掃き溜めの縁ってヤツはな、そうそう切れるもんじゃねえんだよ。



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story11 沈みゆく希望



s種明かしは終わりだ。エリス、ちょっとばかし眠っててもらうぜ。

Eサイファー。おば様に逆らわないで。

A俺は子どもたちを逃がす。

mどうぞご自由に。

<埋葬者は、監房の鍵を開けた。>

s気前がいいんだな?

mええ。そろそろ(・・・・)ですから。


「やっと出られた!」

「わたしたちも、エリスやサイファーみたいに、大人になれるのね!」

「そうよ。立派な大人になって、一つになる。あの時みたいに。」

「わーい! これからは、ずっと一緒だよ!」

「わたしも、エリスみたいにキレイになれるかな!

そ、そしたらあたし、サイファーと、デート……し……て……」

sお、おい、お前ら…… ?

「あ……あ……あ……」

「「「「ああああああああああっ!」」」」

m時間です。

「痛い痛い痛い痛いいいいい!!」

<子どもたちの体が――変貌する。>

熱い、体が熱いよう! どうして!? なんでえぇぇぇぇ!

<二人は、膝から崩れ落ちた。>

s俺を見ろ。頼む、俺の目を見てくれ……

「たすけて! たすけてサイファー!」

「どうしてなの!? 僕たちは、みんなと……みんなと……!」

Aやめろ……いくな……

握った小さな手が、ギチギチと大きくなる。

一日たりとも忘れる事のなかった友の目が、耳が、口が固く覆われてゆく。

s俺を……見て……くれ……


……やがて、叫び声は聞こえなくなった。


k完璧な仕上がりね……! これが、真の概念兵……! あたしの兵隊……!

Eみんな、よく頑張ったね。

kエリス、識別させなさい。

Eあたしたちの親は、この人。

おば様の命令が、最優先だよ。

kあたし以外は敵とみなして。

『指揮系統確認。敵対者を識別。――待機中――

m……殿下。私をお忘れですよ。

kいいえ、忘れてないわ。エリス、この男を抹殺しなさい。

m……は?

Eさあ、みんな。

<エリスの能力により、すべての概念兵に行動内容が共有され、一瞬にして連携態勢が整う。

『確認。エグベルトを抹殺する。

kありがとう、エグベルト。あたしの兵隊を作ってくれて。でも、もう用はないわ。

mおや……


kさて、次はあんた達よ。

s……アッシュ。


 ***



――街外れの路地裏


 「聞いたか!? 異形の兵士が暴れているらしい!」

 「こ、こっちにも来るかな……?」


「……クソが。」

サイファーはウイスキーをあおる。

「マムは議事堂へ向かったみたいだな。」

「筋書きは何だと思う?」

「開会中の議会を制圧。緊急動議の提出。」

「マッチポンプか?」

「あるいは純粋なクーデターか。」

「…………」

「サイファー。友は、もう元には戻らない。お前も気づいている筈だ。」

「俺には出来ねえ。」

 喧騒を背に、二人はつかの間、沈黙する。

「……掃き溜めだっていい。俺達は、自由に生きるんだ。

俺も、やつらも、その言葉を信じて……お前を信じて、生き抜いた。」

「俺は、どうすればいい。」


「貴様の務めを、果たせ。」

「……ワンワンか。奇遇だな。」

「こいつが例の?」

「務めとは何だ? ダチを殺す事か?」

「そうだ。」

「……やっと、見つかったってのによ。なんで、こうなっちまうんだ。」

「泣き言など聞く気は無い。」

「じゃあ何で会いに来た。」

「気まぐれだ。」

 「…………」

「なあ、ワンワン。お前、ダチはいるか?」

「ああ。」

「仲、いいか?」

「ああ。」

「そうか。そいつはいい。……ちゃんと、守ってやれよ。」

「貴様もな。まだ救うことの出来る友が、いるだろう。」

「…………」

「じゃあな。」

「おい。……お前、名前は?」

「ジュダ。」


「……アッシュ。準備はいいか?」

「命令しろ、サイファー。」


「俺達の妹を、連れて帰るぞ。」




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コメント (帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story)

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