緑玉兵士・思い出
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思い出1
緑玉兵士
はじメましテ、みなさマ。
よろしクでス。
緑の甲冑の人形兵士が一礼する。
キャトラ
よろしく~。ふふぅ~ん、なかなか
礼儀正しいヤツじゃな~い?
緑玉兵士
恐レ入りまス。
粉骨砕身、働きまス。
キャトラ
うんうん、いい心がけだわ~。
マジメじゃないの~。
緑玉兵士
ところデ……あなタ、猫ですよネ?
なぜ会話ガ可能なんでス?
キャトラ
へ? なんで、って言われても……
緑玉兵士
僕、気になルことがあるト、
夜モ眠れナいタチなんでス!
緑玉兵士
発音ハどのようニ?
言語の習得経緯ハ?
あト……
キャトラ
そんなこと聞かれても、
知らないわよぉ~!
思い出2
緑玉兵士
あれハ何でス?
アイリス
あれは、ツグミよ。
渡り鳥の一種ね。
緑玉兵士
渡り鳥といウのハ?
アイリス
時期によって、
暮らす場所を変える習性がある
鳥のことよ。
キャトラ
はぁ~……勉強熱心ねぇ~。
緑玉兵士
はイ。あらユるコトを、
知らねバならなイのでス。
キャトラ
ふぅ~ん。
アタシはそういうのパスだけど~。
キャトラ
はぁ~。日なたが気持ちいい~。
ごろごろ~。
緑玉兵士
あれハ何でス?
アイリス
あれは、ねぼすけキャトラよ。
お日さまに当たるとああなるの。
キャトラ
ツッコむ気も起きなぁ~い……
ごろごろ~。
思い出3
緑玉兵士
ふムふム……まダまダ未知ノ技術ハ
多い、ト……
キャトラ
なんの本~?
緑玉兵士
錬金術ノ本でス・
世の中、不思議ガ多イですネ。
キャトラ
アンタの存在も不思議だけど……
でもホント勉強が好きねぇ。
緑玉兵士
知るコトは、トーっても楽しいデス!
そレに、知識ヲ増やシテいけバ、
いツかきっト……
キャトラ
なにか目標があるの~?
緑玉兵士
そ、そレは……
ヒミツでス!
キャトラ
あらら、走って逃げちゃった……
アイリス
……?
思い出4
緑玉兵士
僕ガ勉強シてる目的を――
僕の夢ヲ、笑わズに
聞イてクれマすカ?
キャトラ
努力してる人を
笑うワケないでしょ~?
離してみなさいって!
緑玉兵士
――僕ハ味モにおいモわかりまセン。
人間ニなれれバ、それガ
わかルかもしれない。
緑玉兵士
より多くノことヲ知るたメ、
人間ニなりたイのデス。
キャトラ
な、なるほどぉ……
って言っても、そんな方法……
緑玉兵士
はイ。
決しテ叶ワぬ夢と知リなガら……
諦めルこトはデきマせン。
アイリス
明日、何が起こるかなんて、
誰にもわからないわ。
アイリス
この世界では、どんな事だって
起こり得る可能性があるはずよ。
キャトラ
そ、そうそう!
諦めちゃだめよ~!?
緑玉兵士
そ、ソうデすヨね――
あリがトうゴざイまス!
思い出5
緑玉兵士
こ、コノ薬ヲ全身に浴びレば――
緑玉兵士が、煮えたぎった
薬液が入った金属のバケツを両手に
抱えて、震えている――
キャトラ
――な、なにコノ臭い!?
ちょっとアンタ、
何してるのよ~っ!?
緑玉兵士
キャ、キャトラさン……!
緑玉兵士
今かラ僕ハ、こノ薬を浴ビて――
人間に生マれ変わルんデす!
緑玉兵士
強力な酸デ全身を溶し、
いクつかノ材料ト混ぜ込メば――
緑玉兵士
ホムンクルスとしテ生まレ変わルと
古イ錬金術の本に
書いテあリまシた!
アイリス
そ、そんな術が成功したなんて話、
聞いたこと無いわ!?
危険よ!
緑玉兵士
危険は百モ承知でス。
デも、少シでモ可能性があルなラ、
――賭けテみタいンでス!!
アイリス
わ、私が無責任な事を言って
してしまったから――
キャトラ
主人公、
お願いよ、説得してぇ!?
思い出6
緑玉兵士
こノ光……とってモ穏ヤかで……
スっごく、キラキラ……
アイリス
本当に、ごめんなさい。
ワタシ、あなたの想いも知らず、
追いつめただけだった――
アイリスは緑玉兵士を見つめ、
彼を強く抱きしめた。
緑玉兵士
アイリスさん。
――イま、感じマシタ。
緑玉兵士
風のニおイ、アナタの手ノ感触、
暖かイ陽の温度ヲ――
キャトラ
ルーンが、奇跡を
くれたんだね――!
緑玉兵士
みナさン、本当に
アりガとウごザいまス。
緑玉兵士
一瞬だったケど、
僕は確かニ大切な事を
知る事がでキましタ。
緑玉兵士
無茶ナ方法で人間に
ナろうナんテ――
間違っテましタ。
キャトラ
ワタシたちこそ、ごめんね……
緑玉兵士
お気にナさラないでクダさい、
アイリスさン、キャトラさン!
緑玉兵士
僕は、世界を知リ尽くしたイ!
大切ナ事を見失ウ所でしタ!
アイリス
――これからも一緒に、
色んな事を学ぼうね?
緑玉兵士
はイ!
こレからモ僕に、
色んナ事を教えテくださイ!