マール・思い出
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思い出1
アイリス
主人公、
最近ついてないね……
キャトラ
そうねぇ、道歩いてたら
犬の……アレ踏むし、
ドブにはまるし突き指するし……
キャトラ
日頃のおこないなのかしらねぇ?
アイリス
主人公は
がんばって島のみんなを
まとめてるじゃない?
キャトラ
うん、でもね。
はじめの努力は慣れに変わって、
ルーチンワークになっていくもの。
アイリス
継続するのも大変なのよ?
あんまり厳しい評価は……
キャトラ
まぁ、そうなんだけどねぇ……
アイリス
危ない!
カルガモの列が
主人公にぶつかる!
マール
ラッキープレゼント!
光が主人公を包む。
カルガモたちはぶつかる寸前、
羽ばたいて飛んでいった。
アイリス
よ、よかった……
キャトラ
うん……ぶつかっても、
なんてことなかっただろうけど……
マール
…………
マール
……どう?
マール
……ハッピー?
マール
そうよね~♪
やっぱり、いいことするのは
気持ちがいいわ~♪
マール
それに飛行島!
こんな高いところを飛ぶなんて!
気分そうか~い!
キャトラ
アンタ翼あるじゃない?
マール
だけど、あんまり遠くへは
飛べないからさ。
マール
これからもよろしくね。
不足の事態にはハッピーあげるよ♪
アイリス
ふふふ、こちらこそ、
あらためてよろしくお願いします。
思い出2
キャトラ
マールはさ、
人にこーうんをあげて、
ラッキーにしちゃえるのよね?
マール
うん、そーだよ。
キャトラ
ちなみに自分は運いいの?
マール
ん~……あんまり考えたこと
なかったなぁ~……
賭け事とかはしたことないし……
マール
それに、一概に運って言うけど、
基本的に、結果っていうのは
努力で変えられるもんだし……
キャトラ
やい、幸運の女神のつかい。
マール
だからあたしが手を貸すのは、
あくまで『努力したのに
報われてない人』なのよ。
キャトラ
そうだったわね、で?
マール
へ?
キャトラ
それはわかったから、
最初の質問よ。
マール自身の運の良さは?
マール
ふつー……くらいじゃない?
わかんないけど。
キャトラ
ガギガギくんって
アイスがあるじゃない?
マール
あ、あのガギガギしてて、
永遠に食べ続けなきゃいけない
おそろしいおかしだよね?
キャトラ
……やはり、
アイリス
永遠に食べ続け……え……?
マール
だって、食べ終わった棒を見せると
また新しいのを渡されるんだもん。
マール
こわいよねー? それに、
どうやって儲かってるんだろ……?
キャトラ
……マール。
キャトラ
アンタ、超運いいよっ!!
マール
え~? ふつ~だよ~?
キャトラ
このぉ……!
うらやましいよぉ、
無限ガギガギくん……!
アイリス
だめだよキャトラ、
食べ過ぎると、
おなかこわしちゃうんだから。
思い出3
マール
う~ん……
キャトラ
どーしたのマール?
夕飯が嫌いなもの
ばっかだったときみたいな
顔してさ?
マール
そーなのよぅ。
アイリス
え?
マール
ガレアに怒られたの。
『生野菜も食べろ!』って……
キャトラ
そーよ。
アイリス
野菜も食べるべきですよ。
マール
やっぱりぃ?
う~ん、野菜そのままって、
苦手なんだよね……
アイリス
どういった点が?
やっぱり青臭さとか?
マール
それもあるんだけど……
一生懸命大きくなったのに、
食べちゃうっていうのがさ……
キャトラ
これ! そんなこといったら、
お肉なんてもっと
食べられなくなるでしょ!
マール
だからあたし、
お肉もあんまり食べないよ。
アイリス
じゃあ、マールさんは
なにを食べてるんですか?
マール
おかし。
キャトラ
こぉ~!
マール
ベジタブル味で野菜とって、
お肉味で肉をとるの。
キャトラ
らぁ~!
さすがのアタシでもそれは怒る!
おかしばっか食べるんじゃないわ!
キャトラ
それにね! 原材料が同じだから、
アンタの罪悪感の解決にも
なってないし!
キャトラ
いろいろ間違ってんのよ!
マール
も~、きーきーうるさいよー。
キャトラ
だれがそうさせてるのよっ!
アイリス
マールさん。おかしというのは、
自分へのごほうびとして、
たまに食べたほうがおいしいですよ?
マール
そっかー……
アイリスの言う通りかも……
……よし。
マール
ラッキープレゼント!
誰にも言ってなかったが、
さっきからかゆかった
背中がおさまった!
マール
よし! いいことした!
自分へのごほうびで
おかしたーべよっと!
キャトラ
こぉらぁー!
そういうことじゃなぁ~い!
思い出4
アイリス
マールさんは、
ガレアさんといつも一緒ですよね。
マール
職務上ね。いまはいないけど。
キャトラ
しょくむ……とはいうけれど。
マール
ん?
努力した人にラッキーをあげる、
そのあたしの仕事がどうかした?
キャトラ
ううん、ただ、
天使になって長いのかなー、
って思って。
マール
そりゃあ長いよ。
だってずっと天使やってるもん。
キャトラ
なんねんくらい?
マール
何年って、それは……
マール
…………
キャトラ
どうしたんですか?
マール
……あれ? おかしいな……?
何年? いつから?
あたし……なんで天使を……?
マール
……ヘンだ。
あたしはずっとガレアと一緒で、
でも、その前は……?
キャトラ
ちょ、ちょっとマール?
マール
ねえねえねえねえ!
おかしいの!
なんかヘンなのよ!
キャトラ
なにがヘンなんですか?
マール
思い出せないの!
あたしはずっとガレアと
一緒だった……でもその前は!?
キャトラ
うまれてなかったんじゃない?
マール
ううん! そんなはずない!
だって、お父さんと
お母さんが……!?
マール
どういうこと!?
それならあたしは一体何者なの!?
アイリス
マールさん、落ち着いて!
マール
ガレアに聞いてみる!
アイリス
マールさん!
……いっちゃった……
キャトラ
これは……
なにか事情がありそうだね……
思い出5
マール
…………
アイリス
……マールさん……
キャトラ
……どうだった?
ガレア、何か教えてくれた……?
マール
……あたし、
元々は人間だったんだって。
アイリス
え……!?
マール
あたしは一度死んだの。
ガレアが殺したんだって。
マール
だけど、ガレアのくれた<幸運>が
あたしを生かしてるんだってさ。
マール
天使なんかじゃなかったんだ。
あたし。
アイリス
……ガレアさんが、
マールさんを……?
キャトラ
そっ、
そんなのなにかのまいちがいよっ!
マール
わかんないじゃない!?
教えてくれなかったけどっ!
アイリス
マールさん……
マール
あたし、自分自身の仇と、
ずっと一緒にいたんだね……
何も知らないでさ……
マール
幸運の女神さまのつかい、
なんて思い込まされてさ……
いいように使われてさ……
アイリス
何か事情があったんです!
ガレアさんは、自分の都合だけで
そんなことする人じゃありません!
マール
それはわかってるけど!
だったらどうして
ずっと隠してたの!?
アイリス
それは……わかりませんけど……
マール
自分の勝手で、あたしを殺して
蘇らせといてさ……!
キャトラ
やむをえなかったんだよ、
きっとじゃないよ、
ぜったいそうだよ!
マール
あたしが怒ってるのは
そこじゃないの!
マール
過去のことは覚えてもいないし
もう変えられないし!
アイリス
…………
マール
あたしは……
話してくれなかったことが……
マール
あたしをパートナーとして、
認めてくれてなかったことが
気に入らないのよっ!
マール
……ガレアがわかんないよ……
あたしそんなに信用できない?
話したら、やめそうに見える?
マール
あたしは確かに半人前だけど……
いままでやってきたんじゃん……
それも思い込みだったの……?
思い出6
――解き放たれたルーンの光が、
すれ違っていた二人を
引き寄せる――
マール
……ガレア……?
どうしてここに……?
ガレア
……俺は、ずっとお前を
だましていた。
マール
……え?
ガレア
<幸運>を与えて回る義務は、
お前にはない。
役目を与え、一緒にいたのは……
ガレア
お前が再び
<不運>な目に合わないよう、
近くにいただけなんだ
マール
…………
ガレア
俺はお前に恨まれても
仕方のないことをした。
許されないことをした。
ガレア
だが……俺の<幸運>を渡したとか
関係なく……
お前の命は……
ガレア
……守りたいんだ。
この身に代えても。
ガレア
こんなこと、なんの償いにも
ならないが……
ガレア
あのとき、
己に課したことだから……
マール
…………
マール
……言ってよ~……
ガレア
……マール……?
マール
ほんとにさ~、なんなの~?
言えばいいじゃん。
言ってくれたらよかったのに~……
マール
大切にされてるのは
わかってたけどさ~、
わかんないよ、言えばいいのに~。
マール
あたしさ~、天使として、
相当ダメダメなの、
自分でもわかっててさ~。
マール
だから騙してるんだと思うじゃん?
言ってよそ~ゆ~、
大事なこと~……
マール
信頼されてないから、
隠しごとされてるんだって、
思うじゃん、そうじゃん~……
マール
言ってよ~……
いまさら、恨むとかないよ~、
ちゃんと言ってくれればさ~……
マール
そんなに信用ない? あたし……
ガレア
泣くな。
マール
泣くでしょ~?
対等だと思ってた同期より、
自分、はるかに子供でさ~……
マール
合わせてもらってた、
保護されてたって、
けっこうショックでしょ~?
プライドもクソもないよ~……
ガレア
……悪かった。
お前の気持ちに
配慮が足りなかった……
ガレア
いままで打ち明けなかったのは、
俺のエゴだった。
……すまない。
マール
ほんとだよ~……
じゃああたし、クビじゃないのね?
ガレア
どこかへ行きたいのなら、
お前の自由だ。
マール
とくに行くとこないよ~。
もうなんか、天使として
落ち着いてきてるもん~……
ガレア
……そうか。
マール
ガレアに認められる
一人前の天使になるまで、
一緒に働く! いい?
ガレア
それなりに厳しいぞ。
失敗すると、かなり……凹む。
覚悟はあるか?
マール
あんたに言われたくないわよー。
ガレア
うっ……!
いや、失敗を繰り返してきた
先輩の言葉としてだな……
キャトラ
今回、アタシたちの
出番はなかったわね。
アイリス
いいんじゃないかしら?
二人が丸くおさまれば……