カグラ・思い出

カグラの思い出とボイス

思い出1

カグラ

アタシはカグラってンだ。

チョイと邪魔するよ。

アイリス

はじめまして、私はアイリス。

主人公と

キャトラです。

キャトラ

よろしくー。

カグラ

ああ、今日から世話ンなるよ。

キャトラ

いなせなおねえちゃんね。

カグラ

この言葉づかいかィ？

マ、育ちのせいかねェ。

カグラ

不幸自慢するわけじゃないケド、

苦労もしてきたからネ。

カグラ

敬語なンかは苦手でサ。

その辺りは勘弁願いたいねェ。

キャトラ

いいよいいよ、

口調のこといいだしたら、

アタシもたいがいだし。

アイリス

カグラさんのほうが、

お年も上みたいですし。

カグラ

そうだネ。

アタシはこないだ、

ウチの島で言うとこの成人してサ。

カグラ

おかげで、

飲みたいモンが、

飲めるようになったのョ。

アイリス

おさけですね？

カグラ

ソ♪

キャトラ

飲み過ぎはダメよ？

カグラ

心配しなさんナ、

酒に呑まれるほど馬鹿じゃないサ。

カグラ

そんな気楽な人生も、

送ってきちゃァいないしねェ……

アイリス

たいへんだったんですね……

カグラ

マ、それなりにネ……

思い出2

キャトラ

ねえねえ、カグラのふるさとって、

どんな島なの？

カグラ

ノンキなとこサ。八割方平和でネ。

ほとんどの住民は、

安穏と泰平の世を貪ってるョ。

キャトラ

いいことじゃないの。

カグラ

光が強いほど、陰も濃くなる……

って言ってもかィ？

アイリス

えっ……？

カグラ

ット、大げさに言い過ぎたかナ。

そこまでじゃないケドさ、

裏の社会もあるってことさネ。

カグラ

お天道サマの下を

堂々とは歩けず、手を汚して

人知れず生きる……

カグラ

そんな生業も、

なくなっちゃァいないってことサ。

キャトラ

なるほどねぇ……

カグラ

……かく言うアタシのオヤジも、

そんな裏の人間だった

らしくてねェ。

キャトラ

……らしい？

カグラ

面と向かって会ったこたないのサ。

このトシになるまで、

タダの一度もネ。

アイリス

カグラさん……

カグラ

……アタシは探してるンだ。

母を捨てて苦労をさせた、

どうしようもない父親をねェ。

アイリス

……会って、どうする気ですか？

カグラ

母の遺言でね。

この『登り鯉の短刀』を

渡すのサ。

キャトラ

それを渡して……その後は？

カグラ

とくにないョ。

キャトラ

……なんかないの？

その……文句を言いたい、

とかでもさ？

カグラ

ないのよねェ。

も、さ。アタシの人生には、

関係ない人だしネ。

カグラ

母のために、届けるだけだョ。

配達と大差ありゃしないサ。

アイリス

それでいいんですか……？

カグラ

いいも悪いもありゃしないョ。

さっさと見つけて用事を済ますサ。

思い出3

カグラ

ふぃー、スッとしたねェ……

アイリス

カグラさん？

どうしたんですか？

カグラ

やっとオヤジを見つけてねェ。

キャトラ

えっ！

おめでとう！

カグラ

ありがト。

アイリス

それで……

さしでがましいようですが、

どうだったんですか……

カグラ

ん、大したこたァないョ。

おーかたの予想通りさネ。

カグラ

『登り鯉の短刀』を渡して、

母の気持ち、最期の言葉を

伝えて……

カグラ

母の墓の場所を教えて、

墓参りに行けって、

言っておいたョ。

キャトラ

……それで、

おとうさんはなんて……？

カグラ

……謝られたねェ。

ただ一度、とても深くネ。

キャトラ

……うん。

……ほかには……？

カグラ

それだけサ。

グジグジ言われるのは

御免だったからネ。

カグラ

伝えることを伝えて、

サッサと退散したのサ。

アイリス

…………

キャトラ

……せっかく会えた

おとうさんなのに、

それでよかったの……？

カグラ

何言ってんだィ。そりゃ、

親には違いないだろけどサ。

カグラ

復讐しようってガキでもなきゃ、

抱き合って泣くほどの情もない。

カグラ

そうだろ？だって、

これまでのアタシの人生に、

無関係だった男なんだ。

カグラ

他人と変わりゃしないさネ。

キャトラ

でも……これまでは

そうだったかもしれないけど、

これからは……

カグラ

……ともかく、これでアタシは

自由に生きられる。

カグラ

さ～て、楽しくなってきたねェ……

アイリス

カグラさん……

思い出4

カグラ

…………

アイリス

カグラさん？

キャトラ

なにをつまんなそーな

カオしてんのよー？

カグラ

……え！？アタシがかィ！？

キャトラ

どうしてそんなに驚くの！？

カグラ

いや……意外だったもんでネ……

ここに来て、用事は済んだし、

心を許せる友も得たし……

カグラ

これまでよりもずっと楽しく

暮らしてるつもり

だったんだけどネェ……？

アイリス

…………

カグラ

……マ、それはともかく。

聞いておくれョ。

カグラ

アタシはガキンときから、

芸術に興味があったんだけどネ。

ずっと縁のない暮らしだったのョ。

カグラ

ところが最近、

画家だっていう子と

親しくなってねェ。

キャトラ

おー、よかったじゃん。

カグラ

あァ。道具を借りてね、

その子にチョクチョク

風景画を習ってるンだ。

キャトラ

カグラはどんな風景を描くの？

カグラ

花が多いネ。

アイリス

へ～、お花ですか！

カグラ

笑わないどくれョ。

アタシは花が、

特に桜が好きでねェ。

キャトラ

いいよねサクラ。

アタシも好きだよ～。

カグラ

でも、見られる時期は、

限られてるからねェ。

キャトラ

そうね。アレって、

散るからこそに美しい……

みたいな面も結構あるし。

カグラ

だからアタシは、

毎年桜の花見を

楽しみにしてるんだョ。

カグラ

してるんだけどサ……

アイリス

カグラさん？

カグラ

……なんだろネ。

なんか、ひっかかってンだ。

カグラ

母の遺言を果たし、

これからは人生を楽しんで

いいはずなんだケド……

カグラ

なんか浮かなくてネ。

カグラ

こんな気持ちじゃ、

楽しい花見になりゃしないねェ。

どうしたもんかなァ……

思い出5

カグラ

…………

キャトラ

どーしたのよカグラ？

こないだよりも

難しい顔してるよ？

カグラ

……アタシ、

自由になったはずなんだョ。

カグラ

以前から、贔屓にしてた

歌舞伎役者と

知り合ってさ。

カグラ

意気投合して、

酒を酌み交わしたりなんて、

幸運にも恵まれてサ。

カグラ

画家の友達とも、

だいぶ親しくなったり

してるんだけど……

キャトラ

うん。

カグラ

……どうも、

そういうのとは別なトコで、

気が晴れなくてねェ……

カグラ

胸のどこかに、

しこりが残ってる

感じがしてんだョ……

アイリス

…………

カグラ

なんなンだろうねェ……

アタシとしたことが、

こんなこた初めてだョ……

アイリス

……カグラさんは、

そのモヤモヤの原因、本当は

気づいてるんじゃないですか？

カグラ

……え？

アイリス

いままで自分でしっかり生きてきた

カグラさんですもの。

アイリス

目を背けたいから、

見えないフリを

してるだけじゃないですか……？

カグラ

言ってくれるねェ。

アイリス

すいません、

他人の私が

言えることじゃないですけど……

カグラ

……こういうこと、

外からの方が、

よく見えるもンなのかねェ。

カグラ

主人公。

アンタにも見えてンのかィ……

カグラ

こんなこと言えた義理じゃァ

ないかもしれないケド……

カグラ

ポンっと背中、

押しちゃもらえないかねェ……

思い出6

カグラ

この光……

滝みたいに、

とめどなく降ってくる……

カグラ

…………

アイリス

カグラさん？

カグラ

……なるほどねェ。

鯉の娘は、鯉なのかも

しれないねェ……

キャトラ

？？？どゆこと？

カグラ

あァ、いまの言葉にゃ

別段深い意味は

ないけどネ。

カグラ

無関係を決め込むってのも、

意固地な話だったんだろうねェ。

アイリス

ということは……

カグラ

アタシがモヤモヤしてたのは、

察しの通り、オヤジのことだ。

カグラ

初めて会ったときは、

正直言って、一言でも多く

口利きたくはなかったけど。

カグラ

むしろそれが半端だったネ。

そのことが気になって、

ずるずる引きずってちゃァ、

本末転倒もイイトコだ。

キャトラ

じゃあ、もう一度会うのね？

おとうさんと。

カグラ

そうしようかねェ。

アイリス

今度はゆっくり

話せるといいですね。

カグラ

マ……突然ウマくは

行くとも思っちゃ

いないけどサ……

カグラ

そうだねェ……桜の席にでも、

誘ってみるかなァ……

カグラ

そしたら多少の気まずさも、

花びらが薄めて

くれるかもしれないしネ。

キャトラ

気まずくなるの前提で

考えてないで、

話題を用意しときなさいよ。

カグラ

多少は持ってくサ。

でも、過度な期待を

しないどいてくれョ。

カグラ

二十数年、すれ違ってたんだ。

話に詰まることだって……

カグラ

そうだ！アンタたちも、

同席しておくれョ！

キャトラ

えぇっ！？

それアリ！？

カグラ

アリもアリ、おおアリさ。

頼むョ、人助けだと思ってサ。

アイリス

では……

お邪魔にならなければ。

恩に着るョ！

キャトラ

アタシたちはお酒飲めないからね。

カグラ

酒なんかなくたって、

桜を愛でるこたァ出来るだろ？

キャトラ

せっかくのお花見だし、

わいわい盛り上げてあげましょ！

アイリス

もう……カグラさんにとっては

大事な時間なんだから、

あんまり騒ぎ過ぎちゃダメよ？

カグラ

ハハ、そんなに

気をつかうこたないョ。

好きにやるといいサ。

カグラ

……アタシら親子のことは、

長い目で見てておくれョ。

カグラ

少しずつでも、

打ち解けていけるよう、

がんばるからサ……

カグラ

お互い目を背けず、

ちゃんと向き合ってネ……

ボイス

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