【非人類学園】精衛（セイエイ）のデータ

天高、非人類都市南西部に位置する私立貴族学校である。

「弱肉強食」を尊び、「優勝劣敗」、「戦闘奨励」で名高い。

入学には、お金も能力も不可欠である。もちろん、一番大事なのはお金だ。

家族はすでに没落したが、知り合いの推薦で入学した。

「没落貴族」、強調したいのは「没落」だ。

没落、イコール貧乏だ。

貧乏は嫌だ。生活に保障がないからだけでなく、体面のある生活を送りたいからだ。そのためにアクセク働きながらも、巨額の支出に押しつぶされそうになる。

他人に頼りたくないし、生活の質も下げたくない。

それで死に物狂いでアルバイトするしかないのだ。

でも誰にもばれないようにするわ。人前じゃまだ高貴なお嬢様だから。

住宅区からも天高からも離れた日人類都市の郊外。詳しく調査したら、この辺に住んでいる同級生はいない。

基本情報を確認して、数日間観察した上で、この辺は「アルバイト安全区」と判定した。

社会で認められる高校生のできるバイトは：大手チェーン店、ボランティア、幼児期教育学校...この中で人との交流が一番少なく、申請しやすいのはーチェーン店だ。

近郊のチェーン店の中で保障があって時給が高いのは

ーFFC・近郊支店だ。

FFCは時給制のファストフードチェーン店。非人類都市の郊外にある低価格帯の店、天高の人はここに来る訳がない。「安全で最適なバイト場」No1だ。少し抵抗があるが、ここよりいい選択はない。

電話番号は...x364-114514-xxx。

「もしもし、FFC近郊支店ですか。アルバイトしたいんですが！」

生活の試練は出身にかかわらず与えられるものだ。

一族の未来のために、躊躇わずにやるのみ！

土曜の昼、FFC近郊付近、精衛の初出勤。

「いらっしゃいませ～」と精衛は磨き上げたビジネス愛想笑いを浮かべる。

初めてのお客は...

同じクラスの金角。その次に来たのは双子の弟の銀角。

ウソ？！どうしてお坊っちゃんがこんなところに！

いい...いいんだ！念のため、変装したのだから！この派手な眼鏡をかけているとばれるはずないし！髪型も変えたし！

精衛が笑顔を作るのに必死だった。

「すみません、定食A二つください！」

金角が精衛に手を伸ばして指でVを作って見せた。

ウェー・ト・レス...

精衛の表情が崩れそうになる。心の準備はしていたけれど、やはりむかつく。

「なあ？銀、このお嬢さんに見覚えがあると思わない？」

ウェートレス×２。

「クラスのあの鳥に似てるね、機嫌悪そうな様子だけど...確か精衛って？」

金角が「鳥類は皆、気が荒いものなのか？大鵬もなかなかの癇癪持ちだよね。」

とざっくばらんに銀角に言った。

精衛は怒りを抑えて聞こえなかったことにした。

銀角は金角の話を聞いて精衛に目を向ける。視線で目の前の少女と記憶にある「精衛」のイメージを照合する。

精衛はゾクッとしたのを感じた。

銀角は彼女の身元を暴こうとしない。確認が終わると、何気なさそうに振り向いた。

「似ていない。」銀角が断言する。

「あ、そうだよな。精衛のようなお嬢様がバイトなんて有り得ないよな～」

金角も納得した。

「こちらが注文カードです。お客様二人はしばらくお待ちください。品ができたらすぐにテーブルにお持ちします～」

精衛がほっとして改めてサービス精神を整理した。

「はい、ウェートレスさん」

金角は清々しい笑みを浮かべた。

ウェートレス×３

精衛はストローを握り潰した。必ず対価を払ってもらう。

金持ちめ。

休みの日、一日バイトして疲れた精衛が家に入ると一通の手紙が目に入った。

見事にデザインされた封筒、穏やかで上品な紙には祥雲の印が付いて、清香な木の匂いがしていた。

精衛が手紙を開いて見ると、土地からのダンスパーティーの招待状だった。

「九月八日、清風暁月盧で個人ダンスパーティーを行う予定です。ぜひ精衛さんも出席していただきたく存じます。注意：招待客の方々は礼服で出席してくださいますようお願い申し上げます。」

ダンスパーティーは貴族に好かれる活動であり、家族同士で懇親を深めるという機能がある。もちろんそれは表向きの理由で、実際の目的は出席者の家族の情報を手に入れることだ。

これが形式主義というヤツだ。

精衛はこのような社交活動が嫌いで、成金である土地も好きではなかったが。土地はマナー通り彼女を誘ったため彼女は一応満足した。

「こいつはクサいヤツだけど、礼儀のある人だね。」

彼のメンツを立てるために、参加しよう。

だが招待状の「礼服で出席」の数文字は精衛を驚かせた。

まだバイトしていなかった頃、精衛は自分の礼服を質に入れた。

ダンスパーティーまで後二週間、連勤で稼いだ金と今までの貯金で礼服を一つ買い戻せるだろう...。

朝は新聞配達、放課後にファミレスでバイト、夜は工芸品を手作り...二週間苦労した結果、精衛はやっと自分の一番好きな赤い礼服を買い戻すことができた。

「貴族精神とは、金がある時に優雅を忘れず、もし貧乏になっても目標を実現するまで諦めないで努力しつづけることだね。」

精衛は鏡を前に試着してみた。

腰周りで咲いた絹ビロードは繊細で可愛く、真紅のリボンと精衛の純潔さは互いに引き立てあった。

良いことづくめであったが...

「え！？なんでこんなにブカブカなの！？」

精衛は腰の部分の布を握りながら

「質に入れた時はちょうど良かったのに...」

残念だが毎日苦労しながらバイトした精衛は痩せてしまい、ピッタリだった礼服は大きくなってしまった。

結局翌日、調子が悪いという理由で精衛は土地のダンスパーティーを欠席した。