【恋と深空】宝探しの島

空中庭園、断崖のブランコ･･････この庭を設計した人は、いいセンスをしている。

ブランコには保護柵がないから、危険だけどロマンチックではあるよね。

一緒に乗ってみるかい？

足が地面につかない感覚が怖くなくなったの？

断崖の下は海だからね。落ちた場合、別の方法で海に帰ったと思えばいい。

これは飛び込み台じゃなくて、ブランコだよ。それに、誰かに見られたら驚かせちゃうじゃない。

心配いらないさ。僕は水しぶきを上げずに着水できるから、誰にも気付かれない。

飛び込む時、断崖の下に洞窟が見えるかも･･････

洞窟には宝箱が隠されているっていう伝説がいくつかあるよ。

宝箱の中身は武術の秘伝書？それとも海賊の秘宝？

人間世界のルールに基づくと･･････

この高さから飛び込んで貰えるのは、金メダルかな。

見て。この木の下に何かを燃やした痕跡があるよ。

もしかして、EVERの人が残したもの？

ここに完全に燃やされていないページがある。EVERのものじゃなくて、日記みたいだ。

どうして戻したの？

燃やしたってことは、きっと僕達に見られたくないだろうからね。

陸上の人は見られたくないものを燃やすことができるけど、海ではどうするの？

まずはサンゴの茂みを探す。それから悲しみを綴った海草を通りすがりの魚に食べてもらうんだ。

じゃあ、悲しみをいっぱい食べないといけない魚は大変なんじゃない？

だから、定期的に喜びを綴った海草もあげるのさ。

それなら魚達といい関係性を保てそうだね。

ウォーターバレエを見せてくれるから･･････確かに関係性は良好かな。

魚とだけじゃなくて、鳥とも仲良しでしょ？カモメ達に合唱してもらえるんだし。

言われてみれば、あのカモメ達を訓練して、鳥の見回りをお願いするのもいいかもね？

どうしてこの橋の下に手がかりがあるって思ったんだろう･･････

何も見つけられなかったわけじゃないよ。

例えば、このアーチ橋を飾っている帯状のライト、片側だけまだ光っているでしょ。

それが何の証明になるの？

もう片側のライトが壊れていることを証明できる。

･･････

そんなにプンプン怒らないでよ。

使える手がかりを絶対見つけるんだから！

一応見つけたものはあるよ。使えるかどうかはわからないけど、知りたい？

もちろん。

ホムラ*1、ほら、一緒にしゃがんで。

この角度から水面を見るんだ。水に映っているライトの光と橋の影を繋げると･･････

三日月だ。

今、僕達は月の腕に抱かれている。

手を貸してーーほら、月から大きなホムラをすくい上げたよ。

この岩穴は普通じゃないね。

美しくないし危険でもない。ただの普通の岩穴にしか見えないけど。

「岩穴の徘徊者」の伝説を聞いたことあるかい？

複数人で未知の岩穴に入ると、最後尾を歩いていた人は永遠に深い穴の中に留まることになるという。

じゃあ、もし私達が前後を交替しながら進んだら、岩穴はどっちを引き留めるの？

たぶん、目を回しちゃうんじゃない？

怒って二人とも引き留めたりして！

そうかもね。手を繋いで肩を並べて歩いた方が安全そうだ。

そうすれば、岩穴はどっちを引き留めればいいかわからなくなるかな？

そうすれば、たとえ岩穴に選ばれても二人で永遠に引き留められることになる。

私達、入り口でずっとお喋りしてるけど、岩穴に言葉が理解できたらどう思ってるだろうね？

「この狡猾な二人は、私を利用してずっと一緒にいようとしている。思い通りにはさせんぞ！」かな。

この船、いい位置にあるね。

確かに趣がある･･････じゃなくて、私達は手がかりを探しに来たんだよ。

この船を移動させるのかい？この調和を壊したくないんだけど。

安心して、移動させなくて大丈夫。

ちょっと確認すれば、問題があるかどうかはわかるから。

でもこの構図、何かが足りない気が･･････

ん？触ったら変な音がしたよ？

･･････船が割れた！

気をつけて。

構図の調和が崩れちゃかも･･････どうしよう？

そんなことないさ。砂浜に乗る慌てた足跡が余白を埋め、割れた船体が躍動感を増し･･････

さっきより完璧になった。

でも、足跡は波に消されちゃったよ。

そうだねーーだから今の景色を見られたのは、僕達だけだ。

くしゅん！ランプシェードの上、ホコリまみれだね。

君の顔もホコリまみれになっているよ。じっとして、拭いてあげる。

この灯台は古いから、電機は通っていない。オイルランプで明かりをともすんだ。

ここは個人が所有している島だからね。近くに航路もないし、この灯台も打ち捨てられてたんだろう。

残念だね･･････

見たい？明かりをともせそうだよ。

ともしたところで、それを待ってる船がないでしょ。

もうすぐ満潮の時間だ。海面の下には、光を求めてやって来る命がたくさんいるよ。

ただ遠くから眺めるだけ？

うん、それで十分だ。

じゃあ、潮が満ちるまでここで待つの？

これをともすのに必要なのはオイルだけだ。僕達は必要ない。ひとまず、もう一度庭を回ってみない？

庭に手がかりがあるの？

はあ･･････誰かさんは人の気持ちがわからない灯台みたいだね。