白猫温泉物語2 Story2
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2017/00/00 |
目次
サクランボ温泉
てんてこクッキング
主な登場人物
story1
「さあ、着いたわよフレイヤ。」
「それには語弊があります。ここまで運んだのは私です。」
「……ねえ、もしかして怒ってる?」
「怒ってはいません。あなたと共に旅をするのは楽しいですから。
ただ……限度というものがあるでしょう。」
「ご、ごめんね。楽しくてつい、あちこち飛び回って……
サクランボあげるから、許してくれる?」
「冗談ですよ。そもそも、この島を探していたのは私のためなのでしょう?」
「……うん。ファブニールとの戦いで、フレイヤにはずいぶん負担をかけちゃったから。
だからアオイの島の温泉で、疲れを癒やしてもらおうと……」
「温泉なら私たちの島にもあるというのに……
しかし、シエラの気持ちは大事にしましょう。」
「……ありがとう。
それにしても人が多いわね……」
「人間にはあまり関わりたくないのですが……」
「おかしいわね。静かに過ごせるって聞いてたのに……」
「私はそこの岩場にいますから。」
「そんな、待ってフレイ――」
「ねえねえ見た? サクランボの温泉だって。」
「買い物終わったら、行ってみっか。」
「…………」
「フレイヤ?」
「サクランボの温泉。……少し、興味があります。」
「そ、そう。それはよかったわ。」
それじゃ、その温泉に入りにいこっか。」
「その前にシエラ、あなたの服装はここでは目立ち過ぎます。」
「目立つって……この服はフレイヤの魔力で作られてるんだけど?」
「ですので、作り変えましょう。」
「これは……カタナ?」
「この国に合わせてみました。これで多少は目立たないでしょう。
それに私もこの姿になれば……」
フレイヤは己の体を縮小し、シエラの手のひらに乗った。
「そういえばあなた、体の大きさを変えられるんだったわね。久しぶりに見たわ、それ。」
「変える理由がありませんでしたからね。
では、参りましょう。」
***
「この匂い……本当にサクランボね。」
「シエラも湯船に浸かったらどうです。」
「うん。でもその前に、体を流さないと。えっと風呂桶は……
あ、あった。なにこれ、可愛いデザインね……」
「早く来なさい。」
「おっ待たせ~。」
「飛び込まないでください。……そういうところは、いつまで経っても子供ですね。」
「……泳いでいい?」
「ダメです。一緒に入るたびに聞きますね、それ。」
「泳ぐと気持ちいいじゃない。」
「あがる時は10数えるのですよ。」
「はーい。」
story2
「あ~、さっぱりした。」
「用が済んだので帰りましょう。」
「そんなこと言わずに、もっとゆっくりしてこうよ。」
***
「ここはなんでしょう?」
「人がいっぱい……みんな料理を持ってるわね。
……お腹すいてきたし、私も並ぼうかな。」
「フードのセルフサービス。ベリーナイスね。」
「Oh……フードたくさん。迷うね。」
「レタスにカボチャでしょ。それにアボカドにルッコラ……それから……」
「シエラ、それ以上はお皿に乗り切りませんよ。」
「Oh~、べジタボー。ミーもレッツ・イート……」
「ガブる!!!」
「きゃっ!? 私の野菜が……」
「ぐぎぎ……前かけが喉をじめる……でも、ガブるー!!!!」
<一瞬にして色とりどりの料理が、ガブリーの胃袋に吸い込まれていった。
「…………」
「いったいなにが起こったの……料理はどこ?」
「余の飯はまだか?」
「やいやい! サラダがねえと兄ぃの栄養が偏るだろうがァッ!」
「は、はい! ただいま準備を! オリバーくん、出番だよ!」
「これから休憩時間なんで無理っすよ。」
「おい! 誰か料理を作れるやつはいないか! 人手不足で困っている!」
「……なんだか大変そうね。
ちょっと手伝ってあげようかしら。」
***
「美味ぇ~、なんだこの汁。母の味ってやつか。」
「お嬢ちゃん、おかわり。」
「すいません。お一人様、一杯でお願いします。」
<鍋に入ったスープをかき混ぜるシエラの前には、長蛇の列ができていた。
「じゅるり……やっと順番がまわってきたわね。」
「あ、キャトラ。こんなところで奇遇ね。」
「ねえシエラ、この料理はなんなの? 野菜がいっぱいだけど……」
「これは<イモ煮>よ。故郷の名物料理なの。」
「ヘー、農家の娘ってのは畑仕事だけでなく料理も上手なのね。」
「だって育てた野菜たちを、最高の状態で食べてあげないと申し訳ないじゃない。」
まあでも、褒められるベきは私じゃなくて、この島の野菜よ。」
「は~、農家の鑑ね。」
「お野菜きらい……デザートがたべたい。」
「こら。なんてことを……」
「ふふ、それならこの杏仁豆腐をどうぞ。」
「わ~、このうえに乗ってるサクランボ、宝石みたい……」
「それはうちの畑でとれた<スキルニシキ>よ。味は一級品なんだから。」
「ふるさと、真心、これぞワビサビね……」
「え? ど、どうも……」
story3
「「「は~、ドッコイショ~ドッコイショ~♪」」」
浴衣姿の女性たちが縦長の板を左右に回転させ、温泉を波立たせている。
「これはなんの儀式でしょう?」
「こちらは<湯もみ>の体験コーナーです。」
「へえ、面白そう。ちょっとやってみようかしら。」
「では、この板を持っていただいて、私とその子の間に立ってください。」
「あ、うん。この板、結構重いわね……」
「準備はよろしいですね。では、私たちの動きを真似てみてください。」
「アオイよいと~こ~、いちど~は~おいで~、は~ドッコイショ。」
「えっと、こんな感じで板を左右に動かせばいいのね。」
「あら、筋がいいわね。さては、なにかやってたね。」
「畑仕事を少々。」
「は~ドッコイショ。」
「ほら、お嬢さん。手だけじゃなくて、一緒に歌わないと。」
「う、歌……えっと……
ハァ~、ヤッショーマカショ♪」
「ど、独創的な歌だね。でも歌は合わせてちょうだいね。」
「は~チョイナ、チョイナ♪」
「チョイナ、チョイナ♪」
「デッコ、デッコ!」
「デッコ、デッコ♪」
「ボッコ、ボッコ!」
「ボッコ、ボッコ♪
……なんだか変わったリズムね。」
ゆえに楽に長けた者を観光客の中からスカウトしてきたのだ!
「ソイヤ、ソイヤ!!」
「ソイヤ、ソイヤ!!」
「ソイヤ、ソイヤ!!」
「ソイヤ、ソイヤ!!」
「祭りだ、祭りだ~!」
「「「…………」」」
「……あら? いつの間にか終わってる……というか、誰もいない……
でも、楽しかったわ。ほどよく汗もかいたし、またお風呂に入ろうかしら。」
「…………」
「だ、誰……?」
「あなたの歌声、とてもキュート。」
「ど、どうも……」
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