【白猫】シエラ(温泉)・思い出
![]() | ||
シエラ・スキルニルグ CV:雨宮天 相棒フレイヤと共に旅する農家の少女。 手作りの郷土料理は絶品。 |
白猫温泉物語2
思い出1
アオイの島での騒動から、少しだけ後――
飛行島はいまだ、アオイの島に停泊していた。
フレイヤは体の大きさを自由に変えられるからね。
アオイの島に来たのは、フレイヤにも羽を伸ばしてほしかったからっていうのもあるんだけど……
どこも予想以上に人が多いのよ。
サクランボが食べられれば、私は充分です。
旅館でのんびりしたり、好きなだけ温泉に入ったり……
私はもっとフレイヤと、アオイの島を楽しみたいわ。
温泉街の喧騒も、ここまでは届きませんから。では。
思い出2
シエラは読んでいた温泉街の案内カタログをそっと閉じた……
(……やっぱりないよね。都合よく貸切できる温泉宿なんて……)
(もしあったところで、お金が足りないだろうし……)
フレイヤさんにもアオイの島を楽しんでもらえる手がかりが、見つかればと思って……
……でも、料理が得意っていってもしょせん素人だし……
美味しい野菜を、もっと美味しく食べたかったから勉強しただけよ。
……そうね。やる前から諦めたらなんにもならないよね。
広い世界を見て回る……そんな私の願いが叶ったのは、フレイヤのおかげだもの。
私はフレイヤに恩返しがしたい。
よしっ……フレイヤに内緒で優勝して、あとでびっくりさせるんだから!
思い出3
「お待たせいたしました。参加者のみな様は、調理場にお集まりください。」
<広場に設置された仮設調理場に、多くの参加者たちが集結した!?
「本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。
私の店で振る舞う料理に新たなメニューを取り入れるべく、今コンテストを開催する運びとなりました。
みな様のお力をぜひともお貸しください。」
(ライバルの人がたくさん……! 負けられないわ)
「予選のテーマは……『汁物』!
私自ら食した後に選考を行い、選ばれた方のみ決勝へ進んでいただきます。
多くの方々にご協力いただき、様々な食材を揃えました。各自、自由に選んでください。――では、予選開始です!!」
<そうして参加者たちは、各々の食材を選び調理に移るが――>
(これは鮮度がいまいち……こっちは発育が悪いわ。
……納得のいく食材が、なかなか見つからないわね)
「おめ、うちの野菜はどうだべ?」
「大切に育てられたネギね。ハリツヤがあって色の境目も綺麗。泥付きだからみずみずしいわ。」
「んだ、俺の育てた自慢の野菜だ。たらふく食ってがんばってくれぇ。」
「私が食べたら意味ないんだけど……でも、ありがとう。ぜひ使わせてもらうわ♪」
「ご一緒にお米はいかがですか~?」
「テーマは汁物だから、とりあえずいいかな。」
「なんの、米味噌もありますので! 絶品ですよ~♪」
「すごく上品な香り……♪」
「ついでに新鮮な魚もどうだい? さっき獲れたばかりだよ。」
「瞳が透き通ってる……身もしっかり弾力があるわ!」
<最高の食材をそろえたシエラは、手際よく調理を進めていく。>
「これでよし、と。……うん、味付けも完璧。
……いけるかも!」
「変わった料理ですね、それ。」
「『どんがら汁』よ。魚の身と内臓を煮込んで、お味噌とネギを加えた田舎の郷土料理なの。
そういうあなたの料理も、面白いわ。」
「フフ……これは『だご汁』です。私の故郷の料理ですよ。」
「いろんな野菜にお団子に……具だくさんで美味しそう……」
「筋肉ムキムキの人の野菜が、まさしく一級品でした。おかげでいい出来になりましたよ。」
「うちのネギもあの人のよ♪ うちの農家で作ってる野菜にももしかしたら負けないかも……」
「あら、うちの実家も農家なんです!」
「あなたも!? 奇遇ね♪ 私、シエラっていうの。」
「あ、申し遅れました。ミチカと申します。」
「ライバル同士だけど、お互いにがんばりましょうね。」
「同じ農家出身として、負けませんよ!」
思い出4
「俺の料理は『トムヤムクン』だ! いっけえええええ!!」
「辛ッ!? 次!」
「お肉たっぷりの『シチュー』よ! 自分で作って、自分で食べる!」
「私の分は? 次!」
「カラダ ハジケテ ポップコーン!」
「テーマは汁物です。次!」
「これは……?」
「『どんがら汁』よ。田舎の郷土料理なの。」
「なるほど、味噌汁に魚とは珍しい取り合わせですが……
――これは、美味い。魚の身の旨みと上品な味噌の香りが実に合う。
クセの強いキモの風味を、ネギのさわやかな甘みが支えています。」
「岩のりがあると、本当はもっと美味しいんだけど……」
「次は私の番ですね。私の料理はこれです。」
「これまた、ずいぶんと具だくさんな……」
「『だご汁』です。どうぞご賞味ください。」
「では……。――ッ! これは美味い!!
一見、雑多に放り込まれているすべての食材の風味が、シンプルながら奥行きのある上品なダシの香りによって完ッ璧に調和しています!
これは……文句なしの決勝進出です!」
「即決……!? ……すごい。」
<その後も審査は進み――すべての予選通過者が出揃った。
決勝に歩を進めたのは、ごくわずかのみ。そしてその中には――>
「お互い勝ち残れてよかったですね、シエラさん。」
「ええ。……あなた、すごい人だったのね。」
「これでも一応、本職の料理人ですから。まだまだ未熟ですが。
実家の野菜を広めるために、世界中を飛び回りながら修行してるんです。」
「……世界を……」
「では、また後ほど。決勝でもよろしくお願いしますね。」
(……でも勝てるのかな、私に)
思い出5
<観衆が見守るなか、決勝戦が始まった。>
m「…………
(さっきは気付かなかったけど、すごい技術……それに あんな調理法、見たこともない!
経験も実力も、差は歴然。普通に立ち向かっても、きっと勝ち目はない……
どうしよう……)
(大丈夫……私だって、フレイヤと一緒にいろいろな場所を旅してきた。
そのとき食べたもの、覚えたこと、感じたこと……
思い出して、ひとつひとつ実践してみよう。
今までの私で敵わないのなら、新しいことを試さないと……!)
***
「…………」
(――駄目。全然うまくいかない……やっぱり付け焼き刃じゃ……
どうしよう。このままじゃ……勝てない!)
「……シエラさん?」
……シエラはあんな所で、何をしているのですか?
思い出6 (友情覚醒)
優勝賞品は――温泉宿の貸切権。まったく、あの子は……
アイリス。私の声に合わせて口を動かしなさい。
(時間だけがどんどん過ぎていく……このままじゃ……)
「あなたの料理は、育てた野菜を美味しく食べるためのものでしょう?」
<人垣から響いた声に、シエラはあわてて顔を上げた。>
「……フレイヤ。」
「それになにより――あなたが育てたサクランボは、この私さえも虜にしました。
大丈夫。自分の舌を信じなさい。」
「……うん。そうだったね、フレイヤ。
――私は、私が美味しいと感じる料理を全力で作ればいい!
***
「今日はありがとうございました。
「こちらこそありがとう。それと……優勝おめでとう、ミチカ。
「ありがとうございます。シエラさんの腕前も、本当に素晴らしかったです。
「作り慣れた得意料理だったから。……負けちゃったけどね。」
「またやりましょう。……あ、決勝と予選で作ったやつ、レシピを教えてくれませんか?」
「お安い御用よ。そのかわり、あなたの方もね♪」
***
――と、そうだ。これ、受け取ってください。
――代わりにこれ。実家で作ってるサクランボよ。
友達の分なんだけど、……少しだけ、おすそ分け。
***
たまには一緒のお布団に潜って、夜更かしして、お喋りしましょう?
それと一応、礼を。ありがとう、シエラ。
こちらこそ、いつもありがとう。
これからもよろしくね……フレイヤ♪
揺るぎなき純白の親愛 シエラ・スキルニルグ
その他
白猫温泉物語2 | ||||
---|---|---|---|---|
シエラ | ルウシェ | ルミエ | トワ |