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ソウルオブナイツ Story4

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ストーリーまとめ

ソウルオブナイツ Story




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 カレン  

私はもう甘えない――誰にも甘えない。


 止まらない血。失われる体温。少女は泣き叫びながら、助けを呼ぶ。

 少女は、横たわる女性の、体にすがりついた。

 女性の胸には、醜い矢が突き剌さっていた――


 カレン  

私が甘えたから――だからあの人は――



 ***



 カレン  

(あの人は――死んだ。)


 ミューレア 

どうしたの? カレン?


 カレン  

少し、考え事をしていました。


 聖地ディルムン、バシレウス要塞――

 姉妹がいるのは、かつて難攻不落をうたわれながら、いまや征討軍が支配下に置く巨大要塞である。


 ミューレア 

何を考えていたのかしら。


 カレン  

自分のいたらなさを、ずっと考えていました。


 ミューレア 

自分を責めてはダメよ、カレン……今は貴方のできることをなさい。


 カレン  

はい――お姉様。

(私も――お姉様のような、強さが欲しい――)



 ***


 聖地ディルムン東岸、ヴォルム島。

 平和な時代は帝国からの巡礼者でにぎわう島であった。


 ヴォルム島に到着した氷の国の軍勢2000は、帝国軍の指揮下に加わっていた。

 終わらぬ冬と共に生きた、氷の国の民の想いを――

 ソフィの手には、青く美しいルーンがあった――


 ソフィ  

凍て星のルーン>よ! 今こそ極光の輝きに満ちよ!


 グレイスルーン。

 ルーンの中でも大きな力をもち、島の環境や文化に影響を与えるほどの力をもつもののことである。

 氷の国のグレイスルーンは、<永久凍土のルーン>。

 全てを凍らせる恐るべき力をもったルーンであり、国家の象徴。

 <凍て星のルーン>は、<永久凍土のルーン>が産んだ分身であった。


おお――!?


 ヴォルム島に迫った征討軍艦艇は、一瞬で凍りついた!


 ソフィ  

これが、氷の国の――報復です。


敵の揚陸部隊が、凍った海を渡ってきますぞ!


 ソフィ  

この島を、守り抜きます!

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 帝国軍守備隊と、ソフィ含む氷の国の軍勢は、征討軍の揚陸部隊を撃破した。


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バシレウス要塞を奪還すれば、聖地での戦いは振り出しに戻ります。

ソフィ様……どうかお力を。


 ソフィ  

我らは同盟軍として、帝国軍の指揮下に入ります。

帝国には、極光の加護があるでしょう。


おお……


 ソフィ  

というわけで、皆様には我が国の銘菓、エドむらさきをおもちしました!


……あ、ありがとうございます!?


 ソフィ  

新発売のチョコ味です!


ええと……!?


 ソフィ  

出撃まで、お茶の時間になさいませんか?


残念ながら、あまり時間は――


 ソフィ  

そうですね。ふふふ……

皆様、どうぞよろしくお願いいたします。



 ***



 カレン  

…………


 カレンは、要塞の堅牢さに、息を呑んだ。

 一見古風な城塞のようであるが、数十万のルーンによる防護は鉄壁の一言である。


 カレン  

……この要塞がたった一日で落ちるなんて……


 ミューレア 

絶対に落ちない。そんな要塞はありません。


 カレン  

お姉様の計略が優れていたからでしょう。


 ミューレア 

征討軍の正義がゆるぎないものだからこそ、得られた勝利です。


 カレン  

(でも……いったいどうやって?)


 ミューレア 

カレン、要塞の調査は進んでいますか?


 カレン  

はい。しかし……あの島――<エキドナ島>で発見されたような実験の証拠はまだ見つかってません。


 ミューレア 

よく調べなさい。場合によっては、非情な手段をとる必要もあるかもしれません。


 カレン  

はい……!

(そうだ、これは戦争だ……!)

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 リアム率いる傭兵団、チェインド・ウイング・ナイツは、征討軍が占領した街に紛れこんでいた。


 チャック 

騎士王カイデン……とんでもねー奴でしたね。


 リアム  

あいつよりすげえ男を知ってるだろ、チャック?


 チャック 

(うわぁ……)


 リアム  

に、しても……要塞をみすみす敵に渡すたぁ、帝国の奴らたるんでるな。


 チャック 

なんか噂じゃあ、要塞の中にバケモノが入り込んだらしいっすよ。


 リアム  

バケモノだって……? まさかアイツか!?


 チャック 

シンザン・ゼラーグ………! リアル伝説っすね!


 リアム  

俺がリアルじゃねーみたいだろ!


 チャック 

そ、そんなこといってねーっす!


 リアム  

アイツなら……あんな要塞、一日でぶっ壊せるかもな。面白くなってきた。


 チャック 

アニキ……そのシンザンって御仁、恩人なんでしょ?


 リアム  

ああそうだ。アイツが俺を鎖の島の教団から救ってくれなきゃ、今の俺はいねぇ。

でもな……だからこそだ! 恩人だからこそ、この俺が――超えてやるんだよ!


 チャック 

あ、そういう熱いヤツっすか。


 リアム  

まってやがれ伝説!

この俺が、真の伝説になってやるぜ!



 チャック 

な……


 リアム  

見られてた――な。


 リアムは、空の彼方を見上げた。


敵の傭兵部隊を発見!


 チャック 

あ、アニキ! 見つかっちまった!?


 リアム  

面白れぇ――


 リアムは、髪をかき上げた!


 リアム  

黒き鎖に繋がれし、運命の翼――

チェインド・ウイング・ナイツ!!

――待たせたな!! 俺たちだ!


撃てぇ!


 チャック 

アニキあいつら聞いてません!


 リアム  

チャ~ック~。なんだって?


 チャック 

だーから!


 リアム  

くたばれ!! ヘルブレイザー!!


 リアムは凄まじいソウルを征討軍にむけて叩きつけた!


 チャック 

何いきなり必殺技ぁ!!


神気――ぐああああ!!


 リアム  

俺たちがいまいちマイナーな理由、わかったぜ。

ま~よ、どんな奴らも一撃でぶち殺してちゃなぁ~そりゃマイナーだよな!

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#h

 リアム  


 リアムは、鎧の背面についた翼状のパーツを展開した。

 騎士の背に、翼が広がる。その様はまるで――


 リアム  

一秒だ――


 翼に仕込まれたルーンが発動し、推進力を生み出す!


なんて無茶苦茶なやつだー!!


 リアム  

叩き潰す!


 チャック 

ひー!! 俺たち基本的に大工なのに!


 リアム  

それをいうな。



 チャック 

な、なんですあれ!?


 リアム  

さっき見てたやつだなー

チッ、シンザンの奴はどこだ!?


グウルルル……!!


 リアム  

知ってるぜ。お前のその目つき。

>を振りかざす連中特有の眼つきだ……

手前の絶対優位を確信している。常に上から見おろしてる。そういう連中だ。


狩ル……!!


 チャック 

アニキー!!


 異形の獣は、稲妻の速さで飛来し、リアムに渾身の一撃を叩きつけた――!!


グルオオオオ!!


 リアム  

――それで終わりか?


 リアムは、跳躍した!!上空で、翼状のパーツが開く!


 リアム  

喰らいやがれ!! アンチェイン・ウイング!!


グヴォアアアア!!


 リアムの<>は、異形の首を叩き切った!!


 リアム  

こいつもくれてやるぜ!!


 ソウルを込めた一撃が、獣の体を両断する!


 チャック 

やった!! さすがアニキ!


 崩れ落ちた獣は……炎を上げて燃え尽きた!


 リアム  

……手ごたえが無い……こいつは……!?

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 ソフィ率いる一隊は――地下通路を進んでいた。


 ソフィ  

急ぎましょう――


 ここは、バシレウス要塞へ続く秘密搬入路の一つである。

 この場所から要塞内部への侵入が可能なはずであった。


しかし、敵はどうやって要塞を?


 ソフィ  

暁の賢者――あの方の知恵かもしれませんね。


ミューレア・ガランド様ですね。


 古代魔術の世界的権威。最高位の白魔術士――白き法に仕える大司祭。


 ソフィ  

そして――インヘルミナ様の、従妹にあたる方――

(ミューレア様のお父上は――現女王たるインヘルミナ様と王位を争ったとか……)


 ノストラード大公。ガランド王家先王の弟である。

 国土を二分する争いを目前に、大公はインヘルミナに恭順。

 大公の娘であるミューレアは、インヘルミナと争わないという姿勢を示すため。白の法院に預けられた。


 ソフィ  

賢者にふさわしき学識と、その徳により称えられる、ミューレア様が、なぜ――


 言葉とはうらはらに。ソフィは感じていた。

 暁の賢者の目に――何か、不吉なものを――


ソフィ様……!


 兵士は、己の手にした<直感のルーン>が反応を示したことを告げた。


凍て星のルーン>!


グォォォウ!!



 襲来した影に。ソフィは冷気を放つ!


ファアアアハハハア!!


 異形の影の体は、半ば――凍りついていた。

 にもかかわらず――影は物ともしない!


狩ラセテモラウゾォ!



 ソフィ  

氷の国の……


 ソフィは、己の体を抱きしめた――


 ソフィ  

誇りに懸けて!

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侵入されたぞ! 追え!!


 ソフィ  

要塞の中に入ったようですね。

この機に乗じて、バシレウス要塞の奪還を――


ハアハハハハハア!!

ヨウコソワガ城ニィ!!


 ソフィ  

あなたのものではありません!


ゴ覧アレ……姫様!


これは――!!


 ソフィ  

そんな……!


 それは、幾百もの屍で作られたオブジェであった――

 征討軍は捕虜をとらない。その噂は真実のようだった。


オ前ノ国ノ民モ……全テコウナル……!!


 ソフィ  

嫌……そんな……嫌っ……!!


ソフィ様をお守りしろ!


……ナゼ……なぜこうなるか、わかりますか? ソフィ様。


 ソフィ  

えっ……?


 怪物の声は……突然、人間らしいそれになった!


 ソフィ  

あなた方に逆らったから、ですか?


ちがあうううう!!

己の国の民を助けに来る……だとおぅ!?


そんなそんなそんな王族がぁ!!

そぉんな王族がいていいはあああずがねぇえ!!


だからあ!! お前は許さん!!

最高の屈辱と共に、最悪の死をくれてやる!


 ソフィ  

わかりました――


 ソフィは、涙をぬぐった……


腕と足をいただきます。お覚悟ください……姫様……!

すぐには、すぐには殺しません。

氷の国>の民全員を拷問してブチ殺し、最後に後を追わせてやる!


 異形はーソフィに飛びかかり、その爪を振り下ろす――


ぬうう!?


 だが怪物の爪はーソフィの肌に触れるや、凍りついた!


 ソフィ  

この凍て星のルーンの力は、永久凍土のルーンと同じ――

あらゆる運動を停止させ、あらゆるものを崩壊させます――!


……ぐるおおっ!?


 凍りついた怪物の腕は、ごとりと落ち――地面にぶつかって砕け散った!


 ソフィ  

あなたは何者です。どうして征討軍に――!


ククク……

ハアアッハッハッハアアアアア!!


 怪物は氷の彫像となり、砕け散った!


 ソフィ  

私の想像が正しいなら――この怪物は――


退魔士の皆さんや――


力を与えられたお二人が戦った――あの島で作られたもの!

だとしたら、この戦争は!

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 カレンは、白魔術士の一隊を率いながら、バシレウス要塞の調査を行っていた。

 だが、あの島で行われていた実験のさらなる証拠は、見つからなかった。


 カレン  

……帝国側の捕虜は全て地下に収容しているとのことだが。

尋問をするしかないか――


あのような実験を行った者たちとわかってはいるが――それでも気おくれは覚えるものだ。

これも甘えというものか。


カレン様、いかがされますか?


 カレン  

一旦持ち場に戻れ。私は資料の再調査を行う。



…………

……



 カレン  

ココアでも飲みたい……いや、それは甘えだ!


 カレンは仕事に没頭する。


 カレン  

ファフナー。あの資料の<写し>が見たい。



 忽然と現れた黒い騎士は、カレンに紙の束を手渡す。

 それはソウルによってつくられた、本物そっくりの幻である。


 カレン  

フム……


 この黒騎士ファフナーは、カレンが召喚した<精霊>である。

 精霊とは自然界のソウルの結晶。なんらかの概念の象徴である。

 精霊は、ごくまれに気に入った人間と契約し、力を貸すのだ。


 カレン  

おや、この数式は?


 ファフナーが操る概念は<>。いわば<>の精霊である。

 ファフナーは目で見た物を<記憶>し、自在にコピーを作り出せる。


 カレン  

……ふむ、このグラフもなんだかおかしいな……


 カレンは、ノートに数式を書き写してみる。


 カレン  

なんだこれは。この数式は間違っている……というか、まったく無意味だ。

この資料の写真も妙だ――これはよくある植物の細胞の写真じゃないか。


 ファフナーが。ココアを持ってきた。


 カレン  

ありがとう……頼んだか?


 ファフナー 

…………


気を使ったのか……すまない。知らずと甘えていたようだな。


 ファフナー 

…………


 カレン  

いただくとも……しかしこれは一体……?


 ***



 気づけば、かなりの時間が経過していた――


 カレン  

何だこれは――!!

資料はすべて――デタラメだ!


帝国軍のまぜたフェイク――いや……本当にそうか?

まさか――それならば、私が見た物は――!


フーゴ殿は……そういえば、お姉様と一緒にいたはず――

……ファフナー、フーゴ殿を見張ってくれ――

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 ほんのわずかな気おくれから、カレンは己の使役する精霊のことを姉に話していなかった。

 白魔術の使い手であるカレンが、<>の精霊を選んだその理由――

 それは、幼いカレンが遭遇した事件に関係している。


 カレン  

セリア様……


 セリア・バルト。幼いカレンが、ただ一人甘えられた女性。

 だがセリアは殺された――何者かによって。


 影を生み出し、影を操るその能力。

 カレンは事件の真相を探るため、この精霊と契約したのだ。


 カレン  

だがそれは執着だ。甘えだ――


 その甘えを――姉には知られたくなかった。

 誰にも甘えず――全てが完璧だった姉には――


 カレン  

戻ったか、ファフナー。


 ファフナー 

…………!


 ファフナーは、己が見たものを、幻影として投射した――


 カレン  

……これは……これは!

この男は、一体……何者だ!?



 ***




 ミューレア 

ネズミが入ったわ。ゼノ……早く片付けて。


 フーゴ  

あの王女と傭兵、駒の候補じゃなかったのか?


 ミューレア 

あなたの影に殺されるようじゃ、英雄とはよべないわ。


 フーゴ  

おお、怖い怖い……


 ミューレア 

>は、九人の<英雄>を選ぶ。誰でもいいわけじゃないの。


 フーゴ  

俺たち九人が英雄ってことで、いいんじゃねぇのか?


 ミューレア 

選ぶのは<大いなる獣>よ。


 フーゴ  

面倒なもんだなあ。魔術ってのはよう……


 ミューレア 

帝国と連邦を、まとめて滅ぼすのよ。面倒にもなるわ。


 フーゴ  

ククク……いいねぇ。あんたのその顔……

いつものとりすました顔より、ずっといいぜ……


 カレン  

(――お姉様――そんな――)


 カレンは見ていたーファフナーか作った本棚の幻に隠れながら……


 ミューレア 

じゃあ私は、儀式に戻るわね。


 フーゴ  

ひひ、じゃあ俺は……本格的に王女様と遊んでやるとするかね……!



 ***



 フーゴ  

さて、と……



 フーゴの体はふくれあがり、巨大な異形と化した!そして――!


 フーゴの影から現れたそれは、巨大な翼をはためかせる!


 フーゴ  

さあ行きな、<>――


 カレン  

フーゴ・ワーラー、お前は何者だ。


 フーゴ  

これはこれは、カレン様。


 カレン  

お姉様と何を企んでいるのか、詳しく聞かせてもらうそ。


 フーゴ  

カレン様……あんた……面白いねぇ。


 カレン  

何っ!?


 フーゴ  

あんたら姉妹は実にいい……

俺を楽しませてくれるからな!


 異形の魔獣は、カレンに無慈悲な爪を振るった!!


がああっ!!



 フーゴ  

生きていたら俺好みの独裁者になっていたかもしれんな~。

実に惜しいが、ここで死んどけ!

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 カレンは、岩を背にしてうずくまった。


 カレン  

――飛行能力に加え、圧倒的な火力と耐久力――

フーゴはあの影を……いくつ生み出せる。


 カレンの手は血に染まっている。魔法で傷はふさいだが、その分ソウルを失った。


 カレン  

なんとしてもここを離脱する。そして真実を伝える――

馬鹿げた戦を終わらせるために!


 カレンは立ち上がった――



 ***



 バシレウス要塞での戦いは続いていた。

 要塞の中枢を取り返したことにより、戦況は帝国側に優勢となる。



姫様、少々お休みください。


 ソフィ  

私は平気です。砲撃陣地の奪還に参りませんと。


 <凍て星のルーン>は強大ながら、ファルク家の血筋の女性にしか扱えない。


 ソフィ  

しっかり……しませんとね!


 ソフィ率いる一隊は、砲撃陣地を目指して眼前に広がる森林へと突入する――



 ***



 カレンは馬を駆っていた。目的地は帝国軍の砲撃陣地である。


 カレン  

(あそこには飛行艇の発着場があったはすだ。

 一隻奪い、冬の国に飛ぶ。お姉様――あなたは――)


 姉に抱いていたのは、憧れ、思慕、そして――

 恐怖……あの方は私にとって――


 カレンは上空に気配を感じ、馬の脚を速めた――

 異形の放った魔力の弾丸が、地面を穿った!



 ***



 森の中を行軍していた帝国軍は、激しい戦いの痕跡に目を奪われる。


 カレン  

うう……こんなところで……死ぬものか――!



 ソフィ  

しっかりしてください。いま治療を――


 カレン  

あなたは――<氷の国>の、ソフィ王女――!


 ソフィ  

ガランド家の方ですね。


 カレン  

ノストラード大公が次女、カレン・ガランドと申します。


 ソフィ  

顔をお上げください。


 カレン  

王女に、申し上げたき儀がございます。どうか、お聞き入れください。


 ソフィ  

いかなる儀でありましょう。


 フーゴ  

うるさい女は嫌いなんだよなぁ~。


 上空から飛来した異形が、カレンにつかみかかった!


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 ソフィ  

カレン様!


 フーゴ  

おやぁ……!?


 フーゴが変じた異形は、血しぶきをあげる己の腕を見つめた。


 ソフィ  

ご無事ですか、カレン様。


 カレン  

ご心配なく!



 チャック 

アニキ、オレっちの鼻も、ちょっとしたもんでしょ?


 リアム  

さすかだぜ。まあお前への分け前、9割鼻に払ってるようなもんだからなぁ。


 チャック 

10割と思ってたッス。


 リアム  

フン、よくよくお姫様と縁があるらしいな、この俺は。


 フーゴ  

ガキがあああ!!


 リアム  

わかるか三下?俺は忙しいんだ。だからよ……一撃で終わらせる!

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 フーゴ  

なるほどなあ~くけけ、なかなか面白いぜ~お前ら。

もっと俺を楽しませてくれよ!


 リアム  

うるせえ!!


――もう一体――!?


 カレン  

行け、ファフナー……!


 カレンは已の黒騎士を、その<気配>の影に忍ばせる。


 リアム  

伝説の一撃たぜ!


 リアムは、フーゴの体を一刀両断した――!


 ソフィ  

どうして征討軍が、このような怪物を――


 カレン  

お話しましょう。全てを。


 ***


 話を終えたカレンは、その場に崩れ落ちた――


 ソフィ  

カレン様!


 カレン  

私はどうなっても構わない。

この戦を――終わらせてくれ。


 リアム  

意地はってんじゃねーよ、<お姫様>。


 ソフィ  

連邦の方々を説得するためにも、カレン様がいてくれなくては。


 リアム  

ソウルが減って力が出なくなってるだけだ。飯食っとけ。


 カレン  

――心遣い、感謝する。


 リアム  

さてお姫様たち、どうすんだ、これから?


 カレン  

王女、進言いたします。


 ソフィ  

カレン様、お気遺いなく。

どうかソフィとお呼びください。


 カレン  

私は捕虜です。本来ならば王女様に口を聞くなどありえません。


 リアム  

めんどくせえ!!

全員呼び捨てでいいだろ。


 カレン  

なれば無礼は後でまとめて詫びさせていただきましょう。


 リアム  

で、なんだよカレン。


 カレン  

フーゴ・ワーラー。あの男を捕える。そして連邦粛会で全てを明らかにする。


 リアム  

OK。シンプルでわかりやすい。


 ソフィ  

本体がどこかにいるのですね。


 カレン  

今、私の手の者が追っています。


 フーゴは一人、ほくそ笑んでいた。



 フーゴ  

フン……とれもなかなかいい素材じゃないか。

ヨーゼフの奴が見たら、舌なめずりをしていたところか。


 フーゴ・ワークー。この男のことを、知る者は少ない――

 本当の<年齢>も――。


 フーゴ  

俺のこの<技術>が役立つのは、全てが終わった後か……


 フーゴは己の古傷を抑えた。


 フーゴ  

……わずかな心残りとしては、あの兎の生皮をひんむいてやれなかったことか。

まあいい。誠実に生きてると、運命がプレゼントをくれる。そんなもんだからな。



 ***



 カレン  

どうぞチャック様。こちらは『たぬきのたまご』です。


 チャック 

もぐもぐ……うまいっすねーこれ!


 リアム  

なるほど、本体は砲撃陣地に撤退しているって?


 カレン  

ああ、そうだ。我が騎士の目は確かだ。


 ソフィ  

もともと私たちは、陣地の攻略を意図していましたので、好都合ですね。


 リアム  

いいね。気持ちが落ち着いてきた。やることが決まるってのはいいな。


 カレン  

チェインド・ウイング・ナイツ。

その名前、覚えておこう。


 チャック 

へぇ。姫様におあつらえのバンカーでも塹壕でも、すぐにご用意しますんで。


 リアム  

俺たちは大工じゃねぇっての!

まー確かにそういう仕事も多いが!


 ソフィ  

傭兵のお仕事、大変なんですね。


 リアム  

儲からねぇしな。

期待してるぜ。お姫様達。


 カレン  

報酬は弾むぞ。


 リアム  

何だ。お姫様のキスとか?


 チャック 

ワオ。


 カレン  

私は姫ではない。騎土だ。

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 一行は魔人フーゴを追って、砲撃陣地に入った。


撃て!! <>を逃がすな!


 リアム  

あんな腐ったケチャップと一緒にしないでくんねーか?


 カレン  

道を開けてもらうぞ!!


 ソフィ  

失礼します!


 リアム  

今気づいたんだが……こういう状況を専門用語でなんていうか知ってるか?


 ソフィ  

なんでしょう?


 リアム  

罠、もしくはピンチだな。


 カレン  

誘い込まれたのか――!


 リアム  

エンターテインメントって奴だな。


 カレン  

敵にこちらの位置が……?

……まさか!


 リアム  

おっと、心あたりがあるって顔だ。

はい、そういう時はどうする?


 ファフナーが空中に文字を書いた!


 リアム  

上出来だ。


 三人は無言で顔を見合わせ、それそれ別の方向に走る!

 そんな三人を――異形の影が見おろしていた。



 ***



 ミューレア 

あら、気づいたのね。カレン。賢い友達ができたのかしら?

――あなたと違って、ね。


 ミューレアは、カレンのブローチに仕込んだルーンの反応を追い、位置を割り出していた。


 ミューレア 

でも残念――気づくのか少し、遅かったわね――


 フーゴ  

くひひひ。さあ、教えてやるぜ! この体の性能をな!


 ***



 リアム  

フン。そろそろお出ましか?


グルルルッ……


 リアム  

噂をすれば影、だな。


 異形の影は、リアムに襲いかかる!


 リアム  

今のてめえはまさに犬ってか。

ご主人様の命令はどんなだ?


グルルウ……!


 リアム  

ま、どんな命令だろうが、ワンちゃん、お前にゃ実行は不可能ってやつだぜ!


 ***


 グォォォォウ!!


 ソフィ  

極光の輝きを!


グォルル……!!

クヒッ……その手は食わんよ!


 この異形もフーゴの影――だがフーゴは、己の意識を、影に潜り込ませる。

 フーゴは魔法弾を発射しながら、間合いをつめていく!



 ***



 カレン  

(お姉様――)


 カレンは、拳を握りしめる。

 確証はあった。姉はきっと――妹のことなど、気にもとめていない。


 カレン  

そこに……つけこませてもらう!

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 カレンは一人、砲撃陣地を走る!


 フーゴ  

楽しかったぜ、おじょうちゃん!


 異形はその牙を、カレンヘと突き立てる!

 カレンの姿は、ファフナーに変身した!?


 フーゴ  

はあ!? 俺の十八番を!?


 ファフナーの手には、カレンのブローチがある!



 ***



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 ミューレア 

ふふ……そういうこと?


 カレン  

お姉様!!


 フーゴ  

へぇ、よく正解がわかったな?


 チャック 

お、お姫様?

すっごくやばい感じっす!


 カレン  

どういうおつもりなのです、お姉様。真意をお聞かせください。


 ミューレア 

それを知ってどうするのかしら。本当に貴方は馬鹿なのね。


 カレン  

帝国と連邦を滅ぼすなど――戯れでも□にしていいことでは!


 ミューレア 

だって、退屈なんですもの。


 カレン  

――退屈――?


 ミューレア 

私は生まれたときから、頂点に立っていた。

それがどれだけ、退屈なことかわかる?


 カレン  

貴方は――!!


 フーゴ  

わかったかお姫様?こいつは昔からこうでね――

この世全てに退屈しているのさ。


 カレン  

だから――だから全てを壊すと!

そんなことはさせない!


 ミューレア 

一人で何かできると思ったの?


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 ソフィ  

カレン様一人ではありません!


 リアム  

そういうこった。フーゴ……に、暁の賢者様?


 リアムの手には。『たぬきのたまご』の包み紙がある!


 チャック 

目印にこいつを捨てながら、ここまで来たんすよ!


 フーゴ  

ミューレア、こいつらは……俺が遊んでやるぜ。


 ミューレア 

お言葉に甘えておくわ。カレン……生きていたら、大神殿で会いましょう。


 カレン  

お姉様!!


 ミューレアは、古代魔術を行使する。暁の賢者の体はふわりと舞い上がり、空の彼方に消えた。


 フーゴ  

おっとお~ここからは俺の番だ。

さあ~どうするう~?

せいぜいあがいてくれよなあ~!

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 基地の奥に逃げ込んだフ-ゴを追って、騎士たちは走る!


 チャック 

アニキ~!!

待ってくださいよ~!!


 リアム  

お前はバーガーを食いすぎなんだよ!

いつもいつも!


 チャック 

だってあの匂い……最高じゃないっすか。

って、アレアレ?


 カレン  

どうしたのだチャック殿。


 チャック 

なんかあのバケモンども、匂いが同じなんすよ。


 ソフィ  

……このパターン、授業で習いました!


 カレン  

私も想像がついたぞ。


 リアム  

俺もわかったからな!


 チャック 

ほんとっすか!?

ほんとにほんとっすか!


 リアム  

これはあの……あれだろ?

ほら、あれ。


 カレン  

今まで戦ったフーゴは、全てフェイクだな。


 リアム  

そう、それだ!


 チャック 

アニキはパワータイプなんすよ。

考えちゃだめなんすよ。


 ソフィ  

それでは本体はどこに……


 リアム  

どっかに隠れてるのか?


 ソフィ  

本体がいるとして、その戦闘力はどれほどなのでしょう。


 リアム  

出し惜しみをする意味はないな。

こっちが弱ったところに、本体登場ってところか。


 ソフィ  

あっ、もしかしたら、みんな本物とか。


 リアム  

ソフィ、それ逆にしただけだろ。


 カレン  

……!!

そうか!! そういうことか!!



 ***



 フーゴ  

くひひひい……!

連中そろそろ、本体が出て来るとか思ってんだろーな。


だぁ~が残念だなぁ!!

俺にはホンモノもニセモノもねぇんだよ!


 ***


そうだ――奴の<>は、全てニセモノだ!


つまり全部がホンモノってか!


 フーゴ  

お前らは一撃で死ぬ――俺は死なない。

この差がわかるか?


 リアム  

犬ッコロ、てめーはくたばる。結局のところな。

この意味がわかるか?


凍て星よ――我が敵に、死の抱擁を!


ぐひっ……これは<死んだ>な。だが~。ここで<移動>だ。

残念だったなぁ!!


十言の聖句、十言の禁句。
知恵と生命の双樹の名において我希(こいねが)う


大いなる霊神よ、慈悲深き
その御手をもって、彷徨いし霊魂を捕えたまえ


 フーゴ  

なっ……なんだとお~!?


 カレン  

汝の魂を拘束する!

ひざまづけ!!下郎!!


 フーゴ  

こ、こいつ……!!


 カレン  

魂を肉体に戻したか。

だが……これで詰みだ。


 リアム  

魂をその体から出した瞬間、テメーの魂は拘束される。

意味はわからんが、かっけーフレーズたな?


 ソフィ  

お覚悟を……!


 フーゴ  

くっ、くひひひ!

残念だったなああ!!

終わったのはテメエらよ!


>を全部戻した。

……つまり! どういうことかわかるなぁ~!?


 リアム  

わからん、チャックどういうことだ。


 チャック 

ピンチってことっすよ~!!


 ソフィ  

氷の国の民よ――力を貸して!


 カレン  

カレン・ガランドの名において命ず。死ね。


 フーゴ  

見下してんじゃねぇ~ぞ!!

てめーら全身バラバラにしてそこらへんにバラまいてやる!


BOSS


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story



 フーゴ  

ぐぼああ……!!

てめえら!! よくもよくも!!


 カレン  

この世には、お前のようなものがいるとは聞いている――

善意や共感や、真実が存在しない、そんなものたちがな。


 フーゴ  

俺のようにマトモな人間は最近肩身が狭くってな……

まったくお前ら凡人には……ヘドがでるぜ……!


 リアム  

テメーはどこの誰なんだ?

化物野郎!


 フーゴ  

革命家ってやつよ。

銀の諸島のチンピラとは違うぞ。俺の敵は<帝国>だ。


て、帝国!?


 カレン  

なるほどお前の正体がわかったぞ、フ-ゴ・ワーラー。

お前の真の名は、スターム・ゼノ。そうだな。


 フーゴ  

ククク……その通りだぜ、ガランドのひよっこ魔女~!


 カレン  

個人的かつバカけた理由で皇帝を暗殺しようとした、愚劣きわまる下郎と聞く。


 リアム  

ちなみに、どんな理由だよ。


 カレン  

皇帝をスキャンダルで追及しようとしたが、逆に面目を失ったとか。


 <皇帝の首飾り事件>。

 帝国の皇帝がオペラ歌手に入れ込み過ぎて、皇帝の紋章つきの首飾りをプレゼントしてしまったという事件である。


 フーゴ  

権威に従うだけのてめ~ら凡人には、わからんかもしれねぇなあ~!


 皇帝が、帝国議会にその品位を追及されている矢先のスキャンダルであった。

 オペラ歌手と結託して首飾りを手にしたゼノは、皇帝に対し金品を要求する。

 ゆすられた皇帝だったが、皇帝はスキャンダルをあっさり認めてしまった。

 この事件で皇帝は、ゼノに皇帝の紋章のついたチーズを下賜したと言う。


 プライドを傷つけられたゼノは、皇帝を暗殺しようとして失敗、命からがら地下に潜った。


 チャック 

器量で負けたから、八つ当たりってねぇ~。


 カレン  

野暮で愚かなうえ、卑怯卑屈とは、なんとも救いがたいな。


 フーゴ  

俺は負けてねぇ~!!

そうだ……最後に勝つのは、いつだってこの俺だぁ!!


 リアム  

パーティーは終わりだ。逃げるぞ!


 フーゴ  

一緒に地獄に行こうぜェ!!



…………

……



 帝国軍は、砲撃陣地を奪い返した――!


 カレン  

体内に爆発物を……!

よく見破ったな、リアム殿。


 チャック 

アニキの直観はすごいっすから。

つーか嗅覚だけっすから。


 リアム  

だけってなんだ。だけって!


 ソフィ  

カレン様、ミューレア様は……


 カレン  

ソフィ様。お許しいただけるなら。


共に向かいましょう――大神殿に!


 リアム  

あの姉ちゃんか、いろいろ企んでるってかい。

楽しみになってきたせ。


 カレン  

お見事な活躍でした……ソフィ様。


 ソフィ  

カレン様の助力あってこそです。


 チャック 

アニキはいつもどおりっすね。


 リアム  

まあな。フツーに伝説の1ぺージが増えちまったなあ。


 帝国陣地側での戦いは。こうして幕を下ろした――


     ***


英雄は弓を引き絞る。

凍て星の輝きを放つ矢が、極光輝く夜空に飛ぶ。


英雄は両の手に剣を構える。

両の翼を縛る鎖を引きちぎりながら。


英雄は杖を手に祈る。

その身に侍るは影の騎士。

その心は誰よりも強く、誰よりも気高く。



ソウルオブナイツ Story

Story0 序章

Story1 ディーン&主人公

Story2 シャルロット&メグ・ジュダ

Story3 クライヴ&ウォルター

Story4 カレン&ソフィ&リアム

Story5 最終章


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