【白猫】シエラ・思い出
シエラ・スキルニルグ cv.雨宮天 田舎の島で生まれ育った少女。 己の使命のため、一角竜フレイヤと旅に出る。 |
蒼空の竜騎士
思い出1
<主人公たちが<竜の国>から帰り、しばらくしたある日――
一角竜に乗った少女が、飛行島へと舞い降りた!>
こんにちは。
ここが飛行島ですか。
シエラじゃない。やっほー♪
やっほー♪
田舎に帰ったって言ってなかったっけ?
飛行島に立ち寄ってからでも、遅くはないかなってね。
ふふ、ゆっくりしていってください。フレイヤさんも。
人間。私の名前を気安く呼ばないでもらえますか?
あ……ご、ごめんなさい……
ごめんなさい。フレイヤって、基本こうだから……許してね。
改めて自己紹介してもいいかしら? 竜の国じゃずっとバタバタしてたから、ろくに話もできなかったし。
私はシエラ・スキルニルグ。田舎から来た、農家の娘よ。
こっちの竜が、一角竜のフレイヤ。私の大切な家族であり、親友なの。
…………
アタシはキャトラよ。横の二人が、主人公とアイリス。
竜の国では、色々とありがとう。助かったわ。
気にしないで。アタシたち、面倒事には慣れてるから。
あら、そうなの。
キャトラといいましたか? 子猫の割に、たくましいのですね。
へへ~ん♪
(あら……?)
農家といっていましたね。何を作っているんですか?
なんでも作るわよ。麦にジャガイモ、キュウリにナスにトウモロコシ……
ホントになんでもね。
でも、やっぱり一番はサクランボかしら。
フレイヤの大好物なんだっけ?
ええ。
うちはかなりこだわって作ってるからね。成る実はほとんどが一等級なのよ。
中でも質のいいものは、高級品として大きな島に出荷したりするぐらいで。
赤い宝石<スキルニシキ>とは、私の家のサクランボなのよ~♪
ムム……食べてみたい……!
おすそ分けしたい所なんだけど、持ってきた分は、もうなくなっちゃって……
……そろそろ、食べさせて欲しいのですが。
困ったわ……
思い出2
うーん、いい気持ちね~。ふあぁ……
私の背で昼寝とは、いいご身分ですね。
お二人は、とっても仲がいいんですね。
もう、ずっと一緒だからね。
ずっとって、どのくらい?
私が5歳の時からだから……もう10年以上になるわね。
じゃあ、―角竜と農家の少女の出会いを聞いてみようかしら。
きっとドラマティックなんでしょうね~。
フレイヤはサクランボ泥棒だったの。
ぜんぜんだった!
うちのサクランボ畑を空から見つけて、降りてきたらしいのね。
で、食べようとしていたところに、私が来たってわけ。
フレイヤ、おこられちゃったんだ?
構わず、さっさと食べてしまっても良かったのですが……
幼子にしては、妙な迫力がありましてね。
……それに、シエラの家のサクランボは、絶品でした。
それ以来、サクランボ欲しさに、居つくようになったのよね~。
そんなに美味しいんだ?
別格ですね。サクランボは長年食していますが、<スキルニシキ>は世界で一番と言っても過言ではありません。
じゅるり……
とはいえ、タダであげるわけにもいかないから、ちゃんと働いてもらってるんだけどね。
働く、というと?
サクランボ畑の警備をお願いしているの。
……サクランボって、けっこう盗られちゃったりするものなの?
特にうちのはね。両親から聞いた話じゃ、ある年は木をまるまる持ってかれたこともあるんだって。
ひ、ひどい……
でもフレイヤが来てからは、被害は全く出てないのよ。
サクランボ畑は、私の寝床でもありますからね。
これ以上ないくらいの番人だもんね……
それよりもシエラ。いつになったらサクランボを食べさせてくれるのですか?
あ、そうそう。私、お近づきの印にと思って買ってきたんです。
お口に合えばいいのですが……
わざわざありがとう! よかったわね、フレイヤ。
じゃ、アタシが食べさせてあげる。はい、あーん。
…………
どう?
イマイチですね。甘みが足りませんし、味に奥行きもありません。
わがままいわないでよ。とうぶんは、それで我慢してちょーだいな。
仕方がありませんね。
ねえフレイヤ。気になってたんだけど……キャトラヘの態度は、普通なのね?
ええ。子猫ですから。
…………
私と初めて会ったときは、すごいそっけなかったのに……
それは……しょうがないでしょう。
……なんか、ずるい!
思い出3
ねえ、アイリス。
なんでしょう?
この島って、畑があるのね。ほら、あそこ。
ええ。今は、あまり使ってないようですが……
わりと荒れてるものね。……うーん、気になるわ。
ちょっと、一緒に手入れしない?
***
よーし、やるわよー!
<シエラは慣れた手つきで、土を耕し始めた!>
アリャ。シエラとアイリス、いつの間に?
シエラさん、こんな感じでしょうか!
おおっ!なかなか上手じゃない!
うふふ♪
<クワを地中深く入れ、土を起こしていくシエラ!>
いい土ね! けど、耕してあげれば、もっと輝くわ!
慣れたものね、シェラ……! 腰の入り方がプロだわ!
ちっちゃい時から、ずっと手伝ってきたからね。
***
はあ、はあ……
明日はさっと筋肉痛ね、アイリス。
……いい運動になります!
……こうやって、堆肥を混ぜていくのよ。
作物によっては、微妙に配合を変えたりするんだけど、今回はこれでいいわ。
やっと終わりましたね……!
まだよアイリス。うねを作らなきゃ。
……ねえ、ちょっと休憩しない?
それもそうね。
アンタ、体力あるのねえ。
農家の娘は、たくましいのよ。クワさばきなら、誰にも負けないんだから!
私が魔獣と戦えるのも、きっと長年の農作業の賜物だと思うの。
私の力のおかげに決まっているでしょう。
ありゃ、いつの間に。
あのキレイな白い服って、フレイヤの魔力で作られたものなんだっけ。
うん。あの服、すごいのよ。体が軽くなるし、力もグンと増すの。
それで農作業すれば、楽なんじゃない?
キャトラ。農家ってのはね、楽をしちゃダメなのよ。
それに、汚れたらもったいないしね。
汚れてもすぐに落ちますよ。意地っ張りですね、シエラは。
衿持よ衿持! 農家プライドなの!
あなたは、シエラさん想いなんですね。
それが何か?
あ、いえ、その……
…………
思い出4
ねえ、聞いてもいい?
……もしかして、フレイヤのこと?
うん……
フレイヤが人間に冷たいのは、理由があるのよ。
よろしければ、聞かせてくれませんか?
……フレイヤはね、とても長い年月を生きてきた竜なの。
あのね、みんな。フレイヤはもともと、人間のことが、大好きだったのよ。
ある時、フレイヤは私に話してくれた……
人と仲良くなりたいと自分から話しかけにいくような、すごく社交的な性格だったそうよ。
そして、仲良くなった人間の頼みを、決して断らなかった。
……友だちが、欲しかったの。だから彼女は、みんなの願いを出来るだけ叶えてあげたいと思った。
時には戦争にも参加した。彼女は自分の<友だち>の為に、その力を存分に発揮して戦ったわ。
でも、フレイヤには……いつまで経っても、友だちが出来なかった。
友だちだと思っていたその人たちはみんな、自分を友だちだとは思っていなかった。
<一角竜>フレイヤ――みんなは、その力だけしか、見ていなかった……
フレイヤは、騙され――
裏切られ――
利用され続けた。
それでも、フレイヤは、人間を信じたかった。
人間という種族とは絆を結べるって、信じたかったの。
でも……
フレイヤはとうとう……人間に期待することを、やめた。
そうして、彼女は何も信じなくなった。関わることも、やめた。
私と出会ったのは、一人で静かに暮らせる場所を探していた、その時だったんだって。
…………
だから……彼女のこと、悪く思わないであげてね。
……はい。もちろんです。
シエラ、ここにいましたか。
…………
アタシとは、お友だちになってくれるかな?
……?
ゴロゴロ~。
<キャトラがフレイヤに甘えだした!>
ゴロゴロ~ン。
毛づくろいですか?わかりました。
<フレイヤは、キャトラに鼻先を寄せた。>
……ありがとう、キャトラ。――けどね。
キャッキャッ♪
フレイヤ、私より心許してない!?ずるいわよーー!
思い出5
さて……と。
みんな。私たち、そろそろ行くわね。
故郷の島に、帰っちゃうの?
充分ゆっくりさせてもらったしね。
……うん。本当に、いい島たった。お世話になりました!
…………
さ、行きましょう、フレイヤ。
本当に帰りたいのですか?
え……?
もっとたくさんの世界を見て回りたい。本当は、そんな風に思っているのではありませんか?
…………
はっきり言いなさい。
……思ってるわよ。
もっともっと、たくさんの島に行って、たくさんの国を見て、色んなことを知りたい。
あなたと一緒に。
…………
けれど、それは出来ない。世界を見て回ることよりも、私は、あなたのことが大事だから。
静かに暮らしたいっていうあなたの考えを、尊重したいから。
遠慮など、することはないのですよ。
……優しいのね。でも、ダメ。
竜の国で、私はあなたをつらい目に合わせてしまった。嫌なことを思い出させてしまった。
これ以上、あなたの心に傷がつくのは、嫌よ。
私はあなたが思っている程、弱くはありません。
帰る事などいつでも出来ます。しかし、あなたがこの世界を見、自身の成長の糧とする機会は、今しかないのですよ。
……その根拠は?
根拠などありません。ですが、確信しています。
…………
……逆ですね。旅立った、あの時とは。
思い出6 (友情覚醒)
シエラ。私は何のために、あなたに魂を託したのですか。
フレイヤ……
確かに、傷つくこともあるかもしれません。
……しかしこれからは、あなたがずっと、一緒に居てくれるではありませんか。
うん……
喜びも悲しみも全て、あなたは私と分かち合ってくれる……そうですね?
うん……!
それに、何よりも――
<フレイヤは、鼻先をシエラの頬に寄せる。>
我が子の願いなのですから。
もう。ずるいわよ、それ……
ありがとう、フレイヤ。
***
じゃあ……帰らないことにしたのね?
うん。しばらくは、この広い世界を、たくさん旅しようと思う。
でも、それだけじゃなくてね……
同胞たちに、会いにゆこうと思います。
ほかの竜たちに?
彼らがどのように生きているかを、確かめてみたくなりました。
会って話したい事も、たくさんあります。
……知りたいことが、わかるといいですね。
ええ。
アレッ……フレイヤ……!
人間。……先ほどの光は、何なのですか?
とっても、温かかったわね。
あれは、主人公の力……ルーンの光です。
友情の証ってやつよ。まぶしかったでしょ?
……あなた方にも、少し興味が出てきました。
では、その……よければ、お友だちに……
……名前を呼ぶ程度なら、良しとしましょう。
はい! ありがとうございます、フレイヤさん♪
<シエラとフレイヤは、どこまでも続く雄大な空を、気持ちよさそうに飛んでゆく。>
ねえ、フレイヤ!
何ですか?
世界って、本当に広いわね!
蒼空の絆 シエラ・スキルニルグ