セリナ・思い出

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思い出1

セリナ

みんな、お待たせー！

私が国民的人気アイドル……

セリナちゃんでーす！

明るく華やかな声が

キンキンと島全体に響き渡る。

キャトラ

うるっさいなぁ！

この声はセリナねッ！？

セリナ

キャトラは今日もかわいいね～！

猫さんと一緒にいる私は

もっとかわいいけど！

キャトラ

今、すごいことをサラッと……

ちょ、ちょっと、何するのよ～！？

セリナはキャトラを抱き寄せると

主人公にウィンクする。

キャトラ

ちょっとちょっと！

主人公ばっかり見すぎぃ！

セリナ

あ、動いちゃダメ！

今、私のベストラブリー角度なの！

キャトラ

……べ、べすとらぶりー……！？

アイリス

大きな声だしてどうしたの？

キャトラ

アイリス！　た、助けて～ッ！

セリナ

……ッ！！

……ア、アイリス……！！

セリナの頬が

みるみる赤く染まっていく。

アイリス

キャトラったら……

仲間に対して失礼でしょ？

セリナ

……（やっぱり、かわいい）……

アイリス

ごめんなさい、

キャトラに悪気はないの。

セリナ

ほふぇ……はっ！

だ、ダメよセリナ、騙されちゃ！

かわいいは敵なんだから！

アイリス

……え？

セリナ

ううっ……

私より、かわいい子なんて～っ！

キャトラ

ど、どうして怒ってるのよぉ～！？

セリナ

覚えてなさいよ～！

アイリス

あっ……！　行っちゃった……

キャトラ

何、あれ……

思い出2

セリナ

キャトラ、おっはよー！

セリナちゃんだよ～！

穏やかな空の下、今日も

セリナの声が島全体に響き渡る。

キャトラ

だから、うるさいってばぁ！

どうしてそんなに響くのぉ！？

み、耳が痛いよぉ……

セリナ

君の声が耳から離れない、って

よく言われるんだよね～！

かわいいって罪だね、えへへ～。

キャトラ

絶対違う！

セリナ

うーん、もしかして……

マイク、知らない？

キャトラ

マイク？

セリナ

音を遠くまで届ける機械のこと！

私の故郷はルーンの力で機械技術が

発達しているの。

それでマイクが発明されて――

セリナ

それだけじゃないの、映像を遠くに

届ける機械も普及してるんだよ！

セリナ

そういうのを使って、歌や踊りで

ファンを笑顔にする……

それがアイドルなのっ！

キャトラ

へ、へぇ～！

キャトラ

（いちいちキメ顔なのは

触れないでおこう……）

セリナ

うちの故郷はアイドルや歌手が

多くて……生き残るだけでも

大変なんだから～！

キャトラ

アイドルって大変なのね……。

そもそも、どうしてアイドルに

なったの？

セリナ

そ、それは……っ

セリナの頬が、ポッと桃色に染まる。

セリナ

そ、それはアイツが……

アイリス

アイツって誰のこと？

セリナ

ッ！？

アイリス

楽しそうな声が聞こえて……

私も仲間に入れて？

キャトラ

もちろん！

セリナ

ダメ、ダメったらダメ～！

アイリス

え、えっと……？

キャトラ

な、なんでアイリスは

ダメなのぉ！？

セリナ

アイリスはかわいすぎるもん！

私が目立たなくなるからダメっ！

アイリス

ご、ごめんなさい……。

キャトラ

違うよアイリス！

セリナは褒めてるのよね～？

セリナの頬が、

ポッと真っ赤に染まる。

セリナ

ち、違うもん……ッ！

アイツにも、アイリスにも、

憧れてるわけじゃないから～ッ！

キャトラ

行っちゃった……。

思い出3

セリナ

～♪

キャトラ

あれ？今日は鼻歌……

……ッ！？！？

セリナ

あ、キャトラ～！　いいところに！

新曲の練習をしていたところなの！

セリナ

まだ発表前の曲だけど……

特別に披露してあげちゃう！

セリナはマイクを構え、

すぅ、っと大きく息を吸い込んだ。

キャトラ

ストーップ！！

キャトラ

……ちょ、ちょっと待って、

セリナは歌手でもあるのよね……？

セリナ

うん、そうだよ～！

なかなか上手でしょ？

キャトラ

まさか……セリナって、

お……おん……

アイリス

セリナの新曲、私にも聞かせて？

セリナ

…………ッ！？

キャトラ

アイリス！

キャトラ

主人公まで……！

まずいわ……、

2人がセリナの歌を聞いたら、

セリナを傷つけちゃうかも……！

キャトラ

ふ、二人とも、セリナは今、

喉の調子が悪いみたいで……！

セリナ

そ、そんなことないよ！

絶好調だもん！

キャトラ

ちょっとぉぉ！？

しかもアイリスがいて緊張してる！

ダメだわ、余計下手に……！

アイリス

キャトラ、さっきから

何ぶつぶつ言ってるの？

キャトラ

いや、そのぉ～……

セリナ

……セリナ、歌いますっ！

キャトラ

あああっ！

もうダメっ、セリナ、

ごめん……っ！

ぎゅ、と目をつむるキャトラの耳に、

きれいな高音が響く。

キャトラ

……あれ？

アイリス

うわぁ……上手！

セリナ

え、えへへ……！

って、べ、別にアイリスに

言われても嬉しくないもん！

アイリス

ふふっ、照れなくてもいいのに。

セリナ

て、照れてないもんッ！

笑うなーっ！

アイリス

……な、なんだったの……？

思い出4

セリナ

……1、2、3、ここでターン……

キャトラ

あれ……？

セリナー、何してるの？

セリナ

新曲のフリの練習してるんだけど、

うまくいかなくて……

キャトラ

フリ？……もしかして、

この間歌ってくれたやつの？

セリナ

そうそう！

う～ん、おかしいなぁ……。

キャトラ

アイドルのことはわからないけど、

アタシでよければ見てあげるわよ？

セリナ

本当！？ありがとう！

セリナは新曲を口ずさみながら、

くるっとターンし、ウィンクする。

キャトラ

（こ、これは……）

アイリス

音程が、ズレてる……？

セリナ

どうだった？

……って、ア、アイリスッ！？

キャトラ

……ああっ、わかった！

ちょっとセリナ、もう一回やって！

セリナ

……も、もう一回ぃ！？

……うぅ、緊張する……！

再び同じフレーズを披露すると、

アイリスとキャトラの表情が変わる。

アイリス

す、すごい……！別人みたい……。

キャトラ

やっぱり、思った通り……

緊張するとうまくなるんだわ！

セリナ

ええっ、そ、そうなの！？

……あ、言われてみれば確かに、

緊張してる時の方が

成功することが多かったかも！

キャトラ

えっへん！

私の推理力もなかなかね～♪

アイリス

でも、どうして緊張すると

うまくなるのかした……？

セリナ

……たぶん、見栄張ってるのかも。

アイリスとか……アイツの前だと。

キャトラ

アイツって……前に言ってた人？

セリナ

……そう、幼なじみに、

ロック歌手がいるんだけどね。

セリナ

アイツのパフォーマンスすごいの。

自然と胸が熱くなるっていうか……

セリナ

私もあんな風になりたくて、

それでアイドルになったの。

キャトラ

へぇ～！

素敵な幼なじみがいるのね。

セリナ

……うん。だから大っ嫌い。

アイリス

セリナ……？

セリナ

だってずるいもん！

私がほしいもの、全部持ってる……

セリナ

……あれが『才能』なのかな。

私だって、頑張ってるのに……。

セリナ

あんなにキラキラされたら、

私みたいな小さな星は霞んじゃう。

セリナ

……ずるいよ。

アイリスも……アイツも。

アイリス

セリナ……。

セリナはハッとして、

笑顔で向き直る。

セリナ

だ、だから私はこれから！

本当は歌もダンスも苦手だけど……

その分、もっともっと

頑張らないと！

キャトラ

それで、さっきダンスの

練習してたんだ……。

セリナって、意外と努力家なのね～。

セリナ

えっへん！

……って、意外は余計よ～っ！

思い出5

セリナ

ここはターン、ここで……

違うちがぁ～うっ！

はぁ、と肩で息をするセリナの頬を

汗がつたい落ちる。

アイリス

セ、セリナってば

どうしちゃったの？

ヒステリックになっちゃって……

セリナ

……どうしよう……

アイリス

セリナ、少し休憩したら？

もうずっと踊りっぱなし……

セリナ

放っといてっ！

アイリス

ッ！？

キャトラ

ちょ、ちょっと、どうしたの？

セリナ

あ……、ご、ごめんなさい……！

私、私……！

アイリス

私は気にしてないから大丈夫。

だから落ち着いて？

セリナ

アイリス……

キャトラ

セリナってば、最近頑張りすぎ～！

何かあったの～？

セリナ

最近、ライブがあって……

そのライブが成功すれば、

もっと大きい仕事が

もらえるかもしれなくて……

キャトラ

それ、ビッグチャンスじゃない！

アイリス

それであんなに練習してたのね。

セリナ

でも、全然ダメなの……

フリも全然覚えられなくて……

セリナ

歌も、声がひっくりかえっちゃうし、

こんなんじゃ……！

セリナ

そもそも歌もダンスも苦手な私が、

アイドルになるなんて、

無理なのかな……

セリナ

私じゃ……

大きい星にはなれないの……？

思い出6

セリナ

ひゃあっ！？

セリナ

なに、この光……ルーンの力？！

――え？

セリナ

これは……

主人公の思いなの……？

セリナ

すごく温かい気持ち……。

えへへ、なんだかホッとする……

アイリス

セリナ、私の前で歌ってみて？

セリナ

……え？

キャトラ

ほら、さっき練習してたとこ！

フリ付きでやってみて～！

セリナ

……う、うん……。

セリナは静かに目を閉じた。

そして、そっとメロディーを

奏で始める――

甘く透き通った歌声が、

切なくも優しく、

澄み渡る空に溶けていく。

その歌に合わせて羽ばたくように、

小女は、ふわりと舞い踊る……

――最後にくるり、とターンし、

ウィンクでポーズを決めると、

主人公たちは自然とセリナに

拍手を送っていた。

セリナ

……で、できた……！

アイリス

すごい……

キャトラ

なんだか、元気が出てくる……

セリナ

ほ、本当？

キャトラ

嘘なんかつかないわよ～！

なんだか応援されてる感じがする！

アイリス

私もそう。

頑張れって想いが伝わってくるの。

アイリス

私はセリナがうらやましいな。

だって……私が歌っても、こんなに

温かい気持ちにはできないもの。

アイリス

セリナは今の自分が

物足りないかもしれない。

でも……私は今のセリナが

大好きよ？

セリナ

アイリス……

セリナ

ありがとう……！

私、焦って、自分が

見えなくなってた……

セリナ

私だけの魅力を伝えられるように、

もっともっとがんばる！

アイリスにもアイツにも、

ぜったい負けないんだから！

キャトラ

そうそう！

努力は必ず報われるんだから！

アイリス

セリナが努力していること

私たちがよくわかってるからね。

キャトラ

も～っと人気アイドルに

なってもらわないと！

楽しみにしてるんだから！

セリナ

……みんなぁ～！

ふええ～ん！

セリナ

……私、頑張る！

絶対に成功させるから～！ぐずん。

キャトラ

泣かないの～！

アイドルは顔が命なのに、

ひどいことになってるわよ？

セリナ

へへ、私は泣いてもかわいいもん！

セリナ

みんな～！

セリナちゃんの今後の

活躍をお楽しみにね☆