ガレア・思い出

ガレアへ戻る

思い出1

ガレア

…………

キャトラ

どうしたの？

島のへりでつっ立ってさ？

ガレア

……飛行島。

争い、憎み合う人間どもには、

あまりにも過ぎたる道具だ。

キャトラ

ちょっとぉ！　それってヘンケン！

ガレア

この島で人々が行き来し、

国を越えてわかりあい、

絆を育むというのなら、

褒められる行為だがな。

キャトラ

そ……そうでしょ？

ガレア

フン。それにしても、

＜運＞を剥奪する天使の

この俺を迎え入れるとはな。

キャトラ

あ、アタシたちのうんは

取らないでね？

ガレア

当たり前だ。

不当な行いはしない。

ガレア

それに、＜不運＞を奪えば、

むしろ得があるぞ。

アイリス

もしかするとお願いすることが

あるかもしれませんね。

ガレア

フン、血の滲むほどの

努力をしておらねば

手は貸さん。

ガレア

まあ、お前たちは

目には映らぬ努力を重ねているから

何も問題ないがな。

キャトラ

も～……

面倒くさいしゃべりかたねぇ……

ガレア

これが俺のペースだ。

命令されるいわれはない。

ガレア

本当にうっとうしいなら、

徐々にやめていくから。

キャトラ

ハイハイ。

アイリス

ふふふ……

ガレア

……ここはいいところだ。

これから世話になるぜ、ブロウ。

思い出2

キャトラ

ガレアってば謎の多い男だから、

いろいろと教えて

ほしいんだけど？

ガレア

俺は乗り物が好きだ。

キャトラ

おっ、おぉ！？

なにその意外な告白！

ガレア

この翼で一定距離飛ぶことも

出来るがな。疲れるし、

あまりやりたくはない。

ガレア

知っているか？

＜バイク＞という、

機械とルーンで走る乗り物を。

キャトラ

聞いたことあるような、

ないような……

ガレア

二つの車輪がついた、

馬のような乗り物だ。

ガレア

そしてさらに、ある島には

＜自動車＞というものがある！

キャトラ

じどーしゃ！

なんかすごそう！

ガレア

ああ、すごいぞ……！

一目見たときから、

俺はこれに心を奪われてな。

ガレア

購入したんだっ……！

ためた貯金で……！

キャトラ

わぁお♪　どれどれ？

ガレア

はっはっは、キャトラ。

そんなに小さなものではないさ。

なんたって、乗り物だからな！

ガレア

大きすぎて、

ここには持ってこれなかったが……

カッコイイぞ……！

キャトラ

の、乗りたいよぅ……！

いつの日にか……！

ガレア

いいだろう。

キャトラ

わぁ～い！　アイリスと

主人公も一緒にね！

ガレア

ただ、な。

キャトラ

ん？

ガレア

ものすごい速度が出るから、

操縦を誤ったときの事故は、

大惨事となる。

キャトラ

う、うひぇぇぇぇ……！

ガレア

ま、俺が運転する限り、

何の問題もないがな。

アイリス

幸運のつかいですもんね。

ガレア

いや、それは関係ない。

決して事故らぬ安全運転を

心がけているからさ。

キャトラ

ウン、マァ、立派よ。

思い出3

ガレア

マールにも困ったものだ……

キャトラ

どーしたのガレア？

『マールにも困ったものだ』

なんてつぶやいた顔して。

ガレア

まさにつぶやいたからな。

というか、聞いていたろ。

アイリス

どうかしたんですか？

ガレア

……マールのやつ、

好き嫌いが多くてな。

ガレア

特に野菜を全く食べないから、

注意したら逃げてしまったのだ。

キャトラ

あんがい子供なのねぇ～。

ガレア

案外でもないだろう。

『＜幸運＞は土から得られる』と、

いつも言っているのだがな。

アイリス

そうなんですか？

ガレア

なんか俺はそんな気がしててな。

キャトラ

保護者はたいへんね～。

ガレア

俺がマールの保護者だと？

キャトラ

そう見えてたけど、違うの？

ガレア

……まあ、同僚と言うには、

いささか無理があるか……

キャトラ

落ち着き度がダンチだからねぇ。

ガレア

俺を見習って……ではなくとも、

マールにはもう少し落ち着きを

学んでもらいたいものだ。

キャトラ

そうよねぇ。

ガレア

……俺と同じ過ちは、

犯してほしくはない……

アイリス

え？　それは、どういう……？

ガレア

……いや、すまない。

忘れてくれ。

思い出4

キャトラ

ねぇ……アタシ、一度気になると

ずっと気になるときがある

キャトラさんだよ？

ガレア

うん？

キャトラ

アンタのしでかしちゃった

過ちってなんなの？

アイリス

キャトラ。

ガレア

……いや、いい。

お前たちならば、話そう。

ガレア

……あるところに一人の

＜報われない＞男がいた。

ガレア

男は夜を日に継ぎ働いていたが、

何も上手くいかない。男の一家は

暮らしていけなくなった。

ガレア

……俺は男に情が移り、

不相応な＜幸運＞を与えた。

ガレア

途端に男は食料を得、職を得た。

俺は自分の働きに満足した。

……だが、その数日後……

キャトラ

……どうなっちゃったの……？

ガレア

……巨万の富を得て、

名声を得た男は、

家族を失ったのだ。

ガレア

それは、男の＜幸運＞が

家族の＜幸運＞を引き寄せ、

奪ったからでもあり――

ガレア

――心の奥底に封じ込めていた、

男の願いを叶えたからだった……！

新たな家族を持ちたいという……！

アイリス

そんな……！

ガレア

俺は己を恥じた。

なんと軽率だったのかと。

そして――

ガレア

――男の屈折した欲望を

見抜けなかった自分を、

殺してやりたかった……

ガレア

……俺は男の＜幸運＞を奪った。

傍らには、男の妻と娘の

亡骸があった。

ガレア

死後すぐであれば、

＜幸運＞の奇跡で

生き返らせることが出来る。

ガレア

だが、俺の能力を振り絞ったとて、

二人も蘇らせることは不可能……

ガレア

……俺は、子の母を

見殺しにした……

アイリス

ガレアさん、

わざわざ悪い言い方を

することはないです！

アイリス

あなたはマールさんを、

生き返らせたんじゃないですか！

ガレア

……二人から一人を勝手に選ぶ、

それはエゴでしかない。

災いを招いたのも俺自身……！

ガレア

……俺が余計なことをしなければ、

たとえ貧しくとも、あの一家は、

幸せだったのではないか……！？

ガレア

……俺の能力を渡した証、

あの子に生えた翼を見る度に、

申し訳ない気持ちになる……

キャトラ

ガレア……

ガレア

……俺は、卑怯者だ。

この事実を、彼女に未だ

隠しているのだから……

アイリス

ガレアさん……

思い出5

ガレア

…………

キャトラ

ガレア、そうしたの……？

また島のへりに

つっ立っちゃって……

アイリス

でも、このあいだより、

雰囲気が……

ガレア

……マールに愛想を尽かされた。

アイリス

えっ……？

キャトラ

どーしたのよ？

怒りすぎちゃったの？

それとも怒られた？

ガレア

……怒られた。

キャトラ

なにしたのよ。

ガレア

明かしたんだよ。

その命を一度、

奪ってしまったことを……

アイリス

ちゃんと、

その後生き返らせたことも

伝えましたよね！？

ガレア

流れでな。

アイリス

流れじゃなくて、

ちゃんと言いました？

ガレア

マールの母のことも

話そうとしたところで、

走り去られてしまった。

アイリス

……！

まあ、それも、いずれは

きちんと話しておくべきですが……

ガレア

ともかく、

裏切られた気持ちだろうな……

ガレア

いままで隣にいた奴が、

本当は親の、いや自分自身の

仇だったんだからな……

アイリス

それもあるかもしれませんが……！

アイリス

私は提案します！　ガレアさん、

もう一度マールさんと

話してみるべきです！

ガレア

それを彼女が望むだろうか。

アイリス

そんな言い訳で逃げる気ですか？

ガレア

……なに？

アイリス

ちょっとバラして、

あー呆れられた、

怒られた、って……

アイリス

そんなのは逃げだと思います。

ちゃんと話して、その上で

一緒にいれる道を模索すべきです！

キャトラ

あ、アイリス……？

アイリス

……ごめんなさい。

でも、なんだか、自分の

ことのようにザワザワして……！

キャトラ

…………

ガレア

……そうだな……

すまない、俺としたことが……

ガレア

……とれる努力を、

放棄するべきではないな……！

思い出6

――解き放たれたルーンの光が、

すれ違っていた二人を

引き寄せる――

マール

……ガレア……？

どうしてここに……？

ガレア

……俺は、ずっとお前を

だましていた。

マール

……え？

ガレア

＜幸運＞を与えて回る義務は、

お前にはない。

役目を与え、一緒にいたのは……

ガレア

お前が再び

＜不運＞な目に合わないよう、

近くにいただけなんだ

マール

…………

ガレア

俺はお前に恨まれても

仕方のないことをした。

許されないことをした。

ガレア

だが……俺の＜幸運＞を渡したとか

関係なく……

お前の命は……

ガレア

……守りたいんだ。

この身に代えても。

ガレア

こんなこと、なんの償いにも

ならないが……

ガレア

あのとき、

己に課したことだから……

マール

…………

マール

……言ってよ～……

ガレア

……マール……？

マール

ほんとにさ～、なんなの～？

言えばいいじゃん。

言ってくれたらよかったのに～……

マール

大切にされてるのは

わかってたけどさ～、

わかんないよ、言えばいいのに～。

マール

あたしさ～、天使として、

相当ダメダメなの、

自分でもわかっててさ～。

マール

だから騙してるんだと思うじゃん？

言ってよそ～ゆ～、

大事なこと～……

マール

信頼されてないから、

隠しごとされてるんだって、

思うじゃん、そうじゃん～……

マール

言ってよ～……

いまさら、恨むとかないよ～、

ちゃんと言ってくれればさ～……

マール

そんなに信用ない？　あたし……

ガレア

泣くな。

マール

泣くでしょ～？

対等だと思ってた同期より、

自分、はるかに子供でさ～……

マール

合わせてもらってた、

保護されてたって、

けっこうショックでしょ～？

プライドもクソもないよ～……

ガレア

……悪かった。

お前の気持ちに

配慮が足りなかった……

ガレア

いままで打ち明けなかったのは、

俺のエゴだった。

……すまない。

マール

ほんとだよ～……

じゃああたし、クビじゃないのね？

ガレア

どこかへ行きたいのなら、

お前の自由だ。

マール

とくに行くとこないよ～。

もうなんか、天使として

落ち着いてきてるもん～……

ガレア

……そうか。

マール

ガレアに認められる

一人前の天使になるまで、

一緒に働く！　いい？

ガレア

それなりに厳しいぞ。

失敗すると、かなり……凹む。

覚悟はあるか？

マール

あんたに言われたくないわよー。

ガレア

うっ……！

いや、失敗を繰り返してきた

先輩の言葉としてだな……

キャトラ

今回、アタシたちの

出番はなかったわね。

アイリス

いいんじゃないかしら？

二人が丸くおさまれば……