ダグラス2版カティア・思い出
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思い出1
カティア
おっほォ――――!!
アイリス
きゃあ!
キャトラ
ぎにゃああ!
出たぁ―――!!
カティア
おひさしぶりねェ!
坊やにお嬢ちゃん!
それから……突然変異種?
キャトラ
キャ・ト・ラ・よ!!
カティア
まァ、そんなことよりィ、
ここで会ったのもなにかの縁!
むふふふふ♪
キャトラ
うっ、早速イヤな予感が……
キャトラ
ちょ~ど研究費が底を
ついちゃったのよねェ! のよねェ!
優良パトロンさん♪
カティア
だからァ~、<悪いんだけど>
また研究資金の援助を
<お願い>できないかしらァ?
アイリス
……え?
キャトラ
……え?
カティア
あら、どしたのォ~?
ハトが豆大福食べて
喉つまらせたような顔して。
キャトラ
いや、だってアンタの口から、
『悪いんだけど』とか『お願い』
とか……
カティア
それがなによ~?
キャトラ
アンタってさ、もっとこう、
命令口調でさ、人の話も全然
聞かないタイプだったような……
カティア
んまァ! 失礼しちゃうわァ!
あんた私をそんな目で見てたのね!
カティア
ま、世間から好奇の目で
見られるのは、天才の宿命だし、
毛ほども気にしてないけどォ!
アイリス
今度はなんの研究をするんですか?
カティア
うえっ!?
え、えっとォ、それは……
キャトラ
アブナイ実験とかだったら
協力してあげないんだからね。
カティア
ち、違うわよォ~!
おねがい! 私を信じてェ~!!
アイリス
キャトラ、カティアさんには
何度も助けられたし……
キャトラ
はぁ……しょうがないわね。
アブナイのはナシにしてよ?
カティア
おほッ! ありがとォ~~!
愛してるわァ~ん!
……私の頭脳の次くらいに。
キャトラ
はいはい、どーも。
カティア
あとは、ラボ用の部屋も融通して
くれると助かるんだけどォ~。
アイリス
えっと、たしか空き部屋が
あったと思います。
カティア
助かるわァ~!
それじゃあ早速、荷物を運ぶの
手伝ってちょうだい!
キャトラ
……やっぱり
いつものカティアだったわ……
思い出2
アイリス
主人公!
しっかり!
主人公は、
魔物討伐で負った傷を押さえ、
苦悶の表情を浮かべた。
キャトラ
あわわ、血がにじんでるわ……
早く手当しなきゃ!
カティア
ちょっと、坊や!
どうしたのよ、その怪我は!
カティア
さっさと見せなさい!
魔物にやられたの!?
カティア
なら感染症対策をしないと。
お嬢ちゃん、水と清潔な布を
持ってきてちょうだい!
アイリス
は、はい!
カティア
じっとしてなさいよ、坊や。
カティアは、流れるような手際で
主人公の怪我を
処置した。
カティア
止血完了。あとはこれで……
キャトラ
えっ、注射器?
カティア
治癒促進剤よ。
しばらく身体が熱く感じるけど
我慢なさい。
カティア
はい、これで処置終了よ。
半日くらい安静にしてれば、
完治するはずだから。
アイリス
ありがとうございます、
カティアさん!
キャトラ
まるでお医者さんみたいだったわ。
カティア
そりゃ薬品を調合するんだから、
医学もひと通りやってるわよ。
キャトラ
なるほどねー。
腐っても天才ってやつ?
カティア
おほほ! 天才は
腐りかけが一番ってことよォ~!
アイリス
それはお肉の話じゃ……
カティア
せっかくの優良パトロンですもの!
今ポックリいかれたら
たまったもんじゃないしねェ!
カティア
心臓止まっても叩き起こして
あげるから、安心なさいな!
おっほォ――――!!
キャトラ
うーん……
カティア
なによォ。
この神の手を持つ天才を
信用できないわけェ?
キャトラ
いやさ、なんというか……
アイリス
カティアさん、なんだか前よりも
丸くなったような……?
キャトラ
アンタってもっとメチャクチャで
変質者みたいなヤツだったじゃん。
キャトラ
最近は妙に優しいというか、
常識的になったような……
カティア
むっきィ――――!!
キャトラ
おお!?
カティア
あんたたちィ~~!
大人しく聞いてりゃ
好き放題言ってくれちゃってェ!
カティア
私を地下組織くずれの
マッドサイエンティストと一緒に
するんじゃないわよォー!
カティア
とゆか! あんたたちより
人生経験積んでんだから、
常識くらい持っとるわい!
アイリス
す、すみません……
カティア
って、こんな不毛な議論してる
場合じゃなかったわ!
カティア
私はしばらくラボで缶詰になるから
邪魔しないでちょうだいね!
あ、食事はドアの前に置いといて!
キャトラ
さすがに深読みしすぎちゃったかしら……
悪いことしちゃったわね。
アイリス
今度ちゃんと謝りましょう。
思い出3
ヨシュア
みなさん、すみません。
ちょっとご相談したいことが……
キャトラ
あら、アンタたちは確か、
カティアんとこの……
ヨシュア
はい、カティア様の
お手伝いをさせていただいています、
ヨシュアです!
ミレイユ
妹のミレイユです。
実は、その……カティアさまが……
…………
……
キャトラ
なるほど。ここ数日ずっと
部屋から出てきてない、と。
ヨシュア
はい。ドアの前に置いた食事も
まったく手を付けてなくて……
アイリス
ちょっと心配ね……
様子を見にいきましょう。
ヨシュア
カティア様!
みなさんがお見えになりましたよ!
…………
ミレイユ
返事ないね。
キャトラ
いるのはわかってるんだし、
入っちゃいましょうよ。
部屋の扉を開き、中の様子を
うかがう主人公。
そこには――
カティア
お……お……ほ……
お……ほ……ォ……
ボロボロのしわしわに
干からびたカティアの姿が!!
アイリス
きゃああああ!
ヨシュア
カ、カティア様――!
キャトラ
カティア!
しっかりしなさい!
カティアはプルプルと震えた手で、
戸棚の一角を指差した。
ミレイユ
カティアさま?
あのケースの注射器が
欲しいんですか?
カティア
お……お……
ミレイユは、ケースから
薬剤の入った注射器を取り出し、
カティアに手渡した。
カティア
お……お……おうふゥ!
キャトラ
わっ、首筋に刺したわ!
カティア
おー……ほォー……
おー……ほォー……
ミレイユ
見て! カティアさまの肌が
どんどんツヤツヤに……!
カティア
お……お……
おおお……おおおおおォ!!
カティア
おっほォ―――――!!
ヨシュア
カティア様が……!
カティア様が復活された――――!!
カティア
おっほォ―――……うっ!!
げほっ、げほっ! げっほォ!
キャトラ
だ、大丈夫?
カティア
あふゥ、さすが私の作った秘薬。
死人も生き返る効果だわァ。
キャトラ
もうビックリしたわよ。
扉開けたらミイラになってるし。
カティア
大したことじゃないわ。
寝るのと食べるのを
忘れてただけよ。
ヨシュア
カティア様、
どうしてそんな無茶を……
カティア
……素人に言っても
わからないことよ。
ミレイユ
っ! この山積みの資料って、
あの島の……!
カティア
こらァ! 乙女の秘密を
勝手にのぞくんじゃないッ!
ミレイユ
あっ、カティアさま……!
カティア
研究室は部外者お断りよォ!
ほらァ、いったいった!
主人公たちは、
部屋から追い出されてしまった……
キャトラ
んもう! なんなのよ!
せっかく助けてあげたのに!
ミレイユ
カティアさま……
思い出4
ヨシュア
カティア様、
僕たちにお話ってなんですか?
カティア
ヨシュア、ミレイユ。
鼓膜をクリーンにして
よく聞きなさい。
ミレイユ
は、はい。
カティア
……あなたたちの身体に
組み込まれた<神獣>。
それを分離する方法を見つけたわ。
ヨシュア&ミレイユ
っ!!
キャトラ
もしかして、ここでずっと
研究してたのって……
カティア
そゆこと。
あんたたちの協力と、あの島から
押収した資料のおかげでね。
ミレイユ
でも、前にカティアさまは、
切り離すことはできないって……
カティア
切り離せないなら消すまでよ。
この<ナノマシンウィルス>でね。
カティア
このウィルスを打てば、
<神獣>の因子をピンポイントで
消滅させることができるわ。
カティア
二人とも、これを使って
元の人間に戻りなさい。
ヨシュア&ミレイユ
…………
ヨシュア
カティア様、言いましたよね。
この力は好きなように使えって。
カティア
言ったかもね。
ミレイユ
あたしたち、こんな身体にされて
ひどい目にもあったけど……でも!
ヨシュア
この力を持つ僕たちにしか
できないことがあるんです。
だから……それは受け取れません。
カティア
なんですって?
ミレイユ
あたしたちは……
元の人間には、戻りません。
カティア
バァカ言ってるんじゃないわよ!
ヨシュア&ミレイユ
っ!!
カティア
子供には過ぎた力よッ!
過ぎた科学は破滅しか
産まないわ!
ヨシュア
……覚悟はできています。
カティア
ガキが強がるんじゃないッ!
カティア
こうなったら
無理矢理にでも打つわ!
あんたたちは人間に戻るべきよ!
ミレイユ
ッ! カティアさま……
ごめんなさい!
カティア
あ、コラァ! 待ちなさい!
ヨシュア! ミレイユ!
カティア
むっきィ――――!!
これだからガキは嫌いなのよ!
カティア
私がどんな思いでコレを
作ったと思ってんのよォ――!
アイリス
カティアさん……
思い出5
カティア
むっきィ―――!!
ゴク……ゴク……ゴク……
ぷっはァ―――!!
カティア
まったく……くぉれだからァ、
子供は理解できんのよォ、ヒック。
キャトラ
うわー……荒れてるわねぇ。
アイリス
カティアさん、
あんまり飲み過ぎちゃ……
カティア
ちょっろォ、聞いてくれるゥ!?
おろーちゃん!!
アイリス
は、はい……
カティア
……わからないのよ。
キャトラ
ん? カティア……?
カティア
こんな私が! 科学を続ける
資格なんてあると思う!?
キャトラ
い、いきなりなんの話よ?
カティア
定められたルールの中で
試行錯誤して、新しい発見を
見つけるのが科学。
カティア
――なんて言ったけど、
ほんとは自分にそう言い聞かせて
安心したかっただけ。
カティア
……自分の研究のせいで、
そのルールが破られている事実から
目を背けたかったのよ。
アイリス
でも、それはカティアさんの
せいじゃないと思います……
カティア
私のせいじゃない、ですって?
カティア
それで子供が犠牲になったのよ!?
あの子たちにそんな言い訳できる?
アイリス
っ! それは……
カティア
元の人間に戻さなきゃ、
あの子たちも! 私も!
誰も救われないのよ!
キャトラ
それでヨシュアたちに
あんなキツイこと言ったのね……
カティア
あの子たちは聞き分けがいいから、
改造されたことも気にしてないって
言うでしょうけど……
カティア
でも、私は怖いのよ!
あの子たちが……!
アイリス
カティアさん……
キャトラ
カティア……その、ごめん。
あんたのこと誤解してたわ。
カティア
…………
アイリス
……? カティアさん?
カティア
ぐごォォォ~~……
すぴィィィ~~……
キャトラ
……酔いつぶれてるし。
思い出6
カティア
ZZzzz……ふがッ!?
な、なに! なにごとッ……!?
キャトラ
やーっと起きたわね。
ヨシュア
こんなところで呑んだくれてたら
風邪をひきますよ、カティア様!
カティア
っ! あんたたち……
ヨシュア
あのあと、お兄ちゃんと
話し合ったんです。
ヨシュア
僕たちは一度、この力を……
<彼ら>を受け入れました。
ヨシュア
だから、ここで人間に戻ったら、
その、手のひらを返すというか、
カッコが悪いというか……
ミレイユ
違うでしょ、お兄ちゃん。
――あたしたちは、
もう逃げ出したくないんです。
カティア
……怖くないの、あんたたち。
ミレイユ
あたしたちにとって怖いのは、
<彼ら>とお別れすることです。
ヨシュア
僕たちはこれからも、
<彼ら>と一緒に生きていきます。
そうしたいんです。
カティア
……<神獣>と、共生……
! そうか……
そのロジックなら……!
カティア
あんたたち!
ちょっと待ってなさい!
具体的には三日くらいッ!
ヨシュア
カ、カティア様!?
キャトラ
また引きこもっちゃったし……
それから、きっちり三日後――
カティア
はァ……はァ……
か、完成したわ……
ミレイユ
カティアさま、目にクマが……!
カティア
ンなことより! はいこれ!
今すぐ着けてみなさい。
ヨシュア
これは……腕輪ですか?
カティア
その腕輪には、ある特殊な波長を
発生させる装置が内蔵されてるわ。
ミレイユ
なんだろう……気のせいか
すごく身体の調子がいいです。
カティア
その腕輪の波長が、
<神獣>の因子と人間の因子を
同調させているのよ。
カティア
これで身体は安定するはず。
暴走のリスクも限りなくゼロよ。
ヨシュア
っ! ありがとうございます!
カティア様!
カティア
おほほ! 私は寛大だからねェ!
今回はあんたたちの意思を
尊重してあげるわァー!
カティア
……あんたたちのことは、
私が責任もって面倒みるから。
ミレイユ
カティアさま……
カティア
許して、とは言わないわ。
でも……これだけは言わせて
ちょうだい。
カティアは、ヨシュアとミレイユを
そっと抱きしめた。
カティア
生きるのよ、ヨシュア、ミレイユ。
絶対に無理はしないで。
なにかあったらすぐ私を頼って。
ミレイユ
うう、カティアさまぁ……
ヨシュア
カティア様……なんだか
お母さんみたいで――あいたっ!
カティア
くォらヨシュア!
永遠の十代に向かって
オカーサンとはなにごとよッ!
カティア
そこは<天才のお姉さん>と
お呼びなさいッ!
ヨシュア
ご、ごめんなさい、
天才のお姉さん……
ミレイユ
お兄ちゃんは素直だね。
カティア
まったく、これだからガキは……!
カティア
…………
カティア
私は私の科学を続けるわ。
それがどんな結果になっても、
全部受け止めてみせる。
カティア
それが天才の――いえ、
大人の務めってもんでしょう。