お正月版イシュプール・思い出
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思い出1
さて、撃っちゃうよ～ん。
キャトラ
あらイシュプール、何をしてるの？
お正月らしいことを、さ。
アイリス
矢を放つことが、
お正月らしいんですか？
魔を払う、的な意味があるねえ。
うん、五本命中だ。
これは、今年はいい年に
なりそうだねえ。
キャトラ
へ～、五本だと縁起がいいのね？
何本でも構わないさ。
キャトラ
え？
一本なら一途な想いが報われる、
二本なら異なる二つの
問題を解決させられる。
キャトラ
三本なら？
以下、それに準じて。
キャトラ
なんか手抜きだー！
はは。まあ、いいじゃないか。
どんな結果が出ても
前向きに解釈する。
そんな感じが、お正月の
空気に合ってるのさ。
キャトラ
ものはいーよーねぇ。
イラケッチラケッチィ……
……クェーッ！
キャトラ
急に脱皮してどうしたの？
去年までの私を
捨ててこようかと思って。
キャトラ
それになんの意味があるのよ？
古き物を捨て、新たな物を求めよ。
キャトラ
だれの教え？
おっと、訓示なんて
私らしくなかったね。
なんとなくやってるだけさ。
気持ちが切り替わるような
気もするしね。
じゃ、捨ててくるよ～ん。
キャトラ
あいかわらずヘンなヤツ……
キャトラ
でも、この機会に、
古くなったモノを処分するのも
アリかもしれないわね。
アイリス
なにか捨てたい物があるの？
キャトラ
おととしのカニカマ。
アイリス
……うん。それは捨てようね……
思い出2
キャトラ
！？
コーン・ポップ
ブフー！ ムフー！ フヒー！
うんうん。わかるわかる。
キャトラ
な、なんてチンミョーな
取り合わせなのよ……！
おや、君たちか。
じゃあ、また。
大地の女神の子よ。
コーン・ポップ
フヒー！
アイリス
……コーン・ポップさんと
仲がいいんですか？
まあ、わりかしねえ。
キャトラ
どんな関係なのよ？
関係というか、とうもろこしって
すごいんだよ？
キャトラ
どうすごいの？
とうもろこしのヒゲって、
粒の数と同じなんだよ。
キャトラ
えーっ！！
それはすごいわね！
アイリス
キャトラ……
それは置いておいても、
彼はとても気高い戦士だからね。
尊敬に値するよ。
キャトラ
コーン・ポップが
気高い戦士、ねぇ……
人間だってとうもろこしから
生まれたわけだしねえ。
キャトラ
ウソつかないでよ！
うん。わかってるさ。
思い出3
キャトラ
イシュプールに聞きたいんだけど？
わかってる。
正月のことについてだね？
キャトラ
あっ、うん、まあ、それも
二番目に質問したかったんだけど、
じゃなくて――
そこで彼女に来てもらったんだ。
ピレスタ
パンパカパ～ン♪
あけましてめでたいね～♪
キャトラ
ピレスタ！？
ピレスタ
くふふ～、イシュお兄さんに
呼ばれてやってきたよ～。
ピレスタ
宴会と言ったら
あちしの出番だもんね～！
ピレスタ
カモン！ ジャガー！
グレイルジャガーがあらわれた！
キャトラ
ちょっと！
グレイルジャガーを呼んで
どうするのよ！？
彼の名はポテトだねえ。
キャトラ
別に聞いてないけど！？
さあ、みんなで一緒に
じゃがいもうじゃないか。
キャトラ
どーゆーイミっ！？
バイパー
ハッシュドポテトを作った。
アイリス
バイパーさん！？
バイパー
宴会と言えばごちそう。
ごちそうと言ったら俺だ。
うんうん。バイパーくんの
包丁さばきは見事だよねえ。
キャトラ
むっ……これはっ……！
二人は、
ヘビつながりってことかしら！？
ツユハ
けろぉ……
キャトラ
ツユハ！？
なんでアンタがいるの！？
こんにちは、ツユちゃん。
ほら、こっちへおいで？
ツユハ
けろけろけろぉ！
キャトラ
怖がってるわよ！
イシュプール、アンタ
わかってやってるわね！？
大丈夫。こうなったときのために、
彼も呼んであるのさ。
イグニ
イグニだよ！
イグニ
イシュおじさん！
頼まれてたなめくじ、
もってきたよ！
イグニ
ほらほら！
とってもおっきいよ！
うぐっ！！ うぅぅ……！
キャトラ
なにを脂汗流してんのよ！
バイパー
ぬぅ！？
キャトラ
アンタは大丈夫でしょーが！
ヘビっての異名なんだから！
ツユハ
けろけろりん♪
キャトラ
てか、なんのために
なめくじ持ってこさせたの！
解決になってないわよっ！
……こうなることも
わかってたさ……
だから、もう一人いるのさ……
ラーウェイ
ご注文は、激辛だよな？
キャトラ
ラーウェイ！？
ラーウェイ
このじゃがいもに、
プロミネンストウガラシを
加えれば！
クェーッ！
トウガラシはやめてよ～ん！
バイパー
口直し用のデザートも作ろう。
イグニ
あれっ？ なめくじ、
逃げちゃった……
ツユハ
あはは♪
ちゃぷちゃぷ、こっちの
水たまりにおいで～♪
ピレスタ
いくよポテト～♪
ピレスタが
光の玉をポテトにキック！
ポテトは玉をキャッチして
頭に乗せた！
キャトラ
ぎにゃー！ 収拾つかーん！
思い出4
キャトラ
……こないだは、アンタの
意外な交友関係の広さを
垣間見たわ……
ベンケイ
……つまり、己が
最初の一人目だと考える方が
ムシがいいのよ。
なるほど……興味深いねえ。
キャトラ
ぎにゃー！ ベンケイいたー！
ベンケイ
うるせぇなぁ。
今帰るとこだ。じゃあな。
アイリス
いっちゃった……
うーん、彼の話は実に深いねえ。
何者なのかなあ？
キャトラ
…あら？
イシュプールにも
わかってないの？
そうだねえ。こう見えて私は、
経験主義者だったりするからねえ。
アイリス
あ、そうなんですね。
意外とね。
この目で見たことのないものは、
中々信じられないねえ。
キャトラ
ベンケイになにかヘンなこと
言われたの？
この世界は、何回目かの
世界だとか、なんとか。
キャトラ
？？？ どゆこと？
わからないねえ。
それに、わかってもきっと
意味のないことさ。
それはわかったんだ。
キャトラ
なら……いいけど……
自分のいない時間のことについて
考えるほど、私には
余裕があるわけじゃないし。
キャトラ
……復讐だっけ？
たしか、アンタの
やりたいことって……
そう。＜太陽と蛇の民の里＞に
君臨する、＜贋作の太陽＞を
討ち、民を救うことさ。
キャトラ
そのために、あの、
もじゃもじゃした名前の人の
助けがいるんだっけ？
キャトラくんには難しいのかなあ。
＜落陽を呑む忘我の毒蛇＞だよ。
キャトラ
でもさー、それって
伝承だって言ってたよね？
キャトラ
見てないものを信じてるの？
経験主義者なんじゃなかった？
ああ、彼には会ったから。
キャトラ
え！？
君たちも、会ってなかった？
思い出5
では、まとめるよ。
正確には、彼はまだ
＜落陽を呑む忘我の毒蛇＞には
なっていない。
彼の今の名は
＜地べた這いずりのたうつ蛇＞だ。
骨のような蛇のようなその姿……
覚えがあるんじゃないかな？
彼は遥か昔、闇に敗れ、
昏き地の底に沈められた。
そこで何万年もの責め苦にあった。
しかし最近、何かの影響で、
彼の封印が解かれつつある。
全ての封印が解かれたとき、
これまでの苦しみは
力へと転じる。
強大なる力を持つ
＜落陽を呑む忘我の毒蛇＞に
昇華した彼は――
――＜贋作の太陽＞を、
中天から引きずり降ろす
だろう――
……と、言われている。
キャトラ
……そして、おそらくそれは
真実だろうってことね……？
かなり信憑性は高いよねえ。
彼が実在するというのも、
この目で確かめちゃったし。
キャトラ
じゃあ……
復讐を、始めるの……？
うーん。
キャトラ
あら？
いや、各方面、
準備は進んでいるよ？
友人も増えたしねえ。
だけど、肝心の主役が、
まだ、もうちょっとだから……
しばらく、待ち、かな。
正直じれったいんだけどねえ……
アイリス
イシュプールさん……
ここは、もう一度
主人公に、
鎮めてもらっちゃおうかな。
気を焦らせてちゃ、
いざってときに、全力を
出せないかもしれないし。
ひとつ、よろしくお願いするよ。
思い出6
うん。心地良いねえ。
心に余裕が生まれてくるよ。
さて……
イラケッチラケッチィ、
イラケッチラケッチィ、
イラケッチィ……
……ふふふ、わかってるさ。
ここは、脱皮すべき
ポイントじゃないね。
キャトラ
じゃあ、どんなポイントなの？
ふふふ……
イシュプールは弓に
矢をつがえると、
太陽に向けて放った！
矢は一直線に空を裂き、
見えなくなった――
うん、いいね。
気力の充実を感じるよ。
キャトラ
ちょっと、気を鎮めたんじゃ
なかったの！？
落ち着くことと、
研ぎ澄まされることは
表裏一体さ。同居するよ。
キャトラ
……ムムムム！？
つまり！？
私は強くなったよ。普通に、ね。
キャトラ
ふむふむ。
来たるべき時に備えて、
と、言うべきか、
それは言い過ぎか――
キャトラ
……対決が近いの？
その、あんたの宿敵と？
どうだろう。わからないねえ。
キャトラ
でも、そのときがもし来たら……
もちろん、私も蛇の一人として、
奴に、忌まわしき風習を未だに欲する
＜贋作の太陽＞に。
矢を射、牙を突き立ててやるさ！
キャトラ
おぉっ！？
イシュプールがなんか、
燃えている！
いままでだって燃えていたのさ。
静かに、青白く、ね……！
クェーッ！
