茶熊版バイパー・思い出

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思い出1

バイパーがルーンカメラを構え、
シャッターを切った！

バイパー

いい表情だ。

キャトラ

ちょっ！？

バイパーがシャッターを切った！

アイリス

ええっ！？

バイパーがシャッターを切った！
かっこよく！

キャトラ

ア……アンタ……

バイパー

俺はバイパー。元退魔士。

今は新聞部……

バイパー

俺のカメラからは逃れられない。

キャトラ

いきなりなによ！

バイパー

レンズ越しに見える真実！

キャトラ

わけわかぁー！

バイパー

俺がなぜ新聞部に入ったか

お前たちにわかるか？

アイリス

わかりません！

バイパー

俺はたいていのスポーツは

様になってしまう……

バイパー

かといって文化系の部活は、

サムさをからめづらい。

キャトラ

からめなくていい！

バイパー

よって俺はカメラという

牙を手にした……！

バイパー

この牙で平和な学び舎に

センセーショナルな毒を

流してやろう……！

キャトラ

毒って！

バイパーがシャッターを切った！
切った！
切った！

キャトラ

ちょっとおおー！！

バイパー

さあ見せてみろ！　この俺に
青春の一ページを！！

キャトラ

ところでアンタの肩についてる

ソレ……なによ。

バイパー

フラッシュだ。暗い場所での

撮影に役立つ。

キャトラ

あ、写真を撮るときに

ピカってなる奴ね。

でもどっかで見たような……

バイパー

ルーンマグナムという武器の

パーツだが、フラッシュに

使えると思ってな。

キャトラ

武器だったの？

バイパー

壊れる前まではな。

持ち主がいいというので、

借りてきたわけだ。

バイパー

はいチーズ！！
いや、カニカマだ！！

キャトラ

自然と笑顔になっちゃう！

バイパー

いいぞスマイルだ！！

思い出2

なぜか、
バイパーと取材をすることに
なってしまった……？

バイパー

状況を説明する。俺がカメラマン、

お前が記者だ。

バイパー

どうした。

バイパー

お前はメモをしろ。

質問は俺がする。

バイパー

さっそくだが、

取材に協力してほしい。

マール

いいよ～。

バイパー

はつらつスマイル、ゲット。

マール

せっかくだし、バスケを

しているところを撮ってよ～。

バイパー

ではドリブルやシュートなど、

一通りお願いする。

マール

わかった！

じゃあまずドリブルだよ～。

バイパー

部活にかける意気込みなども、

聞かせてもらえるか？

マール

楽しくハッピーに……
自分の力で頑張る！

バイパー

運に頼らずに、か……

マール

バイパーさん、ラッキーいらない？

バイパー

他の奴にやったほうがいい。

余計な運は腕を鈍らせる。

マール

余計かなあ。

バイパー

運が無いのを、腕でどうにかする。

それが俺の趣味だ。

…………

……

イサミ

なぜ、私の取材を……？

バイパー

渋い表情、いただいたぞ。

イサミ

確かに滑稽でしょうな。この私が

いまさら学生のまねごとなど。

バイパー

学び始めるのに、遅すぎる

ということはない。

イサミ

実感しております。

まだまだ至らぬ己を。

バイパー

部活動への意気込みなどを、

聞かせてもらおうか。

イサミ

＜鬼退治＞の一族の剣は、

人を相手の剣ではありません。

イサミ

一撃必殺をもって、人ならざる

鬼を討つ。そんな一念を込め、

剣を振るっております。

バイパー

立派に青春だな。

励めよ。

…………

……

バイパー

さて。本腰を入れるか。

メアが一人、テニスの
練習をしている……！

思い出3

バイパーは――
カメラを●●に
預けた――！

バイパー

いいか。よく見ろ。そして狙え。

決定的瞬間をな――！！

バイパー

テニス！！！

メア

バイパーさん！？

バイパー

メアよ、相手になろう。

メア

テニスの、ですよね……？

バイパー

無論だ。

メア

…………テニス、できるんですか？

バイパー

ルールは把握している。

メア

知ってたからって、

どうなるものでもないと

思うんですけど……

バイパー

怖気づいたか。

メア

まさか。

バイパー

ならば、いくぞ。

バイパーはラケットを
逆手に構えた――！！

メア

……ええっと……

バイパー

どうした？　来い！

メア

ハーッ！！

バイパー

フッ！

メア

えーいっ！！

バイパー

甘いな！！

メア

…………なんか…………

くやしい…………！

バイパー

撮れたか●●。

ベストショットが！

あ。

バイパー

タイミングが……！！

メア

ええっと……普通に……

撮るんじゃダメなんですか？

バイパー

カメラを意識したら、自然な

表情は生まれないだろう。

メア

バイパーさんって……

個性的、ですよね。

バイパー

俺には俺のやり方がある。

当然だろう？

メア

ちょっと、うらやましいです。

バイパー

ひょっとすると、俺が好きに

生きてるように見えるか？

メア

私よりは。

バイパー

好きに生きるというのは、

自分で背負うということだ。

お前にできるか？

メア

できるようになりたいです。

バイパー

ナイス表情。

メア

あっ！？

バイパー

しまった、数秒遅かったか……！！

思い出4

ザック

いやあいいなあ！！

な～んかロックな雰囲気だぜ！

ガレア

ロックか……

ラウドなサウンドは

好みだがな――

バイパー

唐突にハーモニカ。

ガレア

ほう……

ザック

渋い！！

バイパー

ブルースだ……

ザック

で、バイパーの旦那、何してんだ？

バイパーは大きな紙を広げて、
じっくりと眺めている。

バイパー

部員が書いてくれた記事の、

チェックといったところだ。

ガレア

壁新聞……か

バイパー

その通りだ……学園で起こった

最新のニュースを、まとめてある。

ザック

生徒会長挨拶、部活動紹介、

今週の標語、冒険用語集。

ガレア

そつなくまとまっている。

バイパー

こういうのは、真面目に

やったほうが、面白い。

ザック

そういうもんかね？

バイパー

特ダネを報道するばかりが、

ジャーナリズムではない。

ガレア

平穏な日常、か。

バイパー

束の間の平穏だ。ここには

騒動の種がそろっている――

ガレア

バイパーの舌は、目に見えぬものを

感じ取るらしいな。

バイパー

蛇は熱を読む――

その舌でな。

…………

……

バイパーは壁新聞を壁に
貼り付ける。

キャトラ

おっ、新聞できたのね。

バイパー

ああ。

マール

バイパーさん、

なんでもできるんだね～。

バイパー

退魔士は、財産を持たないもの。

だから俺は、技を身につけた。

マール

だから器用なんだね～。

バイパー

俺は、そこそこ金を貯めてるがな。

バイパー

俺はしばらく休学する。

マール

どこにいくの？

バイパー

蛇らしく、藪で獲物を待つのさ。

…………

……

元・退魔士バイパーは……
ギルドにその経歴を
買われていた。

ギルドには、バイパーに
うってつけの仕事があった。
実に――

バイパー

毒蛇には、似合いの仕事か。

思い出5

少年は、希望をもつことを諦めた。
明日を諦めた。

希望など、明日などもてるのは、
強い人間――選ばれた人間だけだ。

少年

（母さん……）

ママー！！

商人

理解が早いな。もうお前たちは、

家には帰れない――

商人

こういう仕事だ。

『良心が痛まないのか』

なんてこともいわれる。

少年

…………うううっ…………

商人

だがな、よく考えてみろ。

豚や牛を食う時、いちいち罪悪感を

感じる奴はいない。

商人

そういうことだ――

けひ、けひひひ。

毒蛇は、口元を隠している。

どうしてかと聞かれると、毒蛇は
気取った顔で答える。
かっこいいからと。

だが、真の理由は違う。
毒蛇は、マフラーの下で笑みを
漏らしていた――

きっとそれは、醜悪な笑みだ。
人目に触れるのは忍びない。
毒蛇はそう考えていた。

バイパー

目を閉じていろ。

商人

いっ……いいいいいっ！？

バイパー

おお、どうしてあなたは、

年端もいかぬ子供たちから、

将来を奪おうとするのです。

商人

ぐあああああ、ああああああ！！

バイパーは、倒れた商人を
蹴り上げた。

バイパー

そのような悪事、神々が許しても、

あの毒蛇は見逃しては

くれませんよ――

商人

おおおおまあああああええええ！！
生きて帰れるとおもうなあああ！！

バイパー

蛇は悪食だ。そして――

常に腹を空かしている。

バイパー

手勢はどれくらいだ。千か、二千か。

俺を――失望させるなよ。

少年

…………あなたは……

バイパー

目を閉じてろと、いったはずだ。

少年

助けて、くれるんですか。

バイパー

そう思うか？

少年

助けてください！！
僕たちを助けてください！

バイパー

だったら誓え――

全てを忘れると。

バイパー

もう二度と……

毒蛇の住処には、近づくな。

…………

……

子供たちは家に帰った。
毒蛇は、ただ一人――

生まれた時も――死ぬ時も――

バイパー

それが俺には、似合いの

生き様、いや、死に様か。

バイパー

――あの場所は、

俺には眩しすぎる。

もはや戻るまい――
毒蛇が生きるのは、暗闇の中。

…………

……

メアは、壁新聞をじっと
見つめていた。

メア

バイパーさん、帰って……

くるわよね……

思い出6

毒蛇の心に、唐突に光が差した。

遠い場所で、誰かがおせっかいを
焼いたらしい――

バイパー

…………フン。

バイパー

帰る場所、か――

バイパー

そんなものなくても、

俺は戦える。

帰る場所があるから、
守る者がいるから、
だから戦える。

バイパーはそんな考えを好まない。

バイパー

だが、今の俺は――

様になりすぎているな。

そんな自分は――確かに毒蛇の
美学には反していた。

…………

……

バイパー

いいか、撮るぞ。

キャトラ

……バイパー、アンタは

入らないの？

バイパー

俺は、牙を振り下ろす側だ。

アイリス

この場合は、シャッターを

降ろすってことですね。

イサミ

バイパー殿。そのカメラには、

タイマーが内蔵されていると。

バイパー

そうだが。

キャトラ

じゃあ、アンタも入りなさいよ！

バイパー

俺は――

マール

バイパーさん、ここあいてるよ！

みんなで撮ろうよ～。

バイパー

そうだな――

バイパー

確かに……その方が面白い。

キャトラ

はーい、カニカマ！

傍らから――メアはみんなに混ざる
バイパーを見ていた。

メア

バイパーさん……！

バイパー

サムかっこよすぎるポーズ！！

ボイス

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