チヨ・思い出

チヨの思い出とボイス

思い出1

？？？

君も折り鶴にしてあげようか？

キャトラ

はい、いきなりこわい！

どこからともなく一羽の折り鶴が
ひらひらと飛んでくると、
女の子の手のひらにとまった。

アイリス

わあ、すごくきれいな折り鶴ね。

？？？

ちっちゃい頃からずっと

折ってきたからね。

目をつむったままでも作れちゃうよ。

チヨ

あたしチヨっていうの。

これからよろしくね。

チヨ

スキあらば折りたたんで

あげるからね。

キャトラ

ぎにゃー！！

アイリス

チヨちゃんは

折り紙が大好きなのね。

チヨ

うん。なんでも折れるよ。

例えば――

チヨは白い折り紙を取り出すと、
慣れた手つきで折り始めた。
すると――！

あっという間に、
一匹の子猫が出来上がった！

キャトラ

す、すごー！

手品みたい！

チヨ

そう、そうなの。

折り紙はすごいの。

チヨ

一枚の紙だったものが、

別のなにかに変わる。

願いを込めて折っていけば、

さらに特別なものになる。

チヨ

折り鶴は、もっともっと特別。

誰かを支えたい、救いたい、

寄り添いたい――

チヨ

そんな、あたたかい

祈りそのものなの。

チヨ

だからね、あたしは島を出てきたの。

大切な人を想う気持ちを

応援したくって。

キャトラ

優しいのねえ……

たまにドクゼツに

なるのはナゾだけど。

アイリス

さっき折り鶴を飛ばしてたけど、

あれは……？

チヨ

あれはね、

あたしの生まれつきの能力。

チヨ

願いを込めたものを

動かすことができるの。

チヨは手のひらに乗っている
子猫をトコトコと歩かせた。

チヨ

そんなわけで、

これからお世話になるね。

チヨ

折って折って折りまくるからね。

チヨ

――色々と。

キャトラ

だからコワーイ！

思い出2

キャトラ

ねえねえ、チヨ。

お願いがあるんだけど。

チヨ

折りたたまれたいの？

キャトラ

ちがわい！

アイリス

チヨちゃんに、

折り紙を教えてほしいなと思って。

キャトラ

アンタが折り鶴を

飛ばすのを見てたら、

キョ―ミがわいてきちゃってさ。

チヨ

もちろんいいよ。そのために

ここに来たわけでもあるし。

チヨは色とりどりの
折り紙を取り出した。

キャトラ

キレイな折り紙ね～。

さ、なにをつくる？

チヨ

折り鶴は、

たぶん作ったことあるよね。

チヨ

そうね……

じゃあ、わりと簡単なもので――

チヨ

いまを必死に生きてはきたが、

ふと足を止めて振り返ると

その残酷な時の速さが己を思いも

よらぬ場所へと連れてきたのだ

ということを悟った星たぬき。

キャトラ

重いわ！

ていうかカンタンなのそれ！？

チヨ

――のお母さん星たぬき。

キャトラ

おかあさんかーい！

チヨ

さ、はじめるよ。

――覚悟はいい？

アイリス

か、覚悟……？

…………

……

チヨ

違う。

そこは折すじをつけない。

チヨ

……そう。そこで外側に……違う！

チヨ

立体感が足りない！

もう一度折りなおして。

アイリス

は、はい！

チヨ

……主人公。

耳がない星たぬきになってるよ！

キャトラ

ぎにゃ……ぎにゃ……

チヨ

キャトラ、折り紙が

くちゃくちゃだよ！

君はなにを作っているの？

人間のおばあちゃん？

チヨ

違うよね？

星たぬきだよね？

『いまを必死に生きてはきたが――

キャトラ

だ、だってえ！　アタシの

手じゃムズすぎるんだもん！

もっとカンタンだと思ってた！

チヨ

折り紙をなめちゃだめだよ。

とっても奥が深いんだから。

チヨ

あきらめたら君を

折り鶴にしちゃうからね？

キャトラ

ワーー！！

…………

……

チヨのスパルタ指導の
甲斐があり――

いまを必死に生きてはきたが、
ふと足を止めて振り返ると
その残酷な時の速さが己を思いも
よらぬ場所へと連れてきたのだ
ということを悟った星たぬき。

の母親が完成した！

チヨ

おつかれさま。

みんな、よくがんばったよ。

キャトラ

ほんとうにつかれた！！

チヨ

厳しくしたのは、みんなが

ついてこれると思ったからだよ。

チヨ

……厳しすぎたかな？

……ごめんね。

アイリス

ううん。とっても

楽しかったよ、チヨちゃん。

キャトラ

そーね。手先のきよーさの

ナニカが目覚めそうだわ。

チヨ

……そう？

ふふっ、よかったあ。

思い出3

チヨ

今日は、みんなで

折り鶴を作りましょう。

チヨ

わからないところがあったら

何度でも教えるから、

遠慮なく聞いてね。

子供たち

はーい！！

チヨは街の子どもたちのために、
折り紙教室を開いていた。

チヨ

ここを、こんな風に折るの。

そうしたら、フクロを開いて……

男の子

うーん……

むずかしいよお……

チヨ

大丈夫。

あせらず、ゆっくりやろう？

女の子

おねえちゃん、ここはどーやるの？

チヨ

あたしがやるのをよく見ててね。

……こうして……こう……

キャトラ

子供たちには

こんせつてーねいに教えるのね。

…………

……

チヨ

じゃあ、今日はこれでおしまい。

今度は星たぬきを作ろうね。

男の子

ありがとーございましたー！

女の子

…………

チヨ

……？

どうしたの？　元気がないね。

女の子

……おかあさん、病気なの。

アイリス

……病気？

女の子

ずっと、病院でねているの……

チヨ

だから、折り鶴を？

女の子

うん……

はやく、元気になってほしくて……

チヨ

…………

チヨ

じゃあ、千羽鶴、作ってみよっか？

女の子

……せんばづる？

チヨ

1000羽の折り鶴を作るの。

チヨ

すごく大変だけど……

その分、願いがたくさん

込められるんだよ。

チヨ

お母さんも、きっと元気になる。

女の子

……できるかな……

キャトラ

アタシたちも手伝うわよ！

それに、なんてったって

チヨがいるんだしね。

チヨ

でもね、大事なのは、君が一番

頑張ること。願いを込めながら、

一羽一羽ていねいに折っていくの。

……できる？

女の子

……うん！

がんばってみる！

こうして、
主人公たちの
千羽鶴づくりがはじまった。

思い出4

女の子

…………

おかあさんが、元気に、

なりますよう……に！

女の子

できた～！！

これで、はちこめ～！

チヨ

うん、上出来。

飲み込みが早いよ。

アイリス

……それにしても、

やっぱりチヨちゃんはすごいね。

キャトラ

あっちゅーまに、

折り鶴の山ができてるもんね……

その間にもまた一羽、
チヨの手により鶴が折られる。
……魔法のような手際だ。

キャトラ

チヨはさ、なんでそんなに

折り紙が好きになったの？

チヨ

両親がね、ちっちゃい時から

よく折り紙を買ってくれたの。

チヨ

お金があんまりない家でね。

あたしが退屈しないように、って。

そのおかげだね。

チヨ

両親っていっても、

血はつながってないんだけど。

チヨ

あたしはね、

＜ミドウ＞の家の人間なの。

キャトラ

ミドウ？

チヨ

クジョウっていう島で、

古くから続いている家柄なの。

不思議な力を持つ一族でね。

アイリス

前にいってた、願いを込めたものを

動かすことができるって能力ね？

チヨ

うん。……私はね、

＜ミドウ＞の本家で生まれて

すぐに、縁を切られたの。

チヨ

理由はわかんない。……それでね、

アオイの島っていう所にいる分家の

夫婦に引き取られて育ったの。

チヨ

……本当の子どもじゃないのに、

二人はあたしをすごく可愛がって

くれてね。

チヨ

だから血はつながっていなくても、

あたしにとっては二人が本当の

両親だし、生まれがどうとか全然

気にならないし、気にしないの。

チヨ

前を向いて生きなきゃね。

アイリス

……強いのね、チヨちゃん。

女の子

…………

女の子は、やおら新しい折り紙を
取り出すと、鶴を折り始めた。

女の子

できた！

……はいこれ、お姉ちゃんに。

チヨ

……あたしに？

女の子

よくわかんないんだけど……

お姉ちゃんに、願いをこめて、

おりたくなったの。

チヨ

……ありがとう。

アイリス

さ、もう暗くなるから。

今日はこれでおしまいに

しましょう。

女の子

はーい！！

また明日ねー！！

キャトラ

さて、それじゃ……

アイリス

私たちは

もうひと頑張りしましょうか。

チヨ

みんな、無理はしないでね。

チヨ

疲れたら、

折りたたんであげるから。

キャトラ

ぎにゃー！！

思い出5

千羽鶴づくりは、
佳境を迎えていた。

女の子

うふふ、もうすぐかんせーだね！

キャトラ

アンタ、折るのがすっかり

うまくなったわねえ。

アイリス

折るスピードも、

すごく早くなったね。

女の子

でもね、ちゃんと一羽ずつ、

願いをこめながらおってるよ！

チヨ

えらい、えらい。

女性

あ、いたいた！

女性

ちょっと、大変なのよ！

お母さんの具合が……

女の子

えっ……

女性

いますぐ病院に来てちょうだい！

女の子

おかあさん……！

キャトラ

千羽鶴はあたしたちに

まかせて、はやく……！

女の子

う、うん……！

チヨ

…………

そんな……

アイリス

チヨちゃん、きっと大丈夫だから。

チヨ

……やだよ……

あたしとおなじ思いなんか……

させたくないよ……

キャトラ

チヨ？

チヨ

……5歳の時にね……

仲がよかった年上の男の子が、

病気になったの……

チヨ

あたしはその時に、鶴の折り方を

覚えたの。そして、男の子が元気に

なるように、千羽鶴を作った……

チヨ

一人で作るのはとても大変だった。

でも、男の子のためを思うと、

いくらでも頑張れたの。

いくらでも、願いを込めて

折ることができた。

チヨ

でもね……

男の子は、死んじゃった。

アイリス

そんな……

チヨ

あたしは思った。

死んじゃったのは、

きっと自分の折り方が

ヘタだったからだって。

チヨ

――願いが、

足りなかったからだって。

キャトラ

チヨ、わるいほうに

かんがえちゃダメ。

キャトラ

アタシたちや、アンタ、

そしてなによりあの子が、

たくさんの＜願い＞をこめて

千羽鶴を作ったでしょ？

チヨ

わかってるよ、キャトラ。

わかってる……けどね……

……それからしばらくして……

キャトラ

……かんせいしたわね、千羽鶴。

チヨ

…………

思い出6

ルーンの光が、
千羽鶴を優しく包み込んだ……

チヨ

これは……

主人公の

＜願い＞……？

チヨ

…………

チヨは千羽鶴に手を当て、そっと
目を閉じた。アイリスとキャトラ、
主人公も
それにならう。

チヨ

みんなの想いが……

そしてあの子の想いが、

あたしに流れこんできたよ。

チヨ

あったかかった。

とっても、あったかかった……

女の子

みんなー！！

女の子

あのね、おかあさん、だいじょうぶ

だって！　ちょっと、かぜをひいた

だけだって……！

女の子

あしたになれば、

ねつもさがるって！

アイリス

よかった……！

女の子

でも……まだしばらくは、病院に

いなくちゃいけないんだって……

キャトラ

……そうなの……

チヨ

……ねえ、顔をあげて？

君に渡さなくちゃいけないものが

あるんだから。

チヨは、出来上がった千羽鶴を
女の子へと差し出した。

女の子

あ……せんばづる……

チヨ

無事に……できたよ。あたしと、

みんなと、そしてなによりも、

君の祈りが詰まった千羽鶴。

チヨ

きっと、お母さんは元気になる。

女の子は、千羽鶴を受け取る。

女の子

……あたたかい……

これが……

みんなの想い……

女の子

わたしの、想い……

女の子

ありがとう……！

ありがとね……！

アイリス

行きましょう、病院に。

私たちも、ごあいさつしなきゃ。

チヨ

…………

男の子

……なあ、チヨ。

チヨ

……なあに？

男の子

オレはさ、チヨに、そんな

暗い顔をしてほしくないんだ。

チヨ

……うん……ごめんね……

男の子

……チヨには、明るくいてほしい。

チヨ

……あかるく？

男の子

うん。だってその方が、

絶対に楽しい。

男の子

『早く元気になれよ。じゃないと

お前も折り鶴にするぞ』ぐらい

言ってくれた方がいいって。

チヨ

…………

チヨ

お……

……き、きみも、

おりづるにしてあげようか？

男の子

ふふ……その調子……

男の子

……チヨ。

男の子

強く、生きるんだぞ。

母親

……チヨちゃん。

あの子がね、机の引き出しに

これをしまっていたの。

母親

チヨちゃんへの、贈り物。あなたに

隠れて折っていたんでしょうね。

……あの子はもう、戻っては

こないけれど……

母親

あたしの心の中で、

チヨちゃんの心の中で、

あの子はずっと生き続けるわ。

母親はいびつな形をした一羽の
折り鶴をチヨに手渡す。
――羽に、言葉が添えられていた。

『オレがいなくなっても、
チヨが元気に、明るく
生きていけますおうに』

チヨ

…………う、うぅ…………

チヨ

い、いきるよ……

あかるく、つよく、いきるよ……！

ずっと……！　ずっと！！

チヨは、一羽の折り鶴を
夕暮れの空へと飛ばす。

チヨ

願いは、届くよね。

鶴は昇ってゆく。
高く、高く、空の向こうへと。
切なる祈りを乗せて。

ボイス

フォースター投票時

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