三鮮脱骨魚・物語
一 光と影の間に・壱
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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桜桃畢羅
「そして、天地が真っ二つに分かれ、ボクたち全員が震える大地の中へと落ちていってしまったのです!」
湯円
「うわぁ…す、すごいです!「千面の影」おにいさんは、どうやってそれをやったのですか?」
混湯酒醸元宵
「湯円!地面を真っ二つにする装置なら、ぼ、ぼくの酒心地雷だっていずれは……うぅ、でもぼくも予告状を貰いたいなぁ、だってそれにか「千面の影」直筆サインがあるんだろ!」
空桑旅館開業の余興として、舞台の上では桜桃畢羅が、何年か前に西域で起きた物語を語っている。
観光客は満席状態で、食魂たち以外にも、初めて空桑を訪れる旅行客がたくさんいた。
神秘的な西域の伝説、怪しげな千の顔を持つ怪盗、幻想的な砂漠の情景、観客はみんな物語に酔いしれ、『千面の影』の物語を各々に想像するのだった。
東璧龍珠
「オレの見込み通りだな。畢羅のヤツ、やはり語り部としての才能がある。」
湯円
「若様~若様~! もしいつか空桑に『千面の影』が来てしまったら、わたしたちはどうすればいいですか?だって、どんな人にも化けてしまうのでしょう?」
【選択肢】
・きっと、気のいい村人Aに化けてるよ。
・想像もつかないような人に化けてるかもね。
選択肢
きっと、気のいい村人Aに化けてるよ。
混湯酒醸元宵
「気のいい…村人A? う~ん、もっとカッコイイ姿だと思うんだけどなぁ……
なんたってあの『千面の影』が空桑に来るんだから。
少なくとも九重天や幽冥司にも名が轟くような、じゅ――重要人物じゃなきゃ!」
想像もつかないような人に化けてるかもね。
湯円
「わ、若様にも想像がつかないんですか……うひゃあ……」
混湯酒醸元宵
「湯円、目が星になってるよ。
ぼくの予想では、千の顔を持つ怪盗は、きっと最高にカッコよく登場すると思うんだ!」
グライダーに乗って空から降ってきて、予告状や酒心爆弾を撒きながら、とかね!」
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混湯酒醸元宵
「ん? 若様、何を見てるの?」
東璧龍珠
「あそこに……怪しい奴がいるな。」
東璧が指す方向に目を向けると、賑やかな観客区域に、迷子になったらしい旅行客が一人、ボランティアに道を聞いている。
問題はそのボランティアは管理司が配布した名札をつけておらず、尚且つ変な干し魚のマスコットのチャームを着ているのだ。
男の子
「屋上にはこの階段から行かないといけないんだね? わかった、ありがとう!」
???
「はははは…! どういたしまして!
空桑は美しいオアシスだから、遊ぶ時は気を付けて。皆、ちゃんと守ろうな!」
【選択肢】
・こんにちは、道を尋ねたいのですが。
・ハロー! 三鮮脱骨魚。
選択肢
こんにちは、道を尋ねたいのですが。
???
「おや? かの有名な空桑の若様じゃないですか。こんな所で道を尋ねたりするよりも、他にもっとやるべき事があるんじゃないかな?
でもまぁ、道案内は私に任せてくださいよ。
ほら、これが私の作った空桑のロードマップです、どこかの誰かさんの砂盤より、よっぽど正確だと思うよ。」
混湯酒醸元宵
「わぁ、本当に詳しく描いてある……
って、ちょっと待って! 若様の寝室のどこに寝間着があるか書いてある……い、一体誰!?」
ハロー! 三鮮脱骨魚。
???
「ははは……!久しぶりだな、○○。一目で俺様を見破るとは、面白い奴だぜ。
なに?俺様が登場するときにはいつも名前が「???」だからだって……?
ぬかったぜ、こんなところに落とし穴があったとは!
次から登場する時にはキャラ名にも気をつけなきゃな……」
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目の前の怪盗に業を煮やした東璧龍珠が、唐刀を抜いて前に出る。
東璧龍珠
「虚言はここまでだ。三鮮脱骨魚、三秒以内に被り物を取って正体を現せ。」
三鮮脱骨魚
「やれやれ、成長しない男だ。相変わらず『毒舌寡黙キャラ』で売ってるのか?そんな堅物に、異性も寄ってこないぜ。」
――シュッ!
三鮮脱骨魚の話が終わらない内に、
東璧の刀が干し魚の被り物を切り裂き、中の綿が飛び出す。
【選択肢】
・空桑は無法地帯じゃないよ。
・勢いよくホイッスルを吹く。
選択肢
空桑は無法地帯じゃないよ。
三鮮脱骨魚
「その通り!空桑は無法地帯じゃない。法の執行は慎重にってな!
こんな野蛮な事をして、面倒事を起こしたいのか? 東司馬さんはよぉ?
一生懸命に法を説いてる雲謹録事が知ったら、それはもう恥ずかしさのあまり、涙ちょちょぎれの土下座ものだな。」
東璧龍珠
「くだらん。」
勢いよくホイッスルを吹く。
東璧龍珠
「む?このレッドカードは何だ?オレに退場しろと?」
三鮮脱骨魚
「あはははっ……!これは公正な審判だねーーん?俺様にもあるのか?
やれやれ、怪盗は物事を荒立てないもんだぜ。それに、ここに来たのは他に大事な用があるからなんだよな。」
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混湯酒醸元宵
「若様、若様! 雪が降ってきたよ……!」
湯円
「わぁ……! わたしが一番好きな季節がやって来たんですね……。
柔らかくて、真っ白な、雪が……ハックション!
ううぅ、雪じゃないです……こ、これは紙切れですよ!」
西域楼蘭の幻想風景が、今一度再現されたかのようだ。降りしきる雪が如く空一面にカードが舞い始める。
混湯酒醸元宵
「これは――
わあ! こ、こここれは『千面の影』の予告状!!」
――バチバチッ、バチバチッ!!
湯円
「ちょっ…袁宵、そんなに興奮しないでください……
体の爆竹が興奮で爆発してます、気を付けてください……!」
手にしたカードを開き、東璧は眉をひそめた。
東璧龍珠
「『今宵丑三つ時、我千面の影は空桑の人々の宝を奪い去る』……
三鮮脱骨魚、言いたいことは直接言え。
こんな回りくどい、馬鹿げたことをするな。
三鮮――む?」
皆の視線が予告状から離れた頃には、目の前の人影は跡形もなく消えていた。
広々とした空桑旅館に観客区域……そこにいる旅行客もまばらになってきた。
開けた地面の上に、白くて丸々としたマスコットの被り物が落ちていて、その上には一枚の紙切れが――
『清廉潔白な小魚ちゃん』
東璧龍珠
「チッ! こいつ、まさか本当に空桑に手を出すつもりか?」
二 光と影の間に・弐
◆主人公【女性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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時は亥の刻、空桑には明かりが煌々と灯り、誰も眠りにつけずにいる。
徳州扒鶏
「旅行客は全員帰還させ、外に繋がる扉を全て封鎖した。
皆さまご安心ください。今夜は夜通しで警務部を総動員し、全ての食魂の財産と安全を守ります。」
蟹釀橙
「私たちの宝を奪うと言っていましたが……私からは何も盗めるものなど無いはずです。」
徳州扒鶏
「何はともあれ、安全を第一に行動してください。彼の能力をもってすれば、何処に宝を隠していようと盗まれてしまう可能性があるからね。」
蟹釀橙
「身につけていない宝物……まさか、私の工具箱でしょうか?
もしや、あの奇人は手芸愛好家なのではっ。
申し訳ありません。皆さん、私は先に失礼します。工具箱に交流メモをいくつか入れておかなくては。」
糖葫芦
「蟹釀橙兄さん待って、わたしも一緒に行く!
ベッドの下にある玩具のお城を隠さなきゃ。
もしあれが盗まれちゃったら、わたし悲しくて耐えられないもの!」
ずっと黙っていた東璧が、鋭く揚州炒飯を睨みつける。
東璧龍珠
「揚州、何か言いたげだな。」
揚州炒飯
「うぅ……
予告状には『空桑の人々の宝』と書いてあります。晩生が思うに……この宝というのは複数ではなく、何か共通する……皆が大切にしている存在ではないかと。」
東璧龍珠
「君が言っているのは__
美食か。」
揚州炒飯
「若様です。」
東璧龍珠
「……確かに。」
突然、慌ただしい足音が部屋へと近づき、切羽詰まった息遣いと共に、今にも泣き出しそうな声が聞こえてきた。
糖葫芦
「わ、わかが……わかがいなくなった!!」
徳州扒鶏
「まさか三鮮脱骨魚は、本当に彼女をさらったのか!?」
糖葫芦
「そうじゃなくて……これを見て!」
糖葫芦が手渡してきた便箋には、僅か一行の文字が書かれていた。
「私のことは心配しないでください。食魂の財産と安全を守るのも、空桑の若さまの務めです」
時計塔の針がそろそろ十二時を指す頃。夜の寒風に乗ってグライダーの翼が空を切る。
三鮮脱骨魚はゴーグルを額に押し上げ、図面に印をつけながら、グライダーの方向を調整する。
三鮮脱骨魚
「ここにも痕跡なしか。
チッ!まさか、俺様がこんなことをしなきゃならねぇ日が来るとはなぁ。
近くに助手がいなかったら、俺様のキャラ設定が崩壊するところだったぜ。」
そう言って、三鮮脱骨魚は機体の後ろにあるかさばった布の塊に目を向け、優しい笑みを浮かべる。
三鮮脱骨魚
「お~い?○○、いつまで黙ってるつもりだぁ?」
【選択肢】
・……
・いつ気付いたの?
選択肢
……
周りが突如、静寂に包まれる。まるで風の音さえも止まってしまったかのようだ。
身をかがめた彼の淡い影が布の塊と重なり合う。
布に包まれていたため視界は真っ暗だったが、温度が一気に上がった感覚がする。
三鮮脱骨魚
「ふ~。一晩中頑張って疲れたからなぁ。ここに丁度良い背もたれがあるし、一休みするかな。
……っておい!そんなに強く蹴るなって!おいーーか弱い骨無し魚にそれは酷いんじゃねぇの!?
あん?何時からそこにいるのに気付いてたかって?」
いつ気付いたの?
三鮮脱骨魚
「ん~。何時からだっけかなぁ?ちっとばかし難しい質問だなぁ。」
彼はそっと布をめくって中を覗いた。
そして、またあの狐のような掴み処のない、楽しそうな笑顔を浮かべる。
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三鮮脱骨魚
「ここに布の塊があったときから、君が部屋から消えたときから、
君が今日の旅行客記録を調べているときから、君が……
今朝予告状を拾って、それを見て鼻で笑った時から。
こんなに時間が経ったのに、まさか未だに俺様の筆跡を覚えてるなんてな……
なぁ、これってもしかして……
無名の俺様でも、ちゃんと君の心の中に刻み込まれているって理解で良いのかな?
あっはははは……!なに呆けてるんだよ!ほんと面白れぇなぁ。
こんなくだらない質問なんか、適当にあしらっちまえばいいのに。
それよりも、今はもっと大事な事があるだろ。」
二人はグライダーの持ち手をギュッと掴む。彼が図面をゆっくり広げると、
そこには既に何本かの経路と地点にバツ印が書かれてあった。
いくつか丸で囲まれた所が、注意すべき対象なのだろうか。
三鮮脱骨魚
「この模倣犯……今朝、俺様に道を聞いてきた少年な。俺様と同じ貧民窟の出なんだ。
こいつは人間界で俺様の情報を調べまわったらしい。
いつもなら俺様も真っ先に止めに行くんだが__
たぶん……同じ境遇だからかな、少し躊躇しちまった。
こいつが一体何をするつもりなのか、観察してみたくなったんだ。
だが、まさか空桑に来るとはね。フッ……。」
そう見下ろしてきた彼の瞳に、夜空の星の光がぼやけた影を落としている。
三鮮脱骨魚
「この件について、俺様の助手はどう思う?」
【選択肢】
・動機から手をつけようか。
・証拠から手をつけようか。
選択肢
動機から手をつけようか。
三鮮脱骨魚
「こいつは俺様と同じで両親がいない。
小さい頃から地下世界で、進むべき方向も分からずもがいていたんだろうな。
そんな子供が窃盗をする動機……自分に足りないものと関係があるのかもな。」
証拠から手をつけようか。
三鮮脱骨魚
「以前人間界でこいつの素性を調べたことがある。
情報屋が言うには、こいつは孤児らしい。
住んでいたボロ屋に残された沢山のメモから推測するに、
どうやら両親の行方を捜しているらしい……」
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三鮮脱骨魚
「ん?君が持っているそれは……追尾香?
はははは……!あいつが君にこれを貸すとはな。
あいつもとっくに違和感を感じてたってことか。
でも、今後も君にこれを使われたら、俺様の逃げ場がなくなっちまうなぁ。」
彼はわざとらしくため息をつき、偽物の予告状を細かく破り、瓶の中へ入れる。
すると、たちまち追尾香から香りが立ち上り。
神殿の方向へフワリフワリと漂っていく__
【選択肢】
・__この香りは!
・__この方向は!
選択肢
__この香りは!
三鮮脱骨魚
「なんだって?化粧好きな食魘から同じ香りがしてただと?
宴仙壇の倩菇嬤……」
__この方向は!
三鮮脱骨魚
「この経路は確かにまだ偵察していなかったな。だがここは直接君たちの中区に繋がる__
なに?宴仙壇の倩菇嬤から同じ香りがしてただと?」
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三鮮脱骨魚
「もし本当にこいつが宴仙壇の奴らと接触していたとしたら、この模倣犯の目的はもしかすると__
神殿に奉納されている__『食物語』!!」
__パンパンッ!
夜空に突然二つの乾いた銃声が鳴り響き、グライダーの片翼に立て続けに穴があいていく。
バランスを失ったグライダーは羽が折れた鳥のように、深い林の中へと真っ直ぐに落ちていった……
三 光と影の間に・参
◆主人公【男性/女性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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符離集焼鶏
「ゲッ!こ、このグライダー、○○が乗ってたのか?
おいおい……ったく、大丈夫か?
今日は警務部が空桑全域を警備してて、神殿付近は特に厳重警戒中なんだよ。
それで俺は空域の狙撃を任せられたんだが……
お前のグライダーが神殿の領域内に飛び込んできたから、それで__」
三鮮脱骨魚
「……。」
符離集焼鶏
「おわぁっ!今、草むらから出てきたのは誰だ!?
○○、お前、夜な夜な男を連れて、ま、まさか……
駆け落ちか!?」
【選択肢】
・しーっ、誰にも言わないようにね。
・これは任務だから秘密。
選択肢
しーっ、誰にも言わないようにね。
符離集焼鶏
「ああ、わかった……って、そんな訳あるかぁ!
それがマジなら、空桑を揺るがす一大事だぞっ!」
三鮮脱骨魚
「どおどお、安心しなって。少なくとも今回のは駆け落ちじゃねぇから。
本当に駆け落ちなら、こんな簡単に捕まるわけねぇだろ?」
これは任務だから秘密。
符離集焼鶏
「チッ、俺ら空桑警務部も知らないような極秘任務なのかよ……」
三鮮脱骨魚は口に手を近づけ、笑いながら「しー」というしぐさをする。
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符離集焼鶏
「お前ら、どうしても神殿に入るのか?」
三鮮脱骨魚
「ああ。俺様達が守るんだよ__『空桑の人々の宝』をな。
こればっかりは、自分たちでやらなきゃならねぇ。」
符は疑いの眼差しで三鮮脱骨魚をしばらく睨んだ後、渋々と道をふさいでいた中正式歩槍を下ろし、ため息をついた。
符離集焼鶏
「こいつ、俺達が探しているあの大怪盗だろ……
○○、お前がこうも頑なにこいつに肩入れするということは、
なにか訳があるんだよな。
行けよ。ここは俺が見張ってるから、怪しい奴は一人たりとも逃がさねぇぜ!」
時は既に丑三つ時。
『食物語』が置いてある空桑神殿には明かりが煌々と灯り、
昼間のように明るかった。
常時の守衛以外にも、広間の中央には人だかりができている__
明らかに現行犯の取り押さえ現場だ。
体にいくつもの傷跡がある男の子が、『食物語』の置かれた台座の傍に立ち、慌てふためいていた。
男の子
「お、お前ら……く、来るなぁ!」
【選択肢】
・じゃぁ……そっちから来てくれる?
・バカなことはしないで!
選択肢
じゃぁ……そっちから来てくれる?
男の子
「……。」
三鮮脱骨魚
「そうそう、ここは人通りが多いんだから、塞いでちゃだめだろ?」
バカなことはしないで!
男の子
「バカなことじゃない、俺はただ__」
三鮮脱骨魚
「へぇ?
他人の許しなく家に入り込んで、あまつさえ現場を取り押さえられるのは……
バカじゃねぇの?」
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男の子
「__あんたは?」
その子の視線が三鮮脱骨魚の服にある魚骨の印を捉えると、
たちまち顔に歓喜の色が現れたが、次の瞬間には失望へと変わっていった。
男の子
「あんたがなんでこいつらと一緒にいるんだよ?
あんたは……俺たちの代表で、俺たちを助けてくれるんじゃなかったのか?
俺はずっとあんたに一目会いたくて、あんたみたいな人になりたくてっ!!」
三鮮脱骨魚
「……。
その前に教えてくれねぇか。どうして『食物語』を盗もうとした?」
男の子
「そんなの、あんたが一番わかってるはずだろ……
温かい家庭を与えてくれる、願いの冊子……
これさえあれば、本物の家族が手に入るんだ!
俺たちにとって、世界で一番偉大な宝物だっ!」
【選択肢】
・それは違うよ。
・その通りだよ。
選択肢
それは違うよ。
男の子
「え?偉大なのは『食魂たちが家族になろうとする想い』であって、
『食物語』そのものじゃないって?」
その通りだよ。
男の子
「え?『食物語』は確かに大事だけど、『食魂たちが家族になろうとする想い』の前では
それはただの普通の冊子でしかないって?」
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三鮮脱骨魚
「俺様が言う台詞じゃねぇが……『人の心は、盗めねぇんだぜ』。
どこかで『幸せ』を盗んだとしても、俺様たちはあの土地に帰りたがるし、
一緒に成長してきた奴らにも、同じ『幸せ』を掴んでほしいと思っちまう。
○○の周りに家族を留まらせているのは、契約なんかじゃねぇ。
おまえが『幸せ』を盗みに来て、自分の周りの奴らにも幸せになってほしいのと同じ__思いなんだ。
お前がさっきまで言ってただろ……『俺たち』ってな、気づいてたか?」
男の子
「『俺たち』……それって……」
少年はその場で立ち尽くす。
瞳は虚ろで、まるで過去の生活を思い出しているかのようだ。
三鮮脱骨魚
「へへっ。
どうやら、おまえにはもう一緒にいてくれる「家族」がいるみたいだな。
むしろ今大事なのは__どうやっておまえの「家族」を幸せにするかじゃねぇのか?
それこそ、○○がずっと努力していることだ。」
男の子
「……。」
少年は背後を振り向き、台座に置かれた『食物語』を見つめる。
まだ迷っているのだろうか__
少年の後ろの地面が微かに盛り上がっている。
まるで何かが埋まっているかのようだ。
ふと、どこか懐かしい淡い香りが漂ってくる。
【選択肢】
・__危ない!
・__待ってっ!
選択肢
__危ない!
まさに少年の足が酒心爆弾の上に近づいた瞬間、一つの人影が踊り出る。
続いて、もう一つの人影もヒラリと舞い上がり、酒の匂いが充満する誘爆地に飛び込んでいく!
__待ってっ!
少年の足がついに酒心爆弾に触れ、微かに『カチッ』という音がしたと同時に、
二つの人影が少年に覆いかぶさる__
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三鮮脱骨魚
「ちぇっ。」
__ボンッ!
徳州扒鶏
「離せ__!!」
混湯酒醸元宵
「うわあああああ……若様……!!」
立て続けに鳴り響く爆発音と硝煙、そして火花が空中に舞い上がり、
次の瞬間一気に地中へと吸い込まれる。
慌てふためきながら声を荒げる人々も、崩れ落ちる木の床と共に落ちていく__
徳州扒鶏
「若、若!良かった、ご無事でしたか……
その身の下に抱かれている布切れは__三鮮脱骨魚から引きちぎったものですか?
まさか最後の一瞬で……貴方たちから九連発の地雷を引き抜くとは……」
混湯酒醸元宵
「ううう……ぼくのせいで、ぼ、ぼく怪盗に盗まれないように、ぼくが大切だと思う物の近くに地雷を設置したんだ……
若様の部屋の外にも……ぼく……ううう……」
徳州扒鶏
「……。
?それよりも三鮮脱骨魚たちの居場所を探してきてほしいと?
そうですね、この状況では恐らく重体でしょう。
早めに見つけることができれば、助けることも可能かもしれません。
では若、暫くここで待っていてください。」
足音が遠のいていくと、逆の方向にある洞窟から
楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
三鮮脱骨魚
「ははははっ……!君もなかなかの嘘つきだねぇ。
まったく、俺様といて毒されたのか……
それとも、もとからイケナイ子だったのか?
……ゴホンッ!」
洞窟から聞こえてくる声は若干かすれている、おそらく傷は浅くない。
【選択肢】
・空桑の「危機」を盗ってくれてありがとう。
・早く出てきて、傷が酷くならないうちに。
選択肢
空桑の「危機」を盗ってくれてありがとう。
三鮮脱骨魚
「……。
フッ!君と長くいると、体の色が益々ぼやけてくるな。
元々は一面の混沌とした黒だったのに、明るい白が現れて、鮮やかな赤も……
そうやって俺様を惑わす……ごほっ!」
早く出てきて、傷が酷くならないうちに。
三鮮脱骨魚
「遠慮しとくよ。能天気であったけぇ君の家族に助けられたら
そいつらを怖がらせちまうどころか、俺様は怪盗失格になりかねないからなぁ。」
共通
三鮮脱骨魚
「本来の俺様の使命じゃなかったが……
夜な夜な俺様のグライダーに君自ら乗り込んできてくれたんだ……
「空桑の宝」の奪還任務、一応は完遂したってことになるのか?ははは……!
舞台の幕が降りる頃だ、俺様も__退場しないとな。」
湯円
「怪盗のお兄さん!ま、待ってください……!
わ、わたしの宝物をあげますから……!」
混湯酒醸元宵
「ぼくのも……!ごめんなさい……ぼくがあなたに怪我をさせちゃったから……」
洞窟の入口にはたくさんの物が置かれていた。
百年物の酒、玩具のお城、仕掛けの工具箱、そして汪汪ミルクまで。
どうやら、徳州扒鶏が皆を連れて戻ってきたようだ。
みんな自分の宝物を手にしていて、三鮮脱骨魚を引き留めようとしている。
三鮮脱骨魚
「……。
ありがとう。
それでは……縁があればまた会おう。」
【選択肢】
・次って、どうしたら会えるの……!!
選択肢
次って、どうしたら会えるの……!!
洞窟からはもう何も返ってこなかった。
夜風の音だけが問いかけに答えるように響いている。
徳州扒鶏
「若!一人で洞窟に入ってはいけません、危ないですから__」
木組みの建物が崩れたために一時的にできた洞窟の奥で、
砕けた万象陣がキラキラと光を放っている。
そこには既に他の人影はなく、三鮮脱骨魚は少年を連れて万象陣を越えたのだろう。
湯円
「あれ?怪盗のお兄さんが……
ほ、干し魚のぬいぐるみを残していったみたいですよ……
しかもこのぬいぐるみ、小さな手紙を抱いています。」
混湯酒醸元宵
『心配するな、○○。必ずまた会える。
追尾香がなくとも、君は俺様のことを見つけられるはずだ。
なんたって俺様みたいな悪役でも、
君のまえでは常に英雄でいたいらしいからな。
白は良い色だ。
熟考の末、やっぱり「黒」こそが俺様のあるべき色だと思った。
いずれ、悪役でもなく、英雄でもない姿で君の前に立てる時がきたら……
○○、そのときこそが、再開の時だと信じている。』