楚夷花糕・手紙
半分風雅
主人公名:
<机の上にタブレットが一台置かれている。ボタンを押すと、モニターにメモ帳の画面が映し出された。>
この頃あまり我のところに来ていないな。おそらく空桑の管理に力を入れているのだろうが。我から見ると、あなたにはもう少し改善すべきところがある。
タブレットで音声入力ができると、郭将軍に教えてもらった。それであなたに助言を記そう。新聞などを読み、天下の大事を知り、現在の科学技術の持続性に関心を持つことだ――例えば、我にはこのタブレットのバッテリー残量を知ることができない。だから、あなたの手元に届くときに電源が入っているか定かではない、といった問題だな。
<追伸:陸吾はこのような品物を運ぶのは初めてだから、壊れていても責めないでくれ。今度我から、しっかりと言い聞かせるので。>
楚逸
同袍同沢
主人公名:
<今日は、一通の手紙が机の上に置かれていた。猫の爪痕もある。手紙の文字は、少々傾いている>
子どもたちが録音機能の使い方を教えてくれた。あなたに話を伝えるには、その方が便利だと言われたのだ。だが我はその機能に慣れない。口を開いた途端、言うべきことを忘れてしまう。色々考えたのだが、やはり手紙を書くことにした。筆の持ち方は忘れていないが、こんなにたくさんの字を書くのは久しぶりだ……陸吾が手紙を押さえていてくれたので、ご飯を食べるのが遅くなったようだ。申し訳ないことをしてしまった。
あなたは部屋に帰る時、なにやら落ち込んでいたようだ。我が今日あなたに「離」の字の篆書体を教えたから怒っているのか? あなたが何を心配しているのかは分かっている。だから安心してくれ。我は千年の時を彷徨い、ようやくあなたを見つけたのだ。易々とあなたを手放したり……あなたを置いて、どこかに消えたりはしない。
次に来るときには、「合」の字の篆書体を教えよう!あと、今日、文字を教えるとき、少し手が冷たかった。あなたはもっと温かくなるよう、着こんだほうがいい。
楚逸
以心伝心
主人公名:
<机の上に一通のきれいな手紙が置いてある。手紙を開くと、あの整った懐かしい筆跡が見えた。>
我の手をつねれば碁が上達する……という噂だが、それはどこから聞いた冗談だ? それとあなたは我の手をつねりながら、どうして人差し指がこんなにガサガサなのかと聞いたな……あの時我は黙ってしまったが、やはりそれは良くなかったと思った。お互いに隠し事はなしだと約束したのだからな。だから正直に言うと、実はあの時、練習をしていたのだ。
盲目になって以来、人並みに整った字を書くことは容易ではなく……あの頃の我は確かに意気消沈していた。他の人たちがあなたと手紙のやり取りをし、心を通わせているのに、我にはそれができない。だが、心についた火が、我を支えてくれた。たとえ目が見えなくとも、文字の一筆一筆は我の脳裏に、そして心に焼き付いている。失明前と同じように、字間の正しい優美な文字の手紙が一人で書けるまで、何百回……いや、千回近くは練習を重ねた。
あなたは我の手紙を大事に保管していると言っていたな。最初の歪んだ文字も、この整った文字も、あなたはいつも褒めてくれていた。あなたが喜んでくれるなら……この努力も無駄ではなかったな。
楚夷花糕
金蘭之契
主人公名:
我は今まで、山河のことも、我と貴方の関係についても、策を練ってうまく立ち回りさえすれば、すべてこの手で操れると思い込んでいた……だが貴方は違った。あなたは我の手をスルリと抜け出し、その上我を連れて飛び立ったのだ。我が貴方に手を引かれるようになるとは、考えもしなかったことだ……
我と貴方の関係が、千年一局だとするならば、勝利を握る鍵は貴方だろう。貴方という碁石が我のものになるなら、他の碁石はすべて貴方に捧げよう。
今ではもう気持ちが定まっている。我は貴方と手をつないでいれば、現世の山河や湖や海を渡り、春夏秋冬を体験することもできるのではないだろうか? 貴方は我の目が見えないことを心配して、治す方法はないのかと悩むだろうな。それこそ、我が貴方を急いで連れていきたい理由なのだ……もう待ちたくはない。千年もの間、暗闇の中でむなしい未来を待ち続けたのだ。今はこの瞬間を大切にしたい。貴方の目を通して山河を見て回り、貴方の描く絵を心に留めたい……その絵に、貴方の笑顔が加わるならば、これ以上の望みはない。
<手紙に添えられているのは白い桃花一本、ピンク色の柔らかい蓮の花びら一枚、緑鮮やかな松の葉が一針だ。>
局中に陥った魚糕