楊枝甘露・物語
一 味覚旅行・壱
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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担仔麺
「若様、サインが必要な郵便物が届いてます」
「中身は全部お菓子ですね。楊枝甘露味のゼリーに、楊枝甘露味のマシュマロ、楊枝甘露味のチョコレート、楊枝甘露味のウエハース……」
「あれ、マンゴー柄の葉書も一枚入ってますね……」
「え、若様? どうしてわたしを部屋から追い出そうとしていますか?」
葉書には、果物を使って想いを綴った、英文のラブレターが添えられていた。
おそらく、自分の大好きな果物の味であっても、果物自体ではないから、楊枝甘露の魂はそこにはない、と言いたいのだろう。
そのとき、一件の音声メッセージが携帯に届いた。
楊枝甘露
「お前宛のプレゼントと葉書は受け取ったか?」
「ここ数日、外で雑誌に載せる写真を撮っていた。風景がとても綺麗な場所で、近くに果物の店とお菓子の店をたくさん抱えた美食の街もある」
「何故か何一つ不自由はないはずなのに、どうしてもお前に会いたくなる。食欲もなければ、眠ることもできない……」
「時間があったら、会いに来てくれないか? 君の顔が見たくて仕方ない」
【選択肢】
・「いいよ、会いに行く」と返信する
・しばらく時間が経ってから返信する
選択肢
「いいよ、会いに行く」と返信する
相手から嬉しそうなスタンプが送信され、約束の時間と場所が追加された。
楊枝甘露
「See you later~」
しばらく時間が経ってから返信する
楊枝甘露
「俺の誠意が足りないと思ってるのか?」
「○○、どういうつもりだ? 返事がないってことは、俺を拒んでいるのか?」
振動が次々と携帯に届く。
楊枝甘露
「やっと返事をくれたな」
「何だ? さっきは忙しくて、すぐに返信できなかっただけか?」
「だから、お前は特別だと最初から思っていたんだ。他の友人と話してて、俺はほとんど待たされたことが無いからね」
「というわけで、だ。そんな特別なお前に、時間と場所を送る。俺に会いに来られる権利を与えよう。See you later~」
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カメラマン
「Myronはどこに行ったんだ? カメラもセットも準備はできてるってのに! あとはあいつが来ればいいだけだぞ!」
助手
「兄貴、モデルが居なくなりました。撮影はこのまま続けるんですか? あと、アイテム用に作った料理はどうすればいいんですかね?」
カメラマン
「どうすればいいって……今すぐ方法を考えるよ。……おい、白服の! そう、お前だ。手伝え」
【選択肢】
・料理を整理するの?
・人を探すの?
選択肢
料理を整理するの?
カメラマン
「ここのものを冷蔵庫に戻してくれ。撮影のとき、また出せばいいから」
「今大事なのはMyronを見つけることだ。お前ら、さっさとあいつを探してこい!」
人を探すの?
カメラマン
「Myronが行きそうな場所を知ってるって?」
「それは助かった。早く呼び戻してこい!」
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楊枝甘露
「おかみさん、このアイスは新鮮なココナッツの果肉で作ったんだな? 細かいけど、ココナッツの食感がする。煮たココナッツの汁とは全然違うね。見た目も白く柔らかそうだし、濃厚なココナッツの香りが漂ってる。Very good!」
「でも、少しだけ助言を。焼いたココナッツフレークでアイスボールを包んで、少しだけdesignしてみたらどうかな。あ、ただ火加減には注意して! 温度は高すぎず低すぎず。ココナッツフレークが黄金色になればperfectだ!」
女将
「ありがとう! 味はどう? 甘すぎないかしら?」
楊枝甘露
「ああ、味ね……」
「美食は『色、香り、味』のすべて揃わなければならない。だが、味はその三分の一程度にすぎない……おかみさん、味を気にしすぎて、他の二つの要素を軽視してはならない」
「○○?」
楊枝甘露は人が来たことに気づき、少し驚いたが、すぐいつもの表情に戻る。
楊枝甘露
「いらっしゃい、どうぞ」
彼は元気そうに来訪者を招いた。約束の場所がここじゃないにも関わらず。
楊枝甘露
「自分がカッコいいのはよく理解している。だが、瞬きもせず凝視されたら、さすがの俺も視線を合わせにくいな。アイスが溶けるよ?」
【選択肢】
・私に会いたくて眠れなかったんじゃ?
・私に会いたくて食欲がなかったんじゃ?
選択肢
私に会いたくて眠れなかったんじゃ?
楊枝甘露
「そうだな。けど、あることに気づいて、考えを改めたんだ。眠らないと、夢の中にいるお前に会えないだろ?」
「俺に残された方法はただひとつ……
夢の中でお前に会わせてくれ、と君主の周公旦に頼むことだった」
「昨夜も夢の中で会えたな。お前はどうだ? 夢の中で俺に会えたか?」
私に会いたくて食欲がなかったんじゃ?
楊枝甘露
「食べられるのに食べないなんて、最大級の罪だろ。美味しいものが目の前にあったら、食べないと心が決めても、舌が勝手に出てくるんだ」
「でも、俺は食べてるときだってお前のことを考えていた。そっちはどうだ? 俺のことを想ってたか?」
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楊枝甘露
「何も言わないのは、肯定だと受け取るぞ?」
「ん? どうして撮影場所にいなかったのかって? よせよ、彼らが用意した料理はあまりにも現実性に欠けてる。お前も知ってるだろ、俺は偽物になんて興味ないんだ」
「一番面倒なのは、一度契約すると撮影に協力しなければならないってことだな。だから街で質の高いお菓子を買って、『撮影のための道具』として持ち帰ることにしたんだ」
「そうだ、一緒に味見をしてくれないか? 美味しいアイスの見分け方法を教えてやるからさ」
「まずはこの三色アイスボースを……
あ、忘れてた、スプーンは一つしかないんだった。別に気にしないよな?」
楊枝甘露はスプーンでアイスを軽くすくい、笑顔で差し出した。
楊枝甘露
「これはココナッツアイス。果肉の香りが濃厚で、味はほんのり甘い。ほら、口を開けて。試してごらん?」
「なにを遠慮している? 美味いものは食べても太らないんだ。それに俺は、お前のふっくらした頬が大好きだ。とっても可愛いからね」
「どうだ、美味しいか?」
「ん? 胸やけするほど甘い……?」
「はは、もちろん知ってたさ。ちょっとからかっただけだよ、ムキになるなって」
「多分おかみさんが砂糖を入れ過ぎたんだね。新鮮なココナッツで出来たアイスはもともとほんのり甘いはずだから、砂糖はそんなに入れなくてもいいんだけどな」
「ほら、別のも試してみな。どんな味がするか、教えてくれるだろ?」
二 味覚旅行・弐
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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カメラマン
「Perfect!」
「Myron、お前が持ち帰ってきた菓子で撮った写真はさすがに質が違うな!」
楊枝甘露
「雑誌のためにしたことではあったが、皆さんを待たせてしまって、申し訳なかったな、謝るよ。お詫びにアイスを何箱か買ったから、後で休憩室に取りにいってくれ」
スタッフ
「わあ! Myron兄、ありがとう!」
スタッフたちはその言葉を皮切りに、皆アイスを取りにいってしまった。
楊枝甘露
「はぁ~、やっと終わったな!」
「○○、なんか納得いってないようだな?
一緒に湖にでも行って、風景を眺めようか」
彼は口笛を吹きながら、柵を叩いて散歩している。
鳥が足で湖の水面に波紋を描き、また青空へと飛び立った。
楊枝甘露
「雑誌の撮影が終わったら、新たな食レポの本を出そうと思ってたんだ」
「どんな内容の本なのかって? 現時点では未定としか答えようがない。
書きたいことがありすぎて、まず何を書こうか迷っている……」
「ん? 空桑に戻ってスイーツコンテストの審査員にでもなれば、インスピレーションも湧くんじゃないかって?」
「へえ、調理部がまたイベントを開くのか」
「けどな……」
「空を飛んでる鳥たちは、縛り付けられることなく、自由に生きてる」
「でもこの世にはさ、足を持たない鳥も存在しているんだ。その鳥は休むことなく、風の中で永遠に飛び続けることしかできない」
「お前だったら、その鳥をどう捕まえる?」
【選択肢】
・自分が龍巻になればいい
・その鳥と一緒に飛べばいい
選択肢
自分が龍巻になればいい
楊枝甘露
「龍巻に? 凄いな! 鳥を懐に入れて、一緒に空を飛ぶってわけだ」
「本当に変わったことを考えるな、お前は」
その鳥と一緒に飛べばいい
楊枝甘露
「じゃあ、その鳥の速度についていかないとな。遠くまで飛んでいかれたら、毛一本も触れられないから」
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楊枝甘露
「○○、空桑で美食の審査員になるかどうかの話だけど……」
「その返事は一旦保留にしておくよ」
片児川
「若、例のプロ審査員はまだなのか? そろそろ大会を始める時間だ」
えび餃子
「あっ、来た来た! あそこ――うわあ、写真とぜんっぜん変わらないね! すっごいカッコイイなぁ!」
楊枝甘露
「Sorry~! さっきまで発さんと油麻地の餐庁で食事をしていてね、少し遅れてしまったみたいだ」
「遅れただけで、必ず来るさ。スイートの盛宴にこのスイート王がいなかったら、つまらないだろう?」
片児川
「言い訳をするな、私は……」
楊枝甘露
「こちらは調理部の管理者、川さんだね。こんにちは! 写真を一枚どう?」
片児川
「――!?」
片児川はいきなり肩を掴まれた。
次の瞬間、二人は親密な友達のように、身を寄せ合ってカメラを見る。
――カシャ!
カメラが捉えたその一瞬、楊枝甘露は優しくハンサムな笑顔を浮かべる。
楊枝甘露
「Great! 私たち、どちらもよく撮れてる!」
片児川
「コホン、当たり前だ。ボクだって多くの有名人と写真を撮ってきてるんだから!」
「その、なんだ。この『川』の名を知ってるとは。なかなかいい目をしているではないか!」
えび餃子
「Myron、サインをくれない? あなたのレビューとコーデが好きなの!」
楊枝甘露
「Sure! こんなに可愛い女性が俺のファンだなんて、とても嬉しいよ」
えび餃子
「やだなぁ、可愛い男の子だよ~!」
楊枝甘露
「……」
【選択肢】
・はは……
・私もサインが欲しい!
選択肢
はは……
楊枝甘露
「つまり、俺の魅力は『男も女もたまらない』レベルだってことだね?」
私もサインが欲しい!
楊枝甘露
「しー……」
「他の人には内緒だけど、お前の部屋に数十冊の本と写真集を置いておいたよ。全部、俺のサインが付いてる」
「それでも足りなかったら、助手に頼んでもっと運んで来させよう。遠慮せずに言うように」
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片児川
「よし。みんな揃ったな。これより空桑スイーツコンテストを始めるぞ!」
「参加者の皆は舞台で準備して、審査員の評価を待て」
湯円
「うわ……に、苦い……! うぅ……餃子さんの作った餃子が死ぬほど苦い……」
餃子
「今回の料理のテーマは『イノベーション』だからねぇ。新しいことを試してみた。薬草を粉にして、餃子の具に入れてみたよ」
湯円
「あれ? 今やってるのって、たしかスイーツコンテストだよね? 餃子さん、だめだよ……こんな風に人を騙すのは!」
餃子
「おや、良薬は口に苦し……いや、良品は口に苦しっていうだろう? さっきは楊先生もうまいと称賛してくれたぞ?」
片児川
「バカな。この餃子、みんなを泣かすほど苦いのに」
「楊さん……『美食の申し子』と呼ばれながら、こんな明らかな味も感じ取れないのか?」
「その味覚と名声が一致しているかどうか、疑問に思えてきた……」
楊枝甘露
「はは……みんな安心してくれ、俺はすこし冗談を言っただけだ」
楊枝甘露は相変わらず不羈な表情を見せている。
だが、その笑顔は明らかに無理している。
筆を握る手にも力が込められたようだ。
【選択肢】
・あなたの味覚……
・ちょっと心配になってきた
選択肢
あなたの味覚……
楊枝甘露
「どうしたんだい、○○。お前まで俺を疑うのかい?」
「問題ないと言ったはずだが」
ちょっと心配になってきた
楊枝甘露
「そんな憂鬱そうな目をしないでくれ。苦悩を知らないお前のほうが好きなんだ」
「心配は要らない、俺は大丈夫だ。人気が出れば、面倒事も多くなる。もう慣れたよ」
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楊枝甘露
「Sorry、俺の味覚に関する噂は、すべて証拠の無いデタラメだ。俺からはノーコメントってことで」
餃子
「しかし……もし舌の調子が本当によくないのなら、早く医者に診てもらった方がいいぞ。病気が重くなったら大変じゃ」
楊枝甘露
「心配してくれてありがとう。けど、本当に大丈夫だから……」
えび餃子
「ピンポーン! 本ラウンドの評価フェーズは終了しました。これより十五分間の休憩に入りま~す」
「みんな、なんか空気悪いよ? 私が何か歌って、場を盛り上げようかな!」
一方、隅っこに隠れていた『パパラッチ』はこの会話を記録し、空桑新聞のトップ記事に使おうとしていた――
臘八粥
「号外ニュースです! 人間界の最新報道――
『味覚を失った美食の申し子、引退して農民になったほうがいいのでは』!?」
「公開から一時間、このニュース動画の閲覧数は飛躍的に上がっています。
著名グルメ批評家の楊錦枝先生のホームページも、大量のネットユーザーの攻撃を受けている模様」
「状況は今後もさらに悪化するでしょう。新聞部記者臘八粥が最新情報をお届けします!」
徳州扒鶏
「楊先生、申し訳ない。これは警務部の失態だ。オレたちの不注意で『記者』が空桑に潜入し、スイーツコンテストでの出来事を撮影していたらしい」
楊枝甘露
「貴方たちに問題はなかったよ。有名になると、嫉妬を受けることも多々ある。こんな小賢しい真似、careする意味もない」
えび餃子
「あああああー!!」
双皮ミルク
「わああ! 何これ、脅迫状とわら人形がいっぱい詰まった箱? 一体誰がこんな酷いことを……」
えび餃子
「わ、わかんない。さっき、知らない誰かから無理やり渡されたんだ……
そしたら、もうこれ以上Myronを応援するなって脅されて……ううぅ……」
楊枝甘露
「これはひどすぎるだろう! 俺を馬鹿にするのは構わないが、俺のファンに手を出すことは許せない!」
事件発生からずっと平静を保っていた彼の堪忍袋がついに切れたようだ。
彼は怒りに任せ脅迫状の箱を奪い取る。そして、手紙をすべて粉々に破って、ゴミ箱に投げ入れた。
楊枝甘露
「そうだ。俺の味覚はとっくに狂っていた」
「そして、俺に被害を加えた犯人の正体も知っている」
「有名になってから、俺の評論は観点が独特で、上辺だけの綺麗言は並べない、だから、いろんな人の恨みを買ってきた。これまではどんな手段に出られても、堪えてきたんだ。この程度のことで倒れると思うなよ!」
「もし俺が本当に引退する日が来たなら、堂々と引退してやるさ。決して悪者に陥れられたからといって、負け犬のように消えたりはしない……」
「なに? ○○。俺に協力したいって?」
「この穢れた世界の醜さをお前は知らないし、知る必要もない……俺一人で対応できるさ」
「どうして首を横に振るのかな? そんなに引っ張って、どこに連れていく気だ……」
三 味覚旅行・参
◆主人公【男性】の場合◆
(逆の場合の差分は募集中)
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餃子
「若様。医書を調べてわかった。楊先生は無色無味の毒にやられてるようだ。
幸い、発見が早かったから、薬を飲み続ければすぐに回復できるじゃろう。」
「蔵宝閣の貴重な薬剤で薬を調合した。早く飲みなさい。」
楊枝甘露
「本当のことを言うと、まったく味がしない。」
餃子
「苦い薬剤を大量に入れたのに、まったく味が感じ取れないとは……
若いの、今後もしっかり治療を続けるのじゃぞ。」
楊枝甘露
「治療はどのぐらいかかるんだい?
有名人として、カメラから長く離れてはならない。
特に、今は重要な時期なんだ。」
餃子
「楊先生、言うことをちゃんと聞いて、空桑に残って病を治しなさい。
他のことは、若様に任せておけばいい。」
「我々空桑の食魂は、皆若様を信じておる。
どんな危機があろうと、彼は必ず最善に対処してくれる。」
楊枝甘露
「OK……信じるよ、〇〇。」
十日後……
餃子
「十日目の再診だ。さきほど舌に針灸も行った。
予定通りなら、味覚もそろそろ回復するはずだ。
さあ、この薬を飲んでみなさい――」
楊枝甘露
「うわっ、すごい苦いぞ!俺は今までこんなに苦いものを飲んでいたのか。」
餃子
「はは!どうやら味覚は完全に回復したようじゃのう。
若様が毎日貴方を再診に連れてくる甲斐があった。」
楊枝甘露
「コホン……〇〇。一回助けてやったくらいで、
これからもずっとここに残るとは思わないでくれよ。」
「言ったはずだ、俺は巣を持たない鳥だと。
誰のためでも、どんな物のためでも、同じところには留まらないのさ。」
【選択肢】
・そんなこと思ってないよ
・怒ったふりをして彼の髪型をぐちゃぐちゃにする
選択肢
そんなこと思ってないよ
ハハッ。まあ、それはどうでもいいか。とにかく、お礼は言わせてもらうよ。」
怒ったふりをして彼の髪型をぐちゃぐちゃにする
楊枝甘露
「や、やめてくれ……命を失っても、髪型を乱すわけにはいかない!」
「なに?俺は巣を持たない鳥ではなく、避難した鳥だって?」
「そうだな……お前には負けたよ。」
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楊枝甘露
「明日はいよいよスイーツコンテストの決勝戦だね。
大勢の記者を空桑に招いて、俺の味覚の回復をみんなに示すんだって聞いた。」
「〇〇、安心してくれ。明日はきっと――華やかな一戦を見せてやるからな!」
臘八粥
「号外ニュースです!
人間界の最新報道――
『美食の申し子が更なる頂点に登り詰め、邪悪に正義の制裁を』。」
「半月ほど前、著名グルメ評論家楊錦枝が味覚を失った事件が注目されました。様々な非難を受けながらも、楊先生は空桑スイーツコンテストの決戦で実力を発揮し、彼が名実ともに『美食の申し子』であることを証明しました。」
「一方、空桑警務部は人間界の調査に協力し、
楊先生を陥れようとする犯罪者の犯行証拠を掴みました。
現在、犯罪者は法律の制裁を受け入れております。」
「しかし、記者会見後、楊先生は分かれも告げずに空桑から離れていきました。
この間、彼は一体何をしていたのか? その真相を知りたい皆さんは――」
「今夜九時にラジオを開きましょう。
『美食の申し子』楊錦枝の個人インタビューをご視聴あれ!」
ラジオCM
「皆さんこんにちは!
本日はなんと、私たちが大好きなMyronに、
インタビューする貴重な機会を得ることができました!」
「彼は美食の申し子、ファッションの達人、有名人フォーラム人気度TOP3、著作サイン会の常連……活動があまりにも多く、とても数え切れませんね。
では、さっそくそのご本人に自己紹介をしてもらいましょう!」
楊枝甘露
「皆さん、こんにちは。俺がMyron……楊錦枝だ。
CMでは丁寧に紹介してくれたが、ただの『食好き』男子だよ。」
ラジオCM
「どうでしたか、Myronさん?
最近大変なことがあったようなのですが、
よろしければリスナーの皆さんにその経緯を教えてくれませんか?」
楊枝甘露
「あれは人生の中でもほんの些細な一ページでしかないよ。
不愉快なことを話すより、もっと面白い経験を皆さんに共有したいと思う。」
「最近、ある雰囲気の良い餐庁で、
カッコよくて才能のある料理人と友達になった。
彼のおかげで、俺はもっとも困難な時期を乗り越えることができた。」
「その友人の理想は、全世界の美食の都を作り、ある『食好き』の胃を掴んで、
二度と離れられないようにすることらしい。
正直に言うと、俺もその夢が実現する日を楽しみにしている。」
「もっと詳しく知りたいなら、ぜひサイン会で俺の本を購入するといい。
この素晴らしい出会いを、新しいグルメ評論本に練り込むつもりだからね。」
ラジオCM
「そういえば、歌も一曲出されてましたよね?ぜひ紹介してください!」
楊枝甘露
「いよいよ音楽界に進出すると思われてるらしいな。だが、そんなことはない。
先月、顧さんがいい曲を書いたから、詞を書いてほしいと頼まれただけさ。」
「始めは何を書けばいいかわからなかったんだが、あの出来事を経験してから急にアイデアが湧いてきたんだ。
この曲の詞を例の友人に送りたいと思ってる。」
「本来、歌は華さんに歌ってもらう予定だった。けど事の経緯を聞いた華さんが、
歌い方を教えてやるから、自分で歌った方がいいと言ってくれてね。
あの人に対して感情を表現できるのは、俺だけだって……」
「では、顧さんが作曲し、華さんの監督の元、俺が詞を書き自ら歌った、
『フルーツトルネード』――どうぞお聞きください……」
ラジオ番組は穏やかな歌声の中で幕を閉じた。
突然、部屋の門が開かれて、思わぬ来客が姿を現した――
楊枝甘露
「〇〇、俺だよ。驚いた?」
「放送局と相談して、今日は早めに収録を行ったんだ。
大切な人との再会を邪魔されたくなかったからね。」
「この前、お前に聞いたことがあっただろう?
どうやって巣を持たない小鳥を引き留めるのかと。」
「いま、その答えを教えよう。小鳥は永遠に止まることはない。
だが……彼は風と共に羽ばたく。」
「チケットを二枚注文したんだ。一緒に旅行に行かないか、トルネードさん?」
【選択肢】
・ちょっと待って、荷物片付けてくる
・ちょっと待って、まずパジャマを着替えないと
選択肢
ちょっと待って、荷物片付けてくる
楊枝甘露
「それは誤解だ。」
「俺がここに来たのは、お前に荷物をまとめてもらうためじゃない。
俺は……俺が持って行く荷物を採りに来ただけだよ。」
「必要な物は、旅の目的地で買えばいい。
ただ、どうしても持って行かないとダメなものがある。」
「それは――お前だ!」
ちょっと待って、まずパジャマを着替えないと
楊枝甘露
「そのデブ猫パジャマ、ちっちっ……ダサすぎる!」
「どうして俺があげたフルーツ柄のブランドパジャマを着ないんだい?」
「まあ、それは別にいいとして。とりあえず俺のシャツを着るんだ。
目的地に着いたら、新しい服を買ってあげるから。」
共通
話が終わると、目の前の景色が回転する。
何事かと思ったら、楊枝甘露に抱き上げられていた――
楊枝甘露
「〇〇、お前はおとなしくスーツケースの上に座ってろ。
心配はいらない、荷物はとっくに用意してある。」
「これからはどこへ行っても、たとえ台風に吹かれて、落雷が落ちても……
俺たちは決して別れない!」
「トルネードと巣を持たない鳥――いざ、出発!」
星々が輝く夜空の下で、楊枝甘露はスーツケースを押して風に向かい進む。
スーツケースの上には、彼が心を許したその人が座っていた。
美味を探す旅には、俺とお前、そしてスーツケースがあればそれで十分だ。
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