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太史五龍羹・物語

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最終更新者: 皮蛋納豆丼

一 悩みの解消・一

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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テーブルの上にはきれいに洗った果物が何皿並べられている。形は桃に似ているが、葉の形は棗のように生えている。水色に引き立てられてきらきらとする。玉座の隣には、席が一つ用意されているが、空いているままだった。


太史五龍羹

「空桑の若を迎えてこいと命じたはずだ。この様とは?」


騎兵

「閣下、迎えの人は確かに朝一で空桑に参りましたが、

 あいにく、空桑の若様が多忙だったようで、

 朝からは訓練と公文書の処理に手が離せなかったそうです。」

「その後空桑を見回す際に、空桑の若様は餐庁の前で、

 華麗な衣装を纏っている少年とゴロゴロ回るダンスをしてから、

 新衣装の試着、学堂宿題の受取、そして、仏堂の祝賀まで……」


太史五龍羹

「……」


騎兵

「そのために……時間通りに迎えることができませんでした。

 どうかお許しを。」


太史五龍羹

「空桑の若は、どうやら忙しそうだな。」

「雷音、すこし「助けて」やれ。」


そばに伏せている大虺はその命令を聞き、

主人の意図を理解していないように少し頭を傾けたが、

結局命令に従え、新鮮な果物を並べた机の上をゆっくりと回り、外に向えた。


雷音が待ちわびていた者を、目の前に連れてくれるのを見て、

太史五龍羹は嬉しそうに頷いた。


太史五龍羹

「うん、その顔はなんだ?あんまり嬉しくないようだな。」

「雷音のせいで、みんな驚いて逃げてしまったって?

 やり方はどうでもいい。目的が達成されたらそれでいいのだ。

 手段は重要ではない。目的を達成すればいい。」


【選択肢】

・目的とは?

・こっちもびっくりしたよ

選択肢

目的とは?

太史五龍羹

「約束のこと、もうすっかり忘れたのか?」

「約束を忘れさせないように、お前のところにも度々顔を出す必要があるそうだな。」


こっちもびっくりしたよ

太史五龍羹

「その三流芝居、ただ俺を笑わせるものだけだ。」

「何度もやっていいのだぞ?

 もう少し場を愉快なものにしても、俺は構わないからな。」



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太史五龍羹

「今日、不周山特産の果物は熟成したばかりだ。

 下の者に沢山取ってもらったから、お前を――」


少し間を取り、彼の口調はあざ笑う気味に染まった。


太史五龍羹

「俺に料理を作りなさい。」

「俺の食事など担当すること、お前が自ら約束したんだ。

 まさか、約束を破るつもりではないだろうな?」



【選択肢】

・働かせるつもりだったんだ……

・やはりまずは胃袋を掴まないと

選択肢

働かせるつもりだったんだ……

太史五龍羹

「もちろん、お前にも美味しいものを味わせるつもりだ。」

「食べたこともなければ、俺のシェフにもならないのだろう。」


やはりまずは胃袋を掴まないと

太史五龍羹

「何か言外に匂わしているようだな。」

「言いたいことがあれば、正直に言ってみろ。」


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騎兵

「閣下、お知らせです。」


太史五龍羹

「わかった。」


太史五龍羹は下の者を退かせ、なだめてくれた。


太史五龍羹

「料理のことは急がなくてもいい。

 まずはこの果物の味見をしてみろ、すぐに戻る。」


雲に隠れる不周山の内壁は全て空きにされている。

山と雷は牢獄と化し、猛獣を閉じ込める場所になった。


竜騎軍は狭い道の溢れる山の中に通り抜け、毎日の哨戒を終わらせる。


騎兵

「この前、妖獣どもが騒ぎ出して……上は罰を与えましたが、

 「貨物」の品質は肯定してくれましたね。」


太史五龍羹

「アメとムチ……向こうの手慣れだ。

 あいつら、まだ俺たちのことを心配とする、

 こんな小細工しか仕掛けてこないのだろう。」

「そういうものに構うな。不周山の主はこの俺だ。」

「ただし、警備を強めることだな。二度とこういうことがあったら……」


騎兵

「承知いたしました!」


大殿の中に入ると、太史五龍羹は違和感を感じた。

席にしっかりと座っていた者が、今は壁にもたれて警戒している。

そして警戒していることはまさに――玉座の隣に置かれている天目水晶だ。


水晶の中から悪意の満ちた言葉が流されて、隅には甘く、隅にはまるで狂っているように聞こえる。


???

「大史殷の新しい主よ……容易くそやつを信じるな。

 大史殷は奥義を知らない裏切り者だからな。

 いつかやつにハメられたら、遺骨すら見つからないかもしれんな!ハハハーー!」


太史五龍羹が入ったと気づいた途端、その話も急に途切れてしまった。


太史五龍羹

「〇〇、怪我はないのか?」


否定されたあとに、太史五龍羹は胸を撫で下ろし、席に戻すように言ってくれた。


太史五龍羹

「お前の安全に関わることだ。聞きたいことがあれば聞くといい。」



【選択肢】

・なぜ水晶は喋った?

・信じているよ

選択肢

なぜ水晶は喋った?

太史五龍羹

「中には魂が一つ囚われている。

 そろそろ消えてしまうところで、何の問題にもつながらん。」

「「マジックミラー」に似ていると……それはどういう法器なのか?

 いや、俺は毎日あいつに質問などしない。」

「つまらない考えは捨てよ。」


信じているよ

太史五龍羹

「……」

「甘いというべきか、それとも……自信溢れているというべきか。

 この話は、あとにしておこう。」

「こんなことが起こるのは、水晶の中に閉じ込めている塊のせいだ。

 あいつはいつも消えそうな時に、何か仕掛けてくる。」



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太史五龍羹

「あいつの魂が長い年月にずっと囚われて、

 俺のことを憎らしく思うのもおかしくない。

 お前が俺のそばにいることを見て、挑発しにきたのだろう。」

「慰める言葉はいい。その魂は誰のものかわかるか?」

「俺の恩人であり、俺の仇でもある。

 今あいつはああなってしまうのは、全て俺の仕業だ。」


まるで顔色の変化を一つでも見逃したくないように、

太史五龍羹はこちらをじっくりと見つめてきた。


太史五龍羹

「俺がやつを粉々にし、魂が飛び回らないよう水晶に閉じ込めて、

 目の前でゆっくりともがき苦しませるんだ。」

「どうだ、空桑の若よ。これでまだ俺のことを「信じる」のか?」

「証拠は足りないから、まだ断定することはできないのだと?」

「ふん……。この塊は水晶の中に閉じ込められた以上、

 その記憶も封印されているのだ。

 俺はどんなやつだったのか、自分の目で確かめてみろ――」





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二 悩みの解消・二

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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法術の爆発音と共に、巨大な魔虺は気を失って倒れていた。

それと戦っていた中年の修士は息切れしながら後始末を始めた。


修士

「やっとこの畜生を調伏させたわ!

 コイツのために、数日間食事を取る時間もないとは……」

「「食欲の秋」とも言うしのう。

 ふるさとの虺羹は美味しかったのう……修道する前に、お前を食べようか!」


昔の美味しさを思い出すと、修士の動きもキレキレになった。すぐにも魔虺の皮や内臓を取り除き、小切りにしたあとに仙草や仙露を入れる。こうすることで、濃厚な香りをしている魔虺羹もできあがったのであった。


修士

「特殊の食材を使うと、味もまだ独特に……うん?なんだこの光は?」


点々としている白い光は虺羹の中に上がり、集散の繰り返しをしている。


修士

「謎の力らしいだが、何か欠けているみたいんだな……

 人間界で伝承された食べ物は化霊することもあると聞いたが。

 もしかすると、これが残欠の虺羹の霊なのか?」

「よかろう!ちょうど使霊が欲しいんだ。

 お主に化霊の力をかしてやろうじゃないか!」


一人の少年とそのお供が、帳簿と算盤で駆けずり回っており、

ひもじくて疲れていた時に、ある匂いに惹きつけられてしまった。


江のお坊ちゃん

「これ……いい匂いするんだな……この匂い、前の茅茸屋から漂ってきたのか?

 コンコン、この家は我が「年貢取立表」に入ってるのか?」


家来

「はい。しかしこの家はいつも家賃を払う余裕もなく、

 とんでもない貧乏な生活を送っているので、

 こんないい匂いの食べものを作れるはずだ……」


小作農

「おや。江坊ちゃんではないのですか。どうぞどうぞ。」


江のお坊ちゃん

「礼は構わないさ。そのいい匂いに釣られてこっちに来たんだから。」


小作農

「ハハ。お坊ちゃんでも俺たち庶民の食べものに興味があるのですか?

 どうぞお召し上がりください。」


江のお坊ちゃん

「これ……一体なんの食べものなんだ?美味しすぎて今まで食べたことのない味だ!お爺さん、これの作り方を教えてくれないのか?親にもこんな絶品を食べさせたい!」


小作農

「ううっ、それは……」


江のお坊ちゃん

「ただでは貰わないから、一年の賃金で交換するのはどうだ?」


小作農

「もちろん構いませんが、正直に言いにくいかもしれまんが……

 これは何種類の虺肉で作られたスープなんですよ。」


少年が嬉しそうに立ち去ると、落ちこぼれている姿をしている農民は、

修士の姿になった。笑い声だけを残し、どこかへ消えてしまった。




若千年後――




修士

「やっと化霊したのか……苦労した甲斐があったのう。

 陰でその江坊ちゃんの家族を何年間も守ってきたんだから、

 恩返しもそれで充分だろ。」


太史五龍羹

「――何者です?」


修士

「お主も、さぞ覚えていないのだろう。お主はわしの作った魔虺羹から生まれてきた残霊だ。化霊した後、魂力が足りないため、江坊ちゃんの手で再度作られ、世間に広めることができた。お主の魂もそれで修復された。」

「でなければ、あの農民はご飯を食べられるかどうかも知らないのに、そんな食べ物を作れるはずもないのだろう。」


太史五龍羹

「……」

「なるほど、ということは、お前に恩返しをせねばならないのか?」


修士

「……わしはちょうど使霊が欲しいんだが、

 お主、わしのモノになってみないか?」


太史五龍羹

「人に借りを作るのは好きではない――期限付きの助け人だったら、

 すこし考えても悪くない。

 だが、お前のモノになるのは遠慮しておこう。」


修士

「さすがは虺スープから化霊したモノ……しっかりとわきまえているのう。

 惜しい!実に惜しいんだ!」

「小さい虺とはいえ、ちょうど脱皮している頃だったな。

 多少荒々しくてのう、鎮めるには少々厄介かもしれん。」


紫鱗虺

「ス――」


侵入者である二人を見て、枝のようにたくましい「小さい」虺は脱皮の痛みを辛抱しながら、瞳の中には屈しない炎を燃やしている。


太史五龍羹

「……」

「俺に任せておけ。」


太史五龍羹はゆっくりと前に出た。

どんな行動を取ったのかは分からないのだが、

急に怯んだ紫鱗虺は、彼の手の中で段々と大人しくなっていた。


修士

「……?!いったいどんな手段を使ったのか?

 なるほど、どうやらお主は獣を操れるみたいなんだが、

 道理でここに来た途中までは寄ってくる猛獣もいなかったな。」


太史五龍羹

「命は残ってやれ。」


修士

「もちろん構わないさ……そんな小さい虺じゃ、大したことはできないのだろう。

 だがお主の才能では、わしと一緒に妖獣の退治をやるのは惜しすぎる。

 その力に似合う場所を紹介してやろうか。」


ここでは雷鳴と百獣の叫び声だけが聞こえる。

野原の上には、混乱と争いこそが永遠の秩序のようだ。

紫鱗虺は石の間に這い、静かに陣を作る二人を見ていた。


修士

「数十年前のあの災難から、人間界は混乱の中に堕ちている、

 悪獣どもは檻から逃げてしまい、元の主は咎められ地位を失った。

 九重天の伝令からすれば、悪獣を治めたモノが、不周山の主になれると。」

「不周山に落雷は頻繁だったが、もし「五方諸雷陣」を張り、天雷を鎖にすれば、

 悪獣を従わせるのも簡単だろう。いざになったら一呼百諾、わしとお主が手を組んだらなんでもできるだろ……どうだ?」


太史五龍羹

「お前と手を組むなど、お断りだ。

 その上に、俺は約束通りお前のために悪獣を操った。

 これまでの恩は、すべて返しだな。」


修士

「急ぐな。あと一つ……」


修士は後ろに跳び、印を結んで呪文を口にした――

その瞬間、陣に描かれていた符号は鎖となり、太史五龍羹を縛り付けた。


太史五龍羹

「――!!」


修士

「この陣はまだ、雷を導く生贄が一人足りなくてな!」


太史五龍羹の魂力は陣の中に溶け込み、それを完成させた。

五方の霊符は回り、空に黒雲が集まる。

すると、何発かの落雷は頭に落ちてきた。


太史五龍羹

「ぐあぁっ!!」


紫鱗虺は親しいものが苦しんでいるのをみて、

飛び出して鎖を噛み切ろうとしたが、

同じく陣の中に縛られる羽目になった。


太史五龍羹

「小虺が……無理をするな!」


紫鱗虺

「シーー!」


修士

「ハハハハ!お主ら二人は仲がいいな!

 あ、そういえば、お主は使霊であって、人間でも言えないんだな。」

「この雷は一時間ごとに落ちてくる。

 命だけは残しておいてやるから

 事の成る前に、うっかり自滅したりするなよ!」


太史五龍羹の背中は落雷で黒焦げになり、その瞳は黒く深く、

まるで痛みを感じていないように天に向かって大笑いし出した。


太史五龍羹

「……ふ、ふん……あはははははは!」


修士

「……なにがおかしい!」


太史五龍羹

「お前の本性を見抜ければ、俺は牽制され、こんな無様にはならなかったな!

 フン!今回は俺の負けだ!」

「人間の醜さを教えてくれるのは……ありがたいものだな――」

「今日受けた辱めを、いつか必ず百倍返ししてやる!」



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三 悩みの解消・三

◆主人公【男性】の場合◆

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この夜、不周山の本殿は珍しく静かになった。

雷雲が曇っており、風の声が強いが、落雷だけが落ちていない。


修士は怪しく思いながら、剣を握りしめ、

ゆっくりと山の頂きまで登った――五方諸雷陣の所在地である。


修士

「バカな!鎖が……壊れただと……!」


「ボロン――」黙っていた雷が耳もとに炸裂した。

驚かされてしまった修士は振返ると、太史五龍羹はボロボロになりながらも、

体の周りにはビリビリと青白い光が走っている。


太史五龍羹

「ご無沙汰だな。」


修士

「弱っていた姿は、演技だったのか!」


太史五龍羹

「一日は何十回の雷にも打たれているんだ。その痛みは……芝居をするまでもない。」

「お前の「親切」のおかげで、俺は雷まで操れるようになった。

 今見返りを返さないと、失礼ではないか。」


修士

「使霊ごときで、わしに打ち勝とうと思っているのか!」


太史五龍羹

「ごとき?」


彼は顎で示し、生臭い吐息は周りから迫ってきた。

……色々の悪獣が暗闇から牙を剝き、使える王の前に立つ。


修士

「いつの間に……待て、これをーー」


太史五龍羹

「練魂の儀はまだ控えている。

 喘ぐ時間を沢山残しておいたぞ。雷音、やれ。」


雷槌に叩かれてきた紫鱗虺はゆっくりと這い寄り、

震えている修士に口を開けて襲いかかるーー


修士

「うわーっ!!!」


残魂

「え、ええ、え……?!!」


再び昔の苦しい記憶を見ると、魂は震えることを止められなかった。

太史五龍羹と共に入ってきた人間は、

その魂の叫びを耐えられずに気を失ってしまった。


残魂

「お主はいつもこの子のことを側においている。さぞ大事しているのであろうな。

 あいつも同じ思いをしているのかね?」

「今はお主のことを大事にしててあげても、次の瞬間はどうなるんだろうな?

 ハハハ……人の心はよく変わるもんだ、まだ分からないのか?」


太史五龍羹

「何が言いたい。」


その残魂は彼の耳の元でゆらゆらと漂っている。

声すら一定の口調が保たれておらず、まるで身に纏い付いた毒虺のようだ。


残魂

「そうだ……わしが彼をここに残しておこう……

 これでずっとお主の側にいられるのだろう……」

「ずっと……お主一人だけのものに……」


太史五龍羹は軽いため息をついた。

自分の思う壺に嵌ったと、残魂がそう思う時に。


太史五龍羹

「お前は変わっていないな。無駄話が多すぎる。」


残魂

「うあああああーー早まるな!

 お、お主は、わしの命を残してゆっくりと……苦しめたいじゃないのか……

 待て待て待て……」


太史五龍羹

「貴様、狙うべきでないものを狙ったな。気が変わった。」

「例えあの人が最終的に貴様のようになっていても、それは未来の仮定だ。

 まだ結論が分からないことに、俺が恐れて前に進まないとでも思うのか?」

「俺を害するモノは、必ず目には目を歯には歯を。

 志が同じからざれば……赤の他人となればよい。」


雷光が収まると、魂も煙となり、まるで存在したことがなかったように。


気がついたら、もう本殿の中に戻っている。

太史五龍羹は難しい顔をしていて、何かを考えているようだ。


太史五龍羹

「うん?起きたのか?さっきのこと、結論はあった?」


【選択肢】

・信じる

・なぜ私を幻境の中に閉じ込めなかった?

選択肢

信じる

太史五龍羹

「うん、今度はお前の言うことを信じよう。」


彼は目の前の人の耳元に伏してささやいた。


太史五龍羹

「俺を裏切るモノは、皆ああいう風になってしまうわけだ……その日が来ないことを祈るよ。」

「失望させるなよ、〇〇。」


なぜ私を幻境の中に閉じ込めなかった?

太史五龍羹

「聞いていたのか……幻境の中はただの幻に過ぎない。

 お前が目の前で話したり、笑ったりするほうが面白い。」

「それに、強引に従わせようとしても、決して本心を換えられないから。」

「俺はやはり、信用していいものなのか……?」

「お前の無邪気と自信は、いつも人を……」


最後はぼやけて聞こえなかった。

ただ、彼が話していた時、珍しく笑っていた。



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太史五龍羹

「話を戻そう。果物の試食で誘ったのに、なぜ果物は一つも減っていないのか?」

「俺を待っていたのだと……?」

「おまえ……これはお前のために用意したものなんだぞ。」

「空桑のことで、お前はおつも忙しそうに見える。

 それえ、これを食べさせようと思ってな。」




【選択肢】

・口を開けて、あんーー

・ありがとう

選択肢

口を開けて、あんーー

太史五龍羹

「……」


錯覚なのか、彼の頬には微かな薄紅が差したが、

すぐにまた、微笑みが浮かんでくる。


太史五龍羹

「こういう遊びが好きだったのか。」


ありがとう

太史五龍羹

「もし本当にありがたい気持ちを伝えようとしているのであれば、

 行動に移ったらどうだ?」

「例えばーー明日もここに来て食事を作ってくれるとか。」



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雀のように笑ってくれる人が側にいる。

太史五龍羹の眉をひそめた顔も、段々緩んできた。


伝説の中では、この「解憂果」という果物は憂い事を忘れられる効果もあるという。しかし、ゆっくりとそれを手にしただけで、彼の悩みはすでになくなっているそうだ。




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