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吉利エビ・憶絵物語

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最終更新者: 皮蛋納豆丼

甘い楽園・一

チョコレートアイスクリームはカギ――彼は上に飾られたさくらんぼの茎で、ロマンティックな旅の扉を開く。

◆主人公【女性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)


遊園地ゲート前。楽しい音楽、楽しそうな人々、楽しそうな鳥たち。

真夏の日差しが降り注ぎ、みんなキラキラと光り輝いている。


吉利エビ

「……!」


吉利エビは明るい笑顔で、こっちに向かって走ってきた。

頭の上のアホ毛も優しい風に吹かれて楽しそうに揺れている。


吉利エビ

「若~遠くからでも、若の姿が見えてましたよぉ!」


「お待たせ、吉利~」


吉利エビ

「いやいや、ボクも着いたばかりですから。

 遊園地に来るのは初めてなんです。夜にはパレードがあるみたいですよ。

 きっと幸せそうな恋人たちがたくさん見られますよね。楽しみだな~」


『甘言と微笑 星の如く輝く瞳』

桃色の私は桃色の気持ち

光に照らされ頬を赤くしているあなたと

クマちゃんの飛行船に乗って

蜂蜜が集う銀河へ飛んでいきたい

【吉利エビ・甘い楽園】


吉利エビ

「あっ、ごめんなさい!今日は、ふたりで楽しまなきゃ!」

「だから今日のボクの視線は、ノリのようにべったりと、

 キミだけにくっつけるつもりです!」

「うーん……『ノリ』は……あんまりロマンチックじゃないですねぇ。

 じゃあ『はちみつみたいに』とか

 『背中のくまちゃんみたいに』ならどうですか?」


すると、彼は私に手を差し伸べました――


吉利エビ

「それじゃあ、ロマンチックなふたりの世界に~しゅっぱ~つ!」


私は吉利エビにぎゅっと腕を組まれ、虹で創られたようなカラフルな世界へと飛び込んだ……


一日前


吉利エビ

「わあ~!〇〇、みてみて!このチョコレートチェリー味の

 アイスクリームは『宝石のような素敵な恋人』って言いそうですって!

 なんてロマンチックな名前ですねぇ~!」


店員

「そこのお兄さん、ちょうど新商品のキャンペーン中なんです。

 抽選で遊園地のペアチケットが当たりますよ!」


吉利エビ

「遊園地のペアチケット……本当ですか?ありがとう!

 じゃあ『宝石のような素敵な恋人』を二つお願いしま~す!」


吉利エビ

「当たったぁ!一等賞ですぅ!遊園地のペアチケット!」

「ロマンチックな名前のアイスを食べたら、

 ロマンチックなペアチケットが当たりました!

 これって、まさに運命の『ロマンチックコンボ』ですよね!」


吉利は遊園地のチケットをにぎると、急に私の手を引き、大きくクルクルと回った――


吉利エビ

「〇〇、ボクと一緒に遊園地行きましょう、ボクは……」


「わかったよ~!

 もうそんなウルウルした目で見ないで~言いたいことはわかってるから!」



吉利エビ

「……」


「それ何?」


吉利エビ

「あぁ~これは……ネットで調べた遊園地のドキドキガイド!」

「ドキドキする体験がしたいなら、ジェットコースターとお化け屋敷は

 絶対に言った方がいいんですって。まずそこに行きましょう!」


「えっと……ドキドキガイドの『ドキドキ』と、

 吉利が思っているドキドキは同じ意味なのかなぁ?」


吉利エビ

「とにかく、キミは心配しないでくださいね!

 ボクがちゃんと守ってあげます!」


吉利エビ

「わあ~さっきのアトラクション、恐怖の連続だったよ~

 もう心臓がバクバクいって破裂しそう……」


軽く吉利の頭を撫でて慰めた。

彼の髪の毛はモフモフで柔らかくて、さわり心地は最高だ。


吉利エビ

「頭をなでなでされたら、気分がだいぶ良くなりました。

 もしかして、これが伝説の『愛の魔法』なんですか?」


彼はそのまま頭を私の肩に乗せた。まるでモフモフした熊ちゃんみたいだ。


吉利エビ

「うーん…考えてたシチュエーションとなんだか逆になっちゃいましたけど

 これはこれでいいかもです。ああ……キミの肩、気持ちいいです!」


「……」


吉利エビ

「わあ!重くないですか?

 ごめんなさい、つい楽しくて。調子に乗りすぎちゃいました……!」

「はぁ。この遊園地ガイド、全然頼りにならないなぁ。

 ボクの直感で、もっと愛があふれている場所を見付けるしかありません!」


「何度見ても、吉利のアホ毛はすごいね~」


吉利エビ

「あっちに行ってみましょう!」


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甘い楽園・二

駆けるメリーゴーランドと共にやって来る甘い喜び。しかし酸っぱく渋い憂鬱もやって来る。

◆主人公【女性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)


イルミネーションで輝くメリーゴーランドに乗っていると、

うしろから吉利エビの声が聞こえてきた。


吉利エビ

「恋人同士でメリーゴーランドの馬に乗ると、

 楽しい楽園に行けるそうですよ!

 だから、ずっと楽しみにしてたんです!」

「〇〇、どうです?飛べそうですか?」

「……」

「うぅ、楽しいけど、同じ馬に乗れたら、もっとと思いますぅ!」

「今みたいに、届きそうで届かない距離というのはちょっと……」

「何でもないです!

 〇〇、上のイルミネーションを見てください、綺麗ですねぇ!」


吉利エビ

「……」


メリーゴーランドから降りてきた吉利はなんだか落ち込んでいる。

頭上のアホ毛もしおれているようだ。」


ふたりで道端のベンチで休んでいると、遠くから騒々しい声が聞こえた――


「あれ?あそこの横断幕……?」

「……」

「吉利、一緒にコンテストに参加しようよ!」


吉利エビ

「えっ?急にとうしたんですか?なんのコンテストですか?」


「相性コンテスト。カップルで参加する人も結構並んでるみたいだよ!」

「遊園地デート、体験したいんでしょ?

 こんな理想的なコンテスト、もちろん参加するよね!さあさあ!」


吉利エビ

「ええ!〇〇、ちょっと待ってください!」



吉利エビ

「あっ!優勝賞品は、エビのアクセサリーですって!

 これって、きっと何かの運命ですよ!」

「この甘い雰囲気!ここに座っているカップルは、

 きっと本物の恋人同士ですよね。

 みんな息がピッタリなんだろうなぁ!ボクたち……勝てるでしょうか?」


「勝てると思うよ!」


吉利エビ

「……!」

「はい!」


司会

「続いて2組目の参加者に登場していただきましょう。」


吉利エビ

「ボクたちの番ですっ!」


コンテストが終わり、観客たちが帰って行った。

吉利はずっと大喜びで、優勝賞品を手に乗せて、まじまじと見ている。


吉利エビ

「本当にとっちゃいましたね!キラキラの、エビのアクセ!」

「見てください!違う角度で色が変わります!

 遊園地のイルミネーションをつめこんだみたい!」

「はい、これをどうぞ。こっちは、ボクがもらいます!

 記念として、バッグにつけます!」

「すごいです!ボクが蝶々をあんな風に描いても、

 すぐにわかるんですもん!」


「以前、蝶を描いていたところを見たことがあるからね。

 絹と帯で糖葫(たんふー)に蝶を縫ってあげたとき!」


吉利エビ

「ずいぶん前のことなのに、よく覚えてましたね……」


「吉利も私の描いた変なトリケラトプスが分かったでしょ?」


吉利

「はははっ!本当にキミの言った通りですね。

 ボクたち、ここにいる恋人たち、全員に勝っちゃいました!」


「あっ、アホ毛が元気になったということは、もう大丈夫そうだね!」


吉利エビ

「〇〇、安心してください。ボクはもう大丈夫です。

 これまでの悩みが、全部ムダだったと気づきました!」

「〇〇とはメリーゴーランドの馬みたいに、

 ずっと距離が縮まらないと思っていました」

「でもボクたちは、知らない間に、

 いろんな素敵な思い出を作っていました。

 誰にも負けない絆を、手に入れていたんですね!」

「ボクは何を悩んでたんでしょう?

 〇〇はこんなに近い所にいるのに。

 ボクが手を差し出せれば――」


「えっ?なにを悩んでたの?よく聞こえなかった!」


吉利エビ

「だから、〇〇、安心して。

 悩みは……とっくに愛の力でかき消しました!」

「あっ!もうそろそろ時間です。パレードが始まります!」



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甘い楽園・三

パレードの花車に振降る芳しい花の雨。

しかしこれは決してこのロマンティックな旅の結末ではない。

◆主人公【女性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)


日が暮れると、人々は遊園地のメインストリート近くに集まり、

天空から舞い降りたような壮麗なパレードを堪能した。


真夏の優しい風に、芳しい香りが加わり、

パレードカーから花吹雪がキラキラと舞い落ちる。


吉利エビ

「『月は柳枝の頭にかかる』、

 今が、まさに恋人たちにとってロマンチックな時間ですね!」

「はあ、時間が経つのが本当に早いですぅ!

 こんなに楽しいのに、ちょっと寂しいな……」

「…」

「〇〇、今日は……デート『体験』でしたけど、

 全部が偽物というわけじゃないですよね!」


吉利は私の名前を呼び、話しかけているようでいて、

ブツブツ独り言を言っているようでもあった。


吉利エビ

「コンテストのとき、お互いエビのアクセサリーをつけたとき、

 それと――」

「今もドキドキしてる、この胸のあたたかい感じも、全部本気なんです!」

「だから、ボクは……」


「じゃあ、本物にしちゃえばいい!」


そういいながら、私は閉じていた掌をひらいた。


吉利エビ

「……!」


「さっき、この花が、はじめて吉利とあったときの毬のように、

 ちょうど懐に飛び込んできたんだ。」

「だから、吉利がいつも言っているように運命って存在すると思う……」


吉利がその花を受け取る。彼の顔は真っ赤だ。

慌てて袖で顔を隠したが、赤い耳は隠せなかった。


アイスのサクランボよりも、通り過ぎていく女の子の赤いリボンよりも、

パレードの車に乗ったお姫様の赤いドレスよりも、

私が握っていた赤い花よりも、彼の耳の方がずっと赤かった。


吉利エビ

「えっ?さ、先を越されちゃいました!

 ボク……その……わああ!〇〇ってば、ずるいですぅ!」


「だって、私は元々こういう積極的な性格だもの。」

「ずるいっていうなら、吉利の方がよっぽどずるいよ!

 抽選で当たったチケット、実は自分で買ったんでしょ~」


吉利エビ

「えっ!ごめんなさい。騙すつもりじゃなくて。

 若にサプライズしたいって思って!」

「ん……でも、知ってて今まで黙ってたんですね!

 やっぱり若の方がずるいです!」

「……」

「でも、そんな若だからこそ、ボクは――」


吉利は顔を上げて、目を輝かせる。


メリーゴーランドのイルミネーションよりも、空に打ち上げられた花火よりも、

紺色の夜風できらめく星よりも、彼の瞳の方がずっと輝いていた。


吉利エビ

「あ……!」


「……!」


このとき、また一輪の花が私と彼の間に舞い降りた。


二人ともとっさに手を出し、受け止めようとした。

花はちょうどふたりの手が触れた指先にとまった。


吉利エビ

「赤い花が二輪、赤い糸の毬と同じ色。

 これはきっとボクたちを結ぶ、運命の糸なんですね……」

「……」

「ボクは生まれたときから、誰かの愛を応援する側だった。

 でも今は違う――」

「ボクの世界が新しくなったような。

 まるで、ロマンチックで、楽しさがあふれる遊園地になったみたいです!」

「愛は甘酸っぱいオレンジの味だと思ってました。」

「でも、愛は何か単純なものに例えられるものじゃなくて、

 色々な味がするものだと思いました。」

「例えば今夜の愛は、アイスクリームと、花と花火の味です!」

「愛はいろんな味ですけど、ボクにとって一つだけ、

 いつも必ず同じ味があります。」

「それは若の笑顔。ボクの心を甘い味でいっぱいに満たしてくれる!」


花吹雪がひらひらと舞い踊り、真夏の風が濃厚な花の香りを届けてくれていた。


でも、今はそんなもの、どうでもよかった。


花よりももっといい香りが、私たちを包んでいるのだから……




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