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纏花雲夢肉・物語

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作成者: 皮蛋納豆丼
最終更新者: 皮蛋納豆丼

一 浮生若夢・壱

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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纏花雲夢肉

「顔を上げてみたら?君の頭の上の、そのゆらゆらとした、今にも落ちそうなものは何?」


見上げると無尽の暗黒がひろがっていた。それは巨大な漆黒の入り口のようであり、今にも人を吸い込みそうであった。


あの日、纏花雲夢肉にひどく驚かされて以降、すでに数夜続けて同じ悪夢を見ている。このおかしな悪夢は、彼と関係があると疑わざるを得ない。


放置していても解決しそうにない。彼に会って確かめる時だ。


纏花雲夢肉の部屋の中は、かすかに、ろうそくの火が灯っていた。彼は珍しく空中にぶら下がってはおらず、白綾を使って自分を繭のようにくるんでいた。薄暗いろうそくの明かりの下では、よる一層怪しく見える。


城綾の端は、ベッドのわきに垂れ下がり、表面の文字は”殴り書き”され、識別困難であった。しかし得体のしれないものほど、好奇心をそそられる……


纏花雲夢肉

「ここを降りて、君をじっくり見てあげようか?」


たった今まで目を閉じていた彼が、いつの間にか目を開けていた。彼の身を包んでいた白綾がほどけた。彼はゆったりと、目の前の人の動きを観察していた。


纏花雲夢肉

「こんな夜中にやってきて、僕を”奇襲”し、それを僕に気付かれ慌てふためく様子から察するに、君の心には「鬼」がいるようだね~」



【選択肢】

・彼に悪夢について訊ねる

・彼に白綾について訊ねる

選択肢

彼に悪夢について訊ねる

纏花雲夢肉

「ふふっ、そういうことか。僕は君には怖いものがないと思っていたよ。まさかちょっとした冗談で、夜も眠れないほど怖がらせてしまうとは思わなかった。う~ん、実におもしろい。」

「わかった、わかった。もう笑わないよ。つまり君は、どうして毎晩悪夢を見るのか、その理由を知りたいんだね?もしかするとこういうことかもしれない。君は僕の物語が、まだ終わってないと思っている。そしてその疑念が、君の頭から離れなくなり、心理的な不安を感じているのかもしれない。」

「僕はわざと変なことを言っているわけではないよ。よく言われるが、昼に考えたことは、夜の夢を出る。君にはいま心配事があり、おのずとそれが気にかかり、眠れなくなっている。」


彼に白綾について訊ねる

纏花雲夢肉

「この城綾に何と書いてあるのか知りたいって?確か君に言ったことがあるはず。

 でも志怪異聞にすぎないよ。何ら特別なものではない。」

「でも君が疑問に思うのも正常だ。この表面の文字はおそらくほとんどの人が理解できないと思う……言ってみれば、それは間違いなく、埃に埋もれてしまった過去だよ。」

「それについて話すのは望まないんだけど、でもね……」



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纏花雲夢肉

「せっかく君が私に訊くのだから、君のためにその疑問に答え、迷いを解いてあげよう。僕は物語の語り部だ。物語を使って君の問いに答えることにしよう。」


彼は少し袖を振ると、部屋が急速に霧に包まれた。


纏花雲夢肉

「今晩君はまた幻境に赴き、物語を見ることになる。こんな情景……どこかで見たことがあるはず。」

「でも今回僕は君に付き合わないよ。心地よく寝ていたのに君に起こされ、いままた眠くなってきた。」


彼は話し終えると、あくびをしたふりをして袖を振った。すると一瞬にしてあたりの景色がゆがみ始めた。


纏花雲夢肉

「僕は外で待っているよ、でも君が出てくる時は起きているよ~」


赤い壁に緑の瓦、流れる水に石の橋。高くそびえる大きな屋敷は見えない。ここは奥宮の中、皇室の別院のようだ。


突然、どこからか煙が漂ってきた。煙の方向をたどると、知らず知らずのうちに宮殿へと辿り着いていた。


中では2人の人が、机の前に座っていた。二人の装いはそれぞれ違う。一方の人は纏花雲夢肉のようであったが明確には判断はできない。もう一人は武将の装いで、見たところ彼らは同年代といった様子。


二人はそれぞれ巻物を持ち、会話を楽しんでいる。


纏花雲夢肉

「陳郎、僕はこの前、僕たちが一緒に書いたあの文章を、少し修正したよ。ぜひ確認してほしい。物語の中のこのパートを、幻境で表現できたら、きっとかなりいい出来栄えに仕上がるはずだ。」


「陳郎」と呼ばれる人物は纏花雲夢肉が手にした巻物を受け取り、真剣に読み始めた。そして、喜びの表情を浮かべ、度々うなずいている。


陳郎

「うん、素晴らしい。実に素晴らしい。君が付け加えたこの言葉、まさにこの作品に命を吹き込むようだ。」

「まもなく中元節だ。これを帝に献上できれば、必ずやご満足いただけるだろう。」

「纏花雲夢肉、君はこんなに才知に溢れ、武術にも長けている。いずれも君の恵まれた長所だ。君が本気になれば必ず大事を成し遂げられる。」


纏花雲夢肉

「もともと宮中に上がることを望んではいなかった。僕は怠け者だ。朝廷は海のようで、僕はこの濁った水を望まなかった。」

「今、宮中では静かな住まいを見つけられる。静かに読書したり創作したりし、腹の探り合いをする官界から遠く離れ、いま僕は十分に満足している。」


陳郎

「纏花雲夢肉、そうではないよ。人はこの世界と共に生きなければ。栄耀栄華や功名俸禄を求めない者がいるのは分かるが、纏花雲夢肉は君自身のために、もう少しそういったことも考えるべきだ。」


纏花雲夢肉

「僕は君と違って大きな志を持っていない。今のような日々も悪くないと思っている。最近は僕のところに来て、物語を聞いていく人も増えてきた。彼らを失望させないよう、どんな幻境を引き上げるか考えないといけない。」


陳郎

「ハァ――わかった、まあいいさ。」


纏花雲夢肉

「このくらいにしておこう。今はちょうど、詩が大きく発展している時。志怪異聞が豊富に存在し、それどころか埋没の危機にあるものもある。僕の最大の願いは、これら志怪の物語が、この世で異彩を放てるようにすることさ。」

「でも古い本をたくさん所有するのはなかなか難しい。だから僕は考えたんだ。虫に食われたり、摩滅したりしないよう、幻術を使って精彩な文章を僕の白綾に刻むと。」

「ならば最初の作品は共に創作したこの物語にしよう。」


陳郎

「それもいい。でも纏花雲夢肉の筆跡はやはり、酒脱豪放でまったく読めないな。

 ハッハッハッ……」


人生では、一人の知己を得ることすら難しいもの。ただ残念ながら、このようにのんびりとした時間は長くは続かない――」







その次に出現した幻境は、あまりに曖昧で何の像なのか、よく見えない。物語中のこのパートは、纏花雲夢肉によって、わざと消されたのかも……ぼんやりとしており断片的にしか見えてこない。



天宝14年、安史の乱勃発。国の皆がひどくおびえている。







陳郎は反乱軍と密通し、自らの保身のために、かつての初心を捨て、友である纏花雲夢肉を売り、さらには白綾の筆跡を証拠とし、纏花雲夢肉が反乱軍と暗号を用いて内通しているとの虚偽の報告を行い、自らの忠誠心の高さを、皇帝に対して故意に協調した。


纏花雲夢肉は衛兵に包囲され攻撃を受けたが、衛兵程度では纏花雲夢肉にかなうはずも無かった。彼の衣服にすら、刃を一度も触れさせることなく、霞のごとく衛兵たちは消失した。


夜中に陳郎の屋敷に白い影が忍び込む。その化け物のよな白い影は、陳郎の寝台のそばで、ずっと立ち止まっていた。


白綾がゆっくりと陳郎の首にまとわりつき、陳郎は目を覚まさぬまま、ひどく苦しみ、もがいている。


あと少し力を加えるだけで、彼の命を奪える状態がしばらく続いた……だが結局、白綾は力を緩め、白い影とともに闇に消えた。





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二 浮生若夢・弐

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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幻境が再び変化する。いたる所で煙が立ち、目の届くところでは、不埒な行いが繰り広げられている。街の秩序は乱れ、遠くから頻繁に、誰かの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。



【選択肢】

・ここでもう少し観察を続ける

・泣き叫ぶ声が聞こえるほうへ歩いて行く

選択肢

ここでもう少し観察を続ける

目の前のひどい景色に心が痛む。かつて栄華を極めた長安も、今では連日のように激しい戦争が繰り広げられている。時代を考えると、この戦乱は今度、白熱化の一途を辿ることが推察される。


泣き叫ぶ声が聞こえるほうへ歩いて行く

先へ進むほど、目の前の光景はひどく惨烈なものになっていった。川のような大量の血が地面には流れ、折り重なるように横たわっているものは、すべて人の死体だった、家を失い、逃げ惑う人々が、場内から慌てて逃げだしている。


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天宝15年、長安陥落。

陳郎は反乱軍に対抗する任務を負っていたが、失敗し、彼もこの戦乱の中で命を落とした。






彼が死んだ日の夜、白い影が彼の死体のそばで佇んでいた。その死体は他の誰でもなく、たしかに陳郎の死体だった。


纏花雲夢肉

「……僕は君を殺せなかった。でもまさか君が今日のこのような結末を迎えるとは……因果応報ということか。」

「僕は喜ぶべきだろう……僕はきっと喜ぶべきなんだろう……」

「いいんだ。これも僕の夢だと思おう。後悔なんてしなくていい。」


纏花雲夢肉は白綾で陳郎の屍を覆った。かつて輝いていた文字は血でにじみ、徐々にぼやけて判読できなくなった。


もしかするとこの時から、世事を知らぬ纏花雲夢肉は、白綾に捨てられた時のように、永遠に死んでしまったのか。





数年後――





聴衆甲

「うわ。本当に不思議な幻術だ!こんなすごい幻術は今まで見たことがない。自分が夢を見ているんじゃないかと疑ってしまうよ!」


聴衆乙

「いや、さっき私は、この幻境の中から全く出たくなかった。本当に久しぶりに、こんな素晴らしい物語を聞いたぞ!」


纏花雲夢肉

「みんなが気に入ったのなら良かった。ただこのパートのストーリーは少し長い。

 1日では読み終わらない。みんながまだ聞きたいというのであれば、明日また。


聴衆甲

「じゃあ必ず。絶対に結末まで聞かないと。それじゃあまた明日。」


聴衆乙

「わかった。明日も絶対に来ます。」


纏花雲夢肉

「それではまた明日。みなさんをお待ちしています。」


しかし、2日たっても3日たっても、必ず来ると言っていた客たちは来なかった。

口約束はつかめない煙のように希薄であり、いつの日か忘れられていった。


同じ頃、纏花雲夢肉に関する非難が、徐々に彼の耳に届くようになってきた。


聴衆丙

「おや、ようやく出てきたね。この書簡の主はちょっとおかしいと思わないか?あの建物もかなり変てこだ。いつも陰気くさいし。」


聴衆丁

「聞いたところによると、彼はここに何年もいて、姿がまったく変わっていないそうだ。彼が語る物語は素晴らしいが、彼自身も何かの妖怪かもしれない!」


聴衆丙

「そう言われてみると、本当に薄気味悪いな。来るのはもうやめにしよう。本当に取りつかれてしまわないよう気をつけよう。」


うわさはあっという間に広がり、まるで疫病のように広がっていった。その結果、長い間、志怪軒を訪れる客は、ごくわずかであった。


ある日、一人の老人が訪ねてきた。彼は志怪の物語に興味を持っているようで、

風の日も雨の日も毎日必ず訪れ、纏花雲夢肉は彼のことを不思議に思っていた。


しかしこうした付き合いも、数年間ほど続いただけで、この勤勉なお客も、じきに来なくなってしまった。志怪軒はまた昔の状態に逆戻りした。客が来たり来なかったり、たまに物語の結末を探求する者が来たり、たまにここで暇つぶしをして休んでいく人が来たり……


でもみんな例外なく、しばらくすると来なくなった。


数年の後、ある少年がここにやってきた。彼の顔立ちは昔、毎日ここを訪ねて来ていたあの老人に少し似ていた。


少年

「おじいちゃんに「幻術に精通した奇人がいる。その人は幻境を使いながら物語を語る」って聞いたんだ。信じていなかったけど、本当だったんだね。」


纏花雲夢肉

「君のおじいさんは?ここで僕の話を聞いたことがあるのかい?」


少年

「おじいちゃんは、10数年前によく聞いていたと言っていた。毎日あなたの物語を聞きに来てたって、ただ残念なことに重病でもう遠出ができなくなったんだ。」


纏花雲夢肉

「そうだったのか。もうそんなに月日がたっていたのか……」

「それで今おじいさんは?」


少年

「知らなかったんだね。おじいちゃん、3年前に死んだんだ。いつもこの場所に、あなたが現れるって言っていたよ。僕は運が良ければ会えないかなと思って、半信半疑でここに来たけど、本当に会えるとは思わなかった。」


纏花雲夢肉

「なるほどですね……」


彼は自分が食魂であり、普通の人とは違うということを忘れていた。普通の人の一生は、彼の長い長い命にとっては一瞬に過ぎないということに。


彼は自分を止めることはできないし、命の灯が消えるのを防ぐこともできない。


少年

「おじいちゃんの生活は、もともと孤独でさみしいものだった。でも、あなたの物語がきっかけで、年寄りのちょっとした楽しみを見つけたって。だから僕は、ずっとあなたにお礼を言いたかったんだ。」


纏花雲夢肉

「僕はただの語り部だよ。そんなたいしたものではない。」


少年

「今日は幸運にも、あなたの幻術が見られた。そのおかげで、僕の見識がかなり広まったよ。明日も来てもいいかい?」


纏花雲夢肉

「来るの?」


少年

「必ず来るよ。」


纏花雲夢肉はしばらくためらった後、冷たく言った。


纏花雲夢肉

「その必要はない。明日……僕はここにいない。」


彼はそう言って、突然はっとした。嘘、偽善、他人の宿命……それらを彼がコントロールすることはできないが、それは呪いのように、彼を縛り付けていることに。


彼は強力な幻術の力を有しているように見えて、実は何も持っていないかのようでもあった。


纏花雲夢肉

「僕は結局何も残せない……」


彼は各地を放浪し始めた。一つの場所に留まることをやめたのだ。世情の変化は、彼の眼には世間の常態になり、もう何も彼の心を打つものはなくなった。


俗世を漂う歳月は夢のようであった。彼は世間への無関心を貫きつつ、頻繁にさまざまな場所を転々とし、まるで本の中から抜け出してきた、さまよう魂のように、安住の地はなかった。





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三 浮生若夢・参

◆主人公【男性】の場合◆

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霞が徐々に晴れ、幻境が焼失した。見覚えのある人が目の前に現れた。



【選択肢】

・彼の袖をつかむ

・彼の腕をつかむ

選択肢

彼の袖をつかむ

纏花雲夢肉は明らかに動揺していたが、僕の手を振りほどきはしなかった。


纏花雲夢肉

「何をしている?まさか物語を読み、私に見とれたんじゃないだろうね~」



彼の腕をつかむ

纏花雲夢肉

「ちょっと、どうしてこんな荒っぽいことをするんだよ~君は結構力が強いんだよ。幻境をつくり出す、この僕の手を怪我させたら、君はどうやって賠償するつもり~」



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纏花雲夢肉

「どうしてそんな表情をしているの?何かわかったの?」




【選択肢】

・君の過去を見た

・この白綾の意味がわかった

選択肢

君の過去を見た

纏花雲夢肉

「どう?素晴らしいだろう?たまに自分でも思うんだ。僕の歴史は、あの志怪小説よりも複雑だってね。」



この白綾の意味がわかった

纏花雲夢肉

「そのとおり。この文字を解読できるのは、もしかすると僕とあの陳郎だけかもしれない。でもそれは重要じゃない。君が知りたいなら1文字ずつ話してあげるよ~」



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纏花雲夢肉

「どうして何も言わないの?ほかにも何か聞きたいことが?」




【選択肢】

・どうして復讐しないの?

・その白綾はどこで手に入れたの?

選択肢

どうして復讐しないの?

纏花雲夢肉

「僕がそれを実行しようとする時、いつも白綾の文字に目が留まって、1文字1文字が僕に突き刺さってくるんだ。それらに押さえつけられているみたいで身動きできないんだ。」

「僕も自分の気の弱さを感じた。でももしかすると知らないうちに神様が僕を止めているのかもしれないね~」



その白綾はどこで手に入れたの?

纏花雲夢肉

「ふぅ……もちろん僕が複製したんだ。人には善悪があるけれど、これらの物語は十全たるすばらしい出来。捨てるのは惜しいだろう?」

「もしかすると、それは時々、僕に過去を思い出させるきっかけを与えてくれているのかも。僕には振り返るのもつらい過去があるんだってことを。」

「でもいま思うと、本当に良かったよ。幸いにも、僕は何も手を下さなかったし、後戻りできない道は、歩まなかった。」



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纏花雲夢肉

「それらの物語の中で、どれだけの人が復讐のために堕落し、気が狂ったか知ってる?仇の取り合いは永遠に終わりがない。恨みで周りが見えなくなった人はどんな悪い事でもする。それを甘くみてはいけない。」

「僕の心も、恨みに飲み込まれていたら、とっくに幽霊になっていたかもしれないね。はぁ。でも、それでは本当にもったいない。」

「僕は怪物や幽霊が好きだけど、そんなものにはなりたくないよ~」

「過去はとっくに捨てている。でなければ僕も、それらを包み隠さず君に見せるなんてことはしないよ。」

「もう後悔も無い。もし僕のこれまでの経験が、不幸なものだとしたら、空桑に来たことは僕にとって、反対にすごく幸福なことかもね~」

「よし、問題解決!安心して、君はもう悪夢を見ないよ。これからはいい夢ばかり見るだろう。」


その言葉は、僕に言い聞かせたい言葉かもしれないし、もしかすると彼自身に言い聞かせる言葉かもしれない。


その時、きらきら光る影が不意にやってきた。その人は、提灯を手に下げながら二人の間に割って入り、腰に手を当て、口をとがらせている。どうやらちょっと腹を立てているようだ。


鬼火緑

「わあ、やっぱりここにいた!さっき君の部屋に行ったけど、君はいなかった。ずっと探していたんだよ!」

「君たち二人は、こんな真夜中に、寝らずに何をしているんだ!また僕に隠れて何かおもしろい物語を話していたんでしょう?」

「この前君たちは僕を遊びに連れて行かなかったよね?まあ、どうでもいいけど僕も物語は聞きたい!今聞きたい!」


そう言って鬼火緑はどかっと地面に座り込んだ。


纏花雲夢肉は仕方ないといった様子で、ため息をつき、白綾を使って鬼火緑の腰をくるみ、彼を椅子に座らせた。



【選択肢】

・本当に物語を聞きに来たの?

・じゃあ少し静かにしてね。うるさくしないこと

選択肢

本当に物語を聞きに来たの?

鬼火緑

「ハハッ、もちろん違うよ!夜中だし、本当はもう少しエキサイティングなことをしようかと思ったんだ!」

「僕はもともと君を連れて夜遊びに出ようかと……でも君がここにいる以上、僕もここで君に付き合うよ!」



じゃあ少し静かにしてね。うるさくしないこと

鬼火緑

「僕のどこがうるさいんだよ?!ずっと彼一人の話を聞いていてもそれほどおもしろくない。僕がちょっと盛り上げてもいいだろ?」



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鬼火緑

「そうだ、そうだ。紙を持ってる?あっ、あった!ちょっと紙を借りたいんだけど、別にいいよね?」


纏花雲夢肉

「……」


纏花雲夢肉は少し頭が痛そうだ。彼が何か言いたかったとしても、すぐに鬼火緑は勝手に机から紙を引きちぎってきた。


鬼火緑

「君の話を聞きながら、あの幽霊たちを絵に描いて、君にあげるよ。それを壁に掛ければ、君の物語を無駄に聞いていたこともならない。そうだろ!」

「でも紙だと、失くしてしまうかな?じゃあ直接、君の白綾に描こう!」


【選択肢】

・その必要はない。絶対に必要ない

・絵具を置いて。どうしたいのか、ちゃんと言葉で説明して

選択肢

その必要はない。絶対に必要ない

鬼火緑

「僕を信じて。必ず上手に描くよ!すごく自信がある!」


纏花雲夢肉

「僕はまったく信用できない……」



絵具を置いて。どうしたいのか、ちゃんと言葉で説明して

鬼火緑

「彼の白綾には字しか書いてないから、ちょっとシンプルすぎるよ。彼のためにもっと美しくしてあげるよ!」

「虹色はどう?!そうすれば外の寒い時にもマフラーにできるよ!ハハッ。僕って本当に頭がいいな!」



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目の前の二人が売り言葉に買い言葉で言い争っている。鬼火緑が懸命に白綾へと飛びかかろうとするが、そばにいる若が懸命に阻止している。


纏花雲夢肉も、軽々と身をかわしている。明らかに彼には、この”災難”から難なく逃れる力があるのに、なぜだかこの目の前で繰り広げられるユニークなコントに、彼は少しだけ楽しさを感じていた。


空桑に来て以来、こんな風に、生き生きとしていて、賑やかな場面を見る機会が、どんどん増えている。


突然彼は、かつて誰かに言われた言葉を思い出した。


「君を連れて物語のもう一つの結末を見に行きたい」……「君がもう一度生きられるよう願っている」……


纏花雲夢肉

「うん、試してみてもいいかもね~」


小説の中で死者が蘇り、転生するシーンなんて、何ら新鮮なものでない。それはいつも彼にとっては、物語の中のおふざけであって、彼はそれを真に受けたことなどなかった。


しかしこの時、目の前で言い争う二人を見ながら、纏花雲夢肉の心の中に、突然なある種の感情が湧いてきた。まるでずっと自分の心を縛っていた鎖が、一つずつ解かれていくような……


彼は悟り始めていた。ここにいれば、かつて”死んだ”友情の数々が、本当に蘇るかもしれない。今回こそ”死んだ”自分が、本当に再生するかもしれないと。




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