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重陽糕・物語

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作成者: 皮蛋納豆丼
最終更新者: 皮蛋納豆丼

一 当世の伯楽・一

◆主人公【男性/女性】の場合◆

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食事の時間だというのに重陽糕の姿がない。探してみると、彼は木にもたれかかって寝ていた。しかも、寝たまま馬の手綱を手にしている……


【選択肢】

・いきなり叩いて起こす

・葉で鼻をくすぐる

選択肢

いきなり叩いて起こす

重陽糕

「んあ、だ、誰だ?」

「お前か?驚かしてくれるじゃねぇか?」

「あのいたずらは確かにおれの仕業だが、そう根に持つなよ。年寄りのやることに一々本気にならんでほしいもんだな?」


葉で鼻をくすぐる

重陽糕

「は……ーーハクション!」

「おや、お前。少しずつやんちゃになってきたじゃねぇか?」

「昔のおれを思い出させるぜ!ハハ!どうだ?あのいたずらは面白かったか?」


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重陽糕

「……なんのいたずらかって?ハハハ、おれは夢で人をからかっている時に、お前に起こされたわけか。」

「もう飯の時間かい?ハハ、よく寝たぜい。」

「おれはいい。ゆっくり食べてこい。おれもこの親友にちゃんと時間を使わなきゃならんからなぁ。」


重陽糕は隣にいる馬を軽く叩いた。馬の毛は黒くてツヤがあり、ただものではない雰囲気をまとっているが、かなり従順に見える。


重陽糕

「おまえもこいつを触ってみるといい。この馬はどこから来たのかって?その話は長くなるが……」

「馬に乗れい。それを知りたいなら、ある場所に連れてってやる。」


馬が走り、水草の生い茂るに原野に辿り着いた。遠くに、何頭かの馬が一緒に草を食べているのが見える。


重陽糕

「ハハ、よく見ていろ!」


重陽糕は矢を遠くに放った。馬たちは逃げず、逆に矢に付着したモクセイの香りを辿って出迎えてくれた。そして、重陽糕の馬と仲良さげにじゃれあっている。


重陽糕

「追風、白兎、銅爵……おぉ、今日は晨鳧もいるんだな。珍しい。」



【選択肢】

・これ、みんな重陽糕の馬なの?

・みんな分かるなんて……

選択肢

これ、みんな重陽糕の馬なの?

重陽糕

「ハハ、おれはそんな幸せものじゃねぇぞ。」

「この辺りに生きている野良馬だ。この世の宝と言うべきであろう!」

「おれは偶に餌をやりにくるだけだ。食べたきゃ食べろってな。もしおれを乗せてくれれば、何周ぐらいかは回るが。」


みんな分かるなんて……

重陽糕

「ハハ、お前も、おれや他の食魂のことが分かるだろう?」

「馬もまた人と同じ、毛色以外にも、顔も体も違っているからな!」

「ただこいつらはおれの馬じゃない、おれは偶に餌をやりにくるだけだ。食べたきゃ食べろってな。もしおれを乗せてくれれば、何周ぐらいかは回るが。」


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重陽糕

「この馬たちは、みんな自由に生きているからな。」


重陽糕は嬉しそうに馬のことを紹介してくれた。その目は優しく、まるで彼の子供をみているようだった。


重陽糕

「お前もこいつらが好きか?ハハ、いいねぇ……」

「ん、気をつけろ!」


乗っていた馬がなぜか急に驚いたように、後ろ足で立ち高くいなないた。そして、崖に向かって走り出した――


重陽糕

「こいつぁ抑えられん!お前は早く飛び降りろ!」



【選択肢】

・じゃあ重陽糕はどうするんだ?!

・飛び降りるなら一緒に!

選択肢

じゃあ重陽糕はどうするんだ?!

重陽糕

「この馬を死なせる訳にはいかねぇだろ!」

「なんだと?おれのことをほっとけない?仕方ねぇな……」


飛び降りるなら一緒に!

重陽糕

「頑固なやつめ!おれは馬が惜しいから乗ってるだけだ!お前はさっさと離れろ!」

「仕方ないって?はぁ、おれこそが仕方ねぇんじゃねぇか!」



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重陽糕

「つかまってろよ!」


重陽糕は馬の制御を失ったまま、崖へとつっこんでいく。しかし、予想していた衝撃は伝わってこなかった。


目の前は真っ暗だったが、飛び込んだ先は別世界になっていた。さっきの「崖」もまやかしであり、その向こうには広い洞窟が隠されていたのだ。


重陽糕は笑いながら僕を馬から降ろしてくれた。馬も従順な様子で隣に立っている。先程の暴走っぷりはすっかり落ち着いていた。


重陽糕

「くく、びっくりしたろ?」

「そう怒るなよ。おれの秘密基地を見せてやる。ここは誰でも入れるわけじゃねぇんだからさ。」


目の前に、まるでおもしろ道具の博物館のような景色が広がっていた。怪物のお面、木製の人形、カラクリ爆弾などなど……聞いたこともない変わったものばかりだ。


重陽糕

「これはおれが何年もかけて集めてきたものだ。おもしれぇぞ!」

「この墨は水に触れると黒くなるから、人にぶっかけると洗えば洗うほどに汚くなる。あとこの枝と石はまるで本物、罠として使うのにぴったりだ……」

「ハハ、おもしれぇだろう?だが勝手に触ったらいかんからな?ここにあるやつぁ多かれ少なかれ仕掛けがあるからなぁ……」

「せっかく来たことだし、もう一つおもしれぇものをみせてやろう……」





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二 当世の伯楽・二

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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重陽糕がなんらかの仕掛けを動かしたのか、洞窟の中で幕が開いた。そして、まるで本物のような人形が彼に操られ歩き出した。


モクセイの香りが混じる霧がたちこめる。霧の中、人形と舞台は更にリアルになっていく……




太上五年、燕国には亡国の危機が迫っていた。大臣である韓范は援軍

を呼ぶ途中で、東晉の劉裕に囚われた。




韓范

「左大臣、またなんのご用件か?もし君も私に降伏を勧めにきたのなら、それはただの無駄足だ。」


重陽糕

「ハハハ。おれは見舞いに来ただけだ。刑務官よりはずっとマシだろう?」

「降伏するかどうかも、それは参謀が心配することだ。お前の考えについても、おれは大して興味ない。」

「というわけで、おれが気になることを聞こうか。お前が囚われた日、乗っていた黒い馬は伝説の「盗驪」なのかな?」


韓范

「ハハ、伝説では「盗驪」は飛ぶように走れるという。もし盗驪を待っているのなら、今こんな場所にいる訳もない。」

「君もあの馬を探すのはやめたまえ。残酷な戦争のさなか、乱れ飛ぶ矢に殺されたのだろう。それとも驚かされてどこかに逃げてしまったのかもしれない。」


重陽糕

「そんな馬を、おれは惜しいと思ったからな!あの日、やつを傷つけようとする兵士を止めて、逃してやったのさ。」

「いい馬なら帰り道もわかる。きちんと家に帰ったのだろう。まったく、あの走り姿ときたら、まるで飛んでいるようだったな!もしいずれ乗れることがあったなら、この人生にも悔いはなかろう……お前のことが羨ましいぜ!」


韓范

「この囚われた身が羨ましいとは……昔は情報欲しさに演技をしていると思っていたが、君が本当にそれほどまでの馬好きだとは。」

「「盗驪」のことは礼を言う。あの馬は確かに道が分かれるのだが、その主はここに囚われている。二度と馬に乗ることはないだろう。」


重陽糕

「ハハハ、そうか。じゃあ、おれはまたあの馬を拝めそうだな!」

「そう悲しむな。今日はお前を、あの世に送るためにきたからよ……」


韓范

「な、なんだと?」


重陽糕

「ハハハハ!冗談だ!送ることはできないが、馬を走らせるぐらいなら、手助けしてやれるさ。」


重陽糕は牢獄の門を開け、韓范を「押送」していった。広い原野までいくと、二匹の馬が止まっているのが見える。


重陽糕

「ハハハ、おれはあいつらに、今日は「馬刑」の日だと言ったのさ。お前さんよ、こいつが好きなのだろう?」

「愛馬家と試合するのも久しぶりだからな!先に百米走っていいぞ。もしおれに追い抜かれたら、盗驪のことを教えてもらう。どうかな?」


韓范

「あ……」


重陽糕

「問答無用!そろそろ追い越すぞい!」


韓范

「させるか!」


重陽糕

「なあ、この盗驪と比べてどうだ?」


韓范

「程遠いものだ!」


重陽糕

「ハハハ、まことか!」




義熙六年。晉の軍勢が廣固城を落とした。劉裕は難攻不落の廣固城に

苛立ち、場内にいた者たちを皆殺しにして、うっぷんを晴らそうとしていた。

その危機に、重陽は韓范の諫言の手紙を上に見せた。




劉裕

「「晉の皇室が南へ遷都し、残された貴族や百姓は強権に縋り付くしかなかった。

 君臣になった以上、力を尽くすほかない。彼らは先帝の遺民や貴族だが、今皇の軍勢は彼らを殺そうとする。もはや、何を頼ればいいというのだろうか?」」

「韓范よ……さすがの賢さだ……」


劉穆之

「将軍殿。百姓なら生かしておいても構いませんが、燕国の貴族はまた何かを企むはずです!残してはなりません!」

「特に韓言卓という交戦派の首謀者は、戦をここまで長引かせた原因です!万死に値するでしょう!」


重陽糕

「何を!」


モクセイの香りが漂う霧の中から、重陽糕が馬に乗って現れた。韓言卓の前に立ち、弓を張って劉裕の方を狙っている。


重陽糕

「ハハ、勝手に動くなよ。この弓の腕は、お前らも知っているはずだ。言卓、乗れ!」


劉裕

「重陽、なにゆえ……」


重陽糕

「なにゆえ?ハハハ、なにゆえだと?」

「お前は、大志のために犠牲を避けられないものだと言った。おれは、自分の馬が一頭、また一頭と死んでいくのを見ていることしかできなかった。今となっては、もうこいつしか残っていねぇ……」

「そしておまえは今日、また大志の名のもとに、この城の者を皆殺しにしようとし、こんな子供さえ殺そうとしている……これは必要な犠牲なのかい?それとも己の欲望のためなのかい?」


劉裕

「私は貴様になんの悪意も向けていないというのに、何ゆえ韓范の弟のために裏切るのか!」


韓言卓

「あいつは、もう俺の兄なんかじゃない!」


血だらけの少年が一人、凛然と重陽糕の後ろから出てきた。剣を首に当て、従容として死に就こうとしている。


韓言卓

「韓范が降伏してから、俺も燕国も、その人とは無関係となった!その友人に助けられる気もない!破れた廣固城には、死をもって殉じよう!」


重陽糕

「言卓」


少年は自刃した。鮮血が彼の純真な童顔を汚し、毅然としていた表情も、段々苦痛と迷いに歪んでいく。


重陽糕

「言卓!兄はお前が思っているようなやつではない。ただ歩む道が違っていただけで、彼もまた太平のためにやっていたんだ!もうそんなに憎らしく思うな……少なくとも今日、彼が廣固城の民を救ったのだぞ……」


韓言卓

「そうか……」

「兄さん、痛い……」


重陽糕

「このバカものが……」


劉穆之

「なにをぼーっとしている!重陽を捕らえろ!」


重陽糕

「まったく、おれも手柄なら沢山立ててきただろ?こんなふうに閉じ込められちゃ、肩も足も持たねぇんじゃねぇか……」

「そこのお兄さん、どうか俺を自由にしてくれ。……え?本当に出ていいのか……」


牢獄の燭光に、見慣れた顔が照らされた。


重陽糕

「韓、韓ちゃん?」


韓范

「左大臣。」


重陽糕

「おれは……約束を果たせなかった……」


韓范

「あの日のことは、もう聞き及んでいる。」


重陽糕

「じゃあなんで……おれのことを左大臣だなんて言うんだ?もう大臣なんかじゃねぇぞ……」


韓范

「君がかつて大臣だった頃、私は捕虜だった。そして私が大臣になった途端、君は囚人になった……」

「君は私を外に出したことがある。これで帳消しだ。」


重陽糕

「韓ちゃん。おれが行ったら、お前は?」


韓范

「そう呼ぶのはやめたまえ。君は……私との約束を果たせなかった。もう二度と会うこともないだろう。我々の仲も、ここまでにしよう。」

「君が普通の人でないことはわかっていた。そしてもはや私が晉国から逃げられない今、頼みたいことがある。」

「廣固城の南から、一万歩くらい行くと小さな川がある。すぐそばに愚弟の遺物が置かれているから、もし見つかったら、兄に代わって言卓を弔ってほしい。」


重陽糕

「韓ちゃん……一つだけ、伝えさせてくれ。」

「言卓は死ぬ間際まで、お前のことを兄と呼んでいた。」


韓范

「私のことを恨んでいた訳ではないのか……」

「それなら、もう十分だ。いけ!」




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三 当世の伯楽・三

◆主人公【男性】の場合◆

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重陽糕

「廣固城の南から一万歩、小さな川……あれは?!」

「盗驪!」

「天子の駿馬、千葉の赤兎」か……こいつは、いい馬だ……」

「言卓の遺物とか言って、盗驪とは……あいつ、おれを見習って悪ふざけでも仕掛けてきたのか?」

「あの命より馬が大事なやつが、これを冗談のネタにはしないだろう。まさか……」


重陽糕は何かを察し、馬に乗って晉国の方へと向かった。


盗驪は星のように早く、この世にこれ以上に走れる名馬はないだろうと思わせた。しかし、重陽糕が晉国に着いたときにはもう、縊死した体と遺書しか残されていなかった。


「生まれて十数年、大志のために信義を捨てた。だが大志も果たせず、その悲しみに食事が喉を通らない。御前では恐縮しながら仕え、その後ろで悪党どもに陰口を言われる。もはや為す術もなく、疲れ果ててしまった。」

「愚弟は暗い場所が怖く、一人で冥土に行かせるのは忍びない。盗驪は君に差し出そう。ぜひ丁寧に扱ってほしい。願わくは、ただただ來世は飛馬となり、人世を走り回らんことを望む。」


遺書が、重陽糕の手から滑り落ちる。彼は今にも泣きそうな顔をしていたが、すぐに天に向かって高らかに笑った。それから韓范のことを手厚く葬ると、盗驪を駆ってこの現世から姿を消した。


重陽糕

「どうだい?おれの芝居は面白かったかい?」

「おれはこの人形で物語を作り、悪ふざけを沢山してきたぞい!」


【選択肢】

・慰めてあげる

・上手だと褒めてあげる

選択肢

慰めてあげる

重陽糕

「「全てはさだめで、思い通りになることはない」か……」

「ハハ、お前の言う通りだな。」

「まったく、お前の言葉で楽になったわい……」


上手だと褒めてあげる

重陽糕

「ハハハ、こういう芝居が好きなら、これからも見せてやるか!」

「「人生もまた芝居のごとく」、か……ハハ、おまえの言う通りだな。」



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重陽糕

「ではおれがこの芝居のオチも流しておこう。芝居が終わったら、昔のことも忘れていこうか……」




モクセイの香りが漂う霧の中は、すぐに数年後の景色に切り替わってしまった。




兵士A

「劉弁官はなんで亡くなったか、知っているか?」


兵士B

「昔の大臣が鬼になって、仇を討ちに来たとか……」


兵士A

「そんなわけあるか!俺は白髪の翁が馬に乗り、何百歩もの外から一矢だけを放ち、弁官の命を奪ったと聞いたぞ!すぐに姿は見えなくなり、モクセイの香りだけが残されていたとか……」


兵士B

「馬に乗りながら、足跡も残さずに消えるのは、鬼じゃなくても仙人だろ……」

「韓大臣は降伏して以来、かなり重用されてきた。弁官が何度も反逆するように勧めてきたから、自分の潔白を証明するために自害したとか……これはきっと因果の祟りで、仙人が自ら罰を与えにきたのだろう。」


兵士C

「俺も聞いたことがあるぞ。韓大臣が生きていた時に、名馬を一頭持っていたが、周りに見せることはなかった。その話からすると、あの仙人の乗っていた馬は、きっと大臣の馬に違いない!」


兵士A

「いやいや。もうこういう迷信話はやめとこう。」


場所が変わり、伝説の白髪の翁が馬一匹を引き、友人の墨の前で詠う――


重陽糕

「世の人々は功名を望む、将の墓前は草に荒れる。世の人々は義理堅き友を望む、誓いは容易く破られる。世の儚さを嘲笑え、馬蹄で踏んで埋めてしまおう。」


モクセイの香りがする霧が散り、目の前の景色も薄れていく。今、目の前には、木人形一つしか残っていない。


重陽糕

「時間はこんなに過ぎた。おれは何の変わりもしないが、この馬はもう盗驪の何世代後の子孫かも分からなくなってきたぞい!」

「実は、おれも賑やかなのが好きなんだ。ただ別れはもう勘弁願いたいから、仲を深めずこうして人にちょっかいをかける方が楽でな……この馬たちでさえも、自由に生かしておる。そうすれば、憂い事もなく、楽しいことだらけじゃねぇか?」




【選択肢】

・頭を軽く叩く

・くすぐる

選択肢

頭を軽く叩く

重陽糕

「ハハ、弁えんガキめが。」

「子供に慰められる日がくるとはなぁ。」


くすぐる

重陽糕

「ブハハハハ、お前さん、止めんか……」

「このやんちゃぶり、おれにそっくりだな!」

「お前と一緒なら、くすぐらなくとも、おれは毎日笑っているぞい。」



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重陽糕

「お前と知り合って空桑に来てから、このルールにもとっくに拘らなくなったからな。」

「空桑にいるのは家にいるみてぇだからな。おれも、もう放れ馬にはなりたくないんだ。」

「今日のように、おれの帰りが遅くなっても、家につけばきっとご飯を用意してくれるやつもいるのだろう。こういうのは、やはり安心するもんだ……」

「帰ってメシにしようだと?ハハ、では行こうか。」


空桑に帰ると、食堂ではまだ誰も食事を始めていなかった。皆はただ座っているだけで、雰囲気がなんだか妙だ。


鍋包肉

「やっと帰られましたね。」

「なぜまだご飯を食べていないのか、ですと?ふふ、それは隣にいる方にお聞き下さい……」


鍋包肉がリンゴを一つ持ち上げると、リンゴがなぜかハハハと笑い出した。更に触れてみると、皿はひとりでに動き出して、テーブルを滑っていく。


もう慣れた様子の皆を見るに、もはや日常茶飯事なのだろう。


腌篤鮮

「このモクセイの香りと悪戯の程度を考えれば、「犯人」が誰かは明白ですね。」


鍋包肉

「重陽の「サプライズ」はまだどれぐらい残っているのですかね?」


重陽糕

「ハハハ、おれのいたずらは本物みてぇだろう?もうそれだけさ、皆も早く飯にしようぜ。」


そう言いながら、彼も箸で肉を一枚運ぼうとしていた。箸が肉に触れた瞬間、「肉」は突然暴発し、沢山の虹色の馬の切り絵が飛び出してきた。心の準備をしていなかった皆は、またしても驚かされてしまった。


腌篤鮮

「あ~まだ残っていたとは……」


糖葫芦

「わ!」

「これ、面白い!」


重陽糕

「おうお前さん、これが好きなら、教えてやってもいいぞい。」


鍋包肉

「……」


重陽糕

「郭執事よ、若ものならそう堅苦しくやるなよ。毎日ちゃんと笑わんと。」


鍋包肉

「ふふ、ご厚意ありがとうございます。」



【選択肢】

・ここここ、これはこっちと関係ないから!

・これは本当にすごいと思う!

選択肢

ここここ、これはこっちと関係ないから!

鍋包肉

「君の管理の下でこんな混乱が起こるとは、普段の訓練ではまだ足りていないようですね……」

「重陽がやるべき訓練は、あなたにも全てやってもらいますよ。」


これは本当にすごいと思う!

鍋包肉

「どうやら、若もこういった「面白いもの」がお好きなようですね。」

「ならば、あなたがたにも「面白い」訓練をして貰わなければならないようですね……」



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重陽糕

「なんだってぇ?おれは耳が悪くて聞こえなくてな!ハハハ、急用を思い出したから、先に失礼するぜい!」




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