董小宛・餐庁手帳

一

董小宛：あの霍小玉が李益に嫁いだって。

柳如是：李益ってあの李益？浮気者にしか見えないわ、だったら、黄衫客の方がマシよ。

董小宛：はぁ、佳人薄命ね、李香君も侯方域に首ったけだそうよ。

柳如是：そうね、毎日あの桃花扇を抱えてぼーっとするし、大丈夫かな。

二

董小宛：病持ちの目が花を見ても憂う、一人で琴を弾いていたが外の鶯がこの気持を分かってくれたように、柳の木で美しく歌い始めた……

董小宛：最近は体調が悪い、滋養物を食べて早く治らなきゃ、冒殿と柳姉さんに心配をかけてはいけない……

三

董小宛：空桑の献立表がまた変わったの？この前は毛血旺と金瓜醸芋泥を見かけたような……

柳如是：私も覚えがあるわ、いつかまた食べられるのかな。

四

柳如是：この料理、半分がラー油に見えるけど、宛ちゃん、何を頼んだの？

董小宛：適当に頼んだから、よくわからないわ……毛血旺って？なんだろう？

董小宛：毛と血の煮込みとかじゃないよね？えっ、柳姉さん、それ食べたの！？

柳如是：おっ……ピリッとした辛味と濃厚な旨味、おいしいかも。

五

董小宛：金瓜醸芋泥は後世の南方料理で、甘くて芳しい味わいで、絶品だそうよ。

柳如是：あんたね、相変わらずの甘党ね、自分の銘柄「董糖」が物足りなく、他の店でも甘いもの頼むのね？

董小宛：ただの酥糖だ、「董糖」は人が勝手に付けた名前で、からかわないでよ！

柳如是：からかってないよ!董小宛の手作り酥糖は「董糖」で何がおかしい？

董小宛：もう、柳姉さんったら⋯もう知らない！

六

董小宛：！！！今日の芋泥が変だね、何かが混ざっているみたい。

柳如是：どれどれ……本当だ！昔は甘くて美味しかったのに、今日のは……

董小宛：まあ、帰って、あんたの酥糖をもらおう。

七

柳如是：あら！宛ちゃん、なんて可愛らしいお団子かしら、まるで白玉の宝塔みたい！

董小宛：ふふ、柳姉さん、名前を当ててみて。

柳如是：うぅ……咄嗟に思いつかないよ！

董小宛：これはね、私たちのために頼んだ、「姉妹団子」よ！

董小宛：味は塩辛と甘口があるって、これを開発した方たちも、私たちのような若くて美しい姉妹だそうよ！

柳如是：ほお!恥ずかしいったら!若くて美しいとかよく言えたね！

董小宛：えへへ!柳姉さんのことも褒めてあげたじゃないか！さあ、早く団子を食べよう！姉さんに一つ、私に一つ――

董小宛：柳姉さん……今日は姉妹団子を食べたから、これからもずっと良い姉妹でいようね！

柳如是：バカね、この団子などなくても、そのつもりなのよ！

八

柳如是：はあ……

董小宛：柳姉さん、どうして溜息なんかついているの？

柳如是：宛ちゃんの料理天下一だと思ったけど、空桑の料理も捨てがたいわね！

柳如是：板前の顔を見てみたいね……

董小宛：うん？どうして？

柳如是：それは、宛ちゃんのような美人なのかを見てみたいからよ！

柳如是：あんたは私が知ってる詩人の中で一番料理上手で、そして私が知ってる料理人の中で一番きれいなのよ！

董小宛：柳姉さん！また私をからかったわね！

九

董小宛：この酢豚は、上質な肉を揚げてから、出汁を付けて作った物、甘酸っぱい味で、気分までよくしてくれる……

董小宛：帰ったら、冒殿に作ってあげよう……はぁ、冒殿、この料理を食べて、少し明るくなるといいな……

董小宛：窓の外の海棠の花が今にも咲きそうだ……帰ったら、花蕊で花露を作ろう……

董小宛：海棠露は飲んでも嗅いでも使える、その香りに鎮静効果と酔い覚めの効果がある、冒殿も気に入っている。

董小宛：この花露を飲んで、憂いを晴らせるといいな……

十

董小宛：冒殿は海鮮が好きだ、この上湯焗龍蝦の伊勢エビに出汁の旨味が入ってて、きっと気に入られると思う。

董小宛：ただ、このお汁の中の麺は目新しいね、後世の創作かしら？

董小宛：確か、「伊麺」だったかな……

董小宛：店主が家でも作れるように、作り方を教えてくれるかな？

十一

董小宛：臘味合蒸は名前の通り、臘味と鶏汁を一緒に蒸して作った物、塩っぱくて芳ばしい。

董小宛：冒殿は塩漬けや燻製が好きだから、この臘味の盛り合わせをきっと気に入ってくれる。

董小宛：はぁ、いつになったら、冒殿と一緒に空桑に来れるだろう？

十二

董小宛：うん、これは……柳姉さんがお好きな腌篤鮮だ……

董小宛：昔よく一緒に遊んぶときは、よく作らせられたね、「眉毛が落ちるほど鮮美」とか言って……

董小宛：久しぶりで、お元気かな……

董小宛：そうだ、柳姉さんは熱いのが苦手だし、最近は猛暑が続いているから、瓜や桃の点心を作って送ろう！

董小宛：確か酥糖も紅腐乳もお好きだったね、用意して一緒に送ろう。

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