【恋と深空】深夜に語る秘め事

一つ忠告しておくが、お前はうちのリビングでダイヤを探しすぎだ。

コホン、誤解だよ。私はただーー

食べ物を探してるのか？もしくは武器か？それとも、単に俺のリビングを鑑賞してるだけか？

他に何か言い訳があれば、遠慮なく言えばいい。

言い訳なんてない。確かにダイヤを探してたからね。そして今、ようやくここに見つけたよ。

ドラマのおかげで、歯の浮くようなキザなセリフまで吐けるようになったのか。

褒めてるのに、その返しはひどすぎるんじゃない？

俺も見つけたぜ。攻撃力の高いダイヤをな。

･･････理由は？

プールがリッチになると思って。

あなたはいつでもたくさんの金貨に囲まれてるべきだと思うんだ。でも持ってないから、コインを代わりにしてみたんだよ。

コイン1枚だけじゃ足りないな。

少なくともーー

こうしないと。

コインがあるのに私まで捕まえるなんて、欲張りだね。

欲しいものを捕らえただけだ。欲張りとは言えないだろ。

じゃあ何？

まともな人間のまともな行為だ。

そんなにじっと羽ペンを見つめて、何を考えてるんだ？

なんでもないよ。ただふと･･････羽ペンってあなたにピッタリだなと思ったの。

確かに、遊ぶのにピッタリだな。

いやいや、もっと大事な使い方があるでしょ。例えばーー私に手紙を書くとか。

長い前置きの目的は、それだったのか？

そうだよ。ただ、私の目の前に座ってる誰かさんが了承してくれるかはわからないけどね。

了承した。だが、彼は予定通り届く手紙より、突然来る手紙の方が面白いと思ってるようだぜ。

お前が毎日、不定期にカラスのスタンプを送ってくるみたいにな。

ねえ、シン。もし私がチーズを持ってたら、チーズダックを取れる確率は上がると思う？

チーズを使ってチーズを釣るのは、合理的でしょ。

かなりの打ちひしがれようだな。

チーズダックの前でチーズを食べてみたらどうだ？脅しの方が効果的だぜ。

･･････冗談のつもりだったけど、本当にそうしたくなってきた。

なら試してみればいい。

脅しが成功するか満腹になるか、どっちかにはなる。

ううん。いつかきっと取れるから、また今度挑戦することにするよ。

この銃、元の持ち主に「マスカット」って呼ばれてたの？可愛くて爽やかな名前だね。

性能もその名に相応しいぜ。

口径が小さくて、サイレンサーも内蔵されてる。持ち運びに便利だから、任務に持っていくのに最適だぞ。

じゃあ、「攻撃力が高くて、反動が大きくて、性能が優れてて、見た目が滑らかで綺麗」な大型の武器はある？

ある。だがそれを聞くということは･･････とうとう世界を滅ぼす気にでもなったのか？

ううん。ただその武器を「シン」っていう相応しい名前に変えようと思っただけだよ。

食べないんじゃなかったのか？

私が今食べたのはザクロじゃなくて、あなたの富と権力だよ。

スプーン1杯分食べちゃったね。

？

俺の富と権力をお前に分けてやる。

もっと食べろ。スプーンじゃ時間がかかるから、手伝ってやろう。

つまむと音が出るなんて、ちょっと面白いね。

幼稚だな。子供でも遊ばないだろ。

つまらないこと言わないでよ。大人だって適度にリフレッシュしないと。

大人のシンさん。今日は自分を楽しませる方法を教えてあげるーーまず第一に、そのオマケを持って。

第二に飲み物を持つのか？

物を押しつける口実か。お前の算段はバレバレだ。

口実なんかじゃないよ。真剣に教えてあげてるの。

ほら、私は手ぶらになってすごく楽になった。どう？勉強になったでしょ？

なるほどな。「自分を楽しませる」の「自分」は、お前自身のことだったのか？

俺に持たせるなら、こいつらは全て俺のものだーー両手いっぱいに色々持ち帰れるのは、確かに気分がいい。

･･････こんなにたくさんの人がこの王冠に興味を持ってるの？

お前もその「こんなにたくさんの人」の一人だ。

でも人が多すぎるよ。だからーーもっと有意義なことに時間を使おう。

「自己欺瞞」ってやつか。

これは「即断即決」って言うの。ほら、一緒に王冠アイスを買いに行こう。

見れなければ食べる、か。〇〇*1らしいな。

そんなに楽しそうに笑うとは、一体どんな夢を見たんだ？

夢の中で人生の勝ち組になった。

まおう丸の夢だよ。一緒に世界中のお宝を探したり、土地を占領したり、敵を一網打尽にしたりして･･････

お前とマシュマロに倒された哀れな敵が誰なのかが気になるな。

うーん･･････それは･･････その･･････もちろんあなただよ。

？

ちょっと力強すぎじゃない？

夢の中の仕返しだ。これでしばらくおあいこだな。

今の私、伝説の邪悪な魔女に見えない？夜にしか現れなくて、死霊術を使うような。

邪悪かどうかは知らないが、そうやってフードをかぶってたら道が見えないぜ。

魔法をかける前に、夜うっかり電柱にぶつかってひっくり返らないように気をつけろよ。

適当なこと言って。燭台の明かりがあるし、そんなことにはならないよ。

本物の邪悪な魔女ならな。だが、お前はどうかわからない。

早く燭台を下ろさないと、お前の髪まで燃やしてしまうぞ。

あなたって私に大きな影響を与えてるみたい。

急にそう思った理由は何だ？言ってみろ。

同僚にキャンディーを選んでほしいって言われたんだけど、赤い宝石型のやつばっかり選んでたことに気付いたの。

俺がいつも赤い宝石をお前にやるからか？

あなたの目に一番よく合うからだよ。

嬉しい？知らず知らずのうちに、あなたは私の人生に侵入してるんだよ。

それは朗報だな。だがその程度の侵入じゃ、まだ俺の期待には届いてない。

あなたは？あなたも私の影響を受けてる？

その質問をするなら、まずは俺にもたれるのをやめろ。じゃないと、本当に答えがわからないとは思えないぜ。

シン、気付いてる？あなたの手首に、私がさっき買った小鳥のヘアゴムがついたままだよ。

今のうちに気付けてよかったね。そのまま暗点に戻ったら、シンのイメージが崩れちゃうとこだった！

この程度問題ない。お前にイラスト付きの絆創膏を貼られた時、既に俺のイメージが崩れた。

お前の方こそ、髪が乱れてるのに気付いてないのか？

あなたがヘアゴムを持ってるんだから、代わりに結んで。

遠慮なく人を使うんだな。最初からそのつもりだったのか。

まあいい。この前草原で習った結び方をまだ覚えてるしな。

褒められたのか？

うん。その子は「いいことをした人は褒められるべきだ」って言ってた。

俺も褒められてるのか？

理由を当ててみて。

さっき、俺が頭上に飛んできた風船をつかんで･･････

ついでにその持ち主に代わって、風船を攻撃しようとするハトを止めてやったから。

私を待ってる間にそんなドラマチックなことがあったの？

で、答えは？

本当は理由なんてなくて、ただこのシールが気に入ったからあなたにあげたいと思っただけだったんだけど。でも今は･･････

あなたが頭上に飛んできた風船をつかんで、ついでにその持ち主に代わって、風船を攻撃しようとするハトを止めてくれたからだよ。

あなたが持ってる羽ばたきって･･････メフィストの羽で作ったもの？

掃除道具になることは、メフィストの仕事に含まれてない。

つまり、本当にごく普通の毛ばたきってことか･･････

俺が「普通」のものを持ってるのは、そんなに信じられないことか？

あなたの家の中が珍しいお酒とかレコードとか宝石でいっぱいなせいだよ。

取り引きするコアだって、上質のもの以外は見向きもしないし。

その言い方、俺は好きな人まで特別で優秀でないといけないみたいに聞こえるな。

私はそうじゃないってこと？

否定はしないが、お前だからという理由だけじゃ駄目なのか？

私の記憶が正しければ、これってこの前私があなたの部屋に運んだ鉢植えだよね。

気にかけてくれてるんだね？水をあげるだけじゃなくて、花まで咲かせるなんて。

お前も、しおれてないかよく確認しに来てただろ。お互い様だ。

お前があまりにもこいつを心配するから、俺もついでに何度か面倒を見てやっただけだ。

「ついでに何度か」？私が持ってきたものは、全部大切にしてくれてるくせに。

いや、例外もあるぜ。

例えば？

例えば、俺の寝室でなくして、いまだに見つからないお前のヘアゴムとかな。