【白猫】パン・思い出
ウサギ霊媒師 パン・メルヘラヴィー いつもウサギといっしょにいる少女。 ウサギに限り、失われた魂を呼び戻す力を持つ。 |
思い出1
…………
<数匹のうさぎを連れた少女が、じっ……とこちらを見つめている。>
そのうさぎ――
…………。うさぎ……好きですか……?
うん。かわいいよね。
<パンは、うっすらと唇を曲げた。……微笑んだらしい。>
あなたたち……いい人……
私……パン。失われた魂を呼び戻す……霊媒師……
じゃ、じゃあ……死んだ人を生き返らせてくれるの!?
それはだめ……私が呼び戻すのは、うさぎだけ……
<そう言って、パンはうさぎを連れ去っていく。>
ま、まさか、あのうさぎって……!
霊体……だと思う。死んだうさぎの魂が、現世に具現化しているの。
そ、そんなことできるのぉ!?
きっと……それが、あの子の力なのね……
思い出2
こんにちは、パンちゃん。
また……会ったね……この子たちも……うれしいって……
そ、そうなんだ……
<微笑むパンの足元を回るうさぎたち――その姿は、生きているようにしか見えないが……>
ねえ……さわってもいいかしら?
<アイリスが屈みこんで訪ねると、パンの顔から笑顔が消えた。>
それは……だめ。
この子たち……パンの友達。あなたたちの友達じゃ、ない……
だから……だめ。絶対に……あげない……
思い出3
ふふ……
<パンが、うさぎをなでて微笑む。
やわらかく、穏やかな表情だ。>
こんにちは、うさぎさん、本当に好きなのね。
うん。かわいいし……もふもふしてるから……
それに……
それに?
昔もらった人形が、うさぎで……大事にしてた。はじめての友達だったから……
でも……ぼろぼろになって。捨てられた……私、ひとりぼっちになった……
そうだったんだ……さびしかったのね。
うん……でも、今は平気。
<パンは、うっすらと笑う。>
気が付いたら、この子たちがいてくれたから……だからもう、さびしくない……
思い出4
こんにちは、パンちゃん。その子たちも、元気そうね。
うん……死んでるけど、元気。
そ、そういうもんなのぉ?
この子たち、霊体だから。
心が元気なら、死んでても、元気。
<愛おしそうに、うさぎをなでながら――パンは、ぽつりと暗いつぶやきをこぼす。>
生きてたら……いつかパンを置いていっちゃう。ずっといっしょにいられない。
この子たちは、霊だから……そんなことない。永遠にいっしょ。さびしくない……
<ふいに――アイリスが、パンの頭を優しくなでた。
パンは、びっくりして{アイリスを見上げる。>
な、なに……?
私たちは生きているから、ずっといっしょにはいられないけど……
いつかいなくなるのだとしても……ずっと友達同士でいることは、できると思う。
だから、よかったら、あなたと友達になりたいな……だめかしら?
う……あ。
<あわあわとうろたえたパンは、うさぎを抱えてダッと駆け出していく。>
ふぅん。脈なし……ってわけじゃないみたいねぇ。
思い出5
あ……あの――
<顔を赤らめ、うつむいてもじもじとしながら、パンが声をかけてくる。>
あの……ええと……その――うぅ……
どうしたの~?あ、ひょっとして……
ま、待って! 言わないで!
私――私が、自分で言わないと……じゃないと、意味がないから……!
だ、だけど……うぅ……そうなんだけど……
思い出6 (友情覚醒)
この、光……
<目を見張るパン―――その時、いくつものささやきが響いた。
「パンちゃん、がんばって!」
「だいじょうぶだよ、パンちゃん!」
「勇気を出して、正直に!ね?」
う……あ。
<響く声に、パンは涙声でうめいて――>
あ、あの!
<意を決し、こちらに向かって頭を下げた。>
お――お願い……みんな――私と友達になって……!
いいのぉ?アタシたち、生きてるけどぉ……
そ、それでもいいの!ずっといっしょにいられなくても、私、みんなと、友達になりたいっ!
<叫ぶパンの頭を、アイリスがなでる。パンがうさぎたちにするように。>
うん。みんなで、友達になろう。
う――うん……!うん!
<太陽のように明るい笑顔で、パンはぶんぶんとうなずく。
その足元で、うさぎたちが、祝福するように飛び跳ねていた――>
ウサギネクロマンサー パン・メルヘラヴィー
「あ……あのね……みんな……」
「どうしたの、パン?」
「うさぎさんたちがね……パンは……もっと笑ったほうがいいって……」
「私もそう思うわ。笑って、パンちゃん。」
「……まだ……怖いの……いつか、お別れしなくちゃいけないのが……」
「パンちゃん……」
「でも私、笑いたい……!いつもみんなと、笑ってたいの……!」
***
「あったかい……
まるで、うさぎさんたちに囲まれてるみたい。
えっ……私……笑ってる……の……?
……ありがとう主人公。もう……怖くないよ。
私……ずっとみんなと笑っていたい。
これからも……よ、よろしくね。」