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【黒ウィズ】幻魔特区スザクⅢ Story4

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最終更新者:にゃん


Story7-2



叫びと力は、ほとんど瞬時に激突した。

黒の波動がぶつかり合い、衝撃波となって広間を揺らす。両者は即座に間合いを広げ、すぐにまた流星と化して突進、激突、拳を叩きつけ合った。

凄まじく、そして禍々しい力の作裂。殺意と憎悪と憤怒が渦を巻く。

”馬鹿な――! コインもなしに暴走するなど! 止められないのか、ミュール!”

「だめのです――速すぎるですゆえ!」

ミュールは悲鳴に近い声を上げた。

キワムとタモンは、ほとんど黒い影と化していた。そう見えるほどの速度で広間を縦横無尽に疾駆し、その恐るべき力のすべてを叩きつけ合う。

「だめにゃ……! とても入り込む余地がないにゃ!」

カードを握りしめたまま、君は歯噛みする。魔法を放ったところで当たらなければ意味がない。当たったところで効くかどうかもわからない!

ふたりの戦いは、どちらかが倒れるまで終わらないだろう。

そして、どちらが倒れたのだとしても、もう片方もきっと無事ではすまないはずだ。

止めたい。いや、止めなければならない。

だが、止める手はない。キワムたちはもう、君の手の届かないところにいる。握り締めた君の手のなかでカードが歪んだ。

「! まほつか、まほつか!」

そのとき、ミュールが君の手を取った。

「こっち! 呼んでるのでして!」

呼んでいる? 誰が?

そう尋ねるより早く、ミュールは言った。

「キワムを助ける力、あるそうです!!」




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最終話 絶級 AUDEMUS


ミュールに手を引かれて着いたのは、機械が置かれた部屋だった。

機械の前に、薄く透き通った少女が立っている。

「お待ちしておりました――魔法使い。」

「にゃ! 君は……!」

「施設管理AIカムラナ……。このガーディアン製造施設を司る、機械です。

そして、異界にフォナーを送り込み、あなたがたをこの世界に呼んだもの………」

「機械が、どうやって私たちを呼んだにゃ?」

「私はタモンたち収穫者の手により、この施設の制御権を奪われていました。

だから、ソムニウムの力でこうしてガーディアンアバターを形成し、異界に助けを求めたのです。」

「異界を渡るなんて神様みたいな真似、普通できないはずだけどにゃ……。」

「カリュプス降下以前から研究されていたのです。異界の歪み。アシカガ現象と呼ばれるものか。

その研究成果に加え、私のアバターの能力……時間と空間を操る力を用いて実現させました。」

なんのために? と君が問うと、カムラナは、穏やかな微笑を浮かべた。

「今このときのためです――魔法使い。

私はアバターの力であらゆる時間と空間を把握し、その情報を集めました。

だから、こうなることがわかっていたのです。

キワム・ハチスカタモン・シャズと戦い――カリュプスとして目覚めるという未来が。」

「カリュプス! キワムはカリュプスなのでして!?」

「そうなりかけています。

本来ガーディアンには、体内のC資源の過剰消費を防ぐリミッターか備わっています。

ですが彼はなんらかの理由でそれを失っている。だから体内のC資源を過剰に消費できるのです。」

”それで、コインもなしに暴走状態になることができたというのか……。”

「はい。そして、カリュプスの本能的な破壊衝動に心を呑まれていく。収穫者たちと同じように……。」

君は思い出す。アウデアムスの黒い殺気。キワムが時折見せる、冷たい衰情を。

あれは、彼自身すら制御できない、身体に流れるカリュプスの体液の影響だったのか。

「このままでは、彼の人格そのものがカリュプスの衝動に呑まれ、やがてカリュプスそのものと化すでしょう。

その未来が、私には見えていた。それを変えうる因子がこの世界にないことも。

だからあなたが必要なのです、魔法使い。この世界にない力を操る者。イレギュラーなる存在が。」

何をすればいいの? と、君は聞いた。

「あなたにお願いしたいのは、これからのことなの。」

答えたのは、カムラナではなく、巨大な機械の影から姿を現したアッカだった。


「私が、がんばるから。協力してほしいんだ。キワムを……みんなを助けるために。」

「ギシシ。やる気なんだね。アッカ。」

「うん。決めたの。できることは、ぜんぶやってみよう、って。」

うなずいて、アッカはそっと機械に手を触れた。

その身体か、ほのかな光を放ち始める。

どこかで見た光だった。蒼い輝き。それは、そう、スザクロッドに流れる光と同じ。

”自分をC資源に還元するつもりですか!? これは――まさか、カムラナ、あなたが!”

「そう。アッカの――収穫者たちか選ぶ”はずの”ボディを構築する際に埋め込んでいた、”鍵”の作用です。」

”これでは彼女が消滅する!”

「消えないよ。」

笑うアッカの身体が、ついに完全なる光と化して、目の前の機械に吸い込まれていく。

異様なはずの光景は、意外なほどの幻想さで、思わず君の目を奪っていた。

「ロッカがいてくれるから。身体は消えても、私の心は消えずにいられる。」

「やれやれ。責任重大だぜぇ。」

「にしし。ごめんね。」

笑うアッカの身体が、ついに完全なる光と化して、目の前の機械に吸い込まれていく。

異様なはずの光景は、意外なほどの幻想さで、思わず君の目を奪っていた。

「ああ……わかるよ。感じる。ここに流れるカリュプスの力。ぜんぶ、わかる。

みんな、そこにいたんだね。だいじょうぶ。私にはわかるよ。あなたたちが、誰なのか――」

慈悲に満ちたアッカの声が、部屋中に響く。同時に、施設全体が鳴動を始めた。

””鍵”は……管理権限のバックアップか! タモンに奪われた権限を、上書きして取り返すための……!”

機械から、蒼い光が漏れ出した。

それは君の手に流れ込み、実体化して、見覚えのある形を形成する。

君が普段使っているのによく似た、3枚のカードを。

そのカードに込められた力を感じ取り、君は、すべてを理解した。


『お願い、魔法使い。』

アッカのやわらかな声が、響く。

『みんなを、助けてあげて。』


君は、確かにうなずいた。



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story2




君たちが広間に戻ったとき、キワムとタモンの戦いはなお続いていた。


「3はなア……ダメなんダよ……3だけハ! 3ハだメなんダよオッ!!!!」

「知る力あアアアアアツ! 死ネえエええエええエエッ!!」

「俺アなア――ロッドを折らレたガーディアンだ! カリュプスの分身どモに襲ワレて、そウなッタ!

仲間がよ――死ンダよ!3人!3人ダ! ダカらナ、3ハな、3は嫌イなンダ、 許セねエンダよオツ!!」

「おまエだけハ殺ス!殺ス、殺スウアあアッ!!」


黒と黒との衝突が、広間の床を砕いていく。弾け散る粉塵のなか、悲痛な絶叫が轟く。

止めたい。いや、止めなければならない。その意志のもとに、君は託されたカードをつかむ。


「あなたなら、できるよ。」

光り輝くアッカが、君の傍らでうなずく。

「呼び覚ましてあげて。砕け散ったみんなの心を。みんなの心の、その名前を!」


君は、静かにカードに魔力を込めた。

精霊とは違う手応え。カードに眠る〝彼ら〟が、君の魔力に応え、うっすらと目を開く感覚。

〝彼ら〟は問う。自分は何者なのかと。何もわからない。覚えていない、と。

心配いらない。君はささやく。

心の名前を知っているから、と。

君は呼ぶ。

゛花開け、その心に咲く赤い果実よー―インフローレ、!

君は呼ぶ。

゛その心を貫き出でよ、エクスマキナ、!

君は呼ぶ。

゛その心から這い出でよ、月白の蛇骨――エクスアルバ、!

みっつの力が、光となって走った。

その光は、キワムに迫るタモンヘと殺到し、闇を散らすようにしてその身体を吹き飛ばした。


「ガハァッ……、くソッ、なンダッ!? 3!? まタ3ダトォッ!?」


光が、それぞれ異なる形を取りながら、茫然と立ち尽くすキワムの隣に並ぶ。

インフローレ。エクスマキナ。エクスアルバ。砕けたはずの、みっつの心。その形が。


「ア……あア……あアアあア……。」


その姿を見た瞬間――怪物と化したキワムの瞳から、ぼろぼろと透明なしずくがこぼれ落ちた。


「ミ、ん、ナ、いルん、だナ……!

ミんナ……ミんナが、いル……!ミんナのこコロがあル……ウウ、ウウウ……!

いなクなっタ、ト、オ、思っ夕……もウ、会エなイっテ……ミんナ……ウ……ウウウ……!!」


泣きじゃくり、くずおれそうになる怪物を、みっつの心が、そっと支えた。もう、大丈夫だと――

もう、泣かなくてもいいのだと、そう告げるように。

その光景を、優しく見つめながら、アッカが言った。


「思い出して……キワム。

あなたが本当にしたかったことを。あなたが本当になりたかった自分を!」

「オ、レ、ハ……。」


涙に濡れた怪物の瞳に、わずかな光がきらめいた。

それは意志の光。自分の心をこうだと定める、確かな自我と心の光。


俺ハ……ミんナを、守リたかっ夕……。

みんナに泣かないデいてほしかった……。

いつも、そのためにだけ、戦っていた。どこかの誰かを守るために。誰も泣くことのないように。


「そうか……そうだった。それが俺……俺の心なんだ。」


みんな、とっくに知っていた。心配性のキワム。とびきり優しくて、時に危なっかしいキワム。彼が何を望み、何を願っているのかを。 


「みんなが、泣かないように……みんなが幸せでいられるように……みんなを守るために……戦う!

それが……〝俺〟だ!!」


光が弾けた。

心に応えるカリュプスの力――その蒼い輝きが広間を満たし、君の視界を埋め尽くす。


「そう。あなたたちには、それができる。」


光のなかで、声が聞こえた。それはきっと、心の声だった。


「カリュプス――おかあさんも知らなかったこと。自ら定めた心のかたちを、命の力に変えることが!」


光が消えたとき、そこには、4つの命があった。

確かな意志、静かな誇りとともに並び立つ――4つの命が。    

  

「誇りなさいーーあなたたちはもう、〝造られたモノ〟ではない。

自らの心を自ら選び……〝生まれ直した〟! あなたたち自身が望んだ存在として!」

「そうだ。俺たちは……。」

「「「「ガーディアンだ!!」」」」


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story3



「なくしたくないものを、本気で守る!」

「守りたいものを、全力で守る!」

「そのために戦う。そのためにこの力を使う!」

「行くぞ――みんな!」


「花開け、我が心に咲く赤い果実よ――

〝インフローレ〟!」

「我が心を貫き出でよ、雷牙の機神――

〝エクスマキナ〟!」

「我が心から這い出でよ、月白の蛇骨――

〝エクスアルバ〟!」


キワム、と声をかけながら、君は彼の隣に並ぶ。

キワムは、いつもよりやわらかく、そしていつもより強い微笑みで応えた。


「大丈夫だ。魔法使い。

いろいろ心配かけちまったけど――やっと、わかったよ。俺が、どういう俺なのか!」

「こっちはとっくに知ってたよ。」

「おまえはいつも変わらなかったからな。」

「むしろ、やっとわかったのかって感じよね。」

「ワン! ワンワン!」

「しょうがないだろ。他のことで頭いっぱいで、自分なんて見えてなかったんだよ。」


みなのからかいに苦笑で答え、キワムはまっすぐ、前を向く。


「我が心の化身よ、共に進もう、我と共に挑め――

〝アウデアムス〟!」


「なんナンだ……なんナンだよ、てメェラはよオオオオオオオッ!」

「言っただろ――タモン!

俺たちは……ガーディアンだ!!」

「ふザけルナアアアアアアッ!」


荒れ狂うタモン。その身から放たれる間色のエネルギーを、キワムたちはすばやくかわす。

それぞれ、変貌したガーディアンに乗っていた。君とミュールはアウデアムスの上、キワムの後ろに乗る形になる。 


「インフローレ! 敵の攻撃を分析! 弱点を探査!」

「言われるまでもないわ。すでにすませて、みなのフォナーに送っておるとも!」


空を滑るポードに変じたインフローレを駆り、ヤチヨが周囲に小さな機械を飛ばす。それが情報を集めているらしい。


「からかってやろうぜ、エクスマキナ!」

「Got it. Letis clean his ciock with all guns blazing!」


変形したエクスマキナに搭乗したスミオは、空中を高速で飛び回りながら、タモンに向けて銃を乱射する。


「溜まった鬱憤を晴らしに行くか、エクスアルバ!」


バイクに変形したエクスアルバが、トキオを運ぶ。トキオは巧みな走行で攻撃を避けつつ接近、手にした銃から的確な射撃を繰り出す。  


「すごいにゃ! これはどういう力にゃ!?」


彼らの心が変化した。そのソムニウムに体内のC資源が呼応し、新たな形を見出した!

ライティング形態……そうか。これは、〝自分の心を乗りこなす〟その意志のあらわれか!

「乗りコなス!? 心ヲ乗りコなスだァ!? ざっケんナ! ショせン造らレタ心だロウがッ!!」

「だとしても――俺たちは、この道を選んだ!」


黒い流星と化して疾駆するアウデアムス。その背で、キワムは腕に宿した巨大な爪を振るい、飛来する闇の弾丸を打ち払っていく。


「人を守る。そう造られたなら、それでも構わない。俺は俺に満足してる。俺であっていいと思って」「受ケ入れルっテのカ!人間ノ都合で造らレタ心なンソを!!」

「今は……俺の、心だっ!」


交錯するキワムとタモン。互いの一撃が弾き合い、火花を散らす。


「変わらない心なんてない!

どんな心の形で造られたとしても、出会う人や、起こった出来事や、そういうもので、俺たちは変わる。

自分がいちばんなりたい心を、目指していけるんだ!」

「ヤムヤム! キワム、それよきよきのです!」


君とともにアウデアムスの背に乗るミュールが、反転するキワムに追いすがる闇弾をレベリオーに喰らわせて、はしゃぐ。 


「見せてやるよ、タモン。

これが、今の俺たちだ。俺たちのなりたかった、俺たちの心! 俺たちのほしかった、俺たちの力だ!」


アウデアムスの全身から、蒼い光が放たれる。

カリュプスの破壊衝動たる黒い殺気ではない。それすら゛乗りこなした、キワム自身の意志。誰かを守ろうとする心、その輝き。  


「この力で――おまえの暴れる心を、止めてやる!!」

「なンだトッ……!」

「ミュール、魔法使いっ! つかまってろよ!!」


駆けるアウデアムス。その背で君は力ードを構える。キワムの守りたいものを、守りとおすために


「おおおおおおおおおおおおっ!」


迫る黒影を前に、タモンは茫然と立っている。信じられないものを見ている――そんな瞳で。


「3……3は……3はイけねエっテ――!

何度モ何度モ何度モ何度モッ、言ッテンダロウガアアアアアアアアアアッ!!」

「よく見ろよ! 俺たちは、3人と3匹で、合計6だ!

行けえええええっ、アウデアムスーーーー!」


巨影と孤影が、馳せ達う。

蒼い火花の爆ぜるなか、両者はそのまま、動きを止める


「……青臭ェ理屈、こねやがって。」


背後で、小さく声がした。


「予言してやるよ。てめエの選んだ道とやらにはな、どでかい面倒事が、山ほどあるぜ。」

「なんとかなるさ。きっとな。頼れる仲間が、山ほどいれば。」

「てめエ、人生なんだと思ってやがんだ。」

「すげー難しいもんだろ。

でも、生きてく以上、乗り越えるしかないんだ。たぶん、みんなそうしてるんだよ。人も、人でなくても。」

「ケッ。ガキに知恵がつくと、まったく、ろくなもんじゃねェ……。」


どさり――と、意外なほどに静かな音がした。


「……やったね。キワム。」


ほのかに輝<アッカの影が近づいてきて言うのに

キワムは、優しい微笑でうなずいた。


「ああ。ありがとな――アッカ。」




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エピローグ


君たちは、あの異様な機械のある部屋へと戻ってきていた。


「がんばったね、みんな。これで、収穫者の脅威はなくなったよ。」

「アッカ……。」


光り輝く実体のない影となったアッカは、泣きそうな顔をするキワムに、からかうような微笑みを向けた。


「そんな顔しないでよ、キワム。私、ここに溶け込んだだけで、別に死んだわけじゃないんだし。」

「溶け込んだ、って……身体がなくなった、ってこと? そんな……。」

「だから、そんな深刻になんないでって。

私のボディの製造データは残ってるから、もう一度、同じの作るってこともできるんだし。

タモンたちにいろいろいじられちゃったから、ちょっと時間かかるかもだけどね。」

「なんか複雑な気分だけど……それならまあ安心……かなぁ……?」

「いちおう聞いておきたいんだが……俺たちは、結局どうなったんだ?

タモンにガーディアンアバターを破壊された、ということは、わかってるんだが……。」

「みんなのアパターを構成してたC資源がね、粉々になったあと、この施設に吸収されてたの。

そのままだったら、他のC資源と混ざり合って、心が完全に消えちゃうところだったんだけど……。」

「アッカのおかげで、そうなる前に、みなさんの心をサルベージすることができました。

でも、一度粉々になった心だから、〝自分〟がわからなくなってたんだよね。

それで、みんなのことをよく知ってる人に、〝こうだったよね〟って呼んでもらったの。ね?」


アッカが、ぱちりと君にウィンクを送ってくる。

なんとかなってよかった、と君は言う。要領としては、精霊からの呼びかけに答えるのと似たようなものだから、うまく行ったのだろう。


「そっか。じゃ、俺たちが無事なのは、魔法使いのおかげなんだな。」

「助かったよ、魔法使い。おかげで文字通り、命拾いし――」

「うぉぉおおおおおおおおーっ!!」


突然、キワムがスミオとトキオとヤチヨに跳びかかった。


「きゃっ、ちょっ、ど、どうしたのよキワム!」

「よかっ、よかったぁ……みんな、みんな無事で! 俺、もうみんな死んだと思って……ぐすっ……。」


3人を抱え込んだまま泣き始めるキワム。

ヤチヨは苦笑を浮かべ、少年の頭を優しくなでた。


「……もう。相変わらず、泣き虫なんだから。」

「良かったね、キワム。」


微笑むアッカに、キワムは涙をぬぐいながら笑顔を向ける。


「アッカも、自分の身体が造れるようになったら、絶対言えよな! みんなで迎えに来るからさ!」



と、そのときだった.

君の懐で、フォナーが振動し始める。同時に、周囲に光が渦巻き始めた。


「そろそろ、この世界への固着が限界のようです。

ありがとうございました、魔法使い。あなたの知恵と勇気に、心からの感謝を。」

「魔法使い……。」


キワムが、こちらに向き直る。

その目に、限りない信頼の色を乗せて。


「俺たちが、こうして無事でいられるのは、ぜんぶ、おまえのおかげだ。本当に……助かったよ。」


ちょっと手伝っただけだよ、と君が笑うと、キワムも笑みを返した。


「また、会おうぜ。きっと。絶対。絶対だ!」


もちろん、と君はうなずく。

それを、ミュールがにこにこと見つめていた。


「ミュールも、また会いたいので! おかあさん会わせたいですゆえ!」

「おかあさん? ……誰?」

「カリュプス。」

「え?」

「ミュール、カリュプスのガーディアンですして。たぶん。」

「……え? ちょっ……うぇええっ!?」

「おかあさん、ソムニウムの力、知らなかったでして! それわかりし、よろこぶ、よろこぶ!」

「ちょ、ちょっと待って、なんかそれ、かなり重大っぽい話じゃない!? 今言う!? ここで言うー!?」


キワムたちが騒ぐなか、君を取り巻く光が強くなっていく。


「って、うぉっ、ああっ! 魔法使い!」


もはや互いの姿も見えなくなっていたが、キワムが、あわてたように手を振るのがわかった。


「まただからな! 絶対、まただからな!」


声が、遠ざかっていく。


「忘れるなよ!!」


忘れないよ、と、君はつぶやいた。


そう。きっと、忘れることはない。造られた身でありながら、心のために戦った、そんな少年たちがいたことを。


「会いたくなったら、カムラナに頼めばいいにゃ。」


ウィズの言葉に、そうだね、とうなずいて。

君は、あたたかな光に、その身をゆだねた。





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幻魔特区スザク シリーズ ―END―






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