花嫁版ルウシェ・思い出

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思い出1

キャトラ

えぇ～！？！？
アシュレイが結婚～～！？！？

ルウシェ

はい。騎士様からは、そのように。

――少女の名はルウシェ。
彼女は生まれてからずっと、
＜聖霊教会＞に囚われていた。

＜贖罪の聖女＞――
そう言えば聞こえはいいが、
教団に飼い殺されていたのだ。

罪を喰らうアルマ――
＜アラストル＞を操る力を
持つ存在として――

アイリス

……驚きました。

アイリス

あ、ううん……

きっと、祝福するべきだとは

思うんだけど……

アイリス

……ルウシェさん。

もう少し詳しくうかがっても？

ルウシェ

はい。騎士様から、このような

手紙が届いたのです。

キャトラ

どれどれ……？

ルウシェ。知っての通り、
俺はいま、ある連中と
行動をともにしている。　

正義――と、自分の行為を
誇らしく呼べるほどには、
まだ迷いはあるが――

――この世の＜悪＞と
戦っているという事実は、いくらか
気を紛らわせてくれている。

キャトラ

へ～……アシュレイったら、

そんなことをしてたんだ……

――ときにルウシェ。
俺はある人物と
結婚することになった。

キャトラ

唐突だな！

アイリス

でも、まだ続きが……？

……教会にも、
そう伝えておいてくれ。
今は。

キャトラ

……今は……？

アイリス

…………

ルウシェ

騎士様のご結婚のことは、

言われた通り、教会にも

通達のてはずを取りました。

ルウシェ

ですが……

アイリス

ルウシェさん……

ルウシェ

……アイリスさんも、

なのですね……

ルウシェ

私はこれまでずっと、

世界を知りませんでした。

知るようになったのは、

つい最近のことです。

ルウシェ

ですが、そんな私でも――

キャトラ

……裏があるんじゃ

ないかってことね。

アシュレイの結婚に……

ルウシェ

……騎士様の剣は、

罪を赦し、人を救う剣です。

私は騎士様を……信じています。

――聖霊教会から
解き放たれた、聖女と騎士に、
また事件が起ころうとしていた――

思い出2

アイリス

あら……？

キャトラ

ルウシェがお祈りしてるね？

アイリス

＜贖罪の聖女＞だものね……

日課になってるんだわ……

聖女がその身に宿す、
ソウルの化身たるアルマ……
アラストルは、罪を喰らう。

ルウシェ

アラストル――

罪を司りしアルマに命じます。

ルウシェ

この心迷える者の罪を……

＜喰らいなさい＞。

アラストル

――――――！！！！

その力と教会の教えにより、
聖女は常に祈り続ける。

罪に悩む者が、一人でも多く
救われることを。

そのためなら聖女は――
己がその罪を引き受けることも
厭わない――

ルウシェ

私が『罪』になることで

人々が救われるのなら、

こんなに嬉しいことはありません。

ルウシェ

あなたの罪を――私にください。

聖霊教会に叛逆した騎士、
アシュレイに連れ出された
ルウシェに、その『義務』は
なくなった。

しかし――彼女は祈り続ける。

罪、赦し、その答えは
彼女の中ではまだ出ていない。

だが、それでも――

――彼女は、他者の幸福を願う。
それは決して揺るがぬ
本意であるからだった……

ルウシェ

……あら？

アイリス

あ、すみません。

お祈りの邪魔しちゃって……

ルウシェ

いいえ、そのようなことを

お気になさらないでください。

キャトラ

いやぁ～、すっごい

集中力だったわね～。

ルウシェ

そ、そうでしょうか……？

キャトラ

一時期アイドルになろうと

してたなんて、とても

思えないカンジだったわ♪

ルウシェ

――！！

あ、アイドルも、人々の

幸せのための仕事ですし、

それはいいんじゃないでしょうか！

キャトラ

あはは。わかってるって。

そんなに言いわけしなくて

大丈夫だよ～♪

ルウシェ

うう～……

思い出3

いまの男は……？
やたら急いでたようだが……

地面に手紙が落ちている。
さっきの男が落としたのだろうか？

ルウシェへ
アシュレイ

…………

……

キャトラ

……なになに？

なんて書いてあるの？

キャトラ

『結婚生活最高だわ～』とか？

アイリス

キャトラったら……

ルウシェ

結婚式はこれからのようです。

日時と場所が書いてあります。

キャトラ

おおっ！？　つまり、

結婚式の招待状ってことね！

これは行かなきゃ！

ルウシェ

……そうですね。ぜひ、

出席しなくては――！？

アイリス

ルウシェさん？

ルウシェ

『……お二人に会えることを
楽しみにしております。
久しぶりに私の剣の腕も、
ご披露したいですね』

キャトラ

はァ～ん？

アシュレイがそれを？

やっぱり家庭を持つと、

人って変わるのかしらね～……

アイリス

ちがうよ、キャトラ……！

アイリス

お二人というのは、きっと、

ルウシェさんと……

キャトラ

え～と？　アイリスと

主人公だと

三人になっちゃうし……

キャトラ

まさかアタシ？

アタシとルウシェってこと？

アイリス

ううん……ルウシェさんと、

アラストルのことを

示しているんだよ……

アイリス

それに剣の腕を披露って……！？

ルウシェ

私、行って参ります。

アイリス

ルウシェさん……！

ルウシェ

心配はいりません。私には――

ルウシェ

――アラストルがいますから――

思い出4

ジェガル

――＜アルマ喰い＞だと？

？？？

ああ。ついに尻尾を掴んだ。

？？？

あの島の領主の正体は

通称＜アルマ喰い＞って野郎だ。

ずっと姿をくらませていた、

＜闇＞のお尋ねモンだぜ。

ジェガル

＜闇＞のお尋ね者が

いつのまにか島の領主にだと？

ジョニー

すいません。ウチの情報網に

穴があったみたいで。

要は裏切り者なんですが。

あ、そいつは始末しました。

ジェガル

俺が行こうか。

アシュレイ

『アルマ』喰いだろう。

俺がいく。

アシュレイ

どんなものか知らんが、

デュナミスを喰えるものなら

やってもらおうじゃないか。

？？？

いや～、助かるぜアシュレイ。

あんたが言い出してくれて。

？？？

やっこさん、警戒心が

強くてなぁ。ちょっとだけ

サブミッションがあんのよ。

アシュレイ

何でも構わん。言ってみろ。

？？？

ちょっと結婚してくれない？

アシュレイ

！？

！！

バイパー

（なんでそういう面白いことを、

俺じゃないんだ……！）

…………

……

アシュレイ

…………

アシュレイは戸惑った。
しかし、元々モノが良かった。

一味には女性もいる。
彼女のレクチャーを受けつつ、
潜入の準備を整えた。

セラ

やっぱり、思った通り。

ステキよ、騎士様。

アシュレイ

……本当にこれが

必要なんだろうな？

セラ

さあ？

アシュレイ

貴様っ……！

セラ

いいじゃない。

仕事は仕事だけど、

楽しい方がやる気も出るでしょ？

アシュレイ

不要だ。

セラ

ふふふ……♪

…………

……

――しかし！

裏切り者は一人ではなかった。
アシュレイの到来は、
筒抜けになっていた！

アシュレイ

なっ……！？

アシュレイを待ち受けていたのは、
巧名に隠された
＜ソウルコントローラー＞。

ルーンの力で発動し、
人の力の源である
ソウルを抑制する罠あった。

領主

聖霊教会のデュナミスか。

なるほどなるほど、

私より随分強そうだね。

領主

娘の縁談に来てくれて

大変感謝しているよ。

私が＜アルマ喰い＞だ。だが、

ここで一つ言いたいのだが……

領主

――娘の方が格上でね。

第二世代、とでも言おうか。

領主の娘

…………

領主

産み出したいと言うのだよ。

アラストルとデュナミス……

二体のアルマを喰らってね。

アシュレイ

……！！

領主

さあ、お手紙を書きたまえ。

切迫した状況を

暗号ででも伝えたらどうかな？

思い出5

――その島の民衆は
領主の正体を知らない。

領主様の娘のご婚儀……
それは善意のみの
お祭り騒ぎだった。

ルウシェの服装が、殊更人目を
引かなかったのは、その状況が
幸いしたのだろう――

ルウシェ

あの、すみません！

お聞きしたいことが！

商人

ん？　はは、あんたも

ご婚儀をお祝いに来たんだね。

あやかろうとおめかししちゃって。

ルウシェ

ご婚儀はどちらで

執り行われるのでしょうか？

商人

丘の教会さ。でも……ご覧。

商人が指差した丘は、
数多くの民衆で
埋め尽くされている……

商人

本当は私も行きたいところ

なのだけどねえ。

商人

ハハ、仕方ないな。

いずれお見かけすることも

あるだろうしさ。

ルウシェ

……そうですか……

兵士

すみません。領主様が

お呼びしております。

商人

なんだって？

やあ、あんた、

ついてたなぁ……！

ルウシェ

（……この……気配は……！）

商人

え？

ジョニー

失礼。

ジョニー

眠ってもらいました。

ルウシェ

あなたは……？

ジョニー

敵の情報網も異常なまでに広い。

ジョニー

あなたがここに来たという、

『事実』が必要だったんです。

ルウシェ

……先程の気配。

領主は、＜闇＞なのですね……

ジョニー

ええ。しかも、狡猾で用心深い。

ジョニー

力を貸してください。

アシュレイさんのためにも。

ルウシェ

はい……！

…………

……

アシュレイ

…………

領主

――さて、お待ちかねの

花嫁のご到着だ。

ルウシェ

…………

領主

…………

領主が手をかざすと、
教会の扉は締められた。

自然な誘導により、
警護の兵士以外が
この場からいなくなる……

領主

――では、始めようか。

我が娘よ。二つのアルマを喰らい――

！！

領主

！？
貴様、聖女ではないな！？

ルウシェ

…………

領主

下等な幻術を！
そんなものが通用すると思うなよ！

ジェガル

通用しているではないか。

領主

なに！？

領主

貴様ら……！

ダージ

何が結婚式だ。ムカつくぜ。

レイヴン

……趣味が悪い。

バイパー

アシュレイ、もうしばらく
辛抱していろよ……！

領主

……四人程度で何が出来る！

！！

領主

何体ものアルマを喰らい、
宿したこの力……！

領主

思い知るがいい！

領主の娘

！！

思い出6

領主

どうした！　我らはここだぞ！？
たどりつくことすら
難しいのかな！？

領主

＜闇＞よ、広がれ――！

ジェガル

やはり、膨張するか……！

ダージ

ムカつくぜ。

領主

ほら、どうしたんだね！？

そんなことでは

いくら戦っても――

領主

なんだ……！？

バイパー

花嫁のご到着だ。

！！

ルウシェ

（感じる……！

まだ、デュナミスは……！

騎士様……！）

ジョニーに連れられ、
ルウシェは再び飛行島へと
戻ると―

絆の力――
主人公の
ルーンの光により、アラストルを
一時的にパワーアップさせ――

上空から、丘の教会を
襲撃する作戦に出た！

自由落下の最中、
ふと脳裏によぎる――

ルウシェ

（そんなときではないけれど……

世界は……綺麗……）

アラストルに抱かれ、
鳥の視点になったルウシェ……

ルウシェ

（世界は綺麗、だけど……！）

世には罪があり、
人には悩みがある。
そしてなにより――

――＜闇＞が存在する！

ルウシェ

――アラストル！

アラストル

――――――！！！！

ルウシェ

はぁああああっ！！

屋根を貫き現れたルウシェは、
即座に娘を敵と定めた。

――滅することでしか、
救いを与えることが出来ない
＜闇＞だと――！

！！

領主

なっ……！？

ルウシェ

ご無事ですか、騎士様！？

アシュレイ

…………

ルウシェ

騎士様、騎士様！？

アシュレイ

…………

アシュレイ

来い……デュナミス……！

領主

くっ！？

娘から解放された
デュナミスが、アシュレイの背後に
引き寄せられる……！

アシュレイ

世話をかけた、ルウシェ。

ルウシェ

騎士様、気づいたのですね……！

バイパー

すまなかったなアシュレイ。

嫌な役目だった。

アシュレイ

構わん。危険だからこそ、

俺に出来ることでもある。

領主

くッ……！
クソがぁ……！

アシュレイ

やるぞ、ルウシェ！

ルウシェ

はい！

領主

馬鹿な……！
貴様らごときに……！

アシュレイ

お前、言ったよな？

領主

コウナッタラ、
キサマノアルマヲ……！

アシュレイ

散れ。

領主

グアァァァァァ……！

アシュレイ

俺のデュナミスの方が、

貴様なんぞより強いさ。

ルウシェ

騎士様……

アシュレイ

すまない、また借りができたな、

ルウシェ。

ルウシェ

なぜこのような危険なことを

したのですか！？

アシュレイ

ルウシェ……？

ルウシェ

騎士様の剣は、

誰かを救う剣です……！

ルウシェ

失ってはならない、

大事なものなのです……！

ルウシェ

もっと自分を大切に
して下さい……！

アシュレイ

…………

ジェガル

ほう。聖女と聞いていたが、

中々どうして……

ダージ

取り込み中悪いが、

どうやって引き上げる気だ？

外には大勢いるぜ？

ダージ

しかも、事情を知らない

国民から見れば

俺たちは犯罪者だ。

バイパー

まあ、迎えは来るんだが……

……そうだな。

バイパー

めでたい印象で去ろう。

ルウシェ

めでたい……とは……？

…………

……

――ある島で、何者かによって
領主が倒された事件の真相は、
帝国と連邦により、
ほどなく世間の明るみに出た。

真実を知った島民は、
＜闇＞に支配されていた
事実にぞっとするも、
すぐに希望を取り戻したという。

なぜなら、それは――

破壊された教会から、
黒い飛行艇へと乗り込んでいった
二人の男女が――

――絵に描いたように
お似合うの花嫁と花婿で……

……ご婚儀を見たかった民衆は、
その二人を一目見たところ、
全員、満足してしまった
からだとか……

キャトラ

……なんとか。

アイリス

キャトラ、なにを見ているの？

キャトラ

新聞。ねえ、ルウシェ～？

ルウシェ

…………

キャトラ

アンタ、ものすごく

有名になっちゃったわね～？

ルウシェ

もう！　バイパーさんが……！

アイリス

（そっか、バイパーさん、

新聞のノウハウが

あるんだった……）

キャトラ

アイドルもやってたし……

アンタもう、外で悪いこと

できないわね。

ルウシェ

元々やりませんよ！　もう！

――こうしてルウシェと
アシュレイの二人は、
しばらくの間――

『幸せな結婚』の
代表例のように
扱われてしまうのだった。

……もちろん、それは、
情報操作の意味も
兼ねていたわけだが――

ボイス

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