スズネ・思い出
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思い出1
スズネ
はじめまして。
スズネと言います。
スズネ
風鈴を売りながら、
諸国を旅しています。
アイリス
風情を運んで回っている、
というわけですよね。
キャトラ
アイリス、なにを突然
上手いこと言っちゃってるのよ~。
スズネ
ありがとう。
そんな風に言ってもらえると
とっても嬉しいです。
スズネ
好きなんです、風鈴。
スズネ
心が軽くなるようなこの音色を、
いろんな方に届けてあげたいです。
思い出2
キャトラ
ねえねえスズネ。
スズネ
はい、なんでしょう?
キャトラ
キャトラの飛び出しクエスチョンのコーナーやってもいいかしら?
スズネ
ええ、どうぞ。
キャトラ
スズネの武器って、風鈴だよね?
それでモンスターを叩いて、
割れたりしないの?
スズネ
これは、
<風鈴>のルーンの力のおかげで
武器として使えているんですよ。
スズネ
と言っても、
他に特別な力は
ないんですけどね。
スズネ
どんなときでも、
風鈴の音色に
耳を澄ませていたい―――
スズネ
そんな私の願いを叶えてくれる、
夢のようなルーンです。
キャトラ
殴られてる方は
音色どころじゃ
ないと思うけどね……
思い出3
キャトラ
ねえねえスズネ、またいいかしら?
スズネ
飛び出しクエスチョンでしたっけ?
どうぞ、かまいませんよ。
キャトラ
風鈴って何で出来てるの?
スズネ
ガラスです。島によっては
ギヤマンなんて呼ばれたり
しているそうですが。
キャトラ
どうやって作るの?
スズネ
灼熱の中で作るんですよ。
キャトラ
灼熱の中??
スズネ
すごい高熱で熱することで、
ガラスを溶かします。解けた
ガラスに細い管の先につけ……
スズネ
ひたすら、
ふーっ、ふーっ、ふーっふーっ、
と息を吹き込んで丸くするんです。
キャトラ
それをめちゃくちゃ暑い中で、
延々やるわけ?
スズネ
ええ。
キャトラ
大変ねぇ~……
アイリス
出来上がった風鈴は
とっても涼しげなのにね。
スズネ
ふふ、そうですね。
ですからみなさん、
職人さんたちの苦労の分も、
スズネ
涼んであげてくださいね。
思い出4
スズネ
また、いつでも
いらしてくださいね~。
スズネが誰かを見送り、
手を振っている。
アイリス
誰か来ていたんですか?
スズネ
はい、心を落ち着かせたいと、
看護婦さんがいらしてました。
スズネ
風鈴の音色を聞いて、
少しだけ穏やかに
なられたみたいでしたよ。
キャトラ
でも、性格が変わるわけじゃないでしょ?
そのうちまた来るんじゃない?
スズネ
それでいいんですよ。
少しの休憩で、
楽になった気がするのなら。
キャトラ
気がするだけでいいの?
スズネ
ええ。
風鈴は薬ではありませんし、
何かを変える力はありませんから。
スズネ
でもきっと、
無意味なものではないんです。
私はそう思っています。
思い出5
スズネ
……
スズネが沈んだ表情で
散らばったガラスの破片を
集めている……
キャトラ
ちょっと、どうしたのこれ!?
スズネ
……大丈夫です。
……気になさらないでください。
キャトラ
そんなこと言わないで、
何があったのか
言ってみなさいよ?
スズネ
……商売ですから、
こういうことも、
たまにあるんですよ……
スズネ
このあいだ、
風鈴をお求めになられた方が、
返品しに来られたのです。
スズネ
『全然涼しくなんか
ならないじゃないか!』
と。
スズネ
風鈴を投げ捨てて行かれました……
キャトラ
そんな……
スズネ
お客様は悪くないんですよ。
たしかに風鈴を吊るしても、
涼しくなるわけじゃないですから。
スズネ
……笑っちゃいますよね。
スズネ
音色で癒されるなんて、
私の勝手な思い込みなんですよ。
スズネ
無意味じゃないとか言っておいて、
これが現実なんですよ……
アイリス
スズネさん……
思い出6
スズネの体が光に包まれていく―――
その光が、
澄んだ音色を響かせている―――
光であるのに、
音を伴っているとしか思えない。
音と光が、スズネを優しく包む―――
スズネ
この響き……ルーンの響き?
私の心と、
みなさんの心の……
アイリス
私は好きですよ。
風鈴の音。
スズネ
え?
キャトラ
あたしも!ねえスズネ!
商売だもん。めげずにいこうよ!
キャトラ
今は風鈴を必要としていない人も、
いつかわかってくれるかもよ!
キャトラ
不意にさ、風が吹いて、
心地よい音を響かせたときに、
キャトラ
『なんだ、風鈴も
結構いいじゃん』
とかってさ!
スズネ
ありがとう……
私、へこたれません
スズネ
私の大好きな風鈴の音色、
世界中に響かせてみせます……!
思い出7
スズネ
みなさんこんにちわ。
なんだかお久しぶりですね。
キャトラ
あらスズネ。そうね、
なんだか懐かしい気がするわね。
アイリス
おかわりないですか?
スズネ
風鈴が巨大化しました。
キャトラ
そうよね、特に何も、って━━
キャトラ
ナニソレ!どゆこと!?
スズネ
私にもわかりません。
みなさんにはわかりますか?
キャトラ
アンタがわかんないのに
わかるワケないわよ。
スズネ
そうですよね。
この巨大風鈴ですが━━
スズネ
━━鳴らないんです。
キャトラ
デカくてオモいから
風で揺れないだけじゃないの?
スズネ
いいえ。風とは別の、
なにか、もっと強い力が
ひつようみたいで……
キャトラ
ふむ。てことは、アレね!
アイリス
そうね!
思い出8
スズネ
あ……なりました……!
高らかに澄んだ風鈴の音色が、
飛行島全体に響き渡る。
長い長い余韻を残して━━
……心なしか
島全体が穏やかな空気に
包まれた
スズネ
ふふふ……ありがとうございます。
スズネ
皆さんが風鈴の音色で
癒されてくれることが、
私にとって幸せなんです。
スズネ
私にはこれしか出来ませんが━━
スズネ
これからも、
お手伝いさせてください♪