ジョバンニ・思い出
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思い出1
ジョバンニ
こんにちは!
僕はジョバンニ、作曲家です!
大量の楽譜を抱えた少年が、
明るく自己紹介する。
ジョバンニ
ここはとてもいいところですね!
空気はきれいだし、自然も豊かで……
アイリス
ジョバンニくんのいたところは、
そうじゃないの?
ジョバンニ
ええ、技術は発達していて、生活は
豊かですが、空気は濁っています。
ジョバンニ
そこで曲を作っていると、だんだん
息が詰まりそうになって……
ジョバンニ
でも、ここならその心配は無いです
ね。明るい曲が書ける気がします!
アイリス
なら、よかった。
曲ができたら、ぜひ聞きたいな。
ジョバンニ
任せてください!
僕は指揮者でもありますからね。
ジョバンニ
みなさんの心と耳に、すばらしい
音楽を届けてみせます!
思い出2
ジョバンニ
おっととと……
ジョバンニが、書類の束を抱え、
歩いている。
アイリス
あら、ジョバンニくん。
大変そうね。手伝おうか?
ジョバンニ
お気遣いどうも!
でも、大丈夫です!
ジョバンニ
昨日書いたばかりの曲だから、分割
するとわからなくなりそうで……
キャトラ
これ全部、昨日作ったのぉ!?
ジョバンニ
うん、衝動が沸きあがった時は、
一気に書き上げるに限るからね。
ジョバンニ
ただ、徹夜しちゃったから、
ちょっと疲れ――うわっ。
くらり、とジョバンニがよろけた。
キャトラ
ぎにゃーっ!
しっぽ踏まれたぁーっ!!
ジョバンニ
ご、ごめんキャトラ。
ちょっと立ちくらみが……
アイリス
大丈夫、ジョバンニくん?
休んだ方が……
ジョバンニ
いえ、平気です!
まだ僕のなかに衝動があるんです。
もう少し、がんばりますよ……!
思い出3
ジョバンニ
あれ? どこにやったかなぁ……
上着をひっくり返すジョバンニ。
キャトラ
どうしたのよ、ジョバンニ~。
何かなくしたのぉ~?
ジョバンニ
うん、ふと閃いたアイディアを、いつもメモに
書いておくんだけど……
アイリス
そのメモ帳が見つからないのね。
探すの手伝おうか?
キャトラ
ひょっとして、その帽子のなかだったりして~。
ジョバンニ
あ、ホントだ。あった!
キャトラ、すごい!
キャトラ
ホントにあったの?!
気づきなさいよぉ~!
ジョバンニ
いやあ、ははは……っ!?
ぐっ、げほっ、げほげほっ……
アイリス
ジョバンニくん!?
どうしたの、大丈夫!?
ジョバンニ
だい……げほっ、じょうぶです……
ちょっと咳が出ただけですから……
ジョバンニ
せっかくメモが見つかったんだ……
咳ぐらい……げほっ!
思い出4
キャトラ
ちょ、ちょっとジョバンニ!
顔色悪すぎぃ~!
ジョバンニ
あ、キャトラ……
今、インクを買い足しに……
キャトラ
何言ってんのよ!
寝てなきゃダメでしょぉ~!?
ジョバンニ
だめだ。
ジョバンニ
今……<衝動>が来ているのは、
今なんだ。ここを逃すわけには……
ジョバンニ
今じゃない……と――
倒れこむジョバンニ。慌てて支える
と、彼はすでに気を失っていた。
アイリス
ジョバンニくん……
どうして、ここまで……?
思い出5
キャトラ
ジョバンニぃ!
寝てなきゃダメだってぇ~!
ジョバンニ
離して、キャトラ……今、書き上げ
ないと<衝動>に逃げられる!
キャトラ
そんなの、後にしなさいよぉ!
命より大切だっていうのぉ!?
ジョバンニ
そうだッ!!
キャトラ
え――
ジョバンニ
僕は病弱だ……いつ、この身が朽ち
るかわからない……
ジョバンニ
だから……書ける時に、書ける限り
曲を書かなきゃいけないんだ!
ジョバンニ
書くべき曲を書けずに死ぬくらいな
ら……僕は曲を書いて死ぬッ!!
思い出6
ジョバンニ
わあ……
ジョバンニ
あたたかな光だ……まるで、
心に沁み込んでいくみたい……
アイリス
ジョバンニくん、体調は……
ジョバンニ
落ち着いたみたいです。
ありがとう、
主人公さん。
アイリス
ジョバンニ……、
やっぱり、まだ書くのぉ?
ジョバンニ
うん……キャトラ。
僕は、書くよ……
ジョバンニ
僕にしか書けない曲がある。
僕を待ってる曲があるんだ。
ジョバンニ
だから……書く。この命を燃やして
でも。すべての魂を、叩き込む!
ジョバンニ
僕は――生きてる間に、少しでも
多くの感動を生みたいんだ……!
キャトラ
……はあ。
止めてもダメっぽいわねぇ……
キャトラ
でも簡単には死なせないわよ!
いくらでも世話焼いてやるんだから!
ジョバンニ
ありがとう、キャトラ。
うれしいよ……
ジョバンニ
このうれしさも曲にする。
僕は、心の……
命のすべてで曲を書くんだ!