ミゼリコルデ・思い出
ミゼリコルデへ戻る
思い出1
キャトラ
コォォオオオラアアアアアッ!
キャトラ
一体、誰よ! アタシの寝顔に落書きしたのは! 洗い落とすの大変だったじゃない!
???
ごめんなさい・・・ うちの子が迷惑をかけたみたいで・・・
カボチャのランプをぶら下げて、
奇抜な格好をした
少女が近づいてくる。
???
お詫びにキャンディをおひとつ・・・
あっ、猫にこういったものは毒だったかしら?
キャトラ
アタシは普通の猫じゃないから
あめ玉くらい平気よ~。それより、
アンタ誰? ウチの子って?
ミゼリコルデ
私はミゼリコルデ。
ある島で、
お化けたちを教育しているの・・・
ミゼリコルデ
迷える心を導いて、
清浄なる魂を
ソウルに還すのが私の仕事。
ミゼリコルデ
心を清めるには掃除が一番。
と、オバケたちに手伝って
もらっていたのだけれど・・・
ひとり逃げてしまって・・・
ミゼリコルデ
追いかけてきたら、
あなたの叫び声が聞こえてきて・・・
キャトラ
大声出して悪かったわね!
って、また大声
だしちゃったじゃない!
キャトラ
だいたいアンタ、うさん臭いのよ!
オバケと一緒に
暮らせるわけないじゃない!
ミゼリコルデ
<灯のルーン>の力で、
ランプの灯りにオバケたちが
集まってくるの。離れすぎると、
迷子になってしまうけれど・・・
キャトラ
う~ん、なんだか
よくわかんないけど。とりあえず、
アタシは本当にオバケにイタズラ
されたってことでいいのよね・・・
アイリス
もしかして、
オバケの話をしている?
キャトラ
きゃあ!
なんだ、アイリスか~。
アイリス
あのね。さっき、
オバケにスカートをめくーー
イタズラされちゃって・・・
キャトラ
アイリスもやられたのね!
もうとっ捕まえて謝罪させましょ!
どんなヤツだった?
オバケ見えるんでしょ?
アイリス
うーん・・・
白いおまんじゅうに
角が生えている感じかな・・・
ミゼリコルデ
その子だわ。
私が探していたのは。
どっちに行ったか分かる?
アイリス
えっと・・・あっちかしら?
ミゼリコルデ
ありがとう。
そして、ごめんなさい。
お礼にお詫びとこれを・・・
アイリス
キャンディですか?
キャトラ
ふたつ!? いいな・・・じゃない!
あの子・・・一体、
なんだったのかしら?
思い出2
キャトラ
ギィィィイイイニャアアアアアア!
キャトラ
一体、誰よ!
アタシのプチトマト食べたの。
最後に食べようと残しておいたのにぃ!
アイリス
わ、私じゃないよ・・・
ミゼリコルデ
ごめんなさい。
ちょっと目を離した際に、
またウチの子が・・・
あの子、食欲旺盛で・・・
アイリス
オバケってお腹すくものなの?
キャトラ
もう!
早く捕まえて教育し直してよね。
つまみ食いはダ・メ・だって!
ミゼリコルデ
お詫びにこの赤いキャンディを・・・
ほら、見た目が似ている。
さくらんぼ味だけど・・・
キャトラ
この際、それでもいいわ!
ちょうだいっ!
ミゼリコルデ
くすっ。キャトラといると、
楽しい気分になるわね。
まるでウチの子たちみたい・・・
キャトラ
アタシはイタズラしないけどね~。
たぶん。
アイリス
ミゼリコルデはずっとオバケたちと
暮らしているのよね?
いつからなの?
ミゼリコルデ
私の家は代々、オバケたちを
教育するのが仕事だから
オバケを怖がってはいけない・・・
ミゼリコルデ
だから、生まれた時から
オバケたちと一緒に暮らして
慣れておく必要があるの・・・
ミゼリコルデ
たくさんのオバケたちと
ランプに囲まれた部屋は、
いつも明るくて温かかった・・・
キャトラ
退屈しなさそうね~。
オバケたちとなにして遊ぶの?
ミゼリコルデ
うーん・・・
真夜中にみんなでパーティーを
したときはとても楽しかったわ・・・
ミゼリコルデ
近隣から苦情がきて、
父にこっぴどく叱られて
お開きになっちゃったけど・・・
キャトラ
ミゼリコルデも
イタズラっ子だったのね~。
ミゼリコルデ
ええ。けれど、
教育から教育を学んで
今があるわ・・・
ミゼリコルデ
失敗に拘泥せず、
失敗を肯定できるように
なりたいの。
思い出3
ミゼリコルデ
イタズラを我慢したら、
このキャンディをあげるわ・・・
アイリス
あっミゼリコルデが
オバケと怪しい取引を・・・
ミゼリコルデ
くすっ。
取引じゃないわよ、アイリス。
これは立派な教育。
アイリス
聞こえてたのね・・・
キャトラ
どういう教育なの?
ミゼリコルデ
とある国で行われた実験
なんだけれど・・・
ミゼリコルデ
遅刻癖がある者に、
遅刻をしたら罰金を支払うように
命じた・・・
ミゼリコルデ
けれど、罰金さえ支払えば
遅刻が許されると解釈し、
遅刻は減るどころか増えたの・・・
ミゼリコルデ
そして今度は遅刻をしなかったら、
報酬を与えるようにしたの・・・
ミゼリコルデ
すると、
その人は遅刻をしなくなった・・・
キャトラ
なるほどね~。
人を動かすには罰ではなく
報酬を与えろってことね~。
アイリス
だからオバケにキャンディ・・・
報酬を与えているのね。
ミゼリコルデ
ええ・・・そうーー!?
オバケが油断したコゼリコルデの
手のひらから、
キャンディをかっさらう。
キャトラ
なになに?
オバケなにしているの?
アイリス
器用に包み紙を開けてるわ。
中身はチョコレートキャンディ。
みたいね。
アイリス
でも、なぜかしら?
キャンディを食べて
苦しんでるわ・・・
ミゼリコルデ
チョコはチョコでも
カカオ100%キャンディ・・・
アイリス
そ、それはきついわね・・・
キャトラ
こうなることを予想してたの?
報酬の話はなんだったのよ~。
ミゼリコルデ
くすっ。私が教えたかったのは、
世の中そんなに甘くない。
ってこと。
思い出4
キャトラ
アタシの部屋が掃除されてたわ!
アイリス
靴がピカピカに磨かれてたわ!
ミゼリコルデ
くすっ。
あの子が
改心してくれたみたいね・・・
キャトラ
あんなにイタズラ好きだった
問題児オバケがね~。
アイリス
嬉しいことだね。
キャトラ
いっぱいイタズラされたから。
なおさら嬉しいわね~。
アイリス
私たちでもこうだもん。
ミゼリコルデは
もっと嬉しいんじゃないかしら?
キャトラ
どうなの、どうなの?
自分の教育が実を結んだ感想は?
ミゼリコルデ
私の力だけではないわ。
あの子はもともと優しい子だから・・・
ミゼリコルデ
みんなにかまってほしくて
イタズラしてただけ。
ミゼリコルデ
あの子はちゃんと自分の間違いに
気づいてたわ。
だから・・・
キャトラ
オバケたちを信じているのね~。
アイリス
でも、改心したらどうなるの?
ほんとに土に還っちゃうの?
ミゼリコルデ
ええ。後はあの子の気持ち次第。
アイリス
寂しくないの?
ミゼリコルデ
もちろん寂しいわ・・・
ミゼリコルデ
けれど、
最後に悲しい顔を見せたくない・・・
ミゼリコルデ
だから私は、
お別れのときは精一杯笑うの。
思い出5
ミゼリコルデ
はあ・・・はあ・・・
キャトラ
どうしたの?
珍しく慌てちゃって。
ミゼリコルデ
あの子をみなかった?
キャトラ
あの子ってあの問題児?
見てないわ。
そもそも見えないし・・・
ミゼリコルデ
そう・・・
ここに来てると思ったのだれど・・・
他に行きそうな場所は・・・
アイリス
理由を聞かせて、
ミゼリコルデ。
力になれるかもしれない。
ミゼリコルデ
・・・・・
ミゼリコルデ
私の街で民家が全焼する
火事が起こったの・・・
ミゼリコルデ
幸い住人は避難していたし、
周囲には燃え移る建物はなく、
最悪の事態はまぬがれたわ・・・
キャトラ
命が助かったとはいえ、
悲惨ね・・・
アイリス
火事の原因はなに?
ミゼリコルデ
街のみんなは
口をそろえてこう言うわ。
お化けの仕業だって。
アイリス
そんな・・・嘘よね?
だって、改心したはずじゃ・・・
ミゼリコルデ
もちろん、
何かの間違いに決まっている。
ミゼリコルデ
もしかしたら・・・
あの子の身に
何かあったのかもしれない・・・
ミゼリコルデ
嘘よ・・・
ミゼリコルデ
そんなお別れ・・・嘘よ・・・
アイリス
ミゼリコルデ・・・
思い出6
ミゼリコルデ
温かい・・・
ミゼリコルデ
心の奥まで燃えるような・・・
力強い・・・光・・・
カボチャのランプから光が溢れ出し
大きく揺れる灯りの中に
民家の映像が浮かび上がる。
キャトラ
ん? 民家のそばにいるのオバケ?
白いまんじゅうに
角が生えている感じの・・・
これってあの問題児?
アイリス
うん。
キャトラにも見えるみたいだね。
でも、これは一体・・・?
キャトラ
ぎにゃっ! 民家が燃えてる・・・
民家が燃えてるよ!
これって、もしかしてあの火事!?
アイリス
大変!
住人が火事に気づいてないわ!
キャトラ
見て! あのオバケ、
住人を必死に逃がそうとしているわ!
でも、姿が見えないから
気づいてないよ!
オバケが民家の窓を叩き
うめき声をあげると、
ようやく住人が火事に気づく。
オバケは住人が
安全な場所に行くまで
脅かし続ける。
そして、
住人の無事を見届けて安堵する。
しかし振り返ると、見知らぬ場所。
迷子になっていた・・・
アイリス
これが火事の真相・・・
ミゼリコルデ
無事でよかった・・・
けれど、どうして?
あれだけ正しいことをしたのに、
どうしてソウルに還らないの・・・
キャトラ
そんなの決まってるじゃない!
アイリス
ミゼリコルデに
お礼を言いたいんだよ。
キャトラ
な~に、ぼさっとしてんのよ!
オバケをいつまで
迷子にさせてるつもり?
大声で呼んであげなきゃ!
ミゼリコルデ
ええ・・・・そうね!
すると、懸命な声にオバケが
引き寄せられ、近づいてくる。
何かを抱え、ミゼリコルデの様子を
うかがいながらゆっくりと・・・
ミゼリコルデ
おかえりなさい・・・
ミゼリコルデの笑顔に、
強張っていたオバケの表情が
緩くなってくい。
そして、オバケの体が
光の粒子になって
ソウルに還り始める。
別れ際、オバケはキャンディを
恩師に手渡した。
それは物言わぬオバケの
最初で最後の感謝の言葉だった。
ミゼリコルデ
・・・よくできました。
アイリス
よかったわね。ミゼリコルデ。
キャトラ
・・・・感動のところ悪いんだけど。
ランプの灯りに、オバケがたくさん
集まってきてるわよ。
どうすんのよ~。
ミゼリコルデ
くすっ・・・
安心して・・・全部まとめて、
面倒見てあげるから。