スー・思い出
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思い出1
？？？
よーし、ノってきたわよ！
ナレーション
見知らぬ少女が、アジトの壁に
カラースプレーを噴射している。
キャトラ
こらー！ なにやってんの！
？？？
なにって、
＜グラフティ＞を描いてるのよ。
キャトラ
ぐらふてぃ？
？？？
＜ストリートアート＞
とも言うわね。こういう、
壁とか建物に描くアートのことよ。
スー
私、＜ストリートぺインター＞の
スー。よろしくね！
キャトラ
『よろしくね！』じゃないわよ。
勝手にラクガキして！
スー
ラクガキじゃないってば。
＜グラフティ＞よ。
キャトラ
どっちでも、人の家に勝手に
絵を描いたらダメでしょうが！
スー
だって、にぎやかな外観の方が
楽しい気分になるでしょ？
キャトラ
にぎやかって……アンタねえ。
アイリス
えっ！？
壁の絵が動き出した！？
キャトラ
なっ！？ ロゴの文字が動いて
ヘビみたいにのたうちはじめた！？
キャトラ
アンタのしわざね！
スー
ふふ。
＜グラフティのルーン＞の力よ。
楽しくなってきたでしょ？
キャトラ
びっくりしただけなんだけど……
スー
ん？ あっちにも
アーティスト心をくすぐる建物が！
キャトラ
ちょっと、待ちなさい！
アイリス
きゃっ！動く絵が
まとわりついてくる！？
スー
あはは。グラフティも
あなたたちのことが好きだって！
キャトラ
やっぱりイタズラじゃないの！
スー
あっちにも描いてこよっと！
キャトラ
話しを聞きなさ……ぎにゃー！？
アイリス
キャトラが
絵につかまっちゃたわ！
思い出2
キャトラ
スー、このあいだは
よくもやってくれたわね！
スー
え、どうかしたの？
スー
それより、この空飛ぶ島の建物、
いいよねー！
スー
＜ストリートぺインター＞魂が
くすぐられるんだよねー。
キャトラ
アタシは絵にくすぐられて
大変な思いをしたわ！
スー
あはは。やっぱり、フラフティに
気に入られたんだね。
スー
＜グラフティのルーン＞も
喜んでるよ。
ねえ、もっと描かせて！
アイリス
＜グラフティのルーン＞？
あの絵と関係があるの？
スー
うん。ほら、このスプレーガンに
ついてるのがそうよ。
ナレーション
スプレーガンの柄には
栄光色のルーンが輝いている。
スー
＜グラフティのルーン＞が
絵に命を吹き込んでくれるの。
このルーンは私の相棒よ。
アイリス
なるほど。
ルーンの力で絵を生き物のように
動かすことができるんですね。
スー
ねえ、もっとたくさん
絵を描きたいの。いいでしょう？
アイリス
でも、どうして、飛行島に？
スー
ここ、とっても面白い場所だもの。
それに世界中を旅してるんでしょ？
スー
世界を回ってもらえれば、
たくさんの人に
私のアートを見てもらえそうだし。
キャトラ
でも、ラクガキでしょ？
スー
ラクガキじゃないってば。
アートなの。アート！
キャトラ
そんなこと言っても
なんの絵かわかんないし……
スー
わかんないって、どのへんが？
キャトラ
じゃあ、アジトの壁に描いてた、
ロゴの文字がヘビみたいな絵は？
スー
ちゃんとわかってるじゃない。
あのロゴはへびなの！
かわいいでしょ？
キャトラ
……聞いたアタシがバカだったわ。
思い出3
アイリス
そういえば、どうしてスーさんは、
絵を描くようになったんですか？
スー
実はね、子どものころ、
出会った人の影響なの。
アイリス
どんな人だったですか？
スー
私と同い年ぐらいの女の子。
うっかり名乗り忘れちゃって、
お互い名前も知らないんだけどね。
スー
いきなり『似顔絵描かせて！』
っていきなり
パレットを取り出して……
スー
あっというまに、
小さなキャンパスに
私の似顔絵を描いたの。
キャトラ
なんだか、その子、
ちょっとスーに似てるわね？
スー
あはは、そうかな？
アイリス
きっと、
すてきな絵だったんですね。
スー
うん。今でも持ってるから、見て！
キャトラ
なに……これって、絵……！？
アイリス
これスーさんの似顔絵、
なんですよね？
キャトラ
なんだか、いろんな色の絵の具を
ぶちまけた感じ？
スー
もしかして、あなたもわかるの？
スー
ありがとう、私、この絵を見て、
自分の心が描かれてるって
思ったの。
スー
あの頃は、家が貧しくて
大変だったけど……
スー
夢とか、楽しい気持ちは、
誰でも持っていられるって
教えてもらったの。
アイリス
それで、スーさんも？
スー
うん。私を勇気づけてくれた
あの子みたいに、
私も誰かを元気にしたい。
スー
だから、グラフティを
いろんなところに描いて、
大勢の人に見てもらおうと思って。
アイリス
目標、叶うといいですね。
キャトラ
でも、ひとの家に絵を描くときは
許可を取りなさいよ？
思い出4
スー
ねえ、主人公。
改めてアジトに絵を描いてもいい？
スー
あなたたちには
だいぶお世話になったし、
お礼がしたいの。
スー
ほんとに？ありがとう！
キャトラ
主人公ったら
また安請け合いして……
スー
よーし！
イッツ・ショー・ターイム！
ナレーション
スーは、スプレーガンを操り、
インラインスケートで滑走しながら
グラフティを描く！
アイリス
とてもダイナミックね……
キャトラ
たしかにダイナミックだけど……
スー
情熱の赤！
冷静の青！
純真の白！
キャトラ
なにが描いてあるのか、
さっぱりわからないわ！
アイリス
そうね……
スー
完成っ！
キャトラ
主人公、
そんなにうれしかったの？
スー
光栄だわ。
主人公。
スー
そうよ。
これが主人公よ。
アイリス
……え？
キャトラ
ただの赤い模様かと思ってたわ。
スー
そうそう、
これがアイリスとキャトラ！
アイリス
え、私？
キャトラ
全体が白くて……
たまに青い模様があるけど、
もしかして、リボン？
スー
主人公って
アートがわかるのね。
スー
主人公は、
観察眼があるし、
人の気持ちによく気づくものね。
キャトラ
これが、言葉によらない
コミュニケーションって
やつなのかしら？
スー
見て、グラフティも喜んでる！
キャトラ
ぎにゃー！？
また、壁の絵が飛び出してくるー！
アイリス
え、え、え？
スー
うまいね、あははは！
思い出5
スー
みんな、大変なの！
アイリス
どうしたんですか？
スー
昔、私の絵を描いてくれた
女の子のことなんだけど……
スー
彼女に人の
情報が手に入ったの。
キャトラ
へえ、じゃあ、
スーはその子に会いに行くの？
スー
それが、彼女、危険な山に
１人で向かったって話なの！
キャトラ
えっ、なんで？
スー
その山には魔物がいるんだけど、
すごくきれいな景色が
見えるからって……
スー
近くの村の人は止めたんだけど、
『どうしても行く』って
聞かなかったらしいの。
アイリス
たった１人ですか？
スー
早くきれいな景色が
描きたいって……
気持ちはわかるけど……
スー
私、すぐに追いかける！
キャトラ
待って、スー！
アイリス
私たちも追いかけましょう。
思い出6
キャトラ
まったく、スーったら
無茶するんだから。
スー
えへへ。ごめんごめん。
スー
魔物を倒せたのは
みんなのおかげだよ。ありがとう。
アイリス
どういたしまして、
スーさんも、無事でよかったです。
キャトラ
でも、あの女の子とは
会えなかったわね。
スー
うん。元気に帰っていったのを
見た人がいるから安心だけど……
スー
やっぱり、会いたかったなあ……
アイリス
スーさん……
アイリス
ねえ、主人公。
お願いできる？
スー
え、どうしたの？
主人公？
ナレーション
色とりどりの光彩を放ち、
ルーンの輝きが、
スーを包む……
スー
この光、あの子の描いてくれた
絵に似てる……
スー
え？
私の＜グラフティのルーン＞も
光ってる……？
スー
なんだか……
イマジネーションが
わきあがってきた！
ナレーション
スーはインラインスケートで走り、
飛行島の岩に
グラフティを描き始める！
スー
見える……あの子の笑顔が……！
アイリス
これって……
キャトラ
パレットを持った、
女の子のシルエット？
スー
……彼女の姿が見えた気がしたの。
大人になってからは
会ってないのに。
スー
きっと、あのころと変わらずに、
人の心を描いているのね。
アイリス
そうですね。
キャトラ
不思議な絵ね。
シルエットなのに笑顔に見えるわ。
スー
うん。きっと、彼女なら、
楽しみながら描いてるわ。
スー
同じ道を歩いてれば、
いつか、きっと、会えるよね。
スー
私も
私の＜ストリートぺインター＞として、
その日に向けて、走っていくよ！
