バイパー・思い出

バイパーの思い出とボイス

思い出1

偽りの獅子の、血塗られた結末。
人知れぬ惨劇の記憶が、
まだ色槌せぬころ。

主人公は、
思いがけぬ出会いを
迎えていた。

バイパー

しばらく、邪魔させてもらう。

キャトラ

新戦力は大歓迎よ！

よろしくね！

アイリス

よろしくお願いします。

バイパーさん。

バイパー

ああ。

キャトラ

ところでバイパー、気になることが

あるんだけどさ。

バイパー

退魔士たちのその後、か。

キャトラ

そのとーりよ。

バイパー

……そうだな。組織としての

退魔士一族は、消滅した。

キャトラ

しょ、しょうめつ……！？

バイパー

退魔士の村は、あれで様々な国や

組織とつなかっていた。

バイパー

ことが明るみに出るのは、

誰にとっても都合が悪い。

キャトラ

だから……

消されたってことね。

バイパー

よくあることだ。裏の事情を

知っていた長老たちは、

報いを受けているはずだ。

キャトラ

じゃあ、知らなかった

人たちは？

バイパー

退魔士の村を離れ、

各地に散っていった。

中には退魔士の使命を

続けているものもいる。

キャトラ

……混沌……＜闇＞と戦う

道を選んだってことね。

バイパー

それが、退魔士としてのけじめと

考えているのだろう。

キャトラ

アンタもそのつもりなの？

バイパー

混沌と戦うのは、俺の務めだ。

キャトラ

そんなに戦いたいわけ？

バイパー

そうでもない。

俺は、飲む方が好きだ。

キャトラ

バイパーだけにウワバミ(※)とか。

※大蛇。ここでは大酒飲みのこと。

バイパー

普通だと思うが。

長酒とはいわれるがな。

キャトラ

どんくらいよ。

バイパー

夕方から朝まで。

普通だろう。

キャトラ

夜はさっさと寝なさい！

思い出2

バイパーが厨房で黙々と
料理を作っている……

キャトラ

あら、手慣れてるわね。

バイパー

それなりにはな。

アイリス

玉子焼きですね！

バイパー

ゼメキア風だ。

キャトラ

これで出来上がり？

味見してもいい？

バイパー

ああ。

キャトラ

あら意外と。

アイリス

おいしいです、バイパーさん！

バイパー

それはよかった。

キャトラ

料理が趣味とは思わなかったわ。

バイパー

趣味といえるほどじゃない。

ただの手習いだ。

キャトラ

コツはなに？

バイパー

黄身と白身を混ぜすぎない方が、

よい口当たりになる。

アイリス

なるほど。

バイパー

混ぜすぎたら、混沌になる。

キャトラ

退魔士ジョークね。

バイパー

……主人公。

お前は、＜闇＞をどう思う。

キャトラ

悪いヤツら。

バイパー

退魔士も、そう教えられる。

バイパー

＜混沌＞はあってはならない。

だから滅ぼせとな。

アイリス

あっては……ならないもの……

バイパー

俺も、そう感じたことはある。

＜混沌＞というやつは、わずかな

残滓にさえも底知れぬ悪意がある。

バイパー

どんなに甘い考えの退魔士で

あろうと、初仕事の後には

使命感に目覚めるものだ。

バイパー

＜混沌＞は、欠片も残さず

滅ぼさねばならないとな。

キャトラ

だから、アンタも戦ってるの？

あってはならないから？

バイパー

俺自身としては、＜混沌＞の

定義など、どうでもよい。

バイパー

俺が戦っているのは、

それが俺の務めだからだ。

思い出3

キャトラ

力二カマチャーハンおかわり！

バイパー

食べすぎだ。

アイリス

そうよ。キャトラったら。

キャトラ

むむむ……

そういえばお腹いっぱいだわ！

バイパー

好評でなによりだ。

アイリス

本当に、料理がお得意なんですね。

バイパー

チャーハンは昔、プロの料理人に

ならったことがあるんだ。

バイパー

プロはプロでも、激辛料理の

プロだったが、な……

キャトラ

アンタ、コックでも

やっていけるんじゃない？

バイパー

俺のようなコックがいる店は、

長続きしない。

キャトラ

まずコックの名前が悪いわ。

なによバイパーって。

毒蛇って意味じゃない。

バイパー

サムカッコいいじゃないか。

キャトラ

……どんな顛末でバイパーに

おちついたわけ？

バイパー

仕事用にいくつか偽名を

使っていたんだが。

バイパー

バイパーという名前で

仕事したら、妙にウケてな。

キャトラ

ウケたの！？

バイパー

それ以来、どういうわけか、

バイパーという呼び名が

定着したんだ。

バイパー

最初は、バイパーと呼ばれるたびに

笑いをこらえていたが、慣れた。

キャトラ

ついでに聞くけど、なんで

退魔士の人たちってそんなに

肌を見せてるの？

バイパー

欲望に負けて、不摂生を

していないという

ことを示すために、

あえて見せている。

アイリス

そんなに厳しい理由で！

キャトラ

(見せすぎじゃないの……？)

バイパー

熱さや寒さにも、心を乱さない

という意味でもある。

キャトラ

そ、そうなの……？

バイパー

なーんてな。

キャトラ

ウソか！

思い出4

バイパーが、糸鋸を使って
板を斬っている。

キャトラ

おお、相変わらず器用。

バイパー

俺の一族は、村で家具屋を

やっていたからな。

仕込まれたのさ。

キャトラ

まさかの本職。

バイパー

表向きは職人の集まる

村で通っていたんだ。

退魔士の村は。

キャトラ

あのさあ。じゃあメアの家って。

バイパー

もちろん木こりだ。

キャトラ

納得だけど、

なんか納得いかない……

バイパー

林業は大変なんだぞ。

キャトラ

なんか、意外とのどかな

感じだわね？　退魔士の村。

バイパーは、切り落とされた板を
手に取って眺める。

バイパー

村の者たちは、

いつもお互いを監視していた。

キャトラ

どうして？

バイパー

いつ混沌に取りつかれたものが

出るか、わからないからな。

キャトラ

それは確かに嫌な感じ。

バイパー

あの村には、力二カマもない。

キャトラ

絶対長居したくないわ！

バイパー

退魔士たちは欲望を捨てる訓練を

しているからな。村には楽しい

ものなど一つもない。

キャトラ

嫌なとこなのはわかったけど、

ちょっと他人事っぽくない？

バイパー

かもな。俺は退魔士そのものを

良く思っていない。

キャトラ

どうして？

バイパー

俺には、退魔士の一族が、

真剣に奴らと戦って

いるように思えなかった。

バイパー

物事に、真剣にとりくまない奴は

嫌いだ。吐き気がする。

キャトラ

どんなところが

真剣じゃなかったの？

バイパー

退魔士は基本、単独で行動する。

＜混沌＞が相手に取りつくという

特性があるにもかかわらず。

キャトラ

確かに……考えてみれぱ

ちょっとヘンだわね？

バイパー

＜混沌＞への対処法を自分たち

以外に誰も伝えず、秘密主義を

貫く。これも変だろう。

アイリス

それもそうですね。

危険な存在なのに……？

バイパー

あげく退魔士は使う武器が

それぞれ違うときてる。

効率が悪すぎる。

バイパー

俺は、効率の悪いことも嫌いだ。

キャトラ

面倒な性格。

バイパー

よく言われる。なぜか女性にな。

ともかく俺は、この非効率に

理由があるのではと思った。

バイパー

そんなときに、オズマが

現れた。

キャトラ

女たらしおじさんね。

あの人何者かしら？

バイパー

退魔士でないのは、すぐにわかった。

俺たちはひそかに長老たちの

動きを探り、村にあずけた武器の

送り先を突き止めた。

キャトラ

それであの研究所のことに

気づいたのね。

バイパー

俺は、騙されるのも嫌いなのさ。

思い出5

バイパー

フッ……これはどうだ。

キャトラ

おお、サムカッコいい！

バイパー

斜め四十五度がポイントだ。

アイリス

バイパーさん、キャトラと何を？

バイパー

サムカッコいい登場の仕方を

考えてるのよ。

キャトラ

どう？　こうやって尻尾をふって

可愛さをふりまいてからの……

キャトラ

シャーッ！

……どうかしら。

バイパー

ギャップで攻めたか。

やるなキャトラ。

バイパー

主人公も

やってみろ。

キャトラ

ところでバイパー、今日も行くの？

バイパー

ああ。

アイリス

たまにはお休みしたほうが、

いいと思うんですけど。

バイパー

俺だって、飲みに行きたいさ。

キャトラ

『これも務めだ』ってやつ？

バイパー

まさにそうだ。

まったく、気が滅入る。

キャトラ

いつからそんな風に＜混沌＞と

戦ってるの？

バイパー

１５年前からだ。

キャトラ

ずいぶんちっちゃなころから、

あいつらと戦ってたのね。

バイパー

退魔士としては普通の話だ。

キャトラ

他の生き方をしたいとは

思わなかったの？

バイパー

思わない。俺には理由がある。

バイパー

若いころの俺は、調子にのっていた。

退魔士の使命に酔っていた。

バイパー

結果、俺のせいで人が死んだ。

俺の判断ミスで。

キャトラ

…………そんな。

バイパー

ある島で＜混沌＞を処分していた

俺は、ある母子に出会った。

子供はまだ幼かった。

バイパー

周囲からは、混沌にとりつかれた

魔獣が迫りつつあった。

バイパー

俺は、母子をつれて逃げるべき

だった。だが、己への過信が、

判断を鈍らせた。

バイパー

逃げるという選択肢を捨て、

戦いを選んだ。愚かにも。

バイパー

俺は、魔獣どもを討ち果たした。

そして過ちに気づいた。

バイパー

＜混沌＞は、母親と息子に

とりついていた。

アイリス

…………

バイパー

二人は、混沌に操られるまま、

崖に身を投げた。俺にその様を

見せつけるように。

バイパー

＜混沌＞いや、＜闇＞が、どうして

そんな真似をして見せたか。

バイパー

俺は理解した。

奴らは他の全てよりも、

他者の不幸を優先する。

バイパー

……ある意味、今の俺が

生まれたのは、あの時だ。

バイパー

それより前の人生に、

意味は無い。

キャトラ

そんなこと……だってアンタ、
助けようとしたんでしょ！

バイパー

助けられなかった。

その結果は変わらない。

思い出6

バイパー

何のつもりだ。

主人公。

キャトラ

大人のアンタには、必要ないかも

しれないけどさ……

アイリス

でも、見てください。

貴方の心の中を。

バイパー

心……？

光の中に、人影が見える。
崖の縁に立つ、小柄な影。

少年は、両の手に糸鋸を備えた
武器を手にしている。

バイパー

このガキは、俺か。

幼いバイパーの顔には、
何の表情もない。

バイパー

覚えているぞ。

俺はこの後、崖の下で

亡骸を見つける。

バイパー

俺は平たい石を拾って穴を掘る。

バイパー

親子二人が収まるほどの穴が

できたところで、魔物の匂いが

近づいてくる。俺は石を捨てる。

バイパー

なるほどな。

主人公は

これを見せたかったのか。

バイパー

昔の俺を、許せとでもいいたいのか。

バイパー

許せるものか……！

アイリス

バイパーさん……！

バイパー

……ん。

バイパーは、何かの気配に
振り返る。

バイパーは目を疑う。
背後にいたのは、少年時代の
自分に他ならなかった。

若きバイパー

未来の俺、聞こえてるか。

……俺は……

若きバイパー

俺は、お前に任せてもいいのか。
未来の俺に！

バイパー

（そうだ。あのとき俺は確かに

こんなことを聞いた。

未来の自分に）

バイパーは、少年時代の己を
じっと見つめる。

バイパー

…………任されよう。

若きバイパー

じゃあ……俺は生きる！
生きて……命のあるかぎり戦う！

バイパー

（俺は……過去の俺と……

話しているのか……？）

バイパー

お前は、一人じゃない。

キャトラ

……バイパー、誰と話してたの？

バイパー

……少し、昔の自分とな。

バイパー

主人公。

俺は、俺の務めを果たす。

バイパー

それが、俺との約束だからな。

ボイス

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