バーガー・思い出

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思い出1

得体の知れない何かがゆっくりと近づいてくる。

？？？

俺を注文したやつはどいつだ？

キャトラ

な、なな、何よあんたー！？

バーガー

俺はバーガーだ。

みんなからはそう呼ばれている。

アイリス

えっと……

あなたは食べ物ですよね？

バーガー

ちっちっちっ。

その質問は野暮だぜ。

俺が何者かは俺が決める。

バーガー

名前や見た目をとっぱらえば

誰もが同じ生き物さ。

お前もそう思うだろ、ナゲット。

アイリス

ナゲット……？

主人公の

ことですか？

バーガー

ああそうだ。

そんなお前はシェイク。

そこの猫は……トイだ。

キャトラ

はあ！？ アタシはキャトラよ！

バーガー

ああ。

だからこそお前はトイなんだ。

キャトラ

…………

アイリス

そういえば、人を探してるみたいでしたけど

あれって……

バーガー

誰かが俺を必要としている……

そんな気がしてな。

バーガー

ここで会ったのも何かの縁だ。

お前らにこのチラシを渡しておく。

バーガー

俺が必要なときは

ここを訪ねるといい。

キャトラ

チラシね～。どれどれ。

チラシには
＜まんぷくランド2号店＞
新装オープンと書かれていた。

バーガー

裏にクーポン券がある。

腹が減ったら使いな。

アイリス

あ、ほんとだ……

ありがとうございます。

キャトラ

ドリンク半額に

アップルパイ無料……

へ～、なかなかいいじゃない。

キャトラ

ん？ ここ……

中途半端に1枚ないわね？

バーガー

そこは

『ハンバーガー20%オフ』だ……

俺が切り取った。

キャトラ

なんでそんなことしたのよ？

バーガー

…………

バーガーはレタスとトマトの間に
1本のポテトを挟んだ。

バーガー

ふう……

バーガー

安い男だと思われたくないからさ……

バーガー

じゃあな。

キャトラ

ぎにゃー！ なんなのよあれー！

思い出2

バーガー

…………

——フィレオの顔を見たのは
その日が最後だった。

俺はただ行くあてもなく
駅馬車に乗り、流れる風景に
さよならの言葉を並べていた。

バーガー

ひと雨……きそうだな。

騎兵隊

うわあああああっ！？

バーガー

どうした？

騎兵隊

ナイフとフォークを持った少女が
馬に！ 馬に噛み付いたんです！

バーガー

ガブリンチョか。

しつこい野郎だ……

騎兵隊

ひいぃぃっ！
よだれが！ よだれが！

バーガー

よせっ！ 奴の狙いは俺だ！
ここから離れろ！

キャトラ

お～い、バ～ガ～……

バーガー

その鼻に
セサミの香りを刻み込んでやる！

キャトラ

バーガー！
バーガー！
バーガー！

バーガー

なんだ？

キャトラ

アタシが聞きたいのは
そういうことじゃなくて！

バーガー

過程を知りたいんじゃなかったのか？

キャトラ

前よ前っ！
ここに来るよりずっと前！
あんたが生まれたきっかけとかよ！

バーガー

はっ、こりゃとんだ

早とちりだったぜ。

バーガー

俺を生み出したそいつの名は、

テリー。

バーガー

＜ファース島＞の片隅にある

小さな店でアルバイトを

やっていた男だ。

バーガー

テリーは適当に仕事をするやつでな。

注文をよく間違えていた。

バーガー

俺はテーブルに運ばれたが、

頼んでないと客に突っ返された。

キャトラ

…………

バーガー

それが原因でテリーは

店長と揉めてな……

クビになっちまった……

バーガー

その時俺の中に

『感謝』と『失望』の

2つの感情が芽生え……

キャトラ

バーガー！
バーガー！
バーガー！

バーガー

なんだ？

キャトラ

説明してるようで
説明になってないわ！

バーガー

…………

バーガー

そのとき俺の中に『感謝』と——

キャトラ

ぎにゃー！ もうあんたが
なにものとかどうでもいいわ！

思い出3

キャトラ

出たわね！

主人公たちは
ギルドの依頼で
魔獣退治をしていた。

バーガー

～♪ ～♪

キャトラ

ちょっとバーガー！
何のんきに口笛吹いてんのよ！

バーガー

しーっ、騒ぐんじゃねえ。

バーガーの指に小鳥が止まった。

バーガー

おーよしよし。ほら、邪魔だ。

キャトラ

何がしたいのよあいつ……

アイリス

いまよ！
主人公！

キャトラ

次から次へと……でもね、

何匹こようとアタシの爪で

引っかいて……！

バーガー

待て。ガキの出る幕じゃねえ。

キャトラ

はあ？ ちょ、そこどきなさいよ！

バーガー

…………

バーガー

隙だらけだぞ……そんな顔を

しているな？ はっ、まったく

その通りさ。だからどうした。

バーガー

落ち着いて話せばわかる……きっとな……

バーガーはレタスとトマトの間に
ポテトを挟んだ。

バーガー

お前も1本どうだ？

キャトラ

もう！
意味不明なことばっかりするから
怒らせちゃったじゃない！

激昂したミノタウロスが
バーガーに襲いかかる！

バーガー

ふう……

キャトラ

バーガー！
突っ立ってないで逃げなさい！

バーガー

今日のポテトは……

カリッとしてるぜ……

バーガー

くはっ……！

ケチャップが地面に飛び散った。

キャトラ

バ、バーガー！？

アイリス

大丈夫ですか！ 今すぐ治療を！

バーガー

いやいい……

俺はもう…… 助かからねえ……

アイリス

そんな……

キャトラ

あんた……よくもバーガーを……

バーガー

トイッ！！！

キャトラ

なんで！ なんで止めるのよ！

バーガー

いきな。

バーガー

いけっ！

アイリス

バーガーさんどうして……

バーガー

お前たちは……

知らなくていいことさ……

ごはっ……！

バーガー

ナゲット、シェイク、トイ……

ありがとよ……

お前たちに囲まれて俺は……

バーガー

ハッピーさ……

キャトラ

バ————ガ————ッ！！！

思い出4

——とある酒場。

バーガー

久しぶりだなグリル。

テリーは元気にしてるか？

グリル

テリー？ ああ、あいつなら

1週間もたたないうちに

やめちゃったよ。

バーガー

はっ、相変わらずなテリーだぜ。

キャトラ

むむむ……

アイリス

いいじゃないキャトラ。

バーガーさんが元気ならそれで。

キャトラ

そうね！ 考えるだけ無駄ね！
バーガーならあの状態で生きてても
不思議じゃないものね！

キャトラ

ぎにゃー！！！

大男がホットドッグを
一心不乱に食べている。

バーガー

グリル、ありゃなんだ？

グリル

ホットドッグ早食い大会の

練習だってさ。

彼、無敗のチャンピオンらしいよ。

バーガー

へー、そうかい……

大男

げふっ……

もう食べきれんでごわす。

バーガー

おい。ホットドッグが1つ、

残ってるぜ。

大男

突然なんでごわす？

というかハンバーガー？

バーガー

残さず食べろ。

大男

無理でごわす。

お腹いっぱいなんでごわす。

バーガー

食べろ。

大男

だから無理でごわす！

バーガー

そうか。

キャトラ

ちょっとバーガー、

揉めごとはやめな——

大男

うわっ！？

バーガーは大男に向かって
ワイン樽を蹴飛ばした。

大男

なにするでごわす！

バーガー

今から俺が10数える。

その間にホットドッグを食べろ。

バーガー

さもないと、この熱々ポテトが

ワインに引火するぜ。

キャトラ

するか！

大男

くそぉ……なんなんだこいつ……
わかった食べるよ！
食べればいいんでごわしょ！

大男

あー、チクショー！

大男はホットドッグを無理矢理
口にほおばった。

大男

ほぼへてろよ！

バーガー

待ちな。

大男

——むぐっ！？

バーガー

忘れ物だ。

バーガーはホットドッグのパンから
こぼれ落ちたソーセージを
大男の口に投げ込んだ。

バーガー

テイクアウトはさせないぜ。

キャトラ

ささ、気は済んだかしらね～？

バーガー

…………

アイリス

バーガーさん？

バーガー

食べてもらえてよかったな……

思い出5

バーガー

どうした来いよ？

腹が減ってるんだろ？

犬

…………

バーガー

はっ、スルーされちまったな……

バーガー

ついに俺も期限切れってことか……

アイリス

いつの間にか飛行島に犬が……

キャトラ

いちいち気にしてたらキリないわ。

だってバーガーなんですもの。

アイリス

なんだか落ち込んでる

みたいだけど……

声かけたほうがいいのかな……

キャトラ

しなくていいんじゃない。

だってバーガーなんですもの。

バーガー

ん？

そこにいるのは……お前らか……

キャトラ

げっ！ こっち見た。

バーガー

お、お、お前らあああああああっ！

アイリス

きゃあー！ 走ってきたわ！

バーガー

お前ら！
お前ら！
お前らあああああああああっ！

キャトラ

ぎにゃー！
無視しないから怒らないでー！

バーガー

俺を食べろ。

キャトラ

へっ？

バーガー

俺にはもう時間がねえ……

お前らも気づいてるんだろ……

アイリス

何を言ってるんですか……

そんなの無理ですよ……

バーガー

俺は食べられるために

生まれてきた……それが

叶わなけりゃ

死んだも同じだ……

バーガー

そうなる前に頼む！
最高の状態で俺を……
俺を食べてくれ！

バーガーは
主人公に
クーポン券を握らせた。

バーガー

安い男と思われてもいい！
だから！

バーガー

くそ……あんまりだぜ……

キャトラ

バーガー……

キャトラ

そうね。

いつものようにやっちゃって

主人公！

思い出6

バーガー

…………

バーガー

時間がねえんだ……頼む……

キャトラ

あらま？

なにも変化がないわね？

アイリス

ねぇ、キャトラ……

もしかしてアレのせいじゃない？

キャトラ

ああっ！？ そうかサングラス！
アレじゃ光ったことに
気づかないわ！

バーガー

ぐう！？

アイリス

あ、でも見て！ 気づいてなくても
効果はあるみたいよ！

バーガー

ぐううぅぅ……

キャトラ

えっ？ なになにこれなに！？

バーガーの体が光ってる……

バーガー

なんだこの記憶は……

俺の中になだれ込んでくる！

キャトラ

一体どうしちゃったのよー！

バーガー

うおおおおおおおっ！！！

アイリス

バーガーさああああん！

バーガー

ここは……？

[ミノタウロスが現れる]

バーガー

お前はあの時の……

これは過去の記憶か？

[少年が現れる]

バーガー

誰だこいつは……初めて見る……

なのになぜだ……

俺にはこいつとの記憶がある……

バーガー

名前はそう、

ニコルチョフだ……牧童の……

確か鶏を飼っていて卵を……

バーガー

！？

バーガー

そうかこれは

俺が生まれる前の記憶……

戻ろうとしているのか……

[老人が現れる]

バーガー

ボブ……豚に愛された男……

[キュウリを持ったカッパが現れる]

バーガー

ピクルス……

バーガー

！？
そこにいるのはテリーか？
テリーなんだな！

バーガー

ちっ！ 光でなにも見えねぇ！

くそっ、意識が……もう……

バーガー

消える前にせめて、

これだけは言わせてくれ！

テリー……

バーガー

作ってくれて……ありがとよ……

キャトラ

…………

アイリス

…………

光がおさまると、
主人公の
手のひらにハンバーガーが
乗っていた。

アイリス

バーガーさん……

動かなくなっちゃったね……

キャトラ

そうね……どこからどう見ても

美味しそうなハンバーガーだわ……

アイリス

うん……美味しそう……

主人公は
ハンバーガーを食べた。

アイリス

私も食べる……
私にも半分ちょうだい！

キャトラ

アタシにも！

バーガー

ナゲット、シェイク、トイ……

ありがとよ……

お前たちに食べられて俺は……

バーガー

ハッピーさ……

ボイス

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