鼎湖上素・梅影探踪
槿に座禅
庭に槿(むくげ)の花が咲いたと聞き、観賞しよう庭に行ったら、座禅を組んでいる鼎湖上素がいた――
◆主人公【男性】の場合◆
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鼎湖上素:……
鼎湖上素:なにかご用でも?
若:春巻が庭の槿(むくげ)が咲いたと言ってたから、ちょっと花見でもしようと思って。
鼎湖上素:南無阿弥陀仏。槿は朝に咲いて、日が落ちると散る。だから夜事常ならずの意味を持っている。
鼎湖上素:施主は仏門の者ではないが、いつも槿を見て、心を落ち着かせるといいでしょう。
若:それは知ってる、王摩詰の詩で言う「山で修養を養う吾は、槿の花を見て、秋葵を摘み、松の下で斎食を楽しむ。」だよね?
鼎湖上素:そうです。
【選択肢】
・今山にいないことはちょっと惜しいけど……
・じゃあここを「山」にしよう!
選択肢
今山にいないことはちょっと惜しいけど……
若:それほど静かでもない――
焼乳豚:わーはっはっは、この諸帝の赤焔丹心剣を喰らえ!ハハハハ……
若:……えっと、しかも遠くから焼乳豚がはしゃいでいる声が聞こえるね。落ち着いてその真義を感じるのは無理みたい。
鼎湖上素:いいえ。山の中には、鳥がいて、水や松もある。
じゃあここを「山」にしよう!
鼎湖上素:お見事だ。
若:ああ、静かでいいね――
焼乳豚:わーはっはっは、この諸帝の赤焔丹心剣を喰らえ!ハハハハ……
若:……えっと、それでも遠くから焼乳豚がはしゃいでいる声が聞こえているけど……
鼎湖上素:山の中には、鳥がいて、水や松もある。
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鼎湖上素:ここを騒がしく思うのは、施主の心が落ち着いていないからです。
鼎湖上素:心が落ち着けば、周りがどんなに騒がしくても、施主には影響がでないのだ。
若:さすが……勉強になったよ。
鼎湖上素の言った通りに、心を落ち着かせた。やはり周りの騒ぎ声が聞こえなくなった。
槿の花は鮮やかに咲いていて、偶に花びらが僕の頭上に落ちた。
山で修養を養う吾は、槿の花を見て、秋葵を摘み、松の下で斎食を楽しむ。
もう権力の争いに飽きて自然に戻った者を、鴎(かもめ)はなぜ疑うだろう。
真偽僧侶
ある日突然、高僧と名乗る男たちが食堂にやってきて、お客様に安全のお守りとやらを売りつけようとした――
◆主人公【男性】の場合◆
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鼎湖上素:悩みごとでもあるのか?
若:鼎湖上素!いいところに来た!高僧と自称した人たちが食堂に来て、うちのお客様にお守りとかを売っているの。しかも皆、その人たちの言うことを信じているみたい……僕は何か怪しい気がするけど……
鼎湖上素:それは本当か?早く状況を見に行こう。
偽物の僧侶:……出会ったのも何かの縁でしょう。数文だけでこのお守りは一家の安全と健康を守ってくれます――
鼎湖上素:南無阿弥陀仏。
偽物の僧侶:お、おい、あなたは何者だ。何の用ですか?
鼎湖上素:失礼だが、今この場で『大悲呪』をあげてみてはくれないか?
偽物の僧侶:えっ……『大悲呪』?そ、それは……
鼎湖上素:『大悲呪』もあげられないのか?
鼎湖上素:『地蔵経』に「若有衆生、偽作沙門、心非沙門、破用常住、欺誑白衣、違背戒律、種種造悪」と書いた……施主は罪を犯している、貧僧が止めて差し上げよう。
鼎湖上素:貧僧の忠告を聞き、先ほどの偽物の僧侶はもうこんなことはしないと言った。施主たちも今後はどうかお気を付けください。いいことをすれば報われる。そんな嘘は決して信じないように。
若:はは、お陰で助かったよ、ありがとう!
鼎湖上素:貧僧はすべきことをしただけだ。感謝されるほどではない。
疾風驟雨
空桑が珍しく悪天候に見舞われて、苗木が耐えられるか心配になった私がまだ出発もしてないのに、鼎湖上素がもう雨中にいた――
◆主人公【男性】の場合◆
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若:まさかこの空桑にこんな激しい嵐が来るなんて……昨日植えたばっかりの苗木、すごく心配なんだけど!
僕は不安な気持ちを抱きながら、ビニールを持って雨の中を走っている。
若:えっ?あれは――
まさか誰かが先に着いていたとは。その人は雨の中、立って苗木を守っている。しかもびくともしていない。
近くに来てやっとその人の顔がはっきり見えた。なるほど、鼎湖上素だったのか。彼の服は強い風に吹かれて、笠もすでに地面に落ちている。雨は彼の顔をつたって流れ落ちていて、本人はすごく穏やかな顔をしている。
鼎湖上素:……
体の任意の位置に触れる
触れ合い
頭に触れる(笠を被せてあげる)
僕はその笠を拾って、被せてあげた。
鼎湖上素:施主――
鼎湖上素:大丈夫だ。ありがとう。施主は先ず嵐から自身とその苗木を守ったほうがいい。
体に触れる(ビニールで雨を遮ってあげる)
僕は持ってきたビニールを張って、彼の身に被せた。
鼎湖上素:南無阿弥陀仏。貧僧のことはお気になさらず。
鼎湖上素:施主は先ず嵐から自身とその苗木を守ってください。そのビニールなら雨をしのげるから、貧僧よりも苗木に被せたほうがいい。
手に触れる(一緒に苗木を固定する)
鼎湖上素が手伝ってくれたおかげで、僕たちは棒で苗木を固定できた。
鼎湖上素:南無阿弥陀仏。施主は優しい心を持っている……
鼎湖上素:お陰でその苗木たちも無事にこの嵐を乗り越えるのだろう。
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晴れるまでどのぐらい経ったのかも分からないが、とりあえず今は暖かい太陽に照らされている。
若:もう大丈夫そうだね……ありがとう!
鼎湖上素:お安い御用です。
と言ったところ、鼎湖上素の袖の中から白い蝶が数匹ひらりと飛んできた。災難を乗り越えた喜びを持って、命を救ってくれた人の周りで踊るように羽ばたいた。そしてゆらりと空へ飛んで行った……
僕と鼎湖上素はその美しい姿を持つ命を見送って、目が合った瞬間に二人とも笑った。
鼎湖上素:衆生は平等。世の中の全ての物は、感情を持っている……善哉、善哉……
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