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蟹釀橙・手紙

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作成者: hein
最終更新者: Hiragino

半分風雅

主人公名:

 手紙モード、起動。これは、人間がコミュニケーションをとったり、考えていることを交換する手段として使われる「手紙」というものらしいな? 私はこのような抵抗率なやり方でコミュニケーションをとるということに理解がなかなか及ばない。

 ヒント。これは君の反応を反映できる絡繰便箋だ。似たような行動を真似して身につけるために、今君の表情や動き、全部即時転送でこちらに送られ、反応をみている。


蟹釀橙


同袍同沢

主人公名:

      <綺麗に整えられた観察報告。>

 xx日  空桑の餐庁にて  晴れ

 6時、毎日遅れたことのない桂花酒が水がめの前に来て、光学で出来た水に映った影を見て、口端をあげた。

 9時12分58秒、ドウジャオ魚頭は首巻きの件で、こめかみのところに青筋を立てている。

 18時33分41秒、月餅は摘み食いのスズメを追い払うために、腕を曲げて拳を振った。眉は2秒に一度顰める。

 ……

 もし、長期的に「喜怒哀楽」のデータ収集を分析して真似をしたらどうだろうか。それでも君は、私の反応を見て、ぎこちなさを感じるだろうか?


蟹釀橙


以心伝心

主人公名:

    <文字化けが含まれた報告書を渡した。>

 ……

 …………中枢確認、異常なし。破損した脳内の歯車は、全部交換済。

 いつも通り稼働している。いや、いつも通りに稼働してるからこそおかしいのだ。少しは推断させてほしい。君の手には……もしかしたら墨門が暗がりに設置した仕掛けがあるのか? そうでないなら、なぜ君に触れられるたび、私の体は糸に絡まれたように……動かなくなるのだろう?


蟹釀橙


金蘭之契

主人公名:

    <新しい手紙が届いた。その紙に書いてある字は、いままでの届いた三通の手紙より、少しごつごつした筆記だ。>

  今度は手紙モードを使わなかった。私はどうしても他の者たちのように、自分の意志で君に手紙を書きたいのだ。

  こんなことをしたら、何が起こるか分からない。だが、新しい始まりは、こうした不確定要素から生まれるのかもしれない。その……あの広寒宮で、君の温もりで蘇ったときと同じだ。お陰で私は長い夢から覚め、目を開くことができた。千年続いた闇は光となったのだ。私の心が……少しずつ君のことで満ちていく。

  今更だが、私の心は現在、君のために存在している。それがようやく分かった。


蟹釀橙


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