魚腹蔵羊・手紙
半分風雅
主人公名:
旅路の間中、空桑の若の料理の腕前はすごいとの評判をどこでも聞く。先般の腕試しで、お前は年こそ若いが、虚名だけではなさそうだな。
そういえば、空桑にまだまだ凄腕の料理人がいるらしいな?だったらおれはここで暫く暮らして、彼らと腕試しをしても悪くないぜ。だが、もうおれの小屋に物を置くのはやめてくれ。好意はありがたいが、おれは放浪な生活のほうが気に入ってる。どこかーか所に定住することは考えてない、だから簡単な寝床があれば十分なんだ。
とある遊侠
同袍同沢
主人公名:
空桑での生活も悪くないな。だがあの子供たちがおれの昔の話を聞きたいと騒ぐので、時々腹を立ててしまうんだ!それからあの自称烈炎降火の諸帝ってガキが、毎日おれの袖をひっぱって、閻魔だの天罰だの騒ぐ。体内の炎を操る方法に心得てるだって?やれやれ、そんなこと中二病のガキに教えるまでもない?
狂気のコントロールといえば、最近『感情管理相談所』に入って初めて知ったんだが、空桑に「変な奴」も少なくないんだなーーあの指揮者が悲しむ時出した幻覚には驚いたぜ。それから頭を使う作業になるとすぐに飛び出していくやつ・郭とかいう執事は嫌なことを言う時もあるが、確かにおれたちのことを色々心配してくれている。
あいつ、おれが凶暴化したときに破壊したものの費用は、すべてお前の帳簿に着けてあると言ってたな。はぁ、おれは人に迷惑をかけるのが一番嫌いなんだ。お前、たしかビーフジャーキーしか食べたことがない、羊肉なんて見たこともないといってたな。加工が難しく滅多に目にしないけど、実は羊肉のジャーキーもあるんだぞ。少し作ったからお前にやる。お詫びだと思ってくれたらいい。
<手紙には、新鮮な匂いのする羊肉のジャーキーが1袋添えられていた>
余洋
以心伝心
主人公名:
お前はいつもおれの過去を知りたがるが、そのことについては、やはり手紙で伝えよう。おれはかつて一人の友と知り合った。彼はおれの事情を知ると家に匿ってくれたのだが、その後は易牙を呼んだ⋯⋯
こんな話をして、どうしようというわけでもないが、ただわかって欲しい。おれは友達と付き合うのは好きだが、そう簡単に信用するわけでもない。だから以前は空桑に住むかどうか迷ってたし、お前に昔のことを聞かれても笑ってごまかしてたんだ。
だが今日、お前は凶暴化したおれを命がけに助けに来たところをみると、ここがほんとうにおれの「家」になるかもしれないと思った。
注:今度おれが凶暴化したら、今日みたいなことはするな。なるべく離れたほうがいいぞ。じゃなきゃ、お詫びのためにどんだけご飯を作らなきゃいけないんだ?
友人 余洋
金蘭之契
主人公名:
<遠方からの手紙。紙の端が少し焦げている>
お前に手紙を書こうとすると、なぜか指間から黒炎が出て、紙を燃やしてしまうんだ。だが、あのやっかいな破滅の炎ではなく、温かくて穏やかな炎だ⋯⋯
昔、十本の指は心につながると聞いたことがある。たぶん、お前がこのおれと言う放蕩者に安住の地を与えてくれたから、心が安らかになったんだと思う。以前のおれはあちこちを渡り歩き、一か所に留まることはなかった。そうするしかなかった、とも言えるが。
だが今は、自分の心の赴く先へ向かって旅をしている。旅路を行く中で新しい料理を覚えたり、面白い出来事に遭遇したりすると、すぐに帰ってお前に教えたい。なぜなら、お前の浮かんできた笑顔がみたいから⋯⋯
はぁ、一体おれはどうしたんだろう。半生を放浪してきたというのに、お前のようなガキに手足を縛られるとは!お前のことを考えると、また指間の炎が燃えだす。だが幸いもうすぐ家に戻るから、残りの言葉はまた直接話してやる。
魚腹藏羊
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