雪霽羹・手紙
半分風雅
主人公名:
この数日は、空桑の環境になじんだり、皆さんにお花の育て方を教えたり、忙しく過ごしています。「ガーデニング入門班」も開設しましたよ。毎日新しい人が入会して、皆さんは熱心すぎて、とても人手が足りません……こんなに早く空桑になじめたのは嬉しいですが、身体がちょっと持たなくて、あちこちが痛みます。若様もきっと、こんなわたくしを見ていられないですよね?手伝いに来てくれませんか?
雪霽
同袍同沢
主人公名:
おそらく先般の「ガーデニング講座」のおかげだと思うのですが、最近、皆さんがお花を贈って気持ちを伝えるようになりました。八仙は春蘭を育てて恩師に贈りたいと言っていますし、叉焼くんはセッコクをお父さんの手に渡していました。桂くんは誰かからルリジサを貰ったようで、ちょっと緊張しながらわたくしに花言葉を尋ねてきました。ルリジサの花言葉は「勇気」だと教えてあげたら、顔を真っ赤にして。本当に可愛い子ですね……
もしかすると、人と人との間には、多くの言葉がいらないときも、あるのでしょう。言葉にできない思いは、花で伝えればいい……ですから、わたくしも花に思いを込めることにしました。若様にわたくしの気持ちが伝わればいいのですが。分からなかったら、わたくしのところへ来て下されば、直接答えを教えてあげますよ。
<手紙には、白いヒヤシンスが一つ添えられている。ほのかに爽やかな香りが、穏やかな気持ちにさせてくれる>
雪霽羹
以心伝心
主人公名:
あの日、夕方の帰り途中、ふと気が付きました。若様がいつのまにか、わたくしの通り道の両側に提灯を付けてくださったのですね。あの提灯は蛍の光のように道を照らしてくれました。最後まで歩くと、若様が玄関の庇の下に立って、わたくしに手を振っていました。庇の下も提灯が1つ、明るく照らしていましたね。あの時、若様の瞳に煌めいていた光は、今まで見たどの星空よりもきれいでした。以前、「暗闇が嫌い」だと言いましたが、すべての星の光を私の目の前に集めてくださったのですね。
瀛州にいた頃、若様は空桑でのお話をいろいろと語りました。世界で一番温かい場所だといっていましたね。その時は実感がありませんでしたが、今ならわかります。若様がいるからこそ、皆さんが幸せに思えるのです。空桑の一員になり、わたくしは本当に嬉しいです。
雪霽羹
金蘭之契
主人公名:
今日後庭花園に行ったとき、以前わたくしたちが一緒に植えた三色のすみれが咲いていることに気づきました。その満開の花びらを見ていると、若様と一緒にこの花を育てた記憶がよみがえってきました。早く芽が出るようにと、一緒に水をやり、肥料をまきましたね。若様は花の間を歩き回って、時々蝶を捕まえたりしていましたね。それから、若様はわたくしに花を育てる秘訣を聞きましたが、話し終わる前に、わたくしの肩にもたれかかって寝てしまいましたね……すべて昨日のことのように思い出されます。この花畑を好きなのは、ここに若様がいるからだと気づきました。
色々な花を植えることができるとよく褒められますが、特別なことだとは思っていませんでした。ですが、今ではこの能力に感謝しています。この能力のおかげで、空桑の皆さんを幸せにし、なにより、若様に笑顔を咲かせることもできるのなら。若様さえよければ、わたくしはこの手で若様のために、いつでも満開の花を咲かせます。そして、永遠に若様の傍にいると誓います。
花の命には限りがありますが、若様への誓いは永遠に変わらないのですよ。
雪霽羹