髪絲百葉・手紙
半分風雅
主人公名:
ここは山中の村より騒がしい。特に、部屋の周囲をいつも誰かが徘徊している。あの者たちに伝えてくれ。俺は習慣として、部屋の周囲に常に糸を仕掛けているから気を付けろと……
あと、「密かに蟲毒を作っている」などという噂は、いったいどこから出てきたのか?俺は確か百の蟲毒を試したことはある。だがそれは体内の蟲毒を中和するためであって、別に蟲毒を好きで作ったわけではない。あんな噂を信じないでほしい。そして、もう俺にかまわなくていい。俺はただ、一人静かにすごしたいだけだ。
山中の鬼
同袍同沢
主人公名:
最近、あの占いに詳しい者がよく訪ねてくる。髪の毛の手入れ方法など聞かれた。それから近くでコソコソ徘徊している者がいた。そいつに理由をたずねたら、「蟲毒」の奥義を知りたいと言っていた……ここの者たちは、俺が今までに会った者とは違い、たしかに面白い。昔、餐庁で働いていた頃を思い出した。あの頃、俺はよく料理人から料理の手ほどきをうけ、客から遠方の話を聞いた……
こんな場所をくれたお前に感謝している。俺も何か変えたほうがいいかもしれない……ちょうど「感情管理相談所」という組織に誘われた。俺が変わるきっかけになるかもしれないな。
髪絲百葉
以心伝心
主人公名:
先日の助言は、とても役に立った。感謝する。
「感情管理相談所」はうまくいっている。彼らは確かにアドバイスを必要としているようだ。
俺の刺繍の手工芸が少しは役に立てばいいが……
そういえば、最近奇妙なことがあった。部屋の外の廊下に、数日置きに花束が置かれている。
毎回違う花束だが、誰のしわざか知っているのか?もしお前が知らないと言うなら、少し用心したほうがいい。
花、草、虫、獣は、どれも蟲毒の「媒介」になれる。ここには俺とあの臘味合蒸以外、蟲術に長けている者はいないが、何事も用心に越したことはない……
俺は詳しく調査してみるつもりだ。心配は必要ない、安全確認ができた後、ちゃんとお前に報告する。俺を訪ねたいなら、その後にしろ。
髪絲百葉
金蘭之契
主人公名:
ふと気づけば、前回お前に連絡してからずいぶん経った。お前はどのように過ごしていたのだろうか?
先般の妙な事件だが、調査して分かった。あの花は蠱術ではなく、あの春巻という子どもが持ってきたものだった。俺から刺繍の手工芸を習いたいが、どうやって頼めばいいかわからなかったらしい。今ではいい友達になったな。
事件は解決したが、お前と会わない日々が続き、別の問題ができた。お前の姿が見えないと、なぜか心が苦しい……心蠱は除去したはずなのに、お前への思念が強くなるとは、まったく道理に合わない。
刺繍をする俺を傍で見ていたお前。俺の後ろに立って、優しく髪を梳かしてくれたお前。蠱毒の影響を受けた俺に、信じて付き添ってくれたお前……全ての記憶が、お前の姿が、糸で心に括りつけられているように離れない。
髪絲百葉