鶏茸金絲筍・憶絵物語

騎士の誓い・一

◆主人公【女性】の場合◆

（逆の場合の差分は募集中）

ドアを開けると、見慣れた人が窓の前に立っている。

春の朝日が彼の姿を照らしている。

真っ白な服を纏い、黄金の短剣を付け、

手の中にある一輪のバラの花が、彼の姿をますます輝かせている。

鶏茸金絲筍

「俺様は近々、別荘で休暇をとろうと思う。

　馬に乗って春の行楽に出かけるつもりだ。

　今着ている服をどう思う？」

若

「とても綺麗だよ。まるで本の中から出てきた騎士みたい」

鶏茸金絲筍

「たくましい駿馬、震える剣先、深い眠りのバラの花、

　これが……俺様の考える騎士のロマンだ。」

「次の服のデザインは騎士をテーマにしたいんだが、何かが足りない気がする。

　もしかしたら、今回の旅でいいアイデアが見つかるかもしれない……」

「○○、早く荷物をまとめろ。俺様と一緒に出発するぞ！」

「お前の服はすでに用意した。必要なものだけを持っていけばいい。」

若

「え……？」

鶏茸金絲筍

「何か問題があるのか？

　お前は俺様の下僕なんだから、ついてくるのは当たり前だろ？」

「何か用事でもあるのか？

　いや、もう空桑のスケジュールはチェックしたはず……」

若

「いや、特にはないけど、突然すぎて……」

「これは『思いついたら出かける旅』というものですね？ロマンチック！」

鶏茸金絲筍

「勝手に変な妄想をするな。

　俺様はただ、お前が空桑であくせくと一週間も働いているから、

　外に連れてって、気分転換でもさせようと思ってるだけだ。」

「お前は俺様の大事な下僕だからな。

　お前のことは、油断ぜず見ておこう。」

「ちょうどいい機会だ。前回に引き続き、お前に馬術を教えよう。」

「今回、俺様たちを邪魔するようなモノは来ないと思うが……

　んっ、いや、俺様の馬術レッスンのことだぞ！」

早朝の庭園には、太陽の光が満ちて、歯が翡翠のように輝いている。

少年が連れてきた白い馬が鼻を鳴らし、私の手のひらをやさしくこする。

ブドウのように黒い二つの目に優しい光が満ちている。

若

「かわいい白馬さんだ！」

鶏茸金絲筍

「当然だ！これは俺様が一目で選んだ馬。名前はシェリーだ。」

「この馬はもう買ってあるから、空桑にも連れて帰れる。

　これからは、お前もシェリーに乗って、俺様と一緒に外へ出掛けられるぞ。」

若

「本当？ありがとう！」

鶏茸金絲筍

「例にはおよばない。俺様は騎士の気前の良さを発揮しているだけだ。

　それに、お前のような不器用な初心者にも

　相性のいい馬を選べば、余計な面倒が減るからな！」

「よし、今から俺様のレッスンを始めるぞ。

　前回のように、馬の尻の後ろにだけは立つなよ！」

鶏茸金絲筍

「いいぞ！どうやら、お前もそろそろ馬術のコツをつかんだようだな！」

「……まあ、俺様のような優秀な先生がついているからな。

　教わった生徒も、優秀になるのは当たり前だ！」

若

「先生～！もっと素直に私のことを褒められないんですか？」

鶏茸金絲筍

「……」

若

「……」

鶏茸金絲筍

「……」

「ふん！そんな目でこっちを見るな。

　俺様はこんなことで誘惑されないぞ……！」

「天気予報によると、ここ数日はいい天気だそうだ。

　明日の午後、俺様と一緒にピクニックに行くぞ！」

小笋と一緒に馬に乗って郊外の原野を歩いていく。

ヒナギクとノジスミレの香りが真正面からの柔らかな風に溶け込んでいる。

私たちと一緒に出かけたのは、2頭の馬と『ワン』という子犬だ。

別荘の庭で飼われていて、使用人たちの行き届いた手入れのおかげで、全身の毛並みはつやつやにしている。

ここ数日、私たちがどこへ行くにもついてきて、楽しそうに尻尾を振っている。

まるで私たちを友達だと思っているようだ。名前がストレートすぎて嫌がってるようにも見えたが、小笋はこの子のことをとても気に入っている。

鶏茸金絲筍

「さらに東南に一時間くらい歩くと、大きな湖があるぞ。

　景色が綺麗な場所で、水はサファイアのように青く、

　水辺には、アヤメが紫色のカーペットのように咲いているそうだ。」

「俺様たちは夕方までそこにいて、夕日を見てもいいぞ。

　それと……あ！とにかく行ったらわかるぜ！」

若

「楽しみにしてるね！」

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騎士の誓い・二

◆主人公【女性】の場合◆

（逆の場合の差分は募集中）

鶏茸金絲筍

「……」

「額にかなり汗をかいてるな。疲れたか？」

若

「そう言われると、ちょっと疲れたかな。」

鶏茸金絲筍

「やはり、長いこと家にいたからな。今後は俺様がお前を外に連れ出してやる！

　ちょうどいい、目の前に綺麗な木があるぞ。

　俺様はもっと近くで見たいから、お前はその木の下で休んでな！」

小笋はリュックからシートを取り出して地面に敷き、私をそこに座らせた。

シートの模様は私の好きな花だった。

それを見た私は微笑みながら彼に目を向けると、赤い顔をして振り向いた。

鶏茸金絲筍

「これは騎士なら誰もがすることだ。

　わざわざ用意したわけじゃ――」

若

「ふーん？

　しかし、騎士は相手の好みもしっかりと覚えているのでしょうか？」

鶏茸金絲筍

「お、お前、疲れたんじゃないのか？ずいぶんおしゃべりだぞ？

　今はここでゆっくり休んでろ。後で呼びに来るから！」

若

「……」

「……」

午後の原野は蜂蜜のような濃厚で甘い匂いがして、徐々に眠気が襲ってくる。

重いまぶたに抗っていると、急に耳元が騒がしくなった。

鶏茸金絲筍

「おい！止まれ、どこに行くんだ！」

目を開けると、いたずら好きなワンが蝶を追いかけていた。

いつの間にか首輪が外れてしまったようで、道端の茂みに潜り込んでしまった。

小笋と一緒にワンが向かった方向に追いかける。

彼は怒ったように大声でワンに呼びかけるが、その表情は心配そうだった。

鶏茸金絲筍

「あいつめ！いったいどこに行った？」

ふと、後ろの茂みから奇妙なカサカサと言う音が聞こえてきた。

暗がりで何かがうごめくような気配を感じる。私は小さな合図を少年に送った。

若

「気をつけて、森の中に何かいる。」

鶏茸金絲筍

「――！！」

話が終わらないうちに、何かが襲いかかって来た。

少年は短剣を素早く抜き、その一撃を食い止めた。

血の臭いはしていないからワンは無事だろう。

しかし、私たちの目の前に飛び込んできたものに、再び緊張が走った。

そいつはしわがれた声で吠え、全身の毛が恐ろしく逆立っている。

その直後、林の中から、同じ種類、無数の猛獣が飛び出してきた――

私たちは、狼の群れに襲われている。

鶏茸金絲筍

「忘れるなよ。今の俺様は騎士だ。ここは俺様に任せておけ！」

少年は軽くそう言ってみせたが、目の前の猛獣の数が多すぎる。

ひとりの力では絶対に勝てない相手だ。私も決して彼を見捨てはしない。

そう思いながら、私は太い枝を折って手に握った。

このとき、狼の群れはすでに私たちを取り囲んでいた。

白い牙をむき出し、怪しく光る目が日光に遮られた薄暗い林の中で

少しずつ迫ってくる様は、まるで不吉な火の玉のようだ。

鶏茸金絲筍

「○○、ぼんやりしないで、早く下がれ――ウッ！」

若

「ハァ――！！」

狼が少年に飛びかかるのを見て、私は大きく突進した。

手に持っている武器で野獣に猛攻すると、

その狼は悲鳴をあげて倒れ伏し、尻尾を巻いて逃げていった。

鶏茸金絲筍

「お、お前どうして――」

若

「昔はよく不器用だと言ったよね。

　今日こそ本当に不器用なのかどうか、ちゃんと見ててね――

　うしろ、気をつけて！」

私と少年が共闘すると、シェリーと小笋の黒馬も負けずに足を上げて狼に攻撃を重ねた。

しかし、狼たちは依然として銀灰色の潮のようにどんどん押し寄せてくる。

今のところは狼たちに対抗できているが、

森の猛獣とのスタミナ勝負は、あまり現実的ではない。

隙を見て馬に乗って逃げるか？しかし、狼の追いかけられれば状況は不利になる。

この枝に火をつけたとしても、これだけの狼たちを退治することはできない……

ふいに、少年のリュックが狼に引き裂かれるのが目に入る。彼もこちらの意図を悟ったようだ。

若

「小笋、あなたのリュックに――」

鶏茸金絲筍

「そうだ俺様のリュックの中に花火がある。これで狼を追い払えるぞ！

　あっ、だが……！」

若

「なんだ？」

鶏茸金絲筍

「なんでもない！

　これでこの空気の読めないバカ狼たちを追い払うぞ！」

若

「とりあえず私は狼たちの攻撃を防ぐから、

　あなたは花火に火をつけて狼たちに投げて。」

狼の攻撃に備えた瞬間、少年が花火に火をつけ、狼たちに向かって投げつけた。

澄んだ爆発の音が伝わってくる。光と硝煙のなかで、

目の前まで迫っていた狼たちが四方八方に逃げ去った。

びっくりしすぎて立ち尽くしたまま、ふたりと一頭の馬はその場で息を飲む。

鶏茸金絲筍

「○○、お、お前、ケガはしてないか？」

首を振りながら、ハンカチを取り出し、少年の傷に簡単な手当をした。

彼は黙り込み、地面に散らかった花火の残骸を見てボーッとしている。

私の心遣いに気づき、彼はやっと顔を上げた。

鶏茸金絲筍

「早く帰るぞ！俺様の服が……全部汚れちまった！」

花火の火を消して、燃え広がる危険がないことを確認した。

それから辺りを探し、私たちは迷子になったワンを見つけることができた。

鶏茸金絲筍

「……」

ワン

「ワン……」

彼は頬を膨らませ、涙に濡れたワンの瞳をじっと見つめ……

しばらくして、「帰ったらもっといい首輪を変えなきゃな」とつぶやいた。

ふたりで同じ馬に乗り、帰り道をたどる。

夜のとばりが下りて夕もやが立ちこめると、

遠くの空が次第に金色の煙霞（えんか）で覆われていく。

花や木、草、木の葉、そして目の前の少年も、

周りのすべてが微かな光に照らされキラキラと光っている。

鶏茸金絲筍

「だから、なんでこの俺様がお前の前に座らなきゃいけないんだ？

　あと、俺様を抱きしめていいって誰が言った？」

若

「私はただこうしたら少し安心できると思っただけ。

　それに、あなたの手は怪我をしてるんだから、手綱を引いちゃダメだよ。

　落ちるかもしれないから――気をつけて！」

鶏茸金絲筍

「わあーっ！」

私は急いで落ちそうな小笋を引きとめた。

若

「これで分かった？

　しっかりと私に体を預けてね。もうむやみに動かないでよ。」

鶏茸金絲筍

「ふん！いいだろう。

　でも、これ以上こっちに寄るなよ。

　俺様の心臓がドキドキするじゃないか……」

「ゴホン！これじゃあ俺様が、この美しい夕焼けに集中できないじゃないか！」

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騎士の誓い・三

◆主人公【男性/女性】の場合◆

（逆の場合の差分は募集中）

鶏茸金絲筍

「いたっ……！」

若

「痛かった？もっと軽くするね。」

鶏茸金絲筍

「ちょっと痛いだけだ。こんな傷、俺様は全然気にならない。

　ただ、お前の手当てに不満があるんだ！」

若

「えっ？でも、医書通りに手当してるけど……」

鶏茸金絲筍

「俺様が言ったのは、お前の包帯の結び目は美しさに欠けてるってことだ。

　俺様のそばにこんなに長くいるんだから、少しは美意識を養え！」

若

「わかったわかった。ハサミで結び目の端を少し調整するね！」

小笋の傷口を処置した後、私は立ち上がって箱を戸棚に収めようとする。

鶏茸金絲筍

「待て。お前も袖をまくって腕を見せてみろ！」

袖をまくり上げてみたら手首に小さな傷がついていた。

一見しただけでは、ほとんど気づかないほどの傷だ。

なぜ彼がそれを知っているのは、わからない。

鶏茸金絲筍

「ケガをしてるのに、なんで何も言わないんだ！さっきも聞いただろ！」

若

「えっと……あなたに言われなかったら、私も気づかないほどの傷だった。

　安心して、これくらいなら全然大丈夫だよ！」

鶏茸金絲筍

「誰がお前のために心配するかよ。まったく、気の抜けないやつだ。

　そうと知っていれば、もっと早く確かめたっていうのに！」

「とにかく、これからはもっと気をつけろ――これは俺様の命令だ！

　お前は俺の……専属モデルなんだから、痕が残ったら困るんだよ！」

「薬箱を渡せ。しっかり覚えてもらうために、

　今回は特別に、俺様が自らお前の傷を手当してやるよ！」

小笋はうつむいていて、言葉は乱暴でも、手の動きはとても繊細だ。

彼のしなやかで濃密な髪が明かりに照らされて、

まるで夕暮れ時に見た金色の煙霞のようだった。

鶏茸金絲筍

「ふん！俺様の髪を触りたいなら、触らせてやってもいいぞ！

　もう一度くらい特別を許可してもいいだろう！」

「しかし、これは決してお前の行為を認めたわけじゃないからな！

　お前は騎士じゃないのに、どうしてあのとき、突っ込んでいったんだよ？

　万が一……万が一……」

少年の暖かな髪の間に指を通し、そっと撫でる。

彼が心配していた『万が一』は、私が心配していたモノ。

この温もりを、私は必ず守る。

若

「小笋、あなたは間違ってる。

　私も騎士だよ。」

「『大切なものと人を守りたい』という気持ちがあれば、誰でも騎士になれる。」

鶏茸金絲筍

「――！」

それを聞いた少年は、仰いだ顔を一瞬にして真っ赤にした。

朝の花瓶の中でまだ朝露がついたバラの花のように。」

そして彼は頭を傾け、冷たいガラスの窓に頬をくっつけて、むっとそう言った。

鶏茸金絲筍

「この『騎士宣言』は、あんまりいいものじゃないな！」

「何をじろじろと俺様を見てるんだ……？

　あっ！ご、誤解するなよ。

　顔が赤いのは部屋が蒸し暑いせいだ！」

「そ、そうだ。外の空気を吸ってくる！」

鶏茸金絲筍

「……もしあの憎らしい狼どもに出遭わなかったら、

　今頃、俺様はあいつと湖のほとりで花火をしてたはずだ。

　あれは俺様が特別に発注した花火だったのに！このタイミングで彼女に……」

若

「小笋！」

鶏茸金絲筍

「〇〇、どうして来たんだよ！」

若

「あなたが言ったんだよ。

　私はあなたがどこに行っても、ついていくのが当たり前でしょ。」

鶏茸金絲筍

「そんな恥ずかしい言葉を言ったおぼえはないぞ！

　ところで、さっき……変なことを聞かなかっただろうな？」

若

「ううん、何も聞こえなかった。

　――ほら、これを持って！」

鶏茸金絲筍

「これは？」

若

「別荘の管理人に聞いてみたら、この花火しかないみたい。

　あなたが準備した花火ほど派手じゃないと思うけど――」

私は少年の手にある花火に火を灯した。

彼は怪我をしていない方の手で、静かに空に打ち上げた。

ルビーのような両目がだんだん明るい光に染まり、

微かに笑みが滲んできたような気がする。

そして、まだ途中だった私の言葉の続きを、彼は詩を詠むような口調で語った。

鶏茸金絲筍

「しかし、それとは違う美しさがある……」

「さっきの言葉、いったん取り消してやる！

　お前、俺様のそばにいて美意識が養われたようだな！」

若

「ところで……小笋、このタイミングで何かしたくないの？」

鶏茸金絲筍

「お、お前、やっぱり聞いてたんじゃないか！

　さっき俺様が聞いたとき、なんで嘘ついたんだよ！」

若

「それは私にとって変なことじゃなくて、私が期待していることだから。」

鶏茸金絲筍

「……！」

「すこし遅くなったけど、お前の気持ちが知れて良かったよ……」

「お前がそう言うなら仕方ない――よく見てろよ！」

少年はそう言って、また花火に火を灯した。

剣を振るような動きで、花火を振っている。

その表情はとても真剣だ。

私は息を飲み、目の前の光がぼんやりとした夜に

はっきりとした軌道を描くのを見つめた。抽象的だが、

ふたりの騎士が馬に乗って駆け抜け、共に戦っているように見える。

鶏茸金絲筍

「ゴホン！これは俺様の……いや、俺たちの『騎士宣言』だ。

　俺は自分の剣で、俺が求めた美とお前を守る。

　お前……さっきの話は、まだ有効か？」

若

「もちろん、いつまでも有効だよ。

　これからはお互いに守っていこう。」

彼はそれを聞くと笑顔を浮かべ、花火を私に手渡した。

まるでこの春の夜に咲き乱れる花を渡したかのように。

鶏茸金絲筍

「いまさらだけど、俺様は……お前の望み通り、率直な話をするぞ……」

「俺様が心の中でずっと探している美は、

　星空の下で共に踊ったときから、ずっとお前と一つになっている。」

「……たくましい駿馬、震える剣先、深い眠りのバラの花……

　今になって、この騎士のロマンは、

　この美にこそ相応しい、その美があるからこそ完成すると思う。」

「その不可欠な美とは――」

少年は月の光よりも白い掌で、私の頬をなでた。

鶏茸金絲筍

「大切な人の笑顔だ。」

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