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東璧龍珠・物語

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一 神の名推理・壱

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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魚香肉絲

「もう一度チャンスをくれないか。」


東璧龍珠

「チャンスとは?」


魚香肉絲

「今までは選択の余地がなかったんだ、これからは心を入れ替えたい。」


東璧龍珠

「そうか、○○に言え。彼が認めてくれるといいがな。」


魚香肉絲

「それは私に「死ね」という意味かい?」


【選択肢】

・刑事物の映画でも撮ってるの?

・どこかで聞いたことがあるような台詞は一体……

選択肢

刑事物の映画でも撮ってるの?


東璧龍珠

「鼠を捕る猫の常套句も、しょせんはこんなものだ。」


どこかで聞いたことがあるような台詞は一体……

東璧龍珠

「残念だが、オレは警察だ。」


魚香肉絲

「誰も知らないだろ?」


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えび餃子

「カーット

東璧、カメラアングルが決まってるね!

余湘の悪役演技もすごく様になってたよ!

今回の撮影はバッチリだね。」


魚香肉絲

「やれやれ、これはいわゆる芸術へわが身を捧げるということかな?

私は誰もが認める良い人なんだけどなぁ?」


徳州扒鶏

「東璧、警務部と演芸部による警察情報番組撮影への協力に感謝する。

このビデオを通して学べば、空桑の住民も宴仙壇等といった、悪の勢力に太刀打ちする術を身につけることができるだろう。」


東璧龍珠

「お安い御用だ。

だが……次にオレを尋ねる時は、本当の事件が起きた時だと願うよ。

○○、瞳孔が開いていて、口も少し開いている。驚きを隠せていないぞ。

オレと警務部の関係が知りたいだと?

君の情報網はどうなっているんだ……ついてこい。」


部屋は東璧龍珠によってまるでオフィスのように改造されている。

書類が山のように積まれた仕事机、空桑の全景を反映している砂盤、巨大な本棚が数個、そして部屋に置くにはいささかおかしな道具、試験管、サンプル袋、スライドガラスや顕微鏡などだ。


雲托八鮮

「若? 暫しお待ちを、書類と筆を用意しますゆえ……」


東璧龍珠

「彼は通報をしにきたのではない、茶を用意してくれ。」


雲托八鮮

「なるほど。若、どのお茶を飲御所望ですか?」


東璧龍珠

「下から数えて六段目、棚の右にある茶筒だ。

また驚いた顔をしているな。何故オレが知っているかって?

一見関係のない情報収集でも、いつか事件を解決する糸口になるかもしれない。例えば君がどんなお茶を好むかとかな。」


東璧龍珠が机に置かれた木の札を扉の前にかける、そこには大きな文字で――『空桑捜査室』と書かれている。


東璧龍珠

「オレが空桑管理司に、独立した捜査機関の設立を申請したのだ。警務部に協力して難事件の捜査を行う部署としてな。

だから、警察情報番組などといった撮影も、協力に含まれてしまっている。

○○、ホームズとホーソーンの共通点は何だと思う?」


【選択肢】

・二人とも男の人ですね。

・二人とも探偵ですね。

選択肢

二人とも男の人ですね。

東璧龍珠

「……。

こんな返答をするのは君ぐらいだな。」


二人とも探偵ですね。

東璧龍珠

「そうだ、だが半分しか正解していない。」


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東璧龍珠

「文学作品の中では、二人とも現代捜査技術に精通している探偵なのだよ。

以前警務部の資料を読んだ時、あるネット事件を見つけた――

宴仙壇の易牙が空桑のネットワークを攻撃しようとしたが、警務部と麻婆豆腐の協力によって阻止できたと。

だから、現代技術を身につければ、効率良く事件を解決することができる。

最近はオレもこういった捜査方法を研究しているのだ。」


【選択肢】

・さっきの質問、もう一つ答えがありますよ。

・助手も無しに一人で?

選択肢

さっきの質問、もう一つ答えがありますよ。

東璧龍珠

「ほう? 第三の答えがあると?

彼らはそれぞれ有能な助手がいるだと?

だから、君はオレの助手として捜査を助けたいと?」


助手も無しに一人で?

東璧龍珠

「君はオレの助手として捜査を助けたいと?

現代科学の知識を持っていて、多少なりとも他の者よりは頭が切れ、

機転が利いて、空桑を知り尽くしており、

尚且つオレの考えにもついてこれる……ふむ、及第点だな。」


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雲托八鮮

「若、『空桑捜査室』に入るのですか?

我が仕事の内容を説明いたしましょうか?

事件を解決する以外にも、法を犯した者に対する三十日間連続での法制教育など……」


東璧龍珠

「法制教育はオレの仕事ではない、こいつがやりたくてやっていることだ。」


雲托八鮮

「確かに我では法律面で少しばかりの助力しかできませんが。

若が加入してくれれば、百人力ですよ。

なぜなら、其方の名前は、東璧の助手招集予定リストに載っている、最初にして唯一の名前なのですから。

まあ、それを書いた後、直ぐに筆で塗りつぶしてしまったようですがね。

隠そうとしても証拠は挙がっているのですよ。」


東璧龍珠

「ふん、それがなんの証明になるのだ?

せいぜい資格を持っているというだけに過ぎない。

オレが彼を気にかけている証拠には到底ならないな。

助手か足手まといか、きちんと試験をしてから彼の実力を推し量るべきだ。

○○、顕微鏡は使えるか?

このサンプルから細胞が幾つ観察できるか教えてくれ。」


【選択肢】

・何も見えませんが……

・ピントがうまく合っていないようです……

選択肢

何も見えませんが……

東璧龍珠

「……もう一度機会をやろう。」


雲托八鮮

「我が試験を受けた時は一度しか機会を与えられなかったと思うのですが?

それとも我が試験の規定を忘れてしまっただけでしょうか?」


東璧龍珠

「静かに。

試験場で音を立てて他の者を妨害するのは、規定に反しているのではないか?」


雲托八鮮

「それは、も、申し訳ありません、若!

試験場の秩序を乱す意図はなかったのです。

其方の妨げになっていなければいいのですが――」


ピントがうまく合っていないようです……

東璧龍珠

「む、なんだと?」


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雲托八鮮

「東璧がピントを正確に合わせていなかったせいで、

画像がぼやけてしまっているのですね?

素晴らしいですね。若が調整したおかげて、何時もよりクッキリと見えますよ。」


東璧龍珠

「う……オレのミスだったとは。

やはり現代機器は君の方が慣れているな……

教えてくれて、感謝する。」


そのとき、突然、扉を叩く音がした――


東璧龍珠

「通報か?

○○、紙と筆を用意しろ。このまま第二の試験に入る。」


片児川

「東璧刑事、通報したいことがある!

聞いてくれよ、何処の悪戯者か知らないが……」


東璧龍珠

「以上か?」


片児川

「い、以上だ。全部記録してあるのか?ボクはねぇ……」


東璧龍珠

「○○が全て記録しているはずだ。」


【選択肢】

・調理部→塩昆布→いたずら→洗われた塩

・安心してください、全部頭に入ってますから。

選択肢

調理部→塩昆布→いたずら→洗われた塩

片児川

「そうそう!

誰かが調理部の活動部屋に置いてあった塩昆布の塩を、一箱分まるまる洗い落としてしまったんだ!

塩漬けされた海産品一度表面の塩を洗ってしまうと、

もう長期保存ができなくなってしまう、犯人めぇ……」


安心してください、全部頭に入ってますから。

東璧龍珠

「よろしい。

本当に効率のいい記録というのは、紙に記すのではなく、頭に刻んでこそだからな。

今回は、褒めてやろう。」


片児川

「おいおい、キミたち本当に大丈夫なのか……」


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東璧龍珠

「ここで文句を言うよりも、捜査に時間を費やした方が有意義だ。

では、オレは助手と共に現場捜査に向かう。」


雲托八鮮

「助手? ということは、若は試験に通ったということですね?

待ってください、東璧。このまま彼を連れて行ってはなりません。

正式な手順を踏まなければ。まずは若の入職手続きですね。

ええと筆はどこだったかな……」


東璧龍珠

「いらん。これ以降の○○の時間は、オレのものだ。」


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二 神の名推理・弍

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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調理部の活動室には食器等が綺麗に並べられてあり、

吊戸棚の扉が一つだけ開いている。


東璧龍珠

「おそらくは戸棚を開けた片児川が、

塩漬け昆布の塩が洗われていることに気付き、真っ先に通報に来たのだろう。

○○、両足をどけてよく観察するんだ、君の足元に手がかりがあるぞ。

微かだが、地面に椅子を移動させた痕が残っている。

机の傍からこの棚まで続いていて、また机の傍に帰っているな。

片児川の身長では椅子を使って箱を下ろす必要はないだろう。

ここからどんな手掛かりが得られると思う?」


【選択肢】

・犯人は背が高くない。

・犯人は律儀な人。

選択肢

犯人は背が高くない。

東璧龍珠

「そうだ、少なくとも一般成人男性の身長よりは低いはずだ。」


犯人は律儀な人。

東璧龍珠

「使った椅子を元に戻したということで、犯人が律儀だと推測できるのか?

普通に考えれば、怪しまれない為だと推測するのが道理だが。

君の考えはなかなかに奇抜だな。」


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東璧龍珠が一点を凝視したかと思うと、おもむろに手を伸ばしてくる――


東璧龍珠

「君の後ろにあるタオルを取っただけだ。

タオルが掛けてある場所に日の光が当たっている。

どうやらそのせいで水が蒸発して表面に塩粒が残ったようだな。

犯人は昆布を洗った後、更にタオルで表面の塩水を丁寧に拭き取っている。

これは何を意味すると思う?


【選択肢】

・ダンボールから塩水が滲み出て、怪しまれるのを防ぐため。

・食材を大切にしている。

選択肢

ダンボールから塩水が滲み出て、怪しまれるのを防ぐため。

東璧龍珠

「そうだ、この犯人はなかなか慎重だ。昆布の束を1つずつ拭いている。

だが他の原因も考えられる……」


食材を大切にしている。

東璧龍珠

「実は食材を大事にしていて、水に濡れさせたままなのが許せなかったとかな。

だが食材を大事に思うのならば、このように損なうことはしないはず。両者は矛盾している。もしくは……」


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東璧龍珠

「最後の有力な証拠は棚の角にある。」


彼は棚の角を指さす、よく見るとそこには赤い糸が何本か引っ掛かっていた。


東璧龍珠

「○○、「現場再現」のやり方は知っているか?

初心者が物事に集中できない場合、

思考の妨げになる環境因子を遮断してみるといい。

そうすれば頭の中の情景に専念できる。例えば……

この布でオレの目を覆ってみろ」


東璧龍珠

「犯人は椅子をここまで運び、上に乗って、棚を開けた。

そして、塩漬け昆布が積まれたダンボールを取り出す。

だが箱は重く、バランスを崩し、倒れそうになる。

なんとかバランスを保ったが、そのせいで角にぶつかり……

服の装飾が角に引っ掛かってしまい……赤い糸が残ってしまった……」


途中から、東璧龍珠の口調にブレが生じ始めた……

暗闇の中、似たような情景、無意識に心に封印した記憶が蘇る――


唐王朝、長安のとある夜、一つの隊の官兵たちが部屋に集まっている。


東璧龍珠

「初心者が物事に集中できない場合、

思考の妨げとなる環境因子を遮断するといい。そうすれば、頭の中での現場再現に専念できる。例えば黒い布で目を覆うとかな。

劉二前に出ろ。君が手本となって、オレが指示した通りに推理してみろ。」


劉二

「承知。」


東璧龍珠

「賊が踏み板を運んできて、その上に乗り、吊棚を開け、

王府の秘宝を盗もうとしている……そして?」


劉二

「誤って角にぶつかってしまい、玉佩の房飾りが引っ掛かって……」


東璧龍珠

「よろしい、続けろ。」


一通り推理し終えた頃には、分隊の皆が反乱分子の計画を把握した。

後は支度を整えて捕獲に向かうだけだ……


東璧龍珠

「劉二、ここに留まって何をしている?」


劉二

「ええと、隊長。任務に行く前に何か食べておいた方がいいのでは?

長いことお一人で長安に滞在して、家の者も近くにはいないのでしょう……

良かったら、うちで作った胡餅を召し上がってください。」


東璧龍珠

「……。

そんな些細なこと、任務に比べれば取るに足らない。」


長安の通りで、二人の男が対峙している。お互い驚愕に目を見開きながら――


東璧龍珠

「反乱分子と内通していた間者は、君だったのか!」


劉二

「た、隊長! それには事情が……家族の為に……仕方なく……」


東璧龍珠

「反乱分子と手を組み、仲間を、朝廷を、唐王朝を裏切っておいて、この期に及んで言い逃れか?

今晩の任務の前に、仲間たちに胡餅を作ってやったのは良心の呵責か?

はっ、君の罪を誤魔化すために、そのような事をしたのだとしたら……

もはや、情けをかける価値もない!」


東璧龍珠は懐からまだ温かさが残る胡餅を取り出すと、

ためらいもなく裏切り者の口の中へ押し込む。

抵抗する術もない部下は東璧龍珠によって昏倒させられ、冷たい地面に倒れ込んだ。

東璧龍珠は素早く部下の衣服を剥ぎ取ると、内通の手紙を取り出した。

そして、一匹の孤独な狼のように闇夜へ姿をくらましたのだった。


――数か月後、長安遠郊。

さびれた仏像が鎮座している前で、一人の男が跪き懺悔している。


東璧龍珠

「あの夜、オレは部下が反乱分子の共犯者だったことを知り、奴を逮捕した。

そして奴になりすまし、芋づる式に大元の黒幕を引きずり出すことに成功した。

だが、官府が徹底的に調査を行った結果、

あの部下には酌量の余地があり、死罪には値しないことが分かった。

オレはそのことで奴の家族から非難され、捜査の手口が残忍過ぎると、オレを目の敵にしていた職場の奴らにも誹謗中傷を浴びせられ、

しまいには「鉄血名捕」の呼び名がついてしまった……

いつからだろうな?

捕り物の過程で、楽しめば楽しむほど、辛さが込み上げてくる。

オレは正義のために賊を捕まえようとしているのか……

それとも単に事件解決の快感を得るためなのか?」


仏像

「……。」


東璧龍珠

「なんだ、仏でも答えられないのか?

それなら世の人々が神頼みをしたり、念仏を唱えるのは一体なんのためなんだ?

しょせんは自分を慰めるための言い訳でしかないのか?

オレを育てた神仏の元を離れ、途方もない旅路を経て、

泉州の仏寺から長安官府に来たというのに、迷いが深まるばかりではないか……」


部屋は静まり返り、目隠しをされた東璧龍珠は何か考え事をしているのか、微動だにしない。

その身から発せられる雰囲気は、まるで自分と外界を遮断しているかのようだ。

彼の言葉の通り、脳内の情景に集中しているようだ。


【選択肢】

・東璧龍珠、何か思いたの?

・彼の目隠しを外す。

選択肢

東璧龍珠、何か思いたの?

東璧龍珠

「――!?

ああ、被疑者のことを考えていて、無言になってしまった。」


彼の目隠しを外す。

東璧龍珠は自分に伸ばされた手を本能で制止しようとしたが、手が触れた瞬間、ハッと驚く。


東璧龍珠

「――!? オレを攻撃しようとしたのか?

ああ、目隠しを取ろうとしただけなのか。」


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東璧龍珠

「○○、『塩漬け昆布』事件を引き起こした者について、目星がついたぞ。

ここで問おう。君は今すぐ犯人を捕まえに行きたいか、それとも事件の行く末を見守りたいか?

後者か? それもそうだな、今のオレも、後者を選ぶだろう……」


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三 神の名推理・参

◆主人公【男性】の場合◆

(逆の場合の差分は募集中)

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東璧龍珠

「○○、今夜、賊は証拠を盗みに来るだろう。オレたちは兎が罠にかかるのを待っていればいい。

静かに。『兎』が罠にかかったぞ。」


暗闇の中、おぼつかない足取りで、誰かがサンプル袋から『証拠』を盗み出そうとしている。

『賊』が目的を果たそうとした瞬間、明かりがつき、部屋が白く照らされる――


東璧龍珠

「観念しろ!」


混湯酒醸元宵

「東璧兄ちゃんに若様? ど、どうして……」


【選択肢】

・悪戯をしたのは混湯酒醸元宵?

・事件はそんなに単純ではないはず。

選択肢

悪戯をしたのは混湯酒醸元宵?

混湯酒醸元宵

「そ、そうだよ! 犯人はぼくだ、絶対に湯円とかじゃないから!

ああ、しまった!

うっかり……今日の若様たちの捜査を盗み見たりとかしてないし!

ぼ、ぼく……」


事件はそんなに単純ではないはず。

東璧龍珠

「おそらくは、オレたちが捜査しているのを見て、

『誰か』に代わって罪を被ろうとしたのだろう。」


混湯酒醸元宵

「フン! 絶対に湯円には指一本触れさせないから……って、あ! しまった!」


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混湯酒醸元宵

「自分のやったことは自分で責任を取る。

全部ぼくがやったんだ、湯円とは関係ない!」


東璧龍珠

「ほう? オレが犯人を尋問する時、どんな方法を使うのか知ってるか?」


混湯酒醸元宵

「ううぅ、こ、怖いよぉ……

だめだだめだ、ぼくは立派な男なんだ、怖くなんかない!」


東璧龍珠

「いいだろう、真相を暴く方法はいくらでもあるからな」


片児川

「悪戯をしたのは湯円、キミだったのかい?」


湯円

「わ、わたし『悪いこと』しちゃったんですか?

元宵……ごめんなさい。ダメですよ、わたしのためになんか……

それから片児川社長、ご、ごめんなさい……うぅ、塩で昆布を保存していたとは知らなくて……てっきり、昆布が汚れてると思って……

だから表面の白い塩を洗い流して、綺麗な緑色にしてあげたくて……

ううぅ……わたし、調理部に……迷惑をかけてしまったのでしょうか?」


混湯酒醸元宵

「片児川社長、お願い、湯円を調理部から追い出さないで! 湯円はみんなと仲良くなろうって頑張ってるだけなんだ。でも自分は他の食魂たちみたいに、なんでも出来るわけじゃないから、湯円しか作れないからって……

本当は部活に入るのだって渋ってたのに、ぼくと若様に励まされて、勇気を出して調理部に入ったんだ……

だから……もしここを追い出されたら、きっと湯円はもう……ううううぅ……」


片児川

「な、何を大袈裟な! ボクがいつキミたちを追い出すなんて言ったんだ?

名の知れたこの川爺でさえ、

世界中の全ての食材の保存法を知っているわけではないんだぞ!

悪気があってやったことじゃないのはわかってたよ。

今後は、ボクもまた料理学習教室を開くから、

そこで勉強すれば自ずと上達するだろ。

東璧刑事、若、この事件はもう追求しないことに決めたよ。

で、できれば通報をなかったことにしてもらえると有難い!

この子らを前科者にしたくないんでね。」


東璧龍珠

「当事者が撤回したのだ、オレもこれ以上は追求しないさ。

それに、今日のは調査ではなく、ただ……捜査のいろはを○○に見せただけだ。」


混湯酒醸元宵

「よかったね! 湯円、もう追求しないってさ。

これでこのまま、調理部に居られるよ!」


湯円

「皆さん……ありがとうございます……」


東璧龍珠

「君たち、泣くんじゃない……ほら、ティッシュで、涙を拭け。」


東璧龍珠が慣れない手つきでティッシュの袋を開け、

そこから二枚取り出して湯円と袁宵にそれぞれ手渡す。


湯円

「ありがとうございます……東璧お兄さんの手、若様と同じで、温かいんですね……」


混湯酒醸元宵

「湯円、東璧兄ちゃんが笑うともっと温かいんだよ、全然怖く無いんだ。」


東璧龍珠

「……それは、部屋の明かりが温かいせいだ。」


片児川

「でもな、若。この箱いっぱいの昆布をなんとかしないと。

何か良い方法はないかい?」


【選択肢】

・「昆布」をテーマにした料理大会をやってみては?

・全部昆布の和え物にして。みんなに配りましょう。

選択肢

「昆布」をテーマにした料理大会をやってみては?

片児川

「おお、それは良い考えだ。湯円と袁宵、キミたちに対する「お仕置き」が決まったぞ。」


混湯酒醸元宵

「ええ! もう追求しないって……お、お仕置きはぼくだけにして!

湯円には酷いことしないで!」


片児川

「「お仕置き」として、チームで大会に参加して、賞を取ってくること……ふむ、少なくとも四位は取ってもらわないとね!」


全部昆布の和え物にして。みんなに配りましょう。

片児川

「おチビちゃんたち後でボクの厨房に来な。

川爺の料理をその目にちゃんと焼きつけとくんだよ!」


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湯円

「わ、わかりました!こ、今度は、絶対に失敗しません!」


混湯酒醸元宵

「大丈夫だよ、湯円。ぼくがいるから! サポートは任せて!」


笑い声の中、東璧龍珠は静かに部屋から退出した。そして、またもや一匹の孤独な狼のように、空桑の闇夜に消えていった。

だが、今宵の月の光は優しくその身に降り注ぎ、

意外にも『孤独な狼』の寂しさを紛らわせてくれる。


東璧龍珠

「○○、君か?

なかなかやるな、ここまでオレに付いてこれるとは、君の観察力も腕を上げたな。

何か用か?」


【選択肢】

・あなたが手掛けた初めての事件を聞きたくて。

・閣楼では風に当たってお喋りをするものですよ。

選択肢

あなたが手掛けた初めての事件を聞きたくて。

東璧龍珠

「……。

つまらなく長い話だ、オレが手掛けてきたどの事件よりもな。

ん、なんだと?オレの助手として、業務能力を高める良い機会だと?」


楼閣では風に当たってお喋りをするものですよ。

東璧龍珠

「……。

しょ、人が何かをする時は、必ず目的がある。目的を探し出し、それに沿って推理すれば、必ず真相を導き出すことができる。

だが、オレはたまに君が何の目的でオレに近づくのか、分からない時がある。

もしかしたら……君には本当に目的など無いのかもな。」


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東璧龍珠

「ならば話そう、オレの初めての事件を――

オレが長安に行く前は、泉州の寺で暮らしていたことを知っているか?

初めて化霊した時、寺の住職に引き取られた。そこで、オレに才能があると思ったのか、仏法を伝授すると言われてな、だが……口に出せなかったが、オレは伝法には全く興味がなかったのだ。

そしてある日、寺の仏像が盗まれる事件が起きた。そこでオレは、官府さえも解決できなかった事件を解決してしまった。

それからというもの、仏法を学ぶ事は、オレにとって苦痛でしかなくなった。

もとよりオレの心は如来にあらず、むしろ寺の外で活躍したいと渇望した。

結局、オレは荷物を纏めて寺を後にした、自分を理解した気になってな。別れ際、住職に「何をもってして行くのか?」と聞かれ、

オレは最も栄えている長安の街に行けば、数えきれない事件がそこにある、と答えた。それに対して、住職はなにも言ってくれなかったよ。

だが空桑に来て、ようやく分かった……本当の答えをな。」


【選択肢】

・あなたの捜査の手法が優しくなったと思います。

・あなたは優しくなったと思います。

選択肢

あなたの捜査の手法が優しくなったと思います。

東璧龍珠

「君にそう錯覚させている原因は一つしかないだろう。

空桑の事件は殆どが心温まる可愛げのあるものばかりだ、オレもそれにつられて……嫌でも優しくなってしまう。」


あなたは優しくなったと思います。

東璧龍珠

「長安の闇夜は、賑やかさの中に狂気が渦巻いている。

だが空桑の闇夜は、同じように賑やかでも、月の光は暖かく、そこで起こる事件も、温かく可愛げがある……

ひょっとすると……今この瞬間、君の瞳に映る空桑の月を見つめるオレも、心なしか優しくなれているのかもな。」



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