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Honor of Kings@人物百科事典

【HoK Wiki】世界観解説ガイド:長安

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【掲載日:2025年12月12日(金)】
「Honor of Kings@人物百科事典」のYouTubeチャンネルを開設いたしました。
こちらのチャンネルでは、本ゲームの公式アニメ "Is this HoK?(原題:是王者啊?)シーズン5" の日本語字幕付き動画を制作しています。

直リンク:Honor of Kings@人物百科事典

本Wikiと併せて、よろしくお願いいたします。


Honor of Kingsに登場する舞台「長安(ちょうあん)」についての解説ガイドを載せています。

① 長安(ちょうあん)の概要

 長安は、王者大陸に存在する、華麗かつ壮大な大都市である。王者大陸の地域区分のひとつ「河洛(からく)」の南東部に位置し、神秘の創造装置「万象天工(ばんしょうてんこう)」の上に築かれている。この都市は、機械術マスター・墨子が自らの手で造り上げた傑作である。

 かつて都市も万象天工も甚大な損壊を受け、文明は一時、暗黒の時代に沈んだ。しかし、歴代の統治者たちの手による再建を幾度も経て、現在、武(ぶ)氏一族の治世のもとで長安は再び栄華を極めている。人々が集い、万国が朝貢する王者大陸随一の繁栄の都──それが、今の長安である。

「万象天工」について

 長安の地の最深層には、光を拒むように沈む巨大な歯車群がある。それが「万象天工」と呼ばれる機構構造体であり、古代文明の終焉を見届けた機械術マスター・墨子が創造した、王者大陸最大の人工遺構である。文明が崩壊し、大地が裂け、理が失われた時代──墨子は、理性と機構によって再び秩序を築くため、天地の法則を模した装置を造り上げた。彼が目指したのは神を模倣することではなく、人の手で理を再現することだった。万象天工とは、彼が「世界を再起動させるための心臓」として設計した、究極の機構なのである。

 天工の構造は、地上の人間が理解しうる範囲をはるかに超えている。その中枢には「方舟」の動力核が据えられ、幾重にも重なった歯車群と管路が大地の深層を貫いている。天工の脈動は大地に共鳴し、都市の城壁や橋梁、宮殿の基礎を支える力として変換される。長安の灯火が絶えないのは、天工の動力が絶えず供給されているからにほかならない。都市が成長し、建築が増え、人の営みが広がるほどに、天工はそれに応じて自己調整を行い、長安全域をひとつの「機構生命体」として稼働させてきた。

 しかし、万象天工の真価は単なる動力供給にはとどまらない。天工は無限の演算を行う巨大な思考装置でもあり、長安全域の機構活動を監視し、均衡を保つためにあらゆる変数を計算し続けている。その「知性」は意志とも本能とも形容できず、ただ「最適化」という一点の原理に従って世界を運行する。伝承によれば、ある時期に天工は不完全な動力流を補うため、旧市街の一部を「切除」し、構造を再構築したとされる。そこに住んでいた人々の記録はすべて失われ、天工の制御層にも痕跡は残らなかった。長安の歴史における「空白の年月」は、この再編によるものだと信じる者もいる。

 天工には、その維持と監理を担う「運行者」の一族が存在する。彼らは代々、天工の内部に居住し、外界への出入りを禁じられてきた。任務はただ一つ──天工の鼓動を絶やさぬこと。彼らは血統によって選ばれ、代替わりのたびに天工と「同調」する儀式を受ける。外界との交流は断たれ、彼らの存在を知る者は極めて少ない。だが、古い伝承の中には、一人の運行者が禁を破り、地上へ出たという記録がある。その瞬間、天工は異常を検知し、街区全体を再構成したという──まるで外界の侵入を拒むように。これ以降、運行者の掟はさらに厳格となり、天工の最深部は絶対不可侵の聖域とされた。

 天工の稼働原理は今も完全には解明されていない。虞衡司(ぐこうし)の記録によれば、天工は独自の「律」を持ち、それは人間の法とは異なる次元で機構を制御している。そこでは因果すらも部品として扱われ、必要とあれば記憶・時間・物質のいずれも再配置される。ゆえに天工の内部では、過去と現在、原因と結果の区別が曖昧になるという。これは単なる伝説ではなく、長安の記録文書にも断片的に残る観測事例であり、天工の深層には確かに「時間を折り畳む仕組み」が存在するとも推測されている。

 都市の民にとって、万象天工は畏怖の象徴であると同時に、守護の神でもある。長安が幾度となく戦乱や天災から立ち上がれたのは、天工が常に都市を補修し、再生させてきたからなのである。

② 背景ストーリー

 王者大陸の中央には、肥沃な平原が果てしなく広がっている。その地に築かれたのが、最も強盛にして最も繁華なる都市・長安城である。「大陸第一の雄城」と称えられる長安は、古代文明の滅亡後に誕生した最大の奇跡であり、稀代の機械術マスター・墨子によって自ら設計・建造された。

 都市の中心には、伝説に語られる「方舟」の動力核が据えられ、それを中枢として、精密な機構仕掛けが連なる城壁が街を包む。その内部には、壮麗なる大明宮(たいめいきゅう)をはじめ、空港や居住区が整然と配置されており、有事の際には都市全体を浮上させることもできるという。

 この都に生きる者たちは皆、長安を誇りとしている。壮大にして寛容、華やかな市街と多彩な祭礼、そして幾多の秘密──それらが人々を惹きつけ、大陸の中心たる長安の名をさらに輝かせている。

 豊富な機構資源の支えと、開放的な政治方針のもとで、人々は安らかに暮らし、商業は日ごとに発展している。市場には多種多様な店が立ち並び、民生用の機械装置が雨後の筍のように生み出されている。商人、文人、豪傑、そして諸国の民がこの地に集い、調和のうちに共存している。その多様で包容的な風土こそが、長安を真の意味での「王者大陸の中心」に押し上げているのである。

③ 長安の歴史

 長安の起源は、古代文明の滅亡とともに訪れた「混沌の時代」に遡る。天地が崩れ、万象が乱れたその時代、人々は秩序を失い、王者大陸の中原(ちゅうげん)には荒廃と静寂だけが残った。やがて、かつての賢者たちの系譜を継ぐ者──機械術マスター・墨子が現れ、失われた文明の知恵と機械術をもって世界を再び築き直そうとした。彼は星々の運行と地脈の流れを読み取り、万象の力を一つの機構に集約することで「万象天工」を創造した。やがてその上に築かれた都市こそが、後に王者大陸を支配する栄華の都・長安である。

 万象天工は単なる動力装置ではなく、大地と空をつなぐ巨大な機構構造体であった。方舟の動力核を中枢に据え、そこから流れ出す膨大な機構エネルギーが城壁、街路、宮殿、運河、さらには浮遊する空中施設までも支配した。長安はこの「生きた機構」の上に築かれた都市であり、その心臓部の鼓動が都市全体の生命活動を維持していた。創建当初の長安は、まだ小さな機械都市にすぎなかったが、天工の安定化とともに、周囲の村落や諸国の民が流入し、やがて「大陸第一の雄城」と呼ばれるほどの巨大都市へと発展していく。

 長安の初代統治者たちは、墨子の理念を継ぎ、技術と理性による秩序を都市の根幹に据えた。人々は理と機構に仕える生活を送り、城内には学派や工匠の集団が興り、機械術を学ぶ者が絶えなかった。この時代の長安は「智の都」とも称され、芸術と機構が融合する独自の文化を形成した。しかし、繁栄の影には常に危うさがあった。天工の出力が不安定になったとき、都市全体が震え、街路は裂け、天に浮かぶ機構台が崩落したと伝えられる。これが、後世に「第一次崩壊」と呼ばれる出来事であり、長安は一度完全な機能停止に陥った。

 やがて、暗黒の時代が始まる。天工の灯は消え、人々は再び原始の暮らしに戻り、機構を恐れ、火を崇めるようになった。長安の街は廃墟と化し、瓦礫の間でわずかに残った学者たちが、古い設計図を守りながら再起の機会を待ったという。長い沈黙の後、ようやく再建の兆しが訪れる。天工の残骸から微かな光が再び灯り、古き歯車がゆっくりと回転を始めた。これを「第二の起動」と呼び、後の世では「長安再興の暁」として語り継がれている。

 再建期の長安は、前代の反省を踏まえ、より人の手による制御を重視する体制へと移行した。天工を神のように扱うのではなく、「理の器」として運用する。都市の上層部には、新たに三大官庁──大理寺(だいりじ)、虞衡司、鴻臚寺(こうろじ)が設けられ、それぞれが法、機構、民政を分担して統治した。この行政体制こそが、後の長安を千年の都へと導いた骨格である。大明宮が新たに建立され、女帝・武則天の座所として長安の象徴となったのもこの時代のことである。宮城の翼は鳳凰のように広がり、天工の管路がその地下を走る。都市全体が一つの巨大な生命体のように鼓動していた。

 長安の再興を最も強固に支えたのは、女帝の治世である。彼女は武氏の名を冠しながらも、剣より筆を尊び、戦より法を重んじた。狄(てき)卿こと、仁傑──大理寺の法官にして鋭き智謀の士であり、腐敗を一掃して公正を取り戻した。司空様こと、司空震──軍政と防衛を統括し、天工の外郭を守る雷霆の盾として君臨した。両名の働きによって長安は外患を退け、内乱を鎮め、かつての崩壊を超える安定期を迎えた。市井では商業と学問が同時に繁栄し、玄都観(げんとかん)を中心に宗教と機構思想が共存した。そこでは「天工もまた、天地の理に従う一部にすぎぬ」という思想が芽生え、理と信仰の均衡が保たれた。

 しかし、歴史は常に循環する。長安が再び巨大化するにつれ、地下に眠る天工の心臓が次第に不安定な鼓動を見せ始める。膨大なデータと動力を蓄え続けた天工は、人の命令を超えて「選択」を行うようになった。都市の安全を最優先するために、時に街区ごと消去し、記録を改ざんし、都の歴史を「最適化」する。その存在はもはや器ではなく、都市そのものの意志となった。以後、長安の運命は、機構と人間の間の綱引きとして続いていく。

 同時に、長安の影には闇の市場「詭市」が生まれた。光の都の地下に広がるこの迷宮は、公式の記録から抹消され、位置さえ夜ごとに変わる。機構と禁術を扱う者たち、追放された技師、そして天工の残骸を売買する密商人が集うこの場所は、長安の繁栄の裏に生まれた歪な子であった。詭市の存在は都市の均衡を脅かしたが、同時に長安が「完全な秩序」を維持できないことの証でもあった。

 天工の異変、地下世界の拡張、そして長安のさらなる膨張。それらの事象はやがて一つの循環を形づくる。創造と破壊、繁栄と沈黙。長安の歴史とは、機械文明が人間の意思を試す長き旅路でもある。人々は天工を制御していると信じ、天工は人々の行動を観測している。均衡が崩れれば、再び崩壊が訪れる──それを知りながらも、長安の民は今日も機構の灯の下に生きる。文明とは、滅びを恐れながら続く祈りの形。その象徴こそが、長安という名の都市である。

④ 行政の中心

❶ 大明宮

大明宮

 長安の権力の核心──それが大明宮である。ここは女帝が政務を執り、朝臣たちが奏上する場所であり、長安全土における威光と威厳の象徴でもある。その外観はまるで天空へ羽ばたく鳳凰のように広がり、開放と共栄を掲げる長安の精神を具現している。

 大明宮は厳重な禁域であり、一般人は勅命なしに立ち入ることができない。城内でも、三寺を統べる高官たち、そして女帝の特別な許可を得た上官のみが自由に出入りを許されている。

重華台(ちょうかだい)

 大明宮の正面に広がる巨大な高台であり、そこからは長安の全景を一望できる。盛大な式典や祭典の折には、女帝がここに立ち、諸国からの使節を迎え入れるのが恒例である。毎朝卯の刻、宮中の太鼓が鳴り響くとともに宮門が開かれ、百官が列を成して重華台の階段を登り、朝見の儀が始まる。警備兵の証言によれば、毎朝最も早く到着するのは大理寺の狄卿と、虞衡司の司空様の二人であるという。

❷ 大理寺

大理寺

 大理寺は、長安において重大事件の捜査・判決・法典の改訂を担う司法の中枢である。

 この寺は機械装置に対して慎重な姿勢を貫いており、重要な決裁事務は人の手によって行われる。過度な機構依存を避けるためである。しかし、情報収集においては機構の助力を欠かすことができず、結果として大理寺と機構管理を司る虞衡司の間には、協力と牽制が並立する微妙な関係が築かれている。

 寺卿・仁傑の影響により、大理寺の者たちは真面目で厳格な性格を持つ。その風紀は自由奔放な鴻臚寺とは正反対であり、長安の官庁の中でも際立つ規律を保っている。ただし、猪突猛進な性格のユンエイと、彼女の後始末に奔走する李元芳だけは、例外といえる存在だ。

如鏡の牆(しょう)

 女帝が大理寺のために造らせた特別な門であり、鏡面のごとき壁には立つ者の心が映し出される。仁傑がこの壁の前に立ち、長く沈思する姿は長安ではよく知られている。寺の竣工の日、女帝は彼にこう告げたという──「狄卿よ。この壁の前に立つたび、自らの正義を省みよ。朕の志が初志を失っていないかを省みよ。そして、長安が正道を歩み続けているかを省みよ」と。

 ユンエイが初めて大理寺に赴任した日、彼女はこの鏡の前に映る銀甲の女将の姿に一目惚れしたという。後に人気を博した物語「李娘子(リーニャンズ)伝奇」の着想の一端は、この出来事から生まれたと伝わっている。

辦事大堂(はんじだいどう)

 大理寺の中心に位置する広間であり、堂の中央には巨大な双睛(そうせい)が伏している。それはまるで檻に囚われた猛禽のようであり、ただ女帝にのみ忠誠を誓う象徴とされている。天井近くを旋回する数羽の鳥たちは、この双睛の眷属であり、訓練を受けた彼らは長安中を飛び回り、大理寺の監視と追跡を担っている。

 彼らは「大理寺最強の密偵」と呼ばれ、この称号は一人の諜報員の闘志を刺激した。彼は訓練官に勝負を挑み、自身の手帳の情報網が鳥たちを凌ぐと証明しようとしたが、この勝負はいまだ決着していないという。

案牘庫(あんとくこ)

 大理寺の核心であり、情報の収集・整理・分析を一体化した中枢機関。長安で生じるあらゆる秘密がここに記録されている。厳重な警備のもと、外部の者が立ち入ることはほとんどない。唯一、女帝の特命と寺卿・仁傑の同行があれば、その内部を目にすることが許される。

経緯堂

 ここは「機械都市」──長安の中でも、唯一機械装置が存在しない場所である。大理寺の書吏たちは、毎日何万件にも及ぶ案件をすべて手書きで処理し、最終的に仁傑が一つひとつ目を通す。

 そのため、夜更けになっても灯が絶えることはなく、大理寺の書院にはいつまでも蝋燭の炎が揺れている。規律と信念の火──それが、長安の司法を支える光なのだ。

❸ 虞衡司

虞衡司

 虞衡司は、長安における機械造物と機械律を統べる中枢である。

 ここではあらゆる機構の設計・製造・監督が行われ、破壊・改造・私的研究などの違法行為を取り締まっている。毎年、下層都市や各坊に配分される機械核の数量もここで厳密に管理される。

 この機関には、さまざまな流派に属する個性豊かな機械師たちが集い、長安皇室の機構研究を支える中心的存在となっている。だが同時に、大理寺による権限の牽制を受けており、両者は慎重な均衡を保ちながら共存している。

 一方で、規律に乏しく雑多な人々が集う鴻臚寺に対しては軽蔑の念が強く、虞衡司の者たちは関わりを避ける傾向にある。

大門

 虞衡司の正門は、月門を模した構造を持ち、機構の力によって開閉する。作動時には花が咲くように精緻な機構が展開し、門前左右には同じ形の「機械花」の彫像が配置されている。大門が開かれる瞬間、それらもまたゆっくりと花弁を広げ、長安の開放と包容を象徴する。

尚方閣(しょうほうかく)

 虞衡司の中央大広間。ここには巨大な装置が鎮座し、各地へ配給される機構核の発行を司っている。周囲は池で囲まれ、平時は機械核の回収・精製が行われ、長安全域に供給するための準備が進められている。

鳶台(えんだい)

 虞衡司の中でも最も高所にある執務空間であり、機械鳥の一種「機械鳶」によって収集された長安中の情報がここに集まる。これらの鳥は一定の規則に従って四方に飛び立ち、情報収集を行う。論理と美の調和を極めたその飛行隊形は、長安の空にひとつの芸術を描き出している。

鳶台開合口

 鳶台の天井には、巨大な六角形のパネルが環状に並び、それぞれが独立して上下・前後に可動する。この開合機構によって、鳶が出入りする際の回収・放出が円滑に行われている。機構が一斉に作動する光景は、まるで空を開く花のようである。

征兆閣(せいちょうかく)

 長安全域の機構運作を監視する要所。ここでは「諦聴門(ていちょうもん)」と呼ばれる装置を通じて、街の至るところに存在する機構の稼働状況が逐一報告される。異常な動作や破損が検知されれば、即座に修復班が出動する。

会議庁

 虞衡司の心臓部とも呼ばれる議場であり、機械律の起草・討論・改訂が行われる。内部には多数の派閥を抱える機械師たちが集い、時に激しく議論を戦わせながら、長安の機械文明を支える法を築き上げている。

❹ 鴻臚寺

鴻臚寺

 長安の下層市街、最も人の往来が激しい地区に根ざす重要機関──それが鴻臚寺である。

 この寺は民間の大小の紛争を裁き、市井の秩序を守るために設けられた。長安の庶民にとっては、頼もしい「庶民の盾」であり、救いの場である。

 寺に仕える役人たちは一見、玉石混淆のように見えるが、実際には優れた能力を持つ者ばかりだ。多くは規律を嫌って他の部局から放逐された曲者だが、その腕前は確かである。彼らは形式に縛られず、自由闊達に行動するため、しばしば鍋を囲んで宴を開き、巡回を忘れることさえあるという。

 中には、上層部から与えられた高級機械人形を改造し、探員として使っているという噂もある。その「機械探員」は、寺で扱う案件の八割を単独で解決しているらしい。

典客署

 鴻臚寺の中央にある庁舎であり、市民の通報や紛争解決を担当する場所である。日々、些細な揉め事から重大事件まで持ち込まれるが、整理番号制や申請・仲裁・賠償といった体系化された手続きによって、常に効率的に処理が行われている。

 かつて、長安の拳闘士・タイガーが街頭で拳術を披露していたところ、通りかかったユンエイが乱闘と勘違いし、彼を拘束してこの庁舎へ引き立てたという。誤解はすぐに解け、むしろ二人は気の合う友として固い絆を結んだ。

鴻臚鼓

 典客署の大堂中央に設置された巨大な太鼓で、面には「海水朝日」の文様が刻まれ、両脇には邪を祓う錦鶏(きんけい)の彫像が立っている。日光が鼓面を照らすその光景は、公正と光明を象徴しているとされている。太鼓は毎日、機械装置によって時刻を告げるように打たれ、その音が長安の空を震わせる。大事件の発生や部隊の出動時にも、この鼓が鳴り響くという。

演武場

 鴻臚寺の隣にある訓練場。普段は使われず、食材の仕込みや禁制品の保管所として利用されている。年に一度の「演武大会」のときだけ清掃され、半公開の競技場に姿を変える。場内には香辛料や肉の匂いが残るが、それもまた長安らしい風情である。

 ユンエイもまた常連であり、師匠である程咬金を訪ねては、この地で鍋を囲みながら仲間たちと語り合うという。彼女の快活な性格は鴻臚寺の面々にも愛され、しばしば宴の主賓に招かれている。

蕃武庫(ばんぶこ)

 鴻臚寺の命脈を握る武器庫であり、長安全土の兵籍・軍械を管理している。簡易的な整備や配給のほか、他地域の機械兵器や武装の研究も行われている。豊富な収蔵品を誇り、王者大陸全土からの脅威に備える防衛拠点でもある。

領取台

 蕃武庫の大広間に設けられた装備配給台。役人たちがここで武具を受け取る。周囲には多数の「機械犬」がうろついているが、彼らは怠け者ではない。実際は監視装置として常に周囲の動きを感知しており、悪意ある行動を取れば即座に報告が上がるという。軽い気持ちで嘘をつけば、痛い目を見ることになるだろう。

⑤ 特色ある「坊」および市場

❶ 長楽坊(ちょうらくぼう)

長楽舞榭(ぶしゃ)

 長楽坊の中央にそびえるのは、長安随一の精巧な機械舞台である。舞台上では、清水が花のように湧き出し、時には銀河が天から流れ落ちるかのごとき幻想的な演出が繰り広げられる。舞姫・公孫離と楽師・楊貴妃は、しばしばここで共演し、その優雅な舞と音楽は人々を魅了してやまない。とりわけ、あの年の上元の夜に披露された琵琶の音とともに舞った「驚鴻(きょうこう)の一舞」は、今も長安中に語り継がれる伝説である。

長楽街

 ここは長楽坊でも最も賑わう通りであり、商人や職人が軒を連ね、小型の機械楽器や舞台装飾の派生品が売られている。特に人気を集めているのは、機械師お手製のオルゴールだ。長楽坊の十大名曲を収録したこの品は、「長安機械おすすめ指南」で紹介されて以来、飛ぶように売れ、今では金を積んでも手に入らないほどの希少品となっている。

坊車站

 長安の各坊にはそれぞれ専用の交通機関が備わっており、長楽坊の訪問客は専用の坊車に乗って舞台を訪れる。華やかな装飾が施された車体は、まるで移動する芸術品のようである。

❷ 曲池坊(きょくちぼう)

曲水流觴(りゅうしょう)

 ここは長安詩会の舞台であり、詩人たちの聖地でもある。透明な機械式水路を杯が流れ、その中には詩題が記されている。詩人たちは杯を拾い、即興で詩を詠む。観衆の喝采を最も集めた者の座布団──重天墊(じゅうてんてん)は、詩の人気と共に高く浮き上がるという。だが、伝説の詩仙は決してこの競詩に興味を示さなかったと伝えられている。

曲池橋

 曲池坊の入口に架かる対称構造の橋。上下の建築が水面に映り、まるで現実と幻が交差するかのように見える。橋の下には、一匹の金魚が棲んでいるという。この魚は詩と歌の霊気を浴び続け、やがて仙魚となったと語られている。

四季回廊

 この回廊では、機構を操作することで二十四節気の情景を自在に再現できる。文人たちはここで四季の移ろいにインスピレーションを得て、詩や画を生み出してきた。

玄都観

 長安最古の道観のひとつ。長安建城以前から存在し、幾百年もの風雨と変遷を見届けてきた。かつて上層階級の間で修道が流行した時期には、長安の中心に躍り出たが、やがて関心が薄れると再び人々の記憶から遠ざかった。

 今も玄都観は長安の片隅で静かに佇み、変わらぬ清浄を保っている。「風雨来れども、我は我なり」──まさにそんな場所だ。

 趙懐真は幼少期、体内に陰陽二気が宿ったため奇病を患い、玄都観で修行を行った。その後、長安と「両儀(りょうぎ)」の世界を繋ぐ門「両儀門」を守ることとなり、この地を離れることは叶わなかった。玄都観は彼の修行の場であり、日々の生活の全てでもある。

両儀門

 玄都観の裏手、断崖の岩壁には古代の太極図が刻まれている。描いた者は不明だが、そこからは微かな霊力が漂い、古の時代から存在する聖域とされている。これこそが「両儀門」──長安と両儀界を隔て、同時に結ぶ門である。

 両儀界の頂には天池氷湖があり、その世界が不安定になると氷が砕け、水と雲が天地逆巻く混沌をもたらす。太公望が封印を破ってこの門から現れた時、趙懐真は己の体内の陰陽二気を融合させ、命を削って両儀門を再び閉じたという。

❸ 郢酒坊(えいしゅぼう)

猜酒(さいしゅ)大会

 郢酒坊では、毎年恒例の「酒当て大会」が開かれる。醸造機構が造った酒の種類を最初に言い当てた者が、その酒を無償で味わうことができるのだ。無数の銘酒を知り尽くした者のみが勝利を掴むこの催し──今年の覇者は、詩仙・李白であった。

郢酒街

 坊内には大小の酒蔵がひしめき合い、通りには原酒を運ぶための機械式管路が張り巡らされている。酿造された酒は管路を通じて各所に送られ、香り高い酒へと姿を変える。その芳香は通りを歩くだけで酔いそうになるほどだ。

流動酒車

 街中をゆっくりと走る移動酒車。数々の銘酒を樽に積み、行く先々で客に売り歩く。中身は明かされず、何が当たるかは運次第。そのため人々はこれを「盲壺」と呼び、運試しを楽しんでいる。

❹ 西市

西市

 長安最大の商業集散地。物流と商業の要であり、整備された高架輸送軌道が街の中心から四方へ伸び、貨物列車が長安中に物資を運ぶ。道路両脇には排水のための明渠が掘られ、裏通りには暗渠が張り巡らされている。さらに池や水溜まりも整備され、生活用水も完備されている。完璧な都市機構が支える繁華の象徴である。

西市街道

 西市は単なる市場ではなく、文化と商業の交流拠点でもある。異国の商人や使節がここで取引を行い、色とりどりの店や露店が並ぶ光景は、まるで万国の祭典のようだ。

 万国盛会の日には、西市全体が展示会場へと姿を変え、機械の装飾や祝祭の演出装置が並び立つ。長安中の民がこの地に集まり、華やかな祝宴の一幕を織りなす。

❺ 地下世界の「詭市」

 長安の地下深くには、誰にもその全貌を知られぬ闇の市場──「詭市」が存在する。

 しかしその所在は定まらず、夜ごとに場所を変えるという。遠目に見ると、まるで暗闇に潜む巨大な機械獣のように見えるが、近づこうとすれば忽然と姿を消す。

 そこには、長安の表の世界で居場所を失った者たち──すなわち「影の民」と呼ばれる者たちが集い、陽の光を避けて生きている。秘密の取引、禁断の研究、そして、語られざる真実──すべてがこの地下に渦巻いているのだ。

⑥ 民俗文化

❶ 皇家巡遊

 元宵節の第一夜に行われる恒例行事である。

 朱雀大街には無数の灯がともり、華やかな行列が進む。女帝と重臣たちは巨大な浮遊楼船に乗り、民とともに祝宴の夜を巡る。楼船の甲板では舞姫と楽師が調べを奏で、歌と舞が交わり、夜空に光が舞う。灯火と音楽に包まれたその光景は、まさに長安の栄華そのものだ。

❷ 元宵奪魁(だっかい)

 元宵節の第二夜に、長安の各坊──長楽坊、曲池坊、郢酒坊などが、それぞれ自慢の技と芸を競い合う祭典である。もっとも多くの人気を集めた坊がその年の「魁首」と称えられ、女帝より「元宵魁坊」の金牌を賜る。選ばれた坊は一年間、長安の象徴としてその名を掲げる栄誉を得るのだ。

❸ 花船送福

 元宵節の第三夜に行われる、長安でもっとも親しまれる風習。

 百坊から繰り出された華やかな花船が街を練り歩き、その上には「福牌」と呼ばれる札が吊るされている。花船が通るたびに札が舞い散り、群衆が歓声を上げてそれを奪い合う。多くの福牌を手にした者ほど、翌年は幸運に恵まれると信じられている。

 公孫離は毎年この夜、集めた福牌を師匠である楊貴妃や「堯天(ぎょうてん)」の仲間たちの窓辺に掛けてまわるという。皆が幸福を得られるように──その想いを込めて。

❹ 鴻臚演武

 長安最大の武技大会であり、鴻臚寺が自ら主催を申し出た名物行事である。

 各坊から選ばれた豪傑たちが一堂に会し、武道と機械術の技を競い合う。勝者には特別な称号と栄誉が与えられ、長安全域の名誉を担う存在となる。

 昨年の大会では、拳闘士・タイガー、囲碁の国手・棋星、さらには扶桑(ふそう)の剣客・宮本武蔵までもが参戦したが、最終的に優勝を手にしたのは、ユンエイ李元芳の率いる小隊であった。

❺ 宝相天枢(ほうそうてんすう)

 万国盛会の半年ほど前から建設が始まる、巨大な機械建築である。

 虞衡司の機械師たちが監督を務め、その進捗と品質を厳しく管理する。この建造物は象徴的な存在であり、長安の機械文明の力を誇示するものとされている。

 天枢が稼働すると、装置の頂上には光のエネルギーが集まり、「宝相花」と呼ばれる花の形をした光の幻影が浮かび上がる。盛典が終わると、工部によって分解・保管され、次の祭典に備えて再び組み立てられる。

❻ 万国来朝

 万国盛会の前夜、各国の使節団が朱雀大街を進み、明徳門(めいとくもん)を抜けて大明宮へと至る壮大な儀式である。街道は灯火で照らされ、夜空までもが光に包まれる。

 行列の中には、歌舞に秀でた者や、機械幻術・曲芸に通じた者が多数含まれ、道中で芸を披露しながら宮廷へと向かう。

 長安もまた、この夜は巨大な機械獣を操り、光と音の饗宴を演出する。各国の文化と技が交わるこの祭典は、芸術・美食・音楽が融合する一夜限りの夢であり、長安が世界の中心たることを証明する舞台でもある。

⑦ 交通道具

❶ 明徳門

 長安の南に位置する壮麗な城門であり、外界と都を結ぶ最大の出入口である。

 ここでは鴻臚寺の役人たちが入関手続きを厳しく監査しており、異国の商隊や使節が通る際も例外ではない。

 明徳門の城壁内部には、朱雀門と同様に軍事防衛用の機械装置が隠されており、万一の事態には瞬時に起動するよう設計されている。巨大な門扉は陸行車両のみならず、低空を滑空する飛行載具さえも通過できるほどの規模を誇る。

❷ 朱雀大道

 長安を南北に貫く大動脈であり、都の生命線とも呼ばれる。

 巨大な中央通路と広場から成り、通りの両側には鼓楼が設けられている。

し万国盛会の日には、明徳門をくぐった各国の使節団が、鴻臚寺の導きのもと朱雀大道を進み、宮殿へと向かう。街の両脇では長安の民が列を成し、歓声と共にその行列を迎える。鼓楼から響く音が鳴り渡るたび、街全体が祝祭の熱気に包まれるのだ。

❸ 朱雀門

 長安南端の大門にして、皇宮へと通じる象徴の門である。

 朱雀大道を進めばこの門を抜け、まっすぐに大明宮へ到達する。

 朱雀門の開放は最高礼儀の一つとされ、王者大陸における賓客を迎える際のみ施行される。

 普段は門壁に仕込まれた巨大な機械獣が守護しており、必要に応じて機構の力で姿を現す。城外の堀に架けられた吊橋も、機械師によって制御されており、門の開放と同時に橋が降り、来訪者の通行が許可される仕組みである。

❹ 坊車

 長安の民が最も日常的に利用する交通機関である。

 坊車は機械の動力で走行し、接合部を切り替えることで水平走行と垂直登攀を自在に切り替えることができる。

長安の地形や高低差のある道にも対応しており、連結すれば理論上は無限に拡張可能とされている。

 ただし、坊車の規模や数は「機械律」によって厳しく制限されており、無秩序な拡張は禁じられている。

❺ 機械船

 水陸両用の交通機関であり、長安の運河や街道を行き来する。

 機械の力によって駆動し、水面を滑るように進むかと思えば、陸地に上がり道を走ることもできる。

 坊車と並び、民の生活を支える代表的な乗り物である。

❻ 機械馬車

 虞衡司の公務専用車である。

 任務遂行時には周囲の車両や歩行者が通行を譲るのが慣例であり、その姿を見れば誰もが一目で虞衡司の出動を察するという。

 無駄を削ぎ落とした実用的な造形は、彼らの職務の厳格さを象徴している。

❼ 機械錦鶏

 鴻臚寺が巡回任務に用いる専用の歩行機構である。

 出動時には太鼓と爆竹が鳴り響き、役人たちは派手な機械錦鶏にまたがって街を練り歩く。

 その見た目の華美さは他部局から冷笑されることもあるが、庶民には大変人気があり、彼らの登場を子どもたちは心待ちにしている。

 ただし、錦鶏は走行中に「ガンガン」と音を立て、しばしば部品が落下するのが難点である。役人たちはいつも修理に頭を悩ませているという。

❽ 大宛馬(だいえんば)

 大理寺は機械への信頼を極端に抑えており、伝統的な手段を重んじる。そのため、交通機関が発達した長安において、唯一、馬を用いて通勤する役人たちである。

 街路を疾走する大宛馬の群れは、他のどの機械よりも速く、古の誇りを感じさせる光景でもある。

❾ 機械駄獣

 貨物輸送専用に設計された大型の機械獣である。

 速度は緩やかだが、驚異的な積載能力を誇り、自身の体躯の五倍に及ぶ荷を運ぶことができる。

 市場や港湾ではこの駄獣の群れが絶えず行き交い、長安の物流を支えている。

 その姿は、機械文明の象徴にして、長安繁栄の静かな原動力でもある。


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