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【HoK Wiki】世界観解説ガイド:海都

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【掲載日:2026年1月22日(木)】
「Honor of Kings@人物百科事典」のYouTubeチャンネルを開設いたしました。
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Honor of Kingsに登場する舞台「海都(かいと)」についての解説ガイドを載せています。

目次 (世界観解説ガイド:海都)

① 海都(かいと)の概要

 海都は、王者大陸に存在するの海港都市国家であり、落陽(らくよう)海区域に位置する。都市は外城区・中城区・内城区の三層構造で構成されている。

 古代において、神々へ忠誠を誓っていたアルカナ一族は、「奇跡」の修復が最終段階に達したその時、神々に反旗を翻した。彼らは旧神の支配を終わらせたが、その代償として神より深き呪いを受けることとなった。反逆した十一のアルカナ一族は、奇跡のエネルギーと「アコミア秘術工学」をもとに強力な海軍を築き上げ、商業・冒険業・製造業を中心に据えた落陽海随一の繁栄を誇る港湾都市を創り上げたのである。

 大海は豊かな恵みと同時に、果てなき不確実性をもたらした。そうした環境の中で、海都の人々はおおらかで楽観的、かつ冒険心に満ちた性格を育んだ。「出るからには大漁を狙え、さもなくば泡となって散れ」──この言葉こそ、彼らが愛してやまないロマンの象徴である。

 しかし、神の力を奪ったアルカナ一族はその報いとして呪われ、都市全体に星源エネルギーによる「汚染」と生態系の異変が生じた。海都を支配する執政一族たちは、この呪いを解く鍵を求めて東方への新航路の開拓に乗り出す一方で、汚染による環境危機や内部の権力闘争といった難題にも直面していた。

 海都人は冒険を愛し、未知を恐れず、困難をもロマンに変える気質を持つ。限られた地理条件のもと、彼らの視線はつねに遥かな外海──すなわち「東方」へと向けられてきた。だが、アルカナ一族にとって東方とは単なる交易や繁栄の象徴ではなく、千年にわたり一族にまとわりつく呪いと密接に結びつく、宿命の地でもある。

② 城区風光

❶ 外城区

外城区

 外城区は海都の中でも最も自由な地域である。ここには多くの下層労働者、漁民、農民が集まり、雑多な生活が営まれている。通りを歩けば、没落した貴族や流浪の水夫、さらには一隻の船すら持たぬ航海士の姿も見られる。

 人口が入り混じる外城区は、まるで辛口と甘口が絶妙に交じり合ったカクテルのように、混沌の中から数多の海上伝説を生み出してきた。人々は「いまこの瞬間」を楽しむことを重んじ、建物の装飾には精製されていない海の産物を大胆に用い、街角の壁には色鮮やかな落書きを残して個性と遊び心を表現する。

 海都にはこんなことわざがある──「外城区で光るものがガラスか真珠か、それを見分けられる者はいない」。この言葉は、無秩序の中に潜む自由と浪漫を象徴している。

航海広場

 航海広場は、外城区と中城区を隔てる高低差が最も少ない場所に位置している。両区をつなぐ水域には、自然の力のみで稼働する小型の昇船機が設置されており、ここを通じて人も船も往来する。

 この広場は外城区と中城区を結ぶ要衝であり、海都を象徴する地でもある。冒険家や商人が集い、己の力を見込んでくれる投資者や、幸運を掴んだ仲間との出会いを求めて活気が絶えない。海都人の精神的中心──それが航海広場である。

香草埠頭

 香草埠頭は海都、ひいては落陽海全体で最も大規模な港である。年間を通じて船が絶えず往来し、潮風に混じって人々の声が響く。あらゆる地方から集まる交易品の香料が常に漂っているため、この名が付けられた。海の匂いと香辛料の芳香が混ざり合い、異国情緒を漂わせる港である。

第九の奇観

 香草埠頭の一角にあるこの酒場は、海都で最も有名かつ賑やかな店である。店主は「自分の酒場こそ海都最後の奇観だ」と豪語し、その名を「第九の奇観」とした。

 店内の壁には大小無数の戦利品が飾られ、それらは船長である店主の冒険譚そのものを物語っている。夜が訪れると、酒場は人々で溢れかえり、客たちは店主特製の「星辰酒(せいしんしゅ)」を片手に語らい、情報を交換する。旅する語り手・もここで多くの物語を聞き集めたといわれる。

 名物料理は「落陽海・スペシャルプレート」。運が良ければ、海の怪物の髭が皿の中に混じっていることもあるという。

第九の奇観:内部

 第九の奇観の内装は、海都の他の酒場と同じく、船舶を模した意匠で統一されている。玄関には引退船の舵輪が吊るされ、白樫の酒樽がカウンターを囲む。中央の大テーブルには、かつての帆船の帆布が広げられている。

 ただし、この酒場の最大の特徴は、バーカウンターの奥で働く「巨大な八本腕のタコ」である。彼は注文を取り、カクテルを作り、会計をこなし、ときには新たに訪れた美しい女性客に薔薇の花を差し出す──それが第九の奇観の粋なもてなしなのだ。

第九の奇観:店主と従業員

 第九の奇観の従業員は統一された制服を身に着けている。男性はシャツにベストと吊りズボン、女性は体のラインを強調したコルセット付きの長裙に、作業のしやすい束袖という装いである。

 しかし、海都人らしく、全員がそれぞれの個性を飾り立てている。美しい貝殻のネックレスや模様入りの海蛇のベルトなど、海の産物を使った装飾は欠かせない。聞くところによると、店主の肩には小さな両生類のペットがいつも寄り添っているという。

 こうした装飾品は海都の象徴であり、同時に個々の美意識と誇りの表現でもある。

猟風湾(りょうふうわん)

 外城区の最も外れに位置する入り江で、かつては海賊たちの根城として荒廃していた。朽ちた船屋には今も過去の戦いの痕跡が残っている。

 アレッシオが「ファイアホーク船長」を名乗り始めたとき、彼はその正体を隠すため、この地に身を置いたと伝えられる。時を経て、猟風湾は再び活気を取り戻し、海風が最も強く吹き荒れる日でさえ、人々は誇らしげにこう言う──「外城区の勇気は、いかなる嵐をも征服する」と。

❷ 中城区

中城区

 中城区は海都でもっとも賑わう中心区域である。商人協会、冒険者協会、工匠協会の三大組織が本部を構え、富裕商人、冒険家、発明家がひしめき合い、商業の熱気が街全体を満たしている。街路は整然としており、道幅は広く、両脇には様々な植物と花が植えられ、春には芳しい香りが漂う。住民たちは生活の質にこだわり、冒険で得た戦利品を精巧な工芸品に仕立て、粗粒結晶で室内を飾り、貴重な海産物を磨いて身につけるなど、華やかさと洗練を両立させている。

 この街では常に上品な笑い声と商談の声が飛び交い、社交界の名士たちは次なる大商談を求めて集う。名高い航海広場も、この中城区の中心に位置し、海都経済の鼓動を象徴する地として知られている。

第五通り

 第五通りは、冒険者協会・商人協会・工匠協会の本部が集まる大通りであり、海都随一の繁栄を誇る場所である。通りには多種多様な商店が軒を連ね、日夜活気が絶えない。かつてタイガーが船を乗り間違えて海都に流れ着いた際、この通りでマルコ・ポーロと出会い、彼の導きで冒険者協会へ向かい、長安へ戻るための船賃を集めたという逸話が語り継がれている。

 第五通りは商談と偶然の出会いが交差する場所であり、多くの海都人にとって新たな運命が始まる通りでもある。

アイリス通り

 海都を横断するこの大通りは、両側に無数のアイリスが咲き誇り、訪れる者を優雅に迎える。かつてミレディがこの道を通り、執政官の杖を受け継いで以降、人々はこの道を「執政官通り」と呼ぶようになった。通りの中央には美しい噴水があり、旅する語り手・がここで気品ある貴族令嬢に、雲中(うんちゅう)砂漠に埋もれた砂塵の伝承を語り聞かせたという伝説が残っている。

 春になると花々が舞い、夜には灯火が揺れるこの道は、海都におけるロマンと栄華の象徴である。

雲海広場

 雲海広場は、かつて東方から来た商人──すなわち、雲中や長安の交易者たちが集う市場であった。やがて多くの東方の旅人がこの地に定住し、現在では海都でもっとも東洋的な風情をもつ地区として知られるようになった。ここでは海都・雲中・長安の三つの文化が融合し、東洋風建築と西洋風建築が入り混じる独特の街並みを形成している。行き交う人々の言葉には様々な訛りが混じり合い、まるで世界の縮図をそのまま閉じ込めたかのようである。

 海都の住民にとって、ここは都市を離れることなく世界の奇跡を垣間見られる特別な場所である。姫小満秘伝の干し魚の調味料もこの広場で手に入るとされ、また東方商会の拠点「雲海楼」もここにそびえ立ち、異国の香りと交易のざわめきに満ちている。

❸ 内城区

フレン歌劇院

 フレン歌劇院は海都最高峰の芸術が集う場所であり、ここに立つことが許される者は皆、一流の芸術家である。外観は宝石のように輝き、内部のホールは流れる海水の光を思わせる幻想的な照明に包まれている。

 この歌劇院は「フェイト一族」の所有する文化施設であり、一族の若き当主は、ここで上演される名作オペラ「蒼の泡沫」を特に愛していたという。煌びやかな舞台の裏には、海都上流社会の社交と政治の駆け引きも静かに息づいている。

アイリス滝レストラン

 内城区に位置する高級レストランであり、俗に「海都執政官の動向を映す晴雨計」と呼ばれる──かつて、ある執政官が毎日この店でさまざまな客人と会見を行っていたためである。その行動を観察すれば、海都の政治情勢の変化すら読み取れるといわれた。

 後の執政官たちはそこまで頻繁に訪れることはなくなったが、この店に通えば時代の空気を感じ取れる──そんな伝統は今もなお生きている。

アイリスホール

 アイリス滝レストランの内部にある大広間で、全体が明るく清らかな光に満ちている。巨大な窓ガラスの外には滝と海が広がり、座席は景観に合わせて配置されている。特に滝を正面に見据え、海都全景を一望できるテラス席は、最高の眺望を誇る。

 夜になり星が現れると、ホールのガラスドームを通して降り注ぐ光が、まるで深海に群れるクラゲのようにゆらめき、幻想的な光景を生み出す。この時間に合わせて「星光舞踏会」が開催されることもあり、青髪の常連客がこの瞬間を誰よりも心待ちにしているという。

 もっとも、ここでの食事は非常に高価であり、予約できるのはアルカナ貴族階級の者に限られている。

奇跡の噴水

 内城区の随所に点在する大小の噴水群は、海都の水網システムを支える中枢機構である。噴水から湧き出す淡水には栄養分が含まれ、尽きることなく湧き続け、やがて大きな水流となって海底へと注ぎ込む。

 この循環は海都の生命線であり、永劫の動きを続ける泉は「永生の奇跡」として崇められている。

 ある者はそれを「神の祝福」と呼び、ある者は「科学の勝利」と呼ぶ。いずれにせよ、この地こそが海洋文明の心臓部であり、海都という都市が海と共に生きることの象徴である。

③ 海洋文化

❶ エネルギー技術

星源

 星源とは、高純度のエネルギー資源であり、深い藍を帯びた粘稠な液体状をしている。その表面は星々のようにきらめき、内部では光の粒子が絶えず変化と流動を繰り返す。そのため「星辰の源」の意を込めて星源と呼ばれる。

 星源は水よりも比重が大きく、地表ではなく惑星の地底深くにのみ存在する。地殻のほとんどが堅牢な保護層で覆われているため、直接抽出できる場所は限られており、わずかな地底管路を通じてのみ汲み上げが可能である。星源は海都の発展と呪いの双方を生み出した根源であり、人々の文明と破滅の象徴である。

アコミア秘術工学

 アルカナ一族によって独占的に管理される技術体系であり、奇跡のエネルギーを動力源とし、特殊な魔法符号による構築式を形成することで莫大な力を生み出す秘術である。

 アルカナ一族は奇跡の修復の過程でこの技術を手に入れ、各家独自の武道や魔道の能力と融合させることで、それぞれ異なる形態の秘術体系を発展させた。これが「一家伝承のアコミア秘術」と呼ばれるものである。

 アコミア秘術は極秘扱いとされ、その構築式は外部に知られることはない。秘術を組み込んだ武器は使用者専用の特性を持ち、他者には起動不可能である。ミレディの操る機械のしもべや、マルコ・ポーロの愛用する二挺拳銃も、いずれもこの秘術技術の成果である。

星源汚染

 海底において星源が漏出した場合、その液体は長い年月をかけて海底の動植物と結合し、異常な変異生物を生み出す。中城区でよく見られる「ブルーフローライト」も、星源と海底鉱物が融合して生じた結晶である。

 現在確認されている最大の漏出点は、海都の北東方向・外海のさらに彼方に位置し、航行でおよそ三週間を要する距離にある。

 数年前、伝説の船長・ファイアホークは、自らの命を代償にその漏出孔を封印したとされるが、近年になって再び異常反応が観測されており、封印の再崩壊が懸念されている。

海蛍の蒼

 いつの頃からか、海都には不思議な蒼い光が漂うようになった。初めは資源として採取されるブルーフローライトの輝きに過ぎなかったが、やがてその光は遠海の生物や海底植物にまで広がっていった。

 毎年の海誕祭(かいたんさい)の夜、海面が青白く輝き、幻想的な光景を生み出す。この現象は「海蛍の蒼」と呼ばれ、人々はそれを海の祝福と信じている。

 だが、アルカナ一族の上層部はその真実を知っているようであり、内城区ではこの蒼に関わるあらゆる物質が厳重に管理されている。表向きには沈黙を守るが、内部では「忌むべき兆し」として恐れられているという。

 ただひとり、傭兵・バイロンだけが、その美の下に隠された真実を暴いた。彼は星源汚染の証拠を提出したが、その代償として右腕を切断され、都市中の嘲笑の的となった。しかし、真実は今もなお沈黙の海の底に眠っている。

ブルーフローライト

 中城区でよく見られるエネルギー鉱石であり、簡易なアコミア秘術構築式の動力として利用できる。民間の遠洋船では補助動力源として使用されることも多く、また工業・製造・武装分野でも少量ながら重宝される。

 ブルーフローライトは金と同等の価値を持ち、採取は常に危険を伴う。結晶は粗く不純物を多く含むが、星のような光を放つ青色が特徴であり、しばしば珊瑚や海底石と融合して産出する。

 冒険者たちはその希少性に魅せられ、こぞって外海へ向かう。外城区に停泊する唯一の「ブルーフローライト駆動船」は、伝説の「ファイアホーク号」であるといわれ、その船はかつて、商人であったニッコロ・ポーロから贈られた特別な品であるという。

自然の力

 奇跡由来の強大なエネルギーはアルカナ一族が独占しているが、科学水準の低い中城区や外城区では、風力・水力・太陽光などの自然エネルギーが主要な動力源として利用されている。

 街の至るところで風車や水車が回転し、それらは都市景観の象徴にもなっている。多くの家庭では、住居そのものに小型風車や水車を組み込んで生活の利便を高めており、こうした発想の柔軟さこそが海都人の創造精神を体現している。

 自然の力は、文明が抱える呪いとは無縁の、純粋なエネルギーの象徴である。

❷ 八大奇観

第一の奇観:永生泉(えいせいせん)

 内城区の中央高地に位置する巨大な泉で、複数の泉眼が集まり、絶え間なく水を噴き上げている。噴水は幾重にも分岐して小さな滝を生み出し、その壮麗な景観は訪れる者の心を奪う。

 この泉は永遠に湧き続けることから「永生泉」と呼ばれ、海都の象徴とされている。アルカナ一族はその泉源を囲うように豪華絢爛な装飾を施し、神聖なる奇跡の地として保護してきた。

 永生泉は地形的にも高所にあり、周囲の河川と合流して海都全域に広がる水網を形成する。この水網は都市の生命線であり、海都が「海と共に呼吸する都市」と呼ばれる所以でもある。

第二の奇観:奇跡の滝

 毎年十一月から翌年三月の第一週にかけて、海平面が低下することで海都外縁に現れる巨大な滝。高さは百メートルを超え、轟音と共に海へと落下する水の奔流は圧巻である。

 この期間、通常の船は航行不能となり、アルカナ一族が南側に建設した「昇船機」を利用しなければ内外海の往来はできない。

 この滝の出現は漁民にとっては休漁期の訪れを意味し、同時に「海上市」の最盛期でもある。冒険家たちはこの時期に収穫した珍品を持ち帰り、食料や装備品を取引する。市場は活気に満ち、海都全体が一年でもっとも賑わう季節を迎える。

 やがて春が訪れ、盛大な「開海祭(かいかいさい)」を経て海面が再び上昇すると、船団は次なる冒険へと漕ぎ出していく。

第四の奇観:星辰海

 毎年十二月の最終週、海都では一年に一度の「海誕祭」が行われる。その夜、海面には青白く光る無数の生物が浮かび上がり、落陽海一帯を星々のように照らす。この光景こそが「第四の奇観:星辰海」である。

 人々はそれを神々の祝福と信じ、またある者は「海に迷った魂を神が導く灯」であると語る。夜の海に漂う無数の光点は、見る者すべてに祈りと静謐をもたらす。

 星辰海は単なる自然現象ではなく、海都人にとって信仰と芸術の源泉でもあり、海と神をつなぐ神秘の瞬間である。

第八の奇観:昇船機

 海平面の低下によって奇跡の滝が現れる期間、海都の内外を行き来する唯一の手段となるのが、この巨大な昇降装置である。アルカナ一族が奇跡の力によって創り上げたもので、巨大な歯車と魔術的な動力機構により、船をそのまま持ち上げて海抜差を越えることができる。

 通常は軍港でのみ運用され、海都海軍の専用設備として厳重に管理されている。

 昇船機の稼働は壮観で、轟音とともに海水が舞い上がり、船体が光の中をゆっくりと上昇していく。その姿は、まるで奇跡そのものが形を取って動き出したかのようであり、海都の技術と神秘の融合を象徴している。

❸ 文化習俗

船舶文化

 海都において船舶は単なる交通手段ではなく、人々の生活と誇りの象徴である。小型で細長いエトノ船、近海用の帆船、外洋冒険用の大型遠洋船、そしてアルカナ一族が統率する海軍戦艦まで、その種類は多岐にわたる。

 海都人はそれぞれの船体を個性的に改造し、船首や帆、甲板などに貝殻や彩色塗料を用いて華やかに装飾する。大船には固有の船章が掲げられることも多く、伝説の「ファイアホーク号」には巨大な海鷹の紋章が刻まれている。

 船は彼らにとって家であり、夢であり、冒険そのものなのだ。

交通と乗り物

 海都の人々は生まれながらにして冒険心を抱く。船は彼らにとって海を渡る手段であると同時に、誇りを示す相棒でもある。老朽化して航海不能となった船でも、陸上移動用に車輪を取り付けて再利用するなど、海都人の工夫と執念は尽きない。

 こうした発想の自由さが、海都の「どんなものも活かす文化」を象徴している。

水上市場

 海都全域に張り巡らされた水路は、やがて独自の「水上市場」という文化を生んだ。外城区では、住民が小型船・エトノを店舗代わりに使い、海産物や野菜、手工芸品など日用品を売り買いしている。

 低コストで移動性が高いこれらの船商売は、いつしか群集を成し、海都名物の一つとなった。波間を行き交う小舟には生活の温もりと喧騒が満ち、夕暮れには灯りが水面に反射して幻想的な景色を描き出す。

服飾文化(外城区)

 外城区では機能性を重視した衣装が主流である。若い女性の間では動きやすいズボンが流行し、素材には耐久性の高い粗布や麻、柔らかな革などが用いられる。

 装飾には海の産物が多用され、貝殻や巻貝、美しい羽根などをアクセントにした個性的なデザインが好まれる。袖口や裾を絞ったり折り返したりして作業をしやすくする工夫も施されている。

 内城区の貴族が儀礼服で格式を競い、中城区の職人たちが制服で整然さを重んじるのに対し、外城区の人々は実用性と自由を重視した「生活に根ざす服飾文化」を誇りとしている。

建築(外城区)

 外城区の建物は水流に沿って不規則に立ち並び、活気と混沌が共存する独特の街並みを形成している。石材と木材を組み合わせた二〜三階建てが主流で、上階を居住区、下階を作業場とするのが一般的である。

 建物の壁面には磨かれていない海の造物──貝殻や珊瑚、漂着物など──が埋め込まれ、長年連れ添った船をそのまま家屋に改造する者も少なくない。

 風車や水車を組み込んだ「自然動力住宅」も多く、海風と潮流を活かした生活の知恵が随所に見られる。

建築(中城区)

 中城区の建築は商人・冒険者・発明家たちの個性の集大成である。主な素材は石材とガラスで、壁面や屋根には曲線的な装飾が施され、海洋を思わせる色彩が多く使われている。

 立体的で大胆な装飾が建物の輪郭を変えることも珍しくなく、それぞれの家主の地位や美意識を如実に表している。街を歩けば、芸術と機能が共存する「生きたギャラリー」のような景観が広がる。

建築(内城区)

 内城区は海都の行政と貴族社会の中心であり、アルカナ一族の邸宅群や政府施設が整然と並ぶ。建物の規模は大きく、石造に彩色ガラスの窓を配した壮麗な造りが特徴である。

 壁面には真珠や貝、宝石などの海洋素材が部分的に嵌め込まれており、豪華でありながらも統制の取れた美を保っている。内城区の庭園には小さな湖があり、その中心に「永生泉」の湧出口が存在する。そこから流れる水は中城区へと注がれ、小さな滝となって街を潤す。

 この水の循環こそ、海都という都市が持つ「生きた呼吸」の象徴である。

食文化

 海都の食は海の恵みに依存している。発達した乾燥と塩漬けの技術により、休漁期でも食料に困ることはない。主食は落陽海平原で育つ小麦を使ったパンであり、果物や野菜は他地域から輸入されるため、鮮菜は海産物より高価である。

 調理法は大胆かつ豪快で、大皿に山盛りの料理が並ぶ。揚げ物・煮物・炙り物が主流で、粗塩と雲中から輸入される胡椒・硬椒果で味を整える。

 海都名物「落陽海・スペシャルプレート」は超大盛りの海鮮盛り合わせであり、ひとりで完食すれば無料になるという挑戦的な逸話もある。

海誕祭

 毎年十二月の最終週、海都全体が「海誕祭」の熱狂に包まれる。この時期、星辰海の奇観とともに街中が蛍青の色に染まり、家々では不滅の松明が灯される。

 人々は星辰酒を手に浜辺で踊り、貴族も平民も分け隔てなく祭りに興じる。音楽家たちは海都の歌を奏で、若者たちは夜光塗料で身体に神々の紋様を描き、神の加護と幸運を祈る。

 それは海と人がひとつになる夜であり、海都の魂がもっとも輝く瞬間である。

開海祭

 三月の第一週、海面が再び上昇し、奇跡の滝が海に沈むと、海都では「開海祭」が開催される。これは休漁期の終わりを祝い、航海の安全と豊漁を祈願する祭典である。

 人々は小舟を飾り立てて水上を行進し、海神への祈りを捧げる。帆船競技は祭りの花形であり、最初に外海へ到達し、最大の獲物を手にした者には「海上勇士」の称号が与えられる。彼らは三大商会から賞金を受け、海都の英雄として称えられる。

幸運の螺(つの)

 海都には古くから伝わる言い伝えがある──「海螺の歌が響くとき、災厄は止む」。

 かつて海都を襲った大災害の折、崩壊寸前の都市を救ったのは、海螺の鳴動だったと語られている。その後、人々は海螺を厄除けの象徴として信仰するようになった。

 家族は出航する親族のために海螺の飾りを手作りし、無事の帰還を祈る。恋人たちはこれを「幸運の螺」と呼び、愛の証として贈り合うことも多い。

海鷹の羽

 海都周辺に生息する海鷹は、魚を狩る俊敏な海鳥である。あるとき、一羽の海鷹が仲間を虎鮫に奪われ、命を賭して戦いを挑んだ。翼を裂かれながらも鋭い爪で鮫の背びれを掴み、最後まで離さなかったという。

 その勇気に感化された群れが集結し、ついに虎鮫を討ち果たしたこの出来事は、海都中の船長たちに目撃され、海鷹は「勇気の象徴」として崇められるようになった。

 伝説のファイアホーク船長もこの鳥を象徴に掲げ、以後、海鷹の羽を模した装飾は外城区で大流行した。

戦利品の文化

 海都では、冒険の戦利品こそが名誉の証とされる。外城区でも中城区でも、戦利品は建物の装飾や衣装の飾りとして誇らしげに飾られている。

 商人はそれを店のシンボルとして掲げ、冒険者協会や商人協会の本部には無数の戦利品が展示されている。持ち主たちはそれぞれの品を指し、そこに秘められた冒険譚を語るのだ。戦利品のない家は、海都において「魂なき家」と呼ばれるほどである。

雲海広場遊園会

 海誕祭や開海祭、長安の元宵節、そして東方商会の記念日など、年中行事のたびに雲海広場では盛大な祭典が催される。

 祭りの日、広場の飲食店は夜市の屋台を連ね、新たに考案した料理を競い合う。訪れた人々はそれを味わい、投票によって「美食アワード」が決定される。優勝した店には美しいトロフィーと、広場中央に看板を掲げる栄誉が与えられる。

 こうして海都の食と文化は、競い合いの中からさらに磨かれていくのである。

④ 勢力分布

❶ 外城区の勢力

南港区(軍港)

 南港区──別名「軍港区」は、外城区の最南端に位置する海都海軍の本拠地である。ここには落陽海最強と謳われる艦隊が駐留しており、常に厳重な警備が敷かれている。

 桟橋には無数の軍船が整然と並び、その威容は遠く離れた航路からでも視認できるほどだ。海都の治安を守る防衛拠点であり、同時に海都最大の刑務施設でもある。

 この艦隊はかつて、海都を滅亡の危機から救った伝説の戦いに参戦したとされ、今も市民から「海上の盾」として尊敬を集めている。

ファイアホーク号

 外城区における象徴的存在は、伝説の英雄・ファイアホーク船長が率いる海賊船「ファイアホーク号」である。

 船長は常に仮面を纏い、危機が訪れるたびに姿を現しては難題を解決し、また静かに去っていく。その神秘性と豪胆さは外城区の人々にとって希望の象徴であり、彼らの心に根付いた「自由の英雄像」でもある。

 ファイアホーク号は混沌の街に秩序をもたらし、外城区を守る「定海の錨」として語り継がれている。人々は彼を恐れず、むしろ誇りとして崇め、外城区の誇りとロマンの化身として讃えるのだ。

❷ 中城区の勢力

工匠協会

 工匠協会は、海都の発明・製造・技術開発の中枢であり、あらゆる工匠たちの利益を代表する組織である。

 会長を務めるのは技師・ヴィンチ──秘術機構と構築式技術における唯一無二の天才である。彼の創造力と理論は、アコミア秘術と機械構造を融合させ、海都の科学技術を飛躍的に進歩させた。

 協会には彼を慕う技師や職人が多数所属し、星源エネルギーや自然動力を用いた装置の開発に熱中している。だが、ヴィンチが軟禁された後、協会はミレディ政権への不満を募らせながらも、誰一人として反乱を組織できずにいる。

 副会長が日常業務を担い、表面上は安定を保っているが、その内情は静かに燻る溶鉱炉のように不安定である。

冒険者協会

 冒険者協会は、「世界の隅々まで到達する」を理念に掲げ、冒険者たちによって設立された民間組織である。

 本来は公平な取引と情報共有の場として機能していたが、近年ではアルカナ一族による政治的介入を受け、内部抗争が激化している。

 商人協会・工匠協会との利権争い、特にブルーフローライトの価格交渉を巡る対立が続いており、彼らは冒険者の報酬と立場を守るために日々奔走している。

 理想と現実の狭間で揺れるこの組織は、海都の自由を体現する存在でありながら、同時に権力の駒として利用される矛盾を抱えている。

商人協会

 商人協会は海都商人たちの自主組織であり、商業の統制と利益確保を目的として発足した。

 当初は個人商人の結束を強めるための組織だったが、経済の拡大とともに海外交易にも手を広げ、海都を中心とした商業ネットワークを築き上げた。

 彼らはアルカナ一族との交渉において重要な交渉権を握る一方で、東方商会との文化的・経済的摩擦が絶えない。

 今や商人協会は、利益の守護者であると同時に、政治と経済をつなぐ最大のパワーバランスの一角となっている。

東方商会

 東方商会は、海都に在住する東方出身商人によって構成された組織である。

 目的は、海都との交易における発言力の確保、とりわけブルーフローライトの安定供給を低価格で確保することにある。

 急速な経済成長の裏で、彼らはアルカナ一族の庇護を受けて勢力を拡大し、今や中城区における有力経済圏を築いた。

 しかし、内部では一族間の権力争いに巻き込まれ、近年は「雲海楼事件」と呼ばれる騒動により、ミレディの海軍までが介入したと噂されている。

海都聖殿

 中城区の中心部に位置する海都聖殿は、落陽聖殿の海都支部にあたる。

 だが、アルカナ一族の圧倒的権力の前に、その存在感は薄い。表向きは静かに信仰活動を続けているが、実際には指導者・ブリュヴィルが強大な影響力を秘めており、ミレディすら警戒しているという。

 彼らは海都文化に聖殿信仰を巧みに融合させ、民衆への布教を進める一方で、外城区にも常駐の支部を設置している。聖殿の理念は「神の光は潮の果てにも届く」──すなわち、落陽海の未来そのものである。

❸ 内城区の勢力

高塔一族

 海都三大執政家の一つであり、ミレディが執政官となって以降、商会と海軍の両勢力を強力に掌握している。現在では審判一族と寒星一族を圧倒し、海都最大の権力を有する家系となった。

 高塔一族の主建築は名の通り高くそびえる塔であり、海都のどこにいてもその塔の尖端を目にすることができる。白日の下で塔はまばゆく輝くが、その光がすべてを照らすわけではない。高塔の下では暗流がうごめき、塵封された過去がいつか必ず露わとなり、また新たな波乱を呼び起こすであろう。

フェイト一族

 海都の古代アルカナ一族の一つで、「前路の導き手」とも呼ばれる。神々から啓示を受け、未来を垣間見る力を得たと伝えられる。だが、運命とは幸運と不運が輪のように連なったものである。神に背いた一族は、永劫に続く呪い──すなわち、魂の衰弱と生命の枯渇を受けた。それ以降、フェイト一族は政治の表舞台から退き、隠遁的な生き方を選ぶようになった。

 フェイト一族の主殿外側には、中心殿堂を取り囲むように螺旋状に上昇する階段があり、その上に立てば一族全体を見下ろせる。目の前には行方知れぬ未来、背後には絡み合う過去が広がっている。

フェイト一族:邸宅構造

 フェイト一族の邸宅を上空から見ると、それは中心の主殿を囲みながら螺旋を描く「運命の輪」のような形をしている。会客室、宴会場、主の居間、書斎、評議室など主要な建物は等間隔には並ばず、大小不揃いのまま螺旋に沿って配置され、円環の中心──星光殿へと収束していく。

 道の途中には、牛・獅子・鷲・天使・スフィンクス・蛇・ジャッカル頭など七つの彫像が点在しており、命運の子が未来を観測する際、それぞれの建物が糸のように光を帯びて連なり、美しく輝くという。

フェイト一族:構成員

 フェイト一族の中でも、直系で「一族の力」に目覚めた者は、未来を見通し、過去を見、今を導く啓示を得ることができる。先代族長のシェリーは海都で最も尊敬を集めた海洋学者であった。彼は海をこよなく愛し、ある航海で一人の女性と恋に落ちた。しかし幸福な日々は長く続かなかった。シェリーは運命の力を過度に使ったことにより命を落とし、妻・リリィもその後の海難で命を落とした。

 残されたハイノを育てたのは執事のルーンであり、彼は厳格で古風な性格を持ち、フェイト一族の古い伝統を何よりも大切にしていた。

審判一族

 海都の新たな執政家の一つであり、もともとは伝統的な支配家系ではなかった。現族長・ファルコの綿密な策謀によって旧「世界一族」を取って代わり、三大執政家の一角に躍り出た。現在は海都の裁判所、警備庁、そして冒険者協会を掌握している。しかし、その過程でミレディに隙を突かれ、結果的に海都唯一の執政官の座を彼女に奪われた。表向きには彼女に従っているが、ファルコの胸中では次の好機を密かに狙っている。

 一族の象徴色は黒であり、呪いによって闇を恐れるようになった彼らの屋敷は、夜でも昼のように明るく照らされている。その強すぎる光は、同時に深く長い影をも落とす。

審判一族:構成員

 族長・ファルコは常に微笑をたたえた仮面をつけ、温和で正義感に満ちた人物を演じている。少年期には弱々しい態度を装い周囲の同情を引き、青年期には社交を通じて貴族層の人脈を築いた。彼は長男・ライトに強い期待をかけ、陽光のように明るい貴族像を体現させることで、一族の陰鬱な評判を覆そうとした。しかしライトは生来内向的で、人前で自由に振る舞うことができず、常に無理をしていた。

 当のライト本人はハイノを心から尊敬しており、いつか彼のように一人で一族を支える力を持ちたいと願っている。

寒星一族

 海都三大執政家の一つであり、かつてはその中でも最も強大な家系であった。しかし呪いの力が増大した末、「血月の夜」と呼ばれる惨劇が起こり、一族のうち生き残ったのはカインとルナの二人だけだった。それ以来、寒星一族は海都の支配権をほぼ失い、現在は工匠協会を主に掌握している。最古のアルカナ一族として高貴で優雅な気風を持ち、その美学は建築様式にも現れている。

 別邸は冷たい月光を模した装飾で彩られているが、「血月の夜」以降は邸全体に孤独と静寂が満ちている。

世界一族

 かつて海都三大執政家の一つであり、呪いを解く方法を求めるうちに審判一族に付け入る隙を与え、政権を奪われた。以前は商人協会を掌握していたが、ニッコロ・ポーロの失踪によってその支配力を失った。現在、海都で唯一の代表はマテオ・ポーロであり、機械の知識は皆無ながら、工匠協会最大の出資者として副会長を務め、協会に大きな影響を持っている。

 一族の者たちは世界各地を旅しており、冒険と探索に生涯を捧げている。各地で集めた戦利品を数多く所持しているが、邸宅への関心は薄く、居住空間は他の一族と比べても最も質素である。

戦車一族

 かつてはアルカナ一族の中で最も人数の多い一族であり、鋼鉄の車輪を駆ってすべてを踏みならす覇者として名を馳せた。しかし呪いによって次第に衰退し、今や生き残っているのはバイロンただ一人となった。彼自身は一族の過去や自身に課せられた運命について何も知らないようである。

 真実が未だ明かされぬ今、戦車一族は海都の伝承通り、すでに滅び去ったものと見なされている。だが、いつの日か、埃をかぶった建物の外壁や長らく閉ざされた扉が新たな力によって再び叩かれる時が来るかもしれない。

❹ 海域勢力

 ※公式ホームページに記載があるものの、詳細な内容については触れられていない。

⑤ 遠海生態

❶ 奇観景象

迷いの珊瑚礁

 毎年盛夏のある日、平穏な海面に突如として十数海里に及ぶ散在する珊瑚礁群が現れる。それはまるで迷宮のようであり、一度迷い込んだ船はほとんど脱出できない。

 この珊瑚礁には大量の星源やブルーフローライトが含まれており、夜空や霧の中で奇異な光を放つ。そのため、夜航中の船乗りたちはこの光に惹かれて迷い込み、再び戻ることは困難である。

 百年来、無数の船がこの海域で座礁・沈没し、珊瑚礁の中には無数の沈船の残骸が埋もれている。ゆえに盛夏のこの時期、この地は格好の宝探しの場所ともなっている。だが、たとえ一度探索に成功した老練な船員であっても、翌年に同じ場所を訪れたときには、もはや正しい航路を見つけることができないという。

珊瑚楼樹

 珊瑚礁をさらに深く潜ると、その正体が奇跡管道の漏出によって生じた最大の造物・珊瑚楼樹であることが分かる。

 この巨大な生命体は管道の裂け目に根を張り、百年もの間絶えず星源エネルギーを吸収して成長を続け、ついには動物と植物の境界を超越した存在へと進化した。

 普段、珊瑚楼樹は海底に伏して横向きに広がっているが、年に一度、盛夏のある日だけは上方に向かって成長し、海面上へと姿を現す。そして巨大な花冠を咲かせて大量の酸素を吸収し、珊瑚虫たちの呼吸を助ける。

 同時に、大量のブルーフローライトの粉末を代謝し、海面には夢幻のような霧・幻夢迷霧が生じる。霧が水面に落ちると、それは凝結して「海洋雪」と呼ばれる結晶を形成するのだ。

❷ 海上の住民

祝福水域:マーメイド一族

 伝承によれば、古代の聖職者一族はかつて神々に仕え、奇跡を守護する役割を担っていた。奇跡が海中に存在したため、彼らはしばしば潜水して調査を行っていたが、そのうちに水中で行動するための魚の尾を持つ能力を得た。

 こうして彼らは水棲に適応し、最終的には「マーメイド一族」と呼ばれるようになった。

 しかし、彼らは「神隕(しんいん)の戦い」に巻き込まれ、一族は滅亡の危機に陥る。生き残った傍系の者たちは海底へと逃れ、世を避けて隠棲し、存続の道を選んだ。これが後に「マーメイド一族」と呼ばれる種族の起源である。

 マーメイド一族は半年から一年ごとに一度、「九席連合会議」を開催する。八つの都市国家の代表と一人の大祭司が出席し、種族全体が直面する問題を議論し解決策を模索する。

マーメイド一族:構成員

 マーメイド一族は生まれつきロマンチックな性質を持ち、歌を愛する種族である。その歌声はこの上なく美しく、彼らは歌によってあらゆる感情を表現することができる。

 世代を超えて伝承される「祝歌」は、入念な修練を経ることで、海水を操り、治癒し、守護し……さらには奇跡と共鳴する力をも発揮する。

 マーメイド一族の統治は「大祭司」を中心に行われる。大祭司は祝歌の技法を完全に掌握し、種族全体の祭祀・魔道・政治を統べる存在である。

 また、「大長老」と呼ばれる人物は知識に富んだ学者であり、種族の知恵を象徴するが、しばしば過度な孫娘への甘やかしゆえに、妻から叱責を受けているという微笑ましい逸話も伝わっている。

❸ 海洋生物

燃灯クラゲ

 燃灯クラゲは灯台クラゲの変種であり、「奇跡の海洋雪」を摂取することで変異した種である。その体躯は通常の灯台クラゲよりもはるかに大きい。

 灯台クラゲと同じく、この生物は「老いを拒む」──すなわち、永遠に若返りを繰り返す不死の生命体である。

 一定の年齢に達すると、燃灯クラゲは海上に現れ、完全な遺伝情報を持つポリープを分裂して放出する。同時に、元の肉体の主要臓器は激しく反応し崩壊していく。その際に放たれる強烈な光が海を照らし、航行する船にとっては「導きの灯」となる。

 その死骸は巨大な資源として海都の者たちに争奪される一方、幼体のポリープは潮流に乗って汚染源へと漂い、「海洋雪」を摂取して再び新たな生命周期を歩み始める。

符文魚群

 星源汚染源に近い海域には、ブルーフローライトを糧として進化した「符文シャチ」の群れが棲息している。

 彼らは高い知性を有し、群れを組んで狩りを行う。その際、特殊な隊列とタイミングをもった「歌」を用いて音波の構築式を作り出し、獲物をその内部に閉じ込める。

 音波陣の中に捕らわれた生物は方向感覚を失い、反転し、やがて窒息死する。

 もし符文シャチの歌声が聞こえたなら、それはすでに汚染源の間近にいる証拠である。

 かつてファイアホーク号もこの魚群の狩猟陣に遭遇し、危うく転覆しかけた。だが遠方からザトウクジラの群れが現れ、シャチたちを撃退してファイアホーク号を救い出したという。

垂天チョウザメ

 大陸の西方深海には、星源により滋養された巨大なチョウザメの群れが棲息している。その体躯は小さな島にも匹敵するほどである。

 チョウザメは本来、淡水で産卵する回遊魚であるが、彼らは巨大すぎるがゆえに、落陽海には彼らを収められる河川が存在しない。

 十年に一度の盛夏、晴天にもかかわらず降る暴雨のとき、彼らは巨大な鰭を広げて翼へと変え、雨の流れに逆らって天空へと遡上する。

 虹を越え、積乱雲の中で産卵し、やがて命を終える。その亡骸は雨とともに海へと還る。

 彼らにとって、天空こそが「帰るべき海」であり、そのため人々はこの種を「垂天チョウザメ」と呼ぶのである。

⑥ 海都の物語

「海都:幸運の螺旋歌」
では、最後に「幸運の螺(つの)」にまつわる物語を一つ、話してあげよう。
そう、お主の首にかけられている、その小さな巻貝のことだよ。

それは、遥か昔の出来事だった。海都がまだ存在せず、広大な落陽(らくよう)の海平原が深い海の底に沈んでいた時代。我々がいま立っているこの大地もまた、荒れ狂う潮に支配されていたのだ。
ふむ、もしかしたら当時の人々は皆、海の中で暮らしていたのかもしれん。潮の流れに身を任せ、生きていたのかも……。
まあ、そんなことはどうでもいい! 重要なのは──その時、一柱の神がここへ降り立ったということ。

神は、海底に沈んだ大陸を再び陽の下に蘇らせようと望んだ。海の上に立ち、静かに言葉を紡ぐと、その声は波を伝い、大海の隅々にまで響き渡ったという。
「あれは……何を持ち上げようとしているんだ?」
「まさか、海の底の大地を……?」
「愚かな夢想だ!」
深海に潜む海獣たちは囁き合い、ため息を漏らした。

しかしその時、ただ一つ、小さな海螺が水面を割り、神の足もとへとたどり着いたのだ。
「わたしが! わたしが、あなたをお助けします!」
勇気あるその海螺は、震える声でそう叫んだ。

神は身を屈め、両手でその小さな螺を掬い上げた。彼は螺の殻に刻まれた渦を見つめた。それは、太古の創造主が遺した「無限の紋」──世界の理を示す印だった。神はそこに刻まれた構造から、奇跡の法則を悟り、この海の潮流を自在に操る術を手にしたのだ。

歓喜した神は、勇敢な海螺に「夢幻の歌声」と「永遠の祝福」を授けた。
やがて海は裂け、千年の眠りを経た大陸がゆっくりと海面へと押し上げられた。地震が走り、津波がうねり、巨大な渦が渦巻く──想像しうるすべての災厄が、この海原で同時に起こった。
それでも、小さな海螺は決して退かなかった。神と共に声を張り上げ、怒涛に呑まれながらも、ただその歌を響かせ続けたのだ。

やがて大地が完全に浮上し、嵐が収まり、波が静まったとき──小さな海螺は、もはや声を出すこともできなかった。
「神よ……。わたしたちは……やり遂げましたね……」
海螺は神の掌の上に身を横たえ、授けられた祝福の力をほとんど使い果たしてしまっていた。

「ああ。だからこそ、この地は永遠にお前の功績を忘れぬだろう」
神は微笑み、小さな英雄を奇跡の中心──「碧海の瞳」の上にそっと置いた。やがてそこに一つの都市が築かれ、繁栄と美の都として名を馳せるようになる。そう、それこそが「海都」誕生の伝説なのだ。

時は流れ、神の祝福を受けたこの都はますます輝きを増していった。
しかし、その光はやがて「魔神」の羨望を呼び寄せることとなる。巨大な波が天を覆い、大地が呻き、逆流した潮が家々を呑み込む。海都は崩壊の淵に立たされ、人々は絶望の中でもがき苦しんだ。

だが、その時、勇敢な海螺にはもはや昔日の力は残っていなかった。長い眠りの果てに、彼の力は薄れ、声も掠れてしまっていた。
それでも彼は、輝く蒼の血を吐き出し、内に宿した真珠を砕いた。
すると、穏やかな星河が濁った海中に広がり、狂気に満ちた海を鎮めようとするように光が揺らめいたのだ。

しかし、怒れる海は静まらず、蒼い星々の帯は引き裂かれ、海都は崩壊の一歩手前まで追い詰められてしまった。小さな海螺の血はすでに尽きている。
「それでも......わたしは諦めない……!」
枯れ果てた喉を震わせ、海螺は歌った──神から授かった「祝福の歌」を。掠れかけていても、その旋律は希望に満ちていた。

彼はその歌を、海都のすべての民に授けた。神の祝福を、人々の声へと変えて。
そして、海都の民もまた、それに応えようとした。希望の歌を歌い継いだのだ。

星々のように広がり、星火のように散りゆく──それは、海のすべての命が奏でる合唱だった。海都の大合唱。
無情の波がいくつもの声を呑み込んだが、それでもなお、新たな声が次々と響き渡った。

やがて全ての喉が枯れ果て、血にまみれた音符だけが残ると、深淵の魔神は最後の慟哭を上げ、大地は静けさを取り戻した。砕け散った波は再び海へと還った。

小さな海螺は、最後の歌声を響かせ──そして、静かに沈黙したのだった。

……これで「幸運の螺」のお話はおしまい。
ほらほら、泣くでない。小さな海螺は死んでしまったわけではない。ただ、眠っているだけなのだ。
さあ、耳を近づけてごらん。聞こえるだろう? それが、彼が残してくれた「祝福の歌」なのだ。

しっ……静かに。眠っている小さな海螺を起こしてはならんよ。

コメント (世界観解説ガイド:海都)
  • 総コメント数1
  • 最終投稿日時 2025年10月28日 15:10
    • 名無しの稷下学院生
    1
    6カ月まえ ID:drncuccy

    想像以上に細かい設定でびっくりしました。こういう風に翻訳して紹介してくださって感謝です。ありがとうございます。

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