【HoK Wiki】ヒーローデータ:盤古(バンコ)
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【掲載日:2026年1月22日(木)】
「Honor of Kings@人物百科事典」のYouTubeチャンネルを開設いたしました。
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本Wikiと併せて、よろしくお願いいたします。
Honor of Kingsに登場する盤古(バンコ)についてのデータを載せています。

目次 (盤古)
ヒーローデータ
![]() |
|---|
盤古(バンコ)
入手方法
| ステラ | 13888 |
|---|---|
| バウチャー | 588 |
プロフィール
| 種族 | 身長 |
|---|---|
| 全能者 | 212cm |
| 系統 | 本拠地 |
| 武道 | 聖天坊 |
| 所属 | 身分 |
| 聖天坊 | 神 |
| 好きなもの | 嫌いなもの |
| - | - |
| 特技 | 日本語CV |
| - | (未実装) |
| ストーリー | |
| 神々は「温室」を築き、時間という奔流の中に人類文明を創り上げた。だが同時に、その温室こそが人類を束縛する檻でもあった。神々の一柱である盤古は、ある日ひとりの人間の少女と出会う。その瞬間、かつて自らも人間として生まれた時の「感情」を思い出したのだ。新しき人類が神々の支配によって苦しむ姿を知ったとき、長らく巨斧を振るい人々のために天地を拓いてきた盤古の胸に、怒りが燃え上がった。その怒りは、聖天坊(せいてんぼう)に座す神々の傲慢な裁定に対して向けられたものだった。だが──その怒りに共鳴し、彼と並び立つ神は、ひとりとして存在しなかった。 | |
バックストーリー(翻訳済み)
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| 簡略バージョン |
|---|
| 神々は「温室」を築き、時間という奔流の中に人類文明を創り上げた。だが同時に、その温室こそが人類を束縛する檻でもあった。 神々の一柱である盤古は、ある日ひとりの人間の少女と出会う。 その瞬間、かつて自らも人間として生まれた時の「感情」を思い出したのだ。 新しき人類が神々の支配によって苦しむ姿を知ったとき、長らく巨斧を振るい人々のために天地を拓いてきた盤古の胸に、怒りが燃え上がった。 その怒りは、聖天坊に座す神々の傲慢な裁定に対して向けられたものだった。 だが──その怒りに共鳴し、彼と並び立つ神は、ひとりとして存在しなかった。 |
| 詳細バージョン① |
| 太古の神々がまだ地に満ちていた頃──大地には魔族が跋扈し、その中でもとりわけ「建木(けんぼく)」に巣食うものが最も凶暴であった。 神々はこの建木のもとに「温室」を築き上げた。それは巨大な培養槽のようなものであり、人間はその中で神々の導きと制御を受けながら育まれていった。 神々は人間文明の進化を見守りつつ、もしも文明が「誤った方向」へ進み始めたと判断すれば、その都度介入し、進行を修正した。 その中に、神々の中でも最も強大な武力を誇る存在・盤古がいた。 彼は神々が総力を挙げて鍛え上げた巨斧を携え、魔族を駆逐し、温室の中の人類を護り続けた。人々は彼を「天神」として崇め、祈りを捧げ、畏れとともに敬っていた。 だが、ある日──群衆の中で地に伏していた人々の列から、ひとりの少女が父母の手を振りほどき、盤古のもとへと駆け寄った。彼女は小さな手で一つの林檎を取り出し、盤古の掌の上にそっと置いた。 盤古はしばしその林檎を見つめ、やがて静かにそれを受け取った。 それ以降、盤古はしばしば「こっそりと」温室を訪れるようになった。人々は依然として彼を恐れたが、ただ一人──あの少女・曦姫(きき)だけは違っていた。彼女の存在を通じて、盤古は初めて新人類の心に触れることになる。 盤古は気づいた──人間は愚かでも無知でもない。彼らはすでに、自らの手で文明を築き始めていたのだ。そしてその歩みを縛りつけているのは、他ならぬ、神々の支配と桎梏であることを。 盤古は他の神々に訴えた──人間に自らの文明を創らせるべきだと。だがその度に議論は決裂し、神々は盤古の言葉を受け入れなかった。 やがて人間たちは、もはや抑圧に耐えきれなくなった。彼らは蜂起し、温室の中枢・制御室へと攻撃を仕掛けたのだ。制御装置は爆発し、神々の怒りは頂点に達した。彼らは人間が「正しき文明」から逸れたと断じ、すべてを焼き払い、最初からやり直そうと決意する。 だが盤古はその結末を受け入れることができなかった。彼は立ち上がり、長年握り続けた巨斧──「温室の鍵」を掲げ、聖天坊から身を投じた。燃え盛る人間の家園の中、再びその身を挺して彼らの前に道を切り開く。かつて幾千幾万の時を越えて、そうしてきたように。 ![]() 「人類よ──我と共に来たれ!」 盤古の咆哮が轟く。彼は人間たちを導き、温室の果てへと駆け抜けた。 そして跳躍の末、巨斧を振りかぶり、温室そのものへと叩きつけた。だが温室の内と外では、時間の流れが異なっていた。盤古は人間たちに退くよう命じ、その巨大な身体を拡げて彼らの前に立ちふさがった。彼は洪流の侵蝕を一身に受け止める。 握り締めた巨斧は、衝撃のたびに砕け散っていった。だが、その痛みが逆に彼の力を奮い立たせた。盤古は拳を握り、渾身の力で、幾度も幾度も「天の殻」を打ち破っていく。やがて覆いを破壊しきった瞬間、滾る時間の奔流が彼の肉体を蝕み始めた。 その壮大な体は急速に老い、枯れ、崩れ落ちていった。やがて、盤古の身は山と化し──その姿のまま、永遠の一瞬に凍りついた。 盤古は墜ちた。だが、その死は終焉ではない。彼は自らの命を賭して混沌を裂き、人間たちに「文明の破暁」をもたらしたのだ。 そして──破暁の先に、黎明が訪れる。 |
| 詳細バージョン②「曦姫の大きな友達」 |
| はじめのうち、盤古は新人類に対して特別な情を抱いてはいなかった。彼にとって彼らは、あくまで神として果たすべき「使命」の対象にすぎなかった。 温室を訪れるたび、人々は地に伏して祈り、彼を天神として崇めた。盤古もまた、神明として当然の威容を保ったまま、跪く人々の間を無言で通り抜け、その心には波ひとつ立たなかった。 しかし、ある日──。 地に伏す人々の群れの中から、一人の少女が父母の手を振りほどき、盤古の前へと走り出た。周囲の人々は息を呑み、少女の両親は震える声で彼女を呼び止めたが、少女はその声を振り切った。 走り出た勢いのまま、少女は足元の石につまずき、地面へと倒れ込む。だが痛みは来なかった。大きな掌が、彼女をやさしく受け止めていたのだ。 盤古自身、なぜ手を伸ばしたのか分からなかった。だがその瞬間、胸の奥底で遠い記憶が蘇る。まるでかつて、彼自身、同じように誰かを救い上げたことがあるかのように。 少女は盤古の掌にちょこんと腰を下ろし、小さな手で懐から一つの林檎を取り出して彼の掌に置いた。少女の両親は天神の怒りを恐れ、膝をついて赦しを請う。群衆もまた恐怖に震えた。だが少女だけは無邪気で、盤古の沈黙を気にも留めず、「汚れてる」と言って林檎を服の裾でごしごしと拭いた。 盤古は長い沈黙ののち、ゆっくりとその林檎を受け取った。人間の尺度では手のひらに乗せたところで何の意味もないほど小さな果実。彼はすでに人としての味覚など、いくつもの「無用な感覚」を失っていた。だが、少女の笑顔を見たとき、胸の奥に、かつて「人間だった頃」の温かな記憶が確かに芽吹いた。 それは──彼が「国際艦隊」の兵士だった時代の記憶。難民の群れの中から、一人の幼い少女を抱き上げた任務の日のことだ。少女を泣き止ませようと、彼は一輪の花を差し出した。だが餓えた少女は花を噛み砕き、彼の指まで嚙んでしまった。血の味、痛み、そして生命の重み。すべてが蘇る。 二つの影が重なり、時間が幾万年も巻き戻るような錯覚。盤古の胸に込み上げるものがあった。彼は思い出した──自分もまた、かつて人間だったのだ。 それはほんの小さな林檎だった。しかし、その一瞬の出来事が、盤古に「人間への情」を芽生えさせた。 それ以来、盤古はしばしば人目を忍んで温室を訪れた。人々は依然として彼を恐れたが、ただひとり、曦姫だけは違った。彼女は子どもたちの中心に立ち、無邪気に彼を「大きな友達」と呼んだ。彼女に導かれるように、子どもたちは少しずつ恐れを忘れ、やがて盤古のもとへ群れ寄るようになった。彼の肩によじ登り、花冠を編み、草で作った冠を頭にかぶせた。 大人たちは心配で毎日怯えていたが、曦姫だけは知っていた──盤古は相変わらず無表情に見えながら、その口元にはかすかな笑みが浮かんでいたことを。彼はまるで山のように動かず座り、小さな子どもたちが落ちないよう、息を殺して身じろぎもしなかった。 その巨躯はいつも人々の視界を圧し、彼らの目を惹きつけた。だが盤古もまた、人間たちを見つめていた。曦姫はそんな盤古に毎日、彼女や仲間たちの物語を語って聞かせた。人間たちの暮らしのこと、友のこと、夢のこと──盤古が答えなくとも、彼女は一人で喋り続けた。友情の証として、彼女は果物を手土産に持ってくることもあった。 盤古にとって、それは不思議な体験だった。やがて彼は気づいた──新人類は、単なる「使命」ではなく、「命ある個」として息づいているのだと。彼らの笑い、怒り、悲しみ──それらすべてが、確かな生命の輝きとして存在していた。 彼らの世界には外敵の脅威こそなかったが、神の定めに従う束縛があった。彼らは神々の命に従い、労働し、食べ、祈り、眠る。その繰り返しの中で生まれ、育ち、子をなし、老い、死んでいった。まるで同じ模様を延々と織り続ける織機のように。 ある日、曦姫は俯いた表情で言った。 「今日ね、ひとりの人が死んだの。みんなで埋めてあげたわ」 盤古は静かに耳を傾けた。無口な彼にとって、行動こそが言葉だった。だがこのときばかりは、珍しく声を発した。 「──それが『生命の過程』というものだ」 曦姫は首を振った。 「私はね、その人の『死』が悲しいんじゃない。その『生き方』が悲しいの。神様が決めた通りに生きて、そして死ぬ......。それが『生』なの?」 盤古は言葉を失った。どう答えてよいか分からなかった。 曦姫は続けた。 「私のお兄ちゃんね、詩を書くのが好きなの。でも神様は『決められた言葉』しか唱えちゃいけないって言うの。高い塔を造れって命じるくせに、登ることは禁止するの」 盤古は静かに応じた。 「神は知恵を授け、導く者。人間を文明へ導くためだ」 曦姫は小首をかしげた。 「文明? それって何? 神様たちの文明も、そんなふうに生まれたの?」 その問いは幼いものだったが、盤古の胸に重く響いた。神々は「完璧な文明」を創るために人間を操っていた。だが文明とは、本来神が与えるものではない。人間自身が選び取る道の果てにこそ生まれるものだ。 盤古は思った──神々は、重大な過ちを犯しているのかもしれない。 |
| 詳細バージョン③「戦友」 |
| ・その1 女媧は、初めて盤古と出会った日のことを今も覚えていた。山のように大きく、逞しい男──それが彼女の抱いた第一印象だった。だが、その強大な姿に似つかわしくないほど、彼の名は不思議なほど柔らかかった。 「盤古」という名を提案したのは、ほかでもない、女媧自身だった。創世によって神々が神格を得たとき、彼女は言った。 「この名がいい」 盤古は短く答えた。 「……いいだろう」 あまりにもあっさりと。女媧は彼が喜んで受け入れたのだと思った──まるで、この名が最初から彼のために用意されていたかのように。だが盤古にとって、それは違った。彼にとって「方舟を降りたその瞬間」に、過去の自分はすでに死んでいた。かつての名も意味を失い、ただの文字列に過ぎなかった。彼の胸にはもう「名前」というものは存在せず、「使命」だけが残されていた。 世界は荒れ果て、魔族がいたるところに蔓延っていた。神々は肩を並べて戦い、息を合わせて地を浄化していった。女媧の提案により、神々は盤古のために「決して壊れぬ巨斧」を鍛え上げた。盤古はその斧を振るい、魔族を追い払い、天地を切り開いた。 すべては人類のために。 最初はうまくいっているように見えた。女媧は新人類を創造し、彼らを温室に入れて育んだ。だが、神々はその「育成の遅さ」に耐えられなかった。彼らは温室の中で人間の文明進化を加速させようとした。しかし、その結果は神々をさらに苛立たせた。人間の文明は、神々の理想とする「完璧な文明」には決して向かわなかったのだ。 会議が繰り返された。神々はなぜ人間の文明が思うように進化しないのかを議論した。しかし、いくら話し合っても結論は出なかった。次第に神々は人間への干渉を強め、細かく計算し、最適な進化ルートを「設計」し始めた。 盤古は、そうした果てなき会議を何より嫌った。言葉よりも行動を重んじる彼にとって、議論は無意味な時間の浪費だった。彼は装飾華やかな聖天坊の殿堂に無言で座し、背筋を一寸も曲げなかった。帝俊(ていしゅん)はある日、その姿を見て目を細め、冗談めかして囁いた。 「お前もたまには『夢の中』でペットでも飼ってみたらどうだ?」 盤古は答えなかった。だが、その無言こそが答えだった。彼は常に姿勢を正したまま動かない。彼は女媧の忠実な支持者として知られ、重要な決断の時には必ず彼女の側に立った。 神々の議論はいつも、最終的に盤古が女媧に賛同することで収束した。ある日の会議のあと、女媧は足を止めて盤古を呼び止めた。彼女の瞳にわずかな疑念の色が浮かんでいた。盤古はその視線を受け、手にした斧を軽く持ち上げながら言った。 「人間を育てることは我にはわからぬ。戦うことの方が性に合っている。だが──お前が彼らに対して『母』のように臨んでいることは、知っている」 女媧は静かに応じた。 「神は人を愛している。私の手の中で、彼らは創られたのだから」 盤古は頷いた。 「厳しさの中にも、愛はあるのだな」 女媧の目が輝いた。 「私たちは、まだ成し得なかった世界を創り上げる。運命の誤りを正し、我らが滅ぶべきではなかったことを証明するために!」 盤古は少し間を置き、低く呟いた。 「──人類のために」 女媧は熱を帯びた声で応えた。 「そう、人類文明のために!」 ・その2 最初に盤古の変化に気づいたのも、やはり女媧だった。 彼が温室から聖天坊に戻ったとき、女媧はすでにその場で待っていた。彼女は静かに言った。 「あなたがどこへ行っていたのか、わかっているわ。あそこには行くべきではない」 「──我らの役目は、新人類のために天地を開き、文明を継がせること」 盤古の声は、いつもより低く、重かった。新人類の苦境が彼の胸を覆っていた。だが、女媧はその言葉を遮るように、静かに言い返した。 「『人類文明の継続』──それが私たちの使命。でも、『人類の意思』に従うことではない。人は生まれたばかりの子供と同じ。自らの運命を導けない。神の命に従うことこそが、最も安定した法則。それが『神の愛』というものよ」 女媧の思想は、盤古を除く全ての神々の総意だった。かつて彼らは、共に人類の未来のために戦った「戦友」であった。だがこのとき、盤古には彼女が遠い存在に見えた。彼女にとっても、盤古の行動は理解しがたいものになっていた。 長く世界を支配してきた神々は、創世以前の記憶──「自分たちもかつては人間だった」という事実を、すっかり忘れ去っていた。彼らはかつて束縛に抗い、自由を求めて戦ったはずなのに、今やその同じ束縛を「愛」と名づけて人間に押しつけていた。 盤古は女媧に訴えた。 「人間は意思なき人形ではない。愛を名目にした桎梏こそが、真の苦しみの源だ」 女媧は静かに首を振った。 「正しき道を行くには、痛みは避けられないわ。人間はかつて過ちを犯した。その愚行を知るのは、私たちだけ。新しい歴史は、私たちが創るのよ」 盤古の瞳に怒りが宿った。 「人の運命は、神の贈り物などではない──人自身が選び取るものだ!」 女媧の声が鋭く響く。 「その無知が、すべてを滅ぼすの!」 その日、盤古と女媧は激しい言い争いをした。怒りがぶつかり合い、抑え込まれていた感情がすべて爆発した。やがて、長い沈黙が訪れる。沈黙の中で、女媧がぽつりと口を開いた。 「あの果実……あなたの体ではもう消化できないはずよ。改造された神の身では、ただ腐るだけ。それでも受け取ったのね──今のあなたには害でしかないものを」 盤古は黙して答えなかった。女媧は小さく息を吐き、背を向けた。 「……いいわ。あなたはそうは思わないのね」 そう言い残し、女媧は去っていった。だが、二人とも知っていた──この決裂が終わりではないことを。 ・その3 それから盤古は、温室に身を留めるようになった。彼は人間たちに寄り添い、神々に向けて「人類が自ら文明を築ける」ことを示そうとした。人類はすでに社会を形づくり、言葉を持ち、創造する力を得ていた。そのすべてを盤古は神々に見せようとした。 彼は信じていた──神々もいずれ、文明の本質を思い出すだろう。かつて彼らも人間であったのだと。 だが、結果は無惨だった。神々は盤古の行いを理解できなかった。彼が説こうとした「人の力による文明」を、彼らは冒涜とみなした。盤古が調停しようとする間にも、人間たちの間で「反逆」の芽が育っていった。自由を求める心は、もはや抑えきれないほどに膨れ上がっていた。 やがて──人間たちは蜂起した。帝俊は静かに告げた。 「彼らの中には、『生』を束縛と呼び、世界を牢獄と呼ぶ者がいる。彼らは自由を求め、温室の枷を壊そうとしている」 その言葉の通り、人類は温室の制御室を襲撃し、それを爆破した。帝俊は盤古を見つめ、感情のない声で言った。 「温室の内と外では、時間が違う。お前は理解しているはずだ──これは『死への祈り』だ」 その報告は瞬く間に聖天坊を騒然とさせた。 「人間たちが……生命に意味を見いだせぬとは!」 「赦したとしても、この思想はやがて全人類に広がる。文明を滅ぼす疫病になる!」 神々は口々に叫び、誰も盤古の声を聞こうとしなかった。盤古の胸には、燃えるような怒りが渦巻いた。彼は雄弁ではなかった。だが、誰よりも理解していた──この破滅の原因こそ、神々自身の支配にあるのだと。 そして、盤古は立ち上がった。彼は巨斧を振り上げ、温室を真っ二つに切り裂いた。天地を震わせる衝撃が走る。聖天坊の神々は沈黙した。時計の針が落ちる音さえ聞こえるほどの静寂の中で、彼らは見た──盤古が時の奔流を逆らいながら進み、人間たちの前に立ちふさがる姿を。巨斧は砕け、彼の体は崩壊していく。だが、その姿は決して退かなかった。やがて、その身は山となり、静止した。 神々には、その行いの意味が理解できなかった。だが、女媧だけは悟っていた──盤古はその死を以て、神々に「人類文明の可能性」を示したのだと。 「人の運命は、神の贈り物などではない──人自身が選び取るものだ!」──それが、彼の最期の意志だった。 盤古の死ののち、人間たちは聖職者の助けを受け、建木の外へと広がっていった。彼らは魔族を退け、己の手で生きる術を築き、国を興した。彼らは「世界は広い」と信じ、果ての地を目指して旅立った。建木に残ったのはわずか一族──彼らは自らを「帰山(きざん)一族」と名乗った。 女媧は呟いた。 「私たちは……間違っていたのかしら」 彼女は第二の温室を造らなかった。代わりに盤古のように、人間を「観察する」道を選んだ。離れた人々は危険に晒されながらも、困難の中で知恵を育んでいった。試練と叡智は表裏一体であり、自由とは未知と共にある──女媧はそう悟った。 彼女もまた聖職者を遣わし、人間たちが魔族を退け、自らの文明を築けるよう支援した。 女媧は盤古の遺した山を仰ぎ見て、厳かに告げた。 「人間には、育つための空間が必要だわ。神にもまた、許すための心が必要ね」 帝俊も珍しく頷いた。 「あの戦友は──尊敬に値する」 |
| 詳細バージョン④「帰山」 |
| 曦姫の絶叫が、人々の悲嘆を裂いた。目の前で、盤古の巨躯がゆっくりと崩れ落ちていく。燃え盛る光と土煙の中、彼の背中は天を貫くように高く、やがて鉄のように硬い筋骨の形を残して凝り固まり──そして静かに、山と化した。 最期の瞬間まで、盤古の目は人間たちを見つめていた。 盤古は、そうして消えた。彼の身は、建木で最も高い峰──「破暁聖山(はぎょうせいざん)」となり、今もなお人の形を留めている。曦姫は涙で濡れた手で、盤古の掌の中から一片の金属片を拾い上げた。それはかつて、「温室の鍵」と呼ばれた巨斧の欠片だった。彼女はそれを胸に抱きしめると、同じく家族を失った子どもたちを連れ、人々の群れを離れていった。 この時より、盤古を「破暁の神」として信仰する一族──「帰山一族」が生まれたのである。 やがて魔族の活動は激しさを増した。多くの新人類は建木を離れ、より穏やかな大地を求めて旅立った。だが、帰山一族だけは違った。彼らは建木の深山に籠もり、「温室の鍵」の力を用いて己の身体と魂を鍛え上げ、魔族に抗う力を磨いた。そして彼らは、山中に散った巨斧の他の欠片を探し求め続けた。 彼らは信じていた──すべての欠片が揃ったとき、破暁の武神は再び現れると。 ...... 「ハハハ、面白い話じゃないか。海都で吹聴されてる『海怪の昔話』より、よっぽどマシだ。」 雲中(うんちゅう)砂漠を駆ける商隊。その隊列の中で、御者台に腰をかけた男が笑った。砂塵を浴びながら馬車を進める旅路の退屈を紛らわすため、人々はしばしば昔語りをする。隣に座るのは、フードを深く被った老者と少女。二人の姿は旅の埃に覆われ、表情は見えなかった。 「で、どうなったんだ? その斧の欠片は、全部集まったのか?」 御者の問いに、少女はわずかに笑った。彼女の瞳は、朝日のように柔らかい光を宿していた。 「いや、まだ全部ではないわ。けれど……ほとんどは集まった。いくつかの欠片は、神々の思惑によって、それぞれ別の場所へ持ち去られてしまったの」 そして、彼女は小さく呟いた。 「でも、いつか必ず──見つけ出してみせる」 馬車が砂の岐路に差しかかると、老者と少女は下りた。御者はまだ物語の続きを聞きたそうに、鞭を握ったまま振り返る。 「俺たちはこの先、大バザールに向かうが……あんたらは?」 少女は風に髪を揺らしながら答えた。 「珠城(しゅじょう)に『魔神の伝承』があると聞いたから、そこへ行ってみようと思う」 御者は頷き、微笑んだ。 「じゃあ、ここでお別れだな──聖火の加護が、あなた方にあらんことを」 「そうね──破暁の神の御光が、あなた方を照らし導かんことを」 少女の声は風に溶け、砂の海に消えていった。砂嵐が過ぎ去った後、遠くで馬車の車輪の音だけが静かに響いていた。 |
| 詳細バージョン⑤「創世の書 二巻」 |
| ──出典:「起源紀要(きげんきよう)」残巻より。 ・創世の書(草案作成担当:盤古・女媧) 我らは混沌より来たり、虚無の中に生まれた。 祖先も我ら自身も、かつて地球の時代において罪を重ね、自然を破壊し、生命を屠り尽くした。やがて宇宙に見放され、この荒涼たる星へと追放された。生き延びるため、我らは方舟の旅の中で己を改造した。過去の名も、身分も、肉体も、感覚すらも──もはや我らのものではない。 しかし、記憶だけは今も我らの中にある。 我らは、未だ現れぬ世界を創り出す。己らの種が存在する意味と価値を証明するために。美徳と品格をもって。 我らは、いまだ成し遂げられぬ世界を創り出す。運命の誤りを正し、我らが滅ぶべき存在ではなかったことを証明するために。 我らはこの大陸の源泉となり、大陸が我らの源泉となることを決して許さない。 ・創世の書(最終調整担当:帝俊) 神は輝かしき文明の中に生まれ、万物の頂点に立つ者、神秘の力の代弁者である。 神はこの地に降り立ち、ここに生きるすべてのものと共に、新たな王者の世界を創ることを望む。 神はあらゆる生命に呼びかけ、共に創世に携わるよう求める。魔族の野蛮によって誰かが苦しむことがあってはならず、能力の差によって種が貴賎に分かたれることも許されない。 神に協力し創世を助ける者には、豊かな恩恵が授けられるだろう。 神は力と権威を世に示す。創世の名のもとに、神は永遠に暴力をもって悪しき者と愚かなる者を滅ぼす。 |
| 詳細バージョン⑥「盤古大神──一動不動」 |
| 幾千万年もの風雪が過ぎ去っても、破暁聖山は静かにその姿を保ち続けている。 山々の峰と向かい合うように、山肌を這う一本の長大な天梯(てんてい)がそびえていた。それは神の奇跡ではない。帰山一族が血と汗、鉄と岩、そして数え切れぬ日夜を費やして築き上げた、人の手による「奇跡」だった。 巨大な石塊が鉄木で噛み合わされ、狭い桟道は万丈の断崖に沿って架けられ、人影が小さく点々と連なっている。山歌が風に乗って響き、槌音と号令と縄の軋む音が交錯し、吹き荒ぶ烈風をもかき消していた。 日が昇る頃、掛け声が伝わり、作業が一時止む。地に近い者たちは列を成して急峻な石段を降り、足音には疲労と安堵が混じる。高みに吊るされた藤籠が軋みながら降りてきて、中に飯や水が詰め込まれ、再び上へと引き上げられる。やがて上からは咀嚼の音と笑い声がこだました。 地上では、人々が風除けの石の陰や簡素な作業小屋に腰を下ろし、束の間の休息を味わっていた。石と工具の間を駆け回る二人の子どもを、大人が呼び止めて声をかける。 「おい、二人とも。ちょっと考えてみな。一動もしないものって、なんだ?」 少し年上の少女が元気よく答えた。 「石! お父ちゃんが山から掘り出した石!」 すると弟がにやりと笑って言った。 「一動もしない? そりゃ……カメだ!」 人々はどっと笑い声を上げた。高所の吊り籠で休んでいた者たちまで、その笑い声に気づいて下を覗き込む。 「まったく、しょうもないことを」 子どもたちの祖母が笑いながら近づき、少女の鼻をつまんで軽くこづき、弟の頭を軽く叩いた。そして優しい目を天梯へ、さらに遠くの山へと向けた。 「一動もしないのはな、うちらの盤古大神さまだ。あのお方は天と地を切り開いて、最後にはこの破暁聖山になって寝そべって、ずっとずっと、わしらを護ってくださってるんだ。何千年も、一度も動かんとな」 この問答は、まるで帰山の岩の隙間に生える苔のようだった。脆くも毎年芽吹き、厳しい寒さの中に命を繋ぐ、ささやかな娯楽であり伝承だった。 大人たちはあえて子どもに「正解」を教えない。小さな期待を胸に抱きながら、「石」だの「大木」だの、はたまた「カメ」だの「スッポン」だのと、子どもが答えるのを待っては大笑いする。その笑い声の奥には、自分たちもかつて同じように叱られた記憶があり、その痛みさえ懐かしく感じられた。 やがて子どもたちが成長すれば、また自分の子に同じ問いを投げかけるだろう。目に光を宿しながら、あの日と同じ狡猾で優しい微笑を浮かべて。 休息の時はいつの間にか終わりを告げ、作業再開の号令が響く。子どもたちは顔を上げ、大人たちが再び石段を登り、天梯へ戻っていく姿を見送った。笑い声が消え、再び鎚の音が山にこだまする。 「おばあちゃん、今年の天梯、どこまで高くなるかな? ぼくよりも高くなる?」 祖母は首を傾げ、穏やかに答えた。 「さあねぇ……。あたしらが若いころは、もう少し近くで働く人の姿が見えたのよ。今はずっと遠くの山からでないと、頂が見えんようになった」 天梯は時に急速に伸び、時に停滞する。どこまで伸びるのか、それを知る者はいない。だが、祖母は知っていた。ついこの間まで揺籠にいた子どもたちが、今は走り回り、やがて自分よりも高く成長し、いつの日か天梯を登っていく。そうしてまた新たな段が積まれ、天へと近づいていくのだ。 子らは育ち、梯は伸び、聖山は変わらず静かにそこに在る。年は巡り、景色は似て、そして物語は続いていく。 ![]() |
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