【黒ウィズ】リヴェータ&ルドヴィカ編 (5th Anniversary)Story
2018/03/05
目次
登場人物
![]() | ルドヴィカ |
![]() | リヴェータ |
story1 戦勝記念パーティー
ルドヴィカの元に招待状が届いていた。差出人は、リヴェータだった。
「私たちケルド同盟軍が、お互いに手を結んでからというもの戦後の処理に忙殺されて、一度も結束を固めるための会合を持たなかったわね。
だから、パーティーやります。帝国に勝利した戦勝記念パーティーも兼ねてるから絶対に参加してよね?」
リラ、馬を曳け。ちょっと行って、リヴェータを叱りつけてくる。
あ、そうです。その招待状ですが、最後までお読みになられた方が、よろしいかと存じます。
ルドヴィカは、招待状に目を落とした。最後に一言、つけ加えてある。
「ルドヴィカ、パーティーに鎧は厳禁よ?戦場じゃないんだからね。
ちゃんとパーティーの招待客らしく、正装してきてよ。頼むわね。」
ましてや、リヴェータ。お前に指図されるいわれはない。
どんな格好でパーティーに行くかは、私自身が決める!
***
だいいち、浮かれてるのはルドヴィカも同じじゃない。そんな格好までしちゃって。
昔のものだったから、袖を通すのに相当な覚悟と苦労があった。
カンナブルが消失し、ルドヴィカの父が死んだあの事件のせいで――
ふたりが暮らしていたカンナブルの屋敷は炎上し、なにもかも消え失せてしまった。
パーティーに着用するドレスごときに貴重な軍費を費やしたくない。だから、恥を忍んで袖を通している。
でも、このパーティーは、私たちの結束の強さをアピールするために開いたパーティーでもあるの。
ケルド同盟なんてご大層に名乗ってはいるけど、参加している領主の中には、同盟軍の結束に疑問を抱いている人も大勢いるわ。
そういう人たちの不安を払拭するためにも表向きだけでも、私たちハーツ・オブ・クイーンと――
あなたたち、グラン・ファランクスとの結束が、固いところをアピールする必要があるの。
リヴェータとルドヴィカの過去の因縁は、周知のとおり。
イレ家に属する者の中には、リヴェータの父を葬ったルドヴィカに対する憎しみを捨て切れていない者もまだ大勢いる。
彼女たちを眼にした招待客だちから、感嘆の声が次々にあがる。
ドレス姿のふたりは、会場の華としての役割を十二分に果たしていた。
ルドヴィカには、いろいろ不満もあるでしょうが、今日ばかりは、我らが盟主の目論みに手を貸してもらいましょう。
あれほど憎しみ合っていたハーツ・オブ・クイーンとグラン・ファランクスの両勢力が――
こうして同じ場所にいるだけでも、過去を知るものにとっては驚きなのだが。
両勢力のリーダーが並び立ってパーティーの華となって会場を彩っているのは――
これ以上ない同盟軍結束のアピールとなっていた。
すべて、リヴェーダの計算どおりだった。
story2 お料理の味は
テーブルの上には、さまざまな食材が用いられた色とりどりの料理が並んでいる。
戦時とは思えないほどの充実ぷりにルドヴィカは、己の目を疑わざるを得なかった。
護衛として共をしてきたギルベインたちも、用意された料理に満足げだった。
取り分けてくれた小皿には、香辛料とバターをふんだんに使った料理が載っている。
普段ろくなものを食べていないルドヴィカは、無意識のうちにフォークを握っていた。
イレ家の領民たちは、こんなにうまいものを食べているのか)
帝国との戦争では、固い麦パンが常食だった。それに干し肉やチーズがつけば、ごちそうだった。
強さを追い求めるため、頻繁に山にこもるルドヴィカたちは、そんな粗末な食事すらろくに□にできない生活をつづけていた。
日々の辛苦を思い返すように、グラン・ファランクスの面々は、出された料理を黙々と昧わっている。
ねえ、今度は、これを食べてみない?挽肉とチーズのパイよ。
我を忘れて夢中になって食べていたことにようやく気づく。
フォークを握った手が、とつぜん止まった。
咳き込んだルドヴィカの背中をさすりながら、話をつづける。
真面目な話だと理解したルドヴィカは、表情を引き締めた。
ケルド島には、そういう奴らを無理やりにでも従わせる強い勢力が必要だ。
私たちに従えば利益がある、と思わせれば、欲深い連中は、勝手についてきてくれるでしょ?
頑なに自分の主張を崩そうとしないルドヴィカだったが、それでこそルドヴィカだった。
私たちが組めば、このケルド島に敵はいなくなるわ。ルドヴィカの言う、強い勢力になれるんじゃない?
私だって、グラン・ファランクスをなくすつもりはない。
いますぐ、答えが欲しいとは言わないわ。いつか返事してくれればいいから。
ねえ、それよりも、新鮮な葡萄とリンゴを使った焼き菓子(タルト)があるの。リンゴ好きでしょ?一緒に食べない?
ルドヴィカの手を引いて、タルトのあるテーブルに向かうリヴェーダ。
周囲の者の眼には、そんなふたりの姿に、一瞬だけ子どもの頃の面影が重なったように見えた。
story3 切り開く眼
パーティー会場に集まっているのは、ケルド同盟軍に参加する領主とその護衛たちだった。
彼らは、いまのところ盟主リヴェーダに従い、ひとつに纏まってはいるが――
過去に刻んだ深い因縁を、いまだに解消できていない者も沢山いるため、あちこちで小さな衝突が起きていた。
だからこそ、礼儀を欠かしてはいけません。ルドヴィカさまのところまで案内してあげます。こっちへ来なさい。
ルドヴィカの元に、姉に手を引かれたアリオテスがやってきた。
たどたどしい挨拶だった。うしろではリラが、ハラハラした面持ちで見守っている。
ルドヴィカは、アリオテスを招き寄せた。顔を両手でつかんで、原初の覇眼である右眼を覗き込む。
覇眼は、いつか必ずそなたを破滅に導く。私も、それで一度、すべてを失った。
そなたの父イリシオスも覇眼に狂わされて、多くの人の運命をねじ曲げた。
覇眼は、そなたの可能性を開いてくれるものではない。むしろ、その身を破滅に導く呪いだということをくれぐれも忘れないようにな。
俺は、その事実から、一度も目を背けたことはありません。これからも、そうします。
その時は、私のところに来い。少なくとも、そなたの剣の師匠やリヴェータよりは、覇眼のことを知っている。
焦らずとも、必ずその日が来る。だから、それまで待て。いいな?
パーティーは終わりを迎えた。
酔っ払ってハメを外しすぎた者もいるが、つつがなく終了したことに、リヴェータはほっと胸を撫で下ろしていた。
だから、一度大陸に行こうと思っている。
ケルド島から海峡を渡った東の場所にある、広大な大地。
皇帝グルドランの領地があった場所であり、いまも終わることのない後継者戦争がつづけられていると聞く。
それを知ることにより、この眼がもたらす呪いに打ち勝つことが、できるかもしれん。
その時は、私の部下たちを頼む。
ルドヴィカは、承諾も拒絶もしなかった。ただ、少しだけ表情を綻ばせただけだった。
ルドヴィカは、パーティー会場をあとにする。
後ろにつづくリラは、タルトを沢山詰めてもらったお土産を抱えて、ルドヴィカのあとを追った。
でも、ルドヴィカ……。あなたが、覇眼の宿業に抗おうというのなら、私も一緒に戦いたい。
去って行くルドヴィカたちの背中を見つめながら呟く。
その言葉は誰にも届かずに、夜風に流され、消え失せた。
リヴェーダは、その場にとどまり、小さくなっていくルドヴィカの姿をいつまでも見つめていた。
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