【黒ウィズ】ARES THE VANGUARD RAGNAROK Story5
目次
story1 DREAM
「はあぁぁぁぁぁぁっ!うぉぉぉぉぉぉ!どっせいやぁぁぁぁぁぁ!」
「今日も仕事の後にトレーニング?精が出るねえ。」
「あ、ヴァカ隊長。もしかしてまた事務所で寝てた?」
「寝れるわけないでしょ屋上でそんな叫ばれて。呑んでただけだから、別にいいけどさ。
……踏み込む時の後ろ足、余力を残した方がいい。ほんの少しだけ次の敵に対応しやすくなる。」
「なるほど!こうじゃな!チェストォォォォォォォ!」
「いやいや、変わってないからね。前のめりすぎなんだよなあ、お前さんは。ま、いいか。心の片隅にでも留めといてよ。」
「しっかりとハートに刻みつけましたあ!隊長の教えを胸に、全てを守ります!」
「……全てを守る、ね。
アレイシア。俺はお前が好きだ。」
「な、なな、なんですかあ!急に!」
「俺だけじゃない。エウブレナもお前が好きだ。ネーレイスも、コリーヌも、ハルディズも、ボスも、みんなお前が好きだ。
全てを守る。仲間も、人々も、敵すらも。お前は本当に、それをやろうとしている。
だがな、アレイシア。その「全て」に、お前自身を含めることも忘れるなよ。お前を失えば、みんなが悲しむ。
そういう悲しみからも人々を守ってこそ、本物のヒーローってやつなのさ。」
「……隊長は……どうなの?
ディオニソスⅫを失う悲しみから、みんなを守ろうとは思わないの?最強のヒーローなんでしょ?」
「そうだな。俺はヒーロー失格だ。だから――
忘れてやってくれ。じゃあな」
「隊長!隊長ぉぉぉぉぉぉ!」
ARES THE VANGUARD RAGNAROK
~TEMPLE~
眠りから覚めたアレイシアが神卓の間へ行くと、ナンバーズが集結していた。
名の上がった3人を見て、アレイシアはすぐに気がついた。
story2 OPERATION
ゼウスの掌中には、禍々しく光る珠がある。アポロンⅥの攻撃により消滅寸前であった、〈空の果てより来る滅び〉の力である。
なにせ私が従えているブリンガーは、全部で11ほどいるのだから。
***
アポロンⅥ、アフロディテⅨ、エウブレナ、そして君は、神殿に乗り込むべく、VTOLの前に集まっていた。
アポさん、エウさん!やっぱり、ボクも行く!
アレイシアはかぶりを振り決然と答えた。
先ほどの怪物と同種のものが、2体同時にです。
オリュンポリスの沖アトランティスが沈む海上に、1体目はあらわれた。
名は〈海の底より来る滅び〉。
オリュンポリス郊外の山岳、いま1体はそこに降り立ち、大地を揺らす。
名は〈地平の彼方より来る滅び〉。
陸と海を征する2体の怪物は、オリュンポリスに向けて移動を開始する。
アフロディテⅨは前に出ると、アレイシアの背を押した。
アレイシアはうなずき、VTOLに乗り込む、君とエウブレナもその後に続いた。
story3 WRATH
遥かな昔――数多の異界に恐怖と滅びをもたらす存在がいた。
其は終焉の起源なり(ロート・オブ・ラグナロク)。
滅びの運命の化身とでも呼ぶべきそれは、数多の異界に終焉をもたらした。
あるいは神、あるいは魔。あらゆる存在がそのものに挑み、そして敗れた。何者も、それに勝つことは出来ぬと思われた。
だがある日、終焉への道は閉ざされた、神でも魔でもなく、人間の手によって。
ふたりの人間がその〈大敵〉に挑み、長き戦いの果て、その存在を108に分割することに成功したのだ。
108に分かたれた〈終焉のかけら〉は二度とひとつに戻ることのないよう。108の異界にバラバラに封印された。
その封印の〈襖〉となったのは、戦いの果てに同様に砕け散った、勇者たちの存在であった。
〈終焉のかけら〉を傷つけることができるのは、この〈楔〉だけなのだ。
だから、私たちはあの天使に、〈楔〉が形を変えた神剣を借りて、〈断絶をもたらすもの(デッド エンド ブリンガー)〉を倒したにゃ。
エウブレナの言葉に、君はうなすく、この光景には、ひどく精神をすり減らすなにかがあった。
ハデスとアテナが玉座の間を離れ、ひとりになったゼウスはつぶやく。
なぜ私の集めた〈楔〉を奪い、人間に与えたのだ?
ゼウスは長い年月をかけて、様々な異界に神や半神を派遣し、〈楔〉を抜いてブリンガーの封印を解いた。
〈楔〉はブリンガーを滅ぼすことのできる危険な存在である、ゆえに厳重に封印した。
その〈楔〉が宝物庫より消失していることに気づいたのは、数十年前のことだ。
あわてるゼウスの前に姿をあらわしたアテナは、臆することなく堂々と告げた。
〈楔〉を奪ったのは自分である、と。
ゼウスはアテナを詰問したなぜ奪ったのか、どこへやったのか。
アテナは答えなかったただいつものように、意志の強い瞳で、父である全能神を見つめ返すのみだった。
だから――ゼウスはアテナを創り直すことにした。
〈紋〉がある限り、神は簡単には滅びない。それを利用し、肉体を創り直したのだ。すなわち、再誕である。
そして再誕させたアテナの意思を、自らの力を秘めた布で奪い、従順な娘に生まれ変わらせたのだ。
――それがオリュンポス崩壊の、最後の引き金となった。
アテナの異変に気づいたポセイドンやアポロンはゼウスの意を問いただした。
激しい口論の末、ゼウスは己がブリンガーであると明かすことになった。
結果、ポセイドンとアポロンは反逆を起こし、それを粛清したゼウスは、彼らを追放した。
それからは雪崩のごとくオリュンポスは崩れた。神も半神も、ゼウスを恐れ、姿を消していった。
孤独や淋しさは覚えなかった、もとよりゼウスは孤高であったのだ。
全知全能、天空神。神の王。ゼウスに並ぶものなど、神にもいない、だれも彼とおなじ視野を持たない。
もし、仮にハデスやアテナが人間に敗れたとしても、オリュンポスは揺らがない。オリュンポスとはゼウスなのだ。
それを、かつて我々のいた世界に落とし、ゴッド・ナンバーズなる不遜な人間を生んだ。
そして、奴らはいま、私を狙っている。
アテナよ、これが望みだったのか?だとしたら、私は……。
story4 MYTHICAL AGE
「う……うう……私は……?
……そうか、テュポーンとの戦いの最中に意識を失って……。
これは……テュポーンの気配がない……?消滅している……。奴は……死んだのか?
アレスにどこいるのだ!アレス!」
激しい戦いの爪痕の残る荒野を、プロメテウスは駆け回る。愛する友の姿を求めて。
やがて見つけた友は、静かに永久の眠りに就いていた。
「アレス!アレス!そんな……君を失うなんて……。こんな勝利など、なんの意味が……。」
戦う友を止めなかった後悔が胸を締め付ける。
だが、友の寝顔は安らかな笑みをたたえていた。為すべきことを成し遂げ、満足しきった顔だった。
彼の選択を悔いることなど、できない、それでは、彼の生き様を、正義を侮辱することになる。
だからプロメテウスは、友の頬を、ただそっと撫でた。
「君は、最後の瞬間まで君だったのだね。そんな友を、誇りに思うよ。」
ふと気づく、友がいつも身につけていた装身具が、砕け散っていた。
破片を探したが半分ほどしか見つからなかった。戦いの最中、どこかへ散ってしまったのだろう。
「見つからぬか……。ゴホッ……私も限界のようだな。
私も傷つきすぎた。長い眠りにつかねばなるまい。その前に、君を葬らなくてはいけないね。」
プロメテウスはアレスを葬った。その時、砕けた友の装身具だけを持っていくことにした。
長い眠りになる、せめて少しでも、友を感じて眠りたかった。
瞳を閉じ、プロメテウスは思う。
「ああ……次に目覚めた時、この世界はどうなっているのだろうね。
君が愛し、守った人間の世界だ。きっと……美しい世界に……。
……………………。」
物思いから戻ってきたプロメテウスは、空を見上げる。
死地へと向かう君を止めることも、戦いを望む君に力を与えることもできない。
ああ……私はなんと無力なのだ……。
陸と海より迫る2体のブリンガー。ふたつの危機に際し、英雄庁は部隊を集中させて対応しようとした。
だが、操られたヒーローたちが、各地で同時に最後の抵抗をはじめた。さらに――
2体のブリンガーは、体内から小型の怪物を無数に放出、それがー斉に無差別攻撃を開始した。
市民の被害を抑えるためには、部隊を分散させるしかない、だが……
「た、助けてくれえ!
「だ、だれか!だれかあ!
「落ち着いてください!みなさん、ゼウス区へ避難を!!
「終わりだ!もうなにもかもおしまいなんだ!
度重なる危機に市民の感情は限界に達していた。パニックに陥ってバラバラに逃げ惑う人々を、いったいだれが責められようか。
世界はただ、絶望に沈んでいこうとしていた……。
story5 SOPHIA
神殿の中には、様々な敵が待ち受けていたそれらと戦いながら、君たちはひた走る。
ふたりは神の残滓を吸収したことによって得た新たな力により以前とは見違えていた。
そのー方で――
アレイシアは明らかに疲労が激しい、いくら君が魔力を供給してもすぐに尽きてしまう。
ふたりがそう囁きかわした直後だった。
いまの私は、神として君たちの前に立っているのだからね。
けど、私にも役目というものがある。黙って帰るわけにはいかないのだよ。
ふたりの強い瞳に、君はうなずき、行こう、アレイシア、と促した。
君とアレイシアは神殿の奥へ向かいふたたび走りだした。
神殿の奥へと向かう君たちは、ある場所で足を止めた。
止めざるを得なかった。
アテナは剣を構えてはいなかった。
だが次の瞬間には振り終わっていた。あまりの速度に、君の障壁が間に合わない。
防いだのは、神剣ザグレウス。〝最強〟から受け継がれた刃が、神のー撃を受け止めていた。
衝撃にアレイシアの身体が震え、膝が崩れる、それでもなお、昂然と顔をあげ、アレイシアは言う。
じゃけん、ワシはここに来た!テナッさん!おんしの涙を止めるためにのお!
そうだった、と君は思うアレイシアはいつもそうだった。
先の遭遇で味わった圧倒的な力の差、その時にあげた驚愕の叫び。だがあれは、恐怖ゆえではなかった。
アテナ神の刃に秘められた悲しみを、アレイシアは感じ取っていたのだ。
だから立った、だから来た、己より強かろうと関係ない、敵だとしても変わらない。
ヒーローは来る。ヒーローは来るのだ。
道理も常識も摂理もなく。声なき声を聞き届けて、だれかの涙のある場所に、あらわれる。
泣きたいときにも泣けん奴は!ワシが拳で泣かせちゃるっちゃあ!
力の差は圧倒的だった。
軽々と振るわれるー撃は、君が全力で固めた障壁すらも紙のように裂く。
その衝撃をザグレウスが受け止める、柄を握る両掌から血が流れ、アレイシアが何メートルも吹き飛ぶ。
君は用意していたカードを構え、宙を舞うアレイシアに魔力を解き放つ。
放たれた魔法は、ガードを固めたアレイシアをアテナ神の方へと吹き飛ばす、構えたザグレウスが、光速の突きとなる。
アテナ神はそれを、巨大な盾で防ぐ。これだけの衝撃を受け止めて、微動だにしない。
アレイシアはすかさす右足で盾を蹴り、それを足場に反動で左膝を突き出す、その先にあるのは、アテナ神の顔面。
神の虚を衝く完璧な奇襲。それは神を――
傷つけることはできなかった。
絶対防御障壁〈アイギス〉。それを貫けない限り、いかなる攻撃も無意味なのだ。
戦神アレスの力を自在に引き出していたかつてのアレイシアならば、可能だったかもしれない。だが、いまは……。
***
プロメテウスは、己の聞いた声が信じられず震える、だが、いまの声は紛れもなく……
「お、やっと聞こえたか。よう、プロメテウス。話すのは久しぶりだな。
……いや、ちがう。これは、残留思念。そうなのだね?
「おう、オレ本体はとっくに死んでるし、生まれ変わってるからな。
プロメテウスがアレイシアに贈った髪飾り。それはアレス神の装身具のかけらを鋳造しなおして作ったものだった。
ゆえにその髪飾りにはアレス神の残留思念が宿っており、その思念と合体することで、アレイシアは真の力を解放したのだ。
「おいおい、なにを言ってんだよ。髪飾りになったのは装身具のせいぜい半分だ。だろ?
「ああ、オレは残りの半分に宿った残留思念だよ。
「おいおい、まだ気づいてねえのかよ?お前って奴は、頭が切れるくせに、自分のこととなると急に鈍くなるな。
アレスの思念が腕を伸ばし、その実体のない指でプロメテウスの胸の真ん中にトンと触れた。
「オレは、ここだよ。
「テュポーンとの決着の時を覚えてねえのか?アイツはとんでもねえ技をオレに放った。
そん時、オレをかばってくれたろ?
そのー撃で、プロメテウスは意識を失った。長い眠りが必要なほど深い傷を負ったのは、その時だ。
「オレの装身具が砕けたのは、あの時だよ。そしてかけらの半分は、傷口に紛れ込み、お前の中に入っていった。
探しても見つからないのは当然だ。なんせお前の中にあったんだからな。
「まあな。すっと話しかけてたんだが、お前、すっと怒ってたろ?それが終わったら今度は大反省会ときた。
思念に過ぎないオレとしては、波長が合うまで待っているしかなかったってわけさ。
アレイシアのー撃を受けた時、私は自分が死んだと思った。生きていられるはずがなかった。
なのに、神の力を失うだけで済んだのは、装身具のかけらがこの胸にあったから。
君が私を守ってくれたんだね?
「全部偶然だけどな。けど、うれしかったぜ。おかげであれから、お前の笑顔が見れた。
友よ……私は……私は……。
「おいおい、泣くなよ、プロメテウス。肝心なのはこれからだ。やるんだろ?
アレイシアの〈紋〉を甦らせる。プロメテウスは理解した。ハデスがアレイシアの〈紋〉を閉ざすことができたのは、不完全だったからだ。
原因は、融合したアレスの思念が半分に過ぎなかったこと。残りの半分は、ここにいる。
ならば、返さなくてはならない、それが友との、ふたたびの別れを意味しても。
プロメテウスは天の神殿に向かい、片手を伸ばす。
アレスの思念もまた腕を伸ばし、プロメテウスの腕に添える。
「悪いな。せっかくまた話せるようになったってのに。
それに……もう充分過ぎるほど報われたよ。君とのこの一瞬のためならば、私は幾度でも3万年の刑罰を受けるだろう。
「オレもだよ ありがとうな、親友。
炎が宿る。アレスの燃やす正義の炎。プロメテウスの授ける叡智の炎。
共に宿した、神から贈る人類への愛。
炎は天の神殿めがけ空を駆けた。そして――
HEARTにHEATが、R(ありあまる)!
アレス零 |
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みんなのヒーロー、アレスちゃん!復・活・だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!