【黒ウィズ】ARES THE VANGUARD RAGNAROK Story0
2021/06/30
story
オリュンポリス。
ヒーローに守られたこの街で、人々は今日も平和を享受していた。
先日、行われたジャスティス・カーニバルで神の邪悪な企みがあったことなど、市民のほとんどは知るよしもない。
だが、それでも――
お、おい、あれ……。
人々はそれを見た瞬間、ひと目で理解した。
この世界に神が降臨したのだと。
ついに来たか……ゼウス!
ARES THE VANGUARD
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ゼウス区、英雄庁総本部。
選ばれしトップヒーローしか立ち入ることの出来ない〈神卓の間〉に、ゴッド・ナンバーズが招集された。
集まったのは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、V、Ⅵ、Ⅷ、Ⅸ、そして零。
つまり、現存する全ゴッド・ナンバーズが、このー室に揃っていた。
よくぞ集まってくれた。まずは感謝する。
Ⅵに礼を言われる筋合いはない。我は汝の部下ではないゆえな。
これが危惧していた事態ならば、ナンバーズの、いえ、ヒーローの総力をあげて対処しなくてはなりません。
前置きはいいよ。で、あれ神なの?根拠もなしに信じろってのもね。
君に逆に開きたいんだけど、あれ、人間の作ったものに見える?無理あるっしょ。
以前に海底から浮かび上がった、アトランティスと同種の建物だと思われますわ。やはり神のものとしか……。
くだらない話し合いだな。オレのやることは変わらない。オレのやることは変わらないからな。
みんな、ちょっと待って。もしかして、神様と戦うつもりなの?
この前、ヘルメス神と思いっきり戦ったの、あなたじゃありましぇんか!
あれは仕方ないよ。殴り合うしかなかったもの。でも、いま来ている神様がヘルメッさんみたいに悪いことしようとしてるとは、限らないでしょ?
そう望みたいところだが、最悪の事態も想定せねばならん。各フォースの出撃準備は整っているな?
そうでなきゃこんなとこに来てないよ。市民を避難させる準備もできてる。そうでしょ、V?
ええ。〈アリオン〉を使えば、即座にオリュンポリス中に通達を……。
……待ってください。いま、何者かが〈アリオン〉に割り込みを!
なに!?まさか……!
次の瞬間、街中のあらゆるモニターが、おなじ画面を映しだした。
やあ、久しぶりだね。元気にしていたかい?
おっと、ごめんね。私たちがいた時代の人間は、もうみんな死んでいたんだったね。
私はハデス。君たちもよく知る冥府の神だよ。
さて、単刀直入に言うよ。この世界はオリュンポスの神々のものだ。だから、自分たちのものを取りに来たよ。
君たちが神器と呼んでいるものがあるね。あれをすべて渡して欲しいんだ。もちろん、これはお願いじゃなくて命令だからね。
近いうちに受け取りに行くから、ちゃんと揃えておいてよ。それじゃ、またその時に。
神器ちゃんをよこせ?冗談じゃないっしょ。
Xの正体がヘルメス神だったんでしょ?神がみんなあの手のタイプなら、神器を渡せるわけないよね。
あのような神が他にいるとも思えぬが、真意のわからぬものに強大な武器を寄越してやるわけにはいくまいの。
ええ。たとえ神であっても、市民に危害を加える可能性があるなら、従うわけには参りません。
うーん……みんな、ちょっと乱暴だぞ?力にものを言わせるだけがヒーローじゃないとボクは思う。
居並ぶゴッド・ナンバーズは、「お前が言うのか?」という顔をしたが、アポロンⅥは思慮深くうなずいた。
ふむ、零の言うことにもー理ある。まずは話し合う余地があるか、確かめる必要があるな。
けど、もし向こうが最初から強引な手口で来るつもりでしたら、どうしますの?
トーゼン、いざという時の準備はするでしょ。Ⅲ、V、部隊分けできる?
遊撃部隊として北にⅥとアポロンフォース。南に零とヴァンガード。ハデスフォースもつける。
僕とVは本部で作戦指揮。神がコンタクトしてきたらVが対応する。Ⅵは本部とゼウス区の防衛。
残った部隊はⅨとに預けて、ふたりはオリュンポリス全体の警備。こんな感じでしょ、V。
はい。私も同意見です。ですが、ゼウスⅠをお忘れではありませんか?
作戦に入れても無駄だよ。どうせ……。
悪いが、オレは好きにさせてもらうぜ。オレはゼウスⅠだからな。好きにさせてもらうのさ。
(メルクリア……来ているのか……?確かめるのならば……。)
……ほらね?
作戦はわかった。ことはー刻を争うかもしれん。各自、持ち場について備えよ!
よぉぉぉぉぉぉぉぉし!話し合うぞぉぉぉぉぉぉぉお!
story
作戦は開始され、ヴァンガート隊はいつでも動けるように待機していた。
う~、ちょっと緊張してきたぞ神トレしてリラックスしよう。
本当に、神様と戦うことになるのかしら……?
さあな。けど、神話を見てみりゃ、神々が人間に遠慮するわけがねえ。欲しい物があればどんな手でも使うだろうよ。
確かにゼウスってのはそういう神だけどさあ嫌だねえ、厄介なことにならなきゃいいけど。
つうかさあ、神様も神器欲しがるのな?んじゃアレ、なんだっての。うひぃ~、分解してえ!
あいよ!……はあ!?マジかよ、おい?すぐ向かわせる!
アレイシア、エウブレナ!コレーストリートに向かえ!いますぐにだ!
ちょうど身体があったまったとこじゃあ!うおぉぉ!出勤じゃあぁぁぁぁぁい!
ちょっ、待って、アレイシア!ボス、なにがあったんですか?
あったもクソもねえ!来てんだってよ、ご本神様が!
ひとりの男を、100人を超すヒーローが遠巻きに取り囲んでいる。
男はそれを気にする様子もなく、近づいてきたアレイシアたちを見ると片手を挙げて朗らかに言った。
やあ、遅かったね。気づいてないのかと心配になったよ。
ハデス神……!本物……なのですか?
君はハデスヒーローだよね?だったら、説明はいらないんじゃないかな?
その言葉は正しい。ハデスヒーローから感じる神の力、それを極大にしたものが、眼前の男から漂っていた。
はじめまして、ハデッさん!!アレス零です!
ああ、ヘルメスから聞いているよ、アレスの生まれ変わりなんだって?ふふ、なるほどねえ。
すみません、貴方のご提案に対して英雄庁が、話をさせていただきたいと申しています、お時間をいただけないでしょうか?
う~ん、いただけないかな。私は君たちヴァンガードを見に来ただけだもの。
ボクたちを?なんでですか?
いや、たいした事じゃないんだよ、ちょっと確認したかっただけ。もういいんだ。
君たちでは、私を止めるのは不可能だって、よくわかったからね。
ハデスの手が、アレイシアの腹部に触れる瞬間、激しい悪寒が全身を貫き、戦神の本能が彼女を衝き動かした。
な、なんばしよっとですかあ!
神の力を全開し、槍を構えるだが――
な、なんじゃ……?力が……抜けて……。
アレスの力に目覚めたばかりのころ、力を使いすぎて意識を失うことがあった。
それと同じことが、いまアレイシアに起こっていた。
な、なんでじゃ……?アレッさんと合体してから、こんな風になったことなんて……。
ごめんね、根源に通じる〈紋〉を閉じさせてもらったよ。
君の力は私たちと同種だからね。生身だけではすぐに使い果たしてしまう。根源の助けなしでは、維持できないだろう?
な、なんの、この程度ぉ……!
気合でー歩踏み出したアレイシアは、しかしすぐに力尽きたように膝をつき――
この……程度……。
その場に倒れ、意識を失った。
アレイシア!
すかさすエウブレナが前に出る。その手には神器、〈見えざる神の二叉槍(ハイデント・アイトネウス)〉が握られている。
ハデス神!アレイシアになにをしたんですか!?
彼女は我々にとって唯ーの懸念だったからね、はじめに力を封じただけだよ。
貴方たちはなにをしようと言うのですか!返答次第では、いかに神であっても……。
そんな怒らないで。すぐにわかるよ、ほら。
ハデスが片手をあげ、天を示すその先には、天空に浮かぶ神殿がある。
そこから、なにかが舞い降りてきていたひらひらと風に舞う、無数のなにか。
……羽根?いえ……白い布?なんで、空から……?
それは巨大都市のそこかしこにふわりと舞い降り――
次の瞬間、オリュンポリスは悲鳴に包まれた。
な、なんですか、これは……!身体の……自由が……!
白い布は絡みつくようにしてヒーローたちの顔を覆うと、たちまち黒く染まった。
ハデスフォース!いったいどうしたんですか!?
ハデスD962……逃げて……ください!
言うなり、そのハデスヒーローは苦悶の表情を浮かべたまま、エウブレナヘと襲いかかってきた。
な、なにをするの!?私は味方よ!ヴァンガードよ!
わかっています……!けど、身体が勝手に動くんです!
くっ!その布が原因ね!
御名答だよ、それがゼウスの力さ。
その布を巻きつけられた者は、意思に関係なくゼウスの思うままに動く、何人たりとも抗えないよ、
なぜ、こんなことをー!
なぜ?理由がいるのかい?この世界は私たちのものだ。だから、君たちヒーローも僕たちのものだ。
自分のものをどう使おうと、理由を説明する必要なんてないだろう?
そんな……そんな勝手なこと!!!! !
さあ、ヒーローの諸君。私に従わないものがいるよ。どうすればいいか、わかるね?
……意思を奪ってヒーローを戦わせるなんて、許されることじゃないわ。
たとえそれが神だとしてもよ!神器!私に力を!
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落ちよ、奈落の最果てに!タルタロス・フォール!
いいね。ひとりも殺すことなく全員気絶させている、力の使い方が丁寧だ。
ハデス神!いますぐみんなを自由にしてください!さもなければ……。
さもなければ?
いまの技、貴方には手加減なしで放ちます!
それは嫌だな痛そうだもの。でも、その心配はないかな。
おいで、神器。
甘い声でそう告げ、手を伸ばした瞬間――
ウソ……なんで神器が……。
君は説明を欲しがるばかりだね。理由なんてどうでもいいじゃない。
君が絶体絶命のピンチだっていうのは、なにも変わらないんだしね。
言葉と共に、ハデス神の力が獣を形作る。
わかるよね?君と私の力の差が。
これが……神……!
神器を奪われたエウブレナが、あれを喰らえばひとたまりもないだろうだが――
だからって……引いたりなんかできない!
よう言うた、エウさん……。
アレイシア!大丈夫なの?
あんま大丈夫じゃないっぽい。変身はできそうにないや。
けんど!その程度でヒーローは止まらんばい!エウさん、やるぞおぉぉぉぉぉぉぉぉ!
ええ!やりましょう!
麗しい友情だね。うれしくなるよけど、無駄なものは無駄だよ。
さあ、おいき、ケルベロス・オニュクス。
放たれた巨大な番犬の爪が、ふたりに襲いかかる。
だがその爪は、届く寸前で両断された。
待たせたな、ふたりとも。
ディオニソスⅫ来てくれたんだね!
これほどのー大事だ。引っ込んでいるわけにもいくまい、さて……。
アンタがハデス神か、俺の後輩を可愛がってくれたみたいだな。
やっと来てくれたね。会いたかったよ、最強のヒーロー、ディオニソスⅫ。
へえ、神様もご存知とは、俺も捨てたもんじゃないな。
だが、いまはアンタらのおかげでこの街が大変なんだ。さっさとケリをつけさせてもらう!
いいよ、おいで。いまの君の全てを、私に見せてごらん。
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さあ、ケルベロス。遠慮なく食べていいよ。
ハデスが手にした神器を軽くふると、巨大な番犬が2頭同時に形作られ、そのままディオニソスⅫを襲う。
迎え撃つディオニソスⅫは、手にした酒坏をふり、ネクタルの飛沫を宙へ飛ばす。
ヴォリオス・ステファノス!ヒアデス・アステリオン!
それは星座の形を取ると、流星のごとく降り注いだ。
ネクタル・アステリズモス!
ネクタルの流星に貫かれた番犬が消滅するだが、ディオニソスⅫは止まらない。
エク・クリトーン・メテュ!
先の技と同時に跳躍したそのたくましい体躯が、彗星のごとき跳び蹴りと化してハデスに突き刺さった。
おっとっと、凄いね。避けられずに防御してしまったよ。
ー度だけ確認しておく。あの布で操られているヒーローを全て解放し、おとなしく元の世界へ帰る気はないか?
う~ん、ゼウスが決めたことだからねえ、兄は弟には逆らえないものなんだよ。ごめんね。
兄なら弟を正して欲しいもんだがな。まあいいさ、だったら話す時間が惜しい。
決めさせてもらう!
神剣ザグレウスが輝きを増す。それは希望を示す〝最強〟のー撃。
アイオニオン――
神をも断つそのー撃を前に、ハデスは避ける素振りもなく、顔の前に手をあて――
顔を覆う布を取り去った。
そこにあったのは、失ったはずの友の顔。
クリュ……メノス……!
驚愕と共に、大剣が止まり、ニコリと笑った友は無慈悲に告げる。
落ちよ、奈落の最果てに。タルタロス・フォール。
ぐあぁぁぁぁぁぁ!
ディオニソスⅫ!
倒れたディオニソスⅫにアレイシアが駆け寄る。
強烈なー撃を喰らったディオニソスⅫのマスクは砕けていた。
だから、嫌でも気がついた。
隊……長……?ヴァカ隊長が、ディオニソスⅫ?
下がっていろ、アレイシア。変身のできないお前には荷が重い。
すごいね、さすがヴァッカリオ君だ、いまのー撃は本気だったんだけどな。
パパ……?パパなの……?
別れたのはまだ小さい頃だったのに、ちゃんと覚えていてくれたんだね、うれしいよ、エウブレナ。
なんで……パパが生きて……。それに、パパがハデス神?いったい、どういうことなの?
積もる話をしたいのは山々だけど、いまは忙しくてね。ちょっとだけ、待っててくれるかい?
すぐに、ヴァッカリオ君を倒すから。
問い詰めたいことは山ほどあるが、ひとつだけ、もうー度訊く。
クリュメノス。お前は人間の敵なんだな?
だから、敵なんかじゃないってば、神は人間の、ただの持ち主だよ。
……わかった、言い訳は倒してから聞かせてもらうぞ!
ふたたびザグレウスを構えるヴァッカリオにハデスは憐れみの視線を向けた。
やめておいた方がいいと思うよ。君、これまで無茶をしすぎたね?ひと目でわかったよ、もう限界を超えている。
変身するだけでボロボロのはずだよ戦うはおろか、立っているのもやっと、決着を急いでいるのもそのせいだよね?
ハデスの指摘は正しい今回、変身した時点でわかっていた、限界が来たのだこれが最後の戦いになる。
だが、だからこそ。
アンタが最後の相手なら望むところさ、来い!クリュメノス!いや、ハデス!
仕方ないね、いいよ。これでも君の師匠でもあるんだ。幕を引いてあげるとするよ。
ー瞬の沈黙。
次の瞬間、ふたつの奥義はぶつかりあった。
エレポス・エカレオー!
エンド・オブ・ザ・ミュートス!
や、やった!さっすがディオニソスⅫだ!
拳を握ったアレイシアが次に目にしたのは。
大量の血を吐き、地に崩折れる〝最強〟の姿だった。
え……?
その胸には、神器〈見えざる神の二叉槍〉が深々と突き立っていた。
いやいや、とんでもないー撃だ。でも、無理をしすぎたね。僕を倒すより先に、君の肉体が壊れてしまった。
とはいえ……。
すごいね、ヴァッカリオ君は。下手すると本物のディオニソスを超えているよ、力のほとんどを使い果たしてしまった。
これでは僕もー度退かざるを得ないね、楽しかったよ。
パパ!待って!教えて!いったいなにがあったの!?
ー度死んだ。それで自分がハデスだということを思い出した、それだけだよ。じゃあね、僕のエウブレナ。
隊長!
いまもなお血を吐くヴァッカリオに、アレイシアは駆け寄り、抱き支えた。
隊長!なんで……なんで!
……ひとつだけ……いいか……?
ひとつだけなんて遠慮しないでいいから!お酒も好きなだけ飲んでいいよ!だから!
アレイシアの言葉をさえぎるように、己の血に塗れたヴァッカリオの腕が上がり、アレイシアの頭を優しく撫でる。
余す手が神剣ザグレウスを引き寄せ、その柄をアレイシアにそっと手渡し、そして――
……あとは……頼んだぞ……。
…………。
隊長?隊……長……
……………………。
う、嘘じゃ……こんな……あ、あ……。
うああああああああああああああ!
アレイシアの慟哭が空に響くだが、それに足を止める者すらいない、悲鳴は、いたるところであがっていた。
神に操られたヒーローと、同胞と戦うヒーローと、逃げ惑う市民と。
絶望に包まれた都市を、天空の神に見下されながら。
ゼウス |
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さあ、始めるとしよう。終焉への道(ロード・トゥ・ラグナロク)をな。
その日。人と神との戦いが始まった。
ARES THE VANGUARD Ⅳ
~RAGNAROK~
PV
01. ARES THE VANGUARD 1・2・3 | 2019 10/07 |
02. 巨神vs戦神 | 10/11 |
03. アレイシア&エウブレナ編(謹賀新年2020) | 01/01 |
04. ARES the VANGUARD(魔道杯) | 02/21 |
05. ARES THE VANGUARD Ⅱ ~英雄大戦~ 序章・1・2・3・4・5・6・7 | 2020 03/30 |
06. アポロニオ&ヴァッカリオ編(GW2020) | 04/30 |
07. アレイシア編(GP2020前半) | 08/31 |
08. ヴァッカリオ編(GA2020後半) | 09/17 |
09. ARES THE VANGUARD Ⅲ ~ジャスティスカーニバル~ 1・2・3・4・5・6・7 | 2020 11/13 |
10. アレヴァン編(8周年) | 2021 |
11. ~RAGNAROK~ -鼓動-(魔道杯) | 06/25 |
12. ARES THE VANGUARD Ⅳ ~RAGNAROK~ -終焉- 序章・1・2・3・4・5・6・7・後日談 | 06/30 |