2015/06/29
目次
Story1 今日がはじまる
Story2 今日はまだまだ
Story3 今日はそろそろ
Story4 まだ今日なのか
Story5 明日よ早く来い
最終話 今日はもうダメだ！
登場人物
TOP↑
story1 今日がはじまる
いてっ！っつぅ～……
……これで鼻毛は全部抜いた。鼻の頭のあぶらも完全に取り去ったし……
最後に、タロットカードで今日の運勢を占うとしよう。
……ふっ。なるほど。オーケーオーケー、最高の一日だな。
ああ、ごめんごめん。おまたせ。そろそろ出ようか。
＜――『極上のデートスポットがあるらしいから、一緒についてきてくれ』
自称恋愛マスター・インキュバスのゼロキスに頼まれ、出かけることになったのだが――＞
ふふふ、デートスポットって、どんなとこなのかしら？楽しみね、主人公。
あれ！？あ、あ、アイリスさん？ど、どうして……？
魔物の討伐でしょ？そりゃあ、主人公と一緒にいくわよ、アタシたちも。
ついでにデートスポットにいってみるなんてのも、面白そうだしね！
ね、猫……！今日もダメかもしれない……
アタシを見てがっかりするの、やめてもらいたいんだけど？
（ひどいじゃないか！二人には秘密にしてくれたって……！）
なにを内緒話してるのよ。身だしなみでいつまでも待たせてさ。早くいきましょーよ！
いつもと同じ魔物討伐も、こういう目的があると楽しいですよね。
お誘いくださって、ありがとうございます、ゼロキスさん。
あ……うん……はい、そうですよね……
（気を取り直そう……逆に、アイリスさんにいいところを見せるチャンスかもしれない……）
よし………みんな！悲しみを乗り越えて、進んで行こうぜ！
だれが悲しんでるのよ？
さっそく間違えた！今日もダメだ！
TOP↑
story2 今日はまだまだ
さてさて、ちょっとここいらで一休みしましょっか。
ええ、そうね。
うん、このあたりがよさそう。
ぺろぺろ。
猫が顔を洗った……！もうダメだ……！
なんでよ。せいぜい、『雨が降りそうだな？』くらいでしょーが。
ゼロキスさんは、どうしてキャトラの行動でショックを受けるんですか？
あ、アイリスさん……！そ、それはですね、僕の、タロットカードで、毎日占いをしてるんだけど……
ふわぁ……
ね、猫があくびを……！ダメだ、どんどんダメになっていく……！
……ゼロキスさんにとっては、猫がずいぶん縁起悪いのね……
……今日は帰った方がいいのかもしれない……
ここまで来てなにをいってるのよ。
いまのところ討伐も順調ですよ？そう弱気にならないで、自信を持って進みましょう。
あ、アイリスさん……！ハイ！わかりました！
でさーゼロキス。目的地って、どんなとこなの？
ふふ、よく聞いてくれたね。そこはね、最近流行っている、恋人たちの聖地なんだ。
ほほー。
遥か古代を想起させる神秘的な遺跡。その一角に、美しい広場がある。
そこは碧く幻想的な光が、恋人たちを甘く包み込み、愛情を一層深めさせるという……
アンタ恋人いないでしょ？
ぐさっ！で、でも、そこで告白すれば、必ず再想いになれると噂されていて……
うわさはうわさでしょ？
い、いや、事実、そこで誕生したカップルが何組も……
あのねえ。そんなところに二人一緒に行く時点で、両想いも同然なのよ。
だから、そういうのはノーカン。ちがう？
くっ……！猫に論破された……！
今日はもうダメだ！
ハイ、今日はまだ終わらないから、先進むわよ。
敗色濃厚だ！絶望的だ！
静かになさい。
猫に怒られた！人としてダメだ！
TOP↑
story3 今日はそろそろ
その、美しいデートスポットは、もっと奥かしら？
えーっと、噂によると……
あ！………あっちでなんかってる！あれじゃない！？
あっ、ほんとだ！
え！？まだ、もっと奥のはずなのに……？
なにかな、なにかな？
＜キャトラを先頭に、不思議な光を目指して走っていくと……＞
なっ……！？
え？
なんでじゃー！！！
うるせえよ。
＜なんと！光の正体は、ベンケイの頭だった！＞
ベンケイ！どうして頭が光ってるのよ！
後光かなんかだろ。ワシは有り難い存在だからな。
そんなワケないけど、アンタだったらあるっていうの……！？
ベンケイさん、どうしてこの遺跡に？
ワシがどこで寝ようが、ワシの勝手だろうが。
そうですけど……魔物いますよ？
だからよ。
だから！？
寝てるとこを襲ってきたら、ぶん殴ってやろうと思ってなぁ。
はぁ……
ヘンなおっさんに遭遇した……最初っからなかったけど、ムードはもうマイナスだ……！もう今日はホントダメだ！
起こされちまっちゃしょうがねぇ。ついてってやるぜ。魔物が出たらワシに殴らせろや。
しかも同行だ！もうダメだ！世紀末だ！
TOP↑
story4 まだ今日なのか
出た！このあたりの親玉っぽい敵だ！
ぬうりゃああああ！
＜巨大な魔物にベンケイがとびかかると、馬乗りになった。＞
ぬん！………ぬん！ぬぅん！！！おらぁ！いねやコラぁ！
＜マウントポジションのまま、ベンケイが魔獣をボッコボコにしている！＞
喝ーッ！
＜……魔獣は完全にのびた……＞
ストップ！ストーップ！ベンケイ！タオル！
そんなもんはねぇ。
ないけど！もう十分よ！
けっ。口ほどにもねぇ。
……何も言ってなかったと思うんだけど……！
……オッサンに、見せ場まで奪われた……！
もうなにもかもだ！
あぁ？あんちゃんよぉ、獲物は早い者勝ちだろうが。文句あるっつうのか？
あ！い、いえ、そんな……も、文句だなんて……
ああ～？ナヨナヨしやがって、しゃんとしねえか、コラ。
はい！………すいません！
……ゼロキス、ベンケイに敬語使うことないわよ。
そのオそのオッサン、アンタよりはるかに年下だから。
え！？な、何歳なんですか……？
まだ１歳にも満たねぇ。
えっ……！？
まあ、驚くわよまぁ、驚くわよねぇ……
……理解が追いつかない！こんなんでイイわけがない！
今日はもうダメだ！
そういうことじゃねえだろ。
えっ！？
遺跡はまだ続いてるぜ。行くしかねえだろうがよ。あぁん？
ま、待ってくれ……！もう帰る！帰りたい！もう今日はダメなんだ！
うるせぇ。来いや。
たっ、たすけてくれ……！
TOP↑
story5 明日よ早く来い
ひぃ、ひぃ……！あ、アンタ！
あぁ？
僕にばっかり戦わせて、ひどいじゃないか！
あんな雑魚、面白くもなんともねぇし。
あんちゃんが経験積むのに丁度いいだろうがよ。
０歳なのに、どうして僕を下に見るんだ！？
まぁ、そう怒んなや。あんちゃんよぉ？
こっ、この人、絶対に僕を馬鹿にしてる……！
ベンケイはだれに対してもいつもそんななのよ。ゴーマンな奴なんだから。
強ければこそ、好きに生きられるものなり……つってな。まあ、そんなかんじだと思っとけや。
もうダメだ……！ダメをこえて嫌だ……！
そもそも、何一つ、計画が上手くいってない！
アイリスさんは一緒だし、一緒なら一緒で、イイトコ見せようとしてもそれも出来ないし……！
おう、あんちゃん、この娘のことが好きなんだな。
！
……えっ……？
いいねぇ、恋に生きる若人。まったくもって眩しいねぇ。
ゆ、言うなよー！
おめぇが言わねぇからだろうが。
タイミングがあるだろ－！？
そうやって逃げグセつけてっと、いざってときにも言えなくなっちまうもんだ。違うか？
そ、それは……！
覚悟が足りねぇあんちゃんだぜ。今日ダメな奴ぁ、明日もダメだ。さっさとそれに気づけや。
……そんなこと言ったって……！
あんだよ？ワシが何か間違ってるか？ネガティブなあんちゃんよぉ？
……なんだよー！！！
あっ！………ゼロキスさん！
がっはっはっはっは！
ベンケイ！いじめるんじゃないわよ！
なに言ってやがる、愛の鞭だぜ。ああいう手合いにゃ、窮地が必要なのよ。
またまだ追い込むぜ……！
あっ！主人公、まずいよ！
ベンケイより先にゼロキス見つけて帰ろう！
ゼロキス泣いちゃうよ！
💧
TOP↑
最終話 今日はもうダメだ！
もうダメだ……もう当分ダメだ……
いた、ゼロキス！
猫に見つかった、もうダメだ……
そんなのいいから！ほら、立って！はやく！逃げなきゃ！
誰から逃げるって？
ひっ！？
しまった……！
ワシから逃げたいなら、この次元にいないことだな。
おう、あんちゃんよう。女子を置いて一人で行くとは、えれぇ男前じゃねぇか？おぉ？
うぅっ……！
そもそも、おめぇの勝手な用事のために、一同連れまわしてたんだよなぁ？
それなのに、無責任に放りだしてよ。そんなに我が身が可愛いか？
…………
傷つくのを恐れて、逃げ回るだけのヒヨッコがよぉ……
口を開けばダメ、ダメ、ダメ……聞かされてるこっちが滅入ってくらぁ。
う……！
なんとか言ったらどうなんだ？あぁん？……！
……！
うわぁぁぁ～ん！！
＜ゼロキスが泣きながら両手をグルグル回し、ベンケイに立ち向かう！＞
バカバカバカー！
＜ゼロキスのグルグルアタックを、ベンケイは余裕の表情で受け止めている。＞
そんなもんか！
ちくしょー！
おら、どうした！吐き出してみろや！
正論ばっかり言うなよー！わかってるからダメって言ってるんだろー！
来い！………もっと来やがれ！
なんだよー！性格なんだよー！すぐには治らないだろー！
がんばるからさー！長い目で見てくれよー！
うわぁぁぁ～ん！！
……なんと、まぁ……
０歳児にあたるインキュバス、かぁ……珍しい光景だわ……
うぅぅ……！ううぅぅ……！
……ふむ。
喝ーッ！
さらばだ。
ベンケイ！勝手に消えるなぁ～！も～、なにがしたいのよアンタは！
…………
……ゼロキスさん？
……みっともないところを、見せてしまった……
……でも逆に、これで開き直れませんか？
え……？
……きっと、ベンケイさんは、ゼロキスさんの弱さを引き出したんだと思います。
喝を入れるために……
う～ん……アイツはそんなにイイヤツかなぁ……？ただの結果論じゃぁ……？
……そうか。
うん。僕は、わかったよ。本当にダメなヤツだ。
でも、ダメでいいんだ。ダメなことを隠そうとするのが一番ダメなことなんだ。
ゼロキスさん……！
今日はとことんダメだから……！
帰る！
あっ……？
これは……少しは成長、した……のか……？
変わってないか……
キミに捧げるゼロ秒のキス -END-
